163 / 240
そのじゅうご
そのじゅうご-11
しおりを挟む「みちるくん、お利口さんだったねえ」
「うーあうっ」
撮影が無事終了してスタイリストさんに抱っこされてご機嫌のみいくん。
もう横抱きじゃなくても大丈夫なのに、スタイリストさんの腕に横抱きされてる。
「さ、みいくん。ママのとこにおいで」
「ぶっ」
なんじゃ、その声は。母では不満か。名残惜しそうにスタイリストさんの胸さわさわするんじゃないっ。
スタイリストさんの腕からひったくる様にして抱っこ。
「…あの、天海先生」
暗い表情の富永嬢。
「申し訳ありませんでした…」
「いや、まあ…余計な事ですけど、お付き合いする男性は選んだ方が良いかと…」
「はあ…」
「でもみちるくん可愛いですねえ。いっぱい赤ちゃん見てるけどその中でも凄い可愛いですよ」
事情知らぬスタイリストさんが明るく言う。
「普段はモデル事務所に所属してる子がほとんどだけど、みちるくんの写真出たら逆に事務所からスカウトきますよお!」
ス、スカウトとなっ!?
「ああ、そうですねえ。これだけ可愛かったら将来見越してタレント事務所も来るかも」
笑うスタイリストさんにつられたのか、富永嬢も明るさ取り戻す。
タレント、っておかんが入れたがってる事務所とか!?いや、あそこはスカウトは無いよな。
ど、どうしよう。みいくん芸能人になるのかっ!?
と、明るい雰囲気のこちら側とは打って変わって。
厳しい顔つきの尊親子と他一名。
「一体どうなってんだよ、いきなり訴えるとか言われるなんて」
「内容が良くわからないのよ。届いたメールにそう言う一文があるらしくて。イタリア語に堪能な人がいないから大まかにしか翻訳出来ないから、実際にメールの内容見てみないと何が問題なのかわからない」
「それじゃ、そのメールを僕の携帯に転送してもらえませんか?僕が翻訳しますよ」
「でも、どっちにしてもなんにしろ、戻らないと対策立てられないわ」
腕組んで難しい顔して。
「くそっ、飛行機空席待ちしかない」
携帯で航空会社の予約画面みてるらしい尊。ホントは今日は一泊して明日の夕方の便で帰る予定なんやけど。
大変な事が起こってるらしいのはわかる。
「あ、そうだ。富永サン」
唐突に各務先生が富永嬢に声かける。
「はっ、はい?」
「キミ、航空会社に御親戚がいたよねえ。至急チケット手配してくれない?」
「えっ!?はいっ!」
富永嬢が慌てて携帯出す。
「あ、みいくんはまだ席いらないのか。じゃあ、四人分ね」
なぜに四人分?
「三人で良いだろ。なんで四人なんだよ」
尊の言う通りだ。
「俺の分入れたら四人でしょ」
「はあ?なんでお前が」
なんでアンタが?
「だって俺が一緒行って内容見た方が早いでしょ。俺法律用語もわかるし」
「でも準一郎君…それは」
瞳子さんが困った顔する。
「あ、夕方の便なら席はばらばらですけど四人OKです!」
使命果たした感の富永嬢の声。
「瞳子さん…」
各務先生が瞳子さんの手握って。
「僕はあなたのお役に立てるならどこへでも行きます。愛する人のためなら僕はなんでもしますよ」
て、真面目な顔したから。周りのあたしらも気圧されて。
ただ各務先生と瞳子さんを見てた。
このまま行くとキスかな。とかぼんやり思って。
「あ…愛する…人って…」
呆然と呟く富永嬢の声で尊が我に返り。
「お前、離れろっ!!」
「嫌だね。さあ、行きましょうか瞳子さん」
瞳子さんの肩抱いて外に出る各務先生。
「てめっ!いい加減にしろっ」
後追う尊。忘れられる妻と子。
「みのりさんっ!!」
戻ってきた。
「忘れたんじゃないからねっ!違うからねっ、俺はいつだってみのりさんとみいくんが一番だからねっ」
必死な尊。別に良いけど。
荷物持ちながら厳しい顔の尊に。
なんだか言いようの無い不安感じた。
1
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。


甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる