142 / 240
そのじゅうよん
そのじゅうよん
しおりを挟むいざ退院して。
何日かぶりの我が家。
「みいくーん、ここがみいくんのお家だよお」
玄関のドア開けながらあたしの腕の中のみいくんに笑いかける。
見慣れた我が家のリビング。
大きな窓のガラスから入る光が家具の輪郭を柔らかくしてる気がする。
なんか違うな。
家の中はなんにも変わってないけど。
空気が違う気がする。
それは新しい家族が出来たからかな。
久しぶりに尊の作ったご飯食べて。病院のも美味しかったけどウチのダンナはやっぱ料理上手やな。
「みいくんのお風呂どうするの?」
まだ一緒に入れんからベビーバス。ふふふ、あたしは沐浴病院で習ったからな。
ここはあたしに任せて尊はそこで大人しく見ておれ。
「ほげえっほげえっ」
む?病院でナースさんと一緒にやった時は泣かんやったのに。
こら、首傾けるなっ!耳にお湯が入るっ!
なんじゃ?首の支えが不安定なのか?
知らぬうちにみいくんの頭支える手に力が入る。
「ほんげえっ」
むむむ。風呂嫌いか?
「みのりさん…手力入り過ぎじゃ…」
ふ、はは。緊張し過ぎたか。
深呼吸して肩の力抜いて、ガーゼでみいくんのちっちゃな身体撫でる。
大人しくなったみいくんは気持ち良さそうにお湯に浸かってる。
バスタオル持って待機する尊にタッチ。
真新しい肌着とベビードレス着せて。可愛らしいったらありゃしない。
尊は一眼レフ構えまくり。
寝るのは寝室のベビーベッド。
今までからっぽだったベッドに主たるみいくんがおねんね。
アンティーク調のベッドはみいくんのテリトリーやからみいくんは王様やね。
この小さな世界からみいくんの世界は拡がってくんだね。
「みのりさん…俺なにがあっても二人を守るから。みのりさんがいつも安心してられる様に頑張るから」
尊があたしの肩抱いてキスする。
「俺の子供産んでくれてありがとう…満に会わせてくれてありがとう」
そんな事言うからほっぺたにちゅってしちゃったよ。
尊がちょっとびっくりして、あたし抱き締めて笑った。
二人手繋いでベッドの側に座って。
ずうっとみいくん見てた。
神様って不思議だな。
なんで人間を作ったんだろう。
あたしのお腹の中で産まれた小さな種はゆっくり成長してそしてみいくんになった。
尊とあたしが出会わなかったらみいくんは違うところに産まれてたのかな。
神秘論を言うワケじゃないけど。
人間は何回も生まれ変わって。
前世で関りがあった者同士が今世でも必ず縁を結ぶらしい。
尊とあたしはなんだったんだろう。兄弟とか?
じゃあ、みいくんはなんだったんだろう。
わかんないけど、みいくんがまたパパとママの子供に産まれたい、とか。
将来そう思ってくれると嬉しいな。
これから先このちっちゃな手が色んなものに触れて色んな事覚えて。
色んな人に出会って。
運命のひとに出会ってみいくんも幸せになってくれたら良いな。
パパもママもまだ色んな事わかんないしさ。時には間違う事もあるかもしれないけど。
でも産まれてきて良かった。
そう思ってくれる様に頑張るからさ。
今はとりあえず。
産まれて来てくれてありがとう。
君の人生を一緒に築いていける事が。
パパもママも嬉しいよ。
ありがとう。
You Could Be Mine 完
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。


甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる