You Could Be Mine ぱーとに【改訂版】

てらだりょう

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そのじゅうさん

そのじゅうさん-9

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「よし、行ってみよ!あ、みいくんどうしよ。まだ外出ちゃだめだよね」

「ばぁば、よろしく!」

「よしきた!」

みいくんをばぁばに預け尊と二人中庭へ。

 白いベンチに座る二人発見。回り込んですぐ後ろの植え込みに身を潜める。

「…準一郎くん、そろそろ東京戻ったほうが良いんじゃないかしら」

そうだそうだ、帰れ。帰ってくれ。

「僕は大丈夫ですよ。仕事ならどこででも出来るし、それより少しでも瞳子さんといたい」

確かにどこででも出来るがな。

「でも。松本さんもずっとお待ちになってらしゃるし…編集さんにご迷惑かけるのもどうかと思うわよ」

「…それはそうですね。松本氏には帰京頂きますか」

オマエも一緒帰れっ。

「準一郎くんもテレビのお仕事とかあるんじゃないの?」

「それはキャンセルすれば良いです。僕は本来タレントじゃなくて作家ですからね、ちょっと見た目が良いから出てくれって言われるだけで」

自分で言うかっ。そりゃ見た目は良いけど。

「キャンセルとかそんな、色んな人にご迷惑な事しちゃダメよ。お仕事無くなるわよ」

「瞳子さん…僕はなにもかも失くしたとしてもあなたが僕の側にいてくれたら…」

前に好きだった人のためには捨てられなかったものを。瞳子さんのためなら捨てられる。

各務先生は本当に本気なんだな。

尊と顔見合わせて。尊も困った顔。あたしも困った顔。

「瞳子さん」

うをっ!手握ったぞっ。

「僕は金銭的には恵まれても愛情には恵まれない家庭で育ちました。僕の理想は愛情に溢れた家庭を築く事です。今まで何人もの女性と付き合いましたけど、僕の理想を実現出来る相手には出会わなかった」

「…準一郎くん、私は」

「僕はあなたと一緒に理想をカタチにしたい。亡くなったご主人の事はわかります。でもそれもあなたの一部として受け入れる自信があります」

「私は仕事にかまけて家庭を、息子を顧みなかったのよ」

尊がちょっと眼逸らす。

「それなら、僕とやり直せば良い。やり直して今度こそ暖かい家庭を築けば良い」

なんだか、もう。

半分各務先生応援したい気分で、いやしかしそうなったら尊の父親があたしより年下になるワケで。

凄く困惑した瞳子さんの表情。

その顔をじっと見詰めてた各務先生がふっと笑った。

「困らせたいんじゃない。僕の気持ちをわかって欲しいだけですから」

「準一郎くん…」

「ぼくにはまだ時間がたくさんありますからね。どれだけ時間かけてもあなたに僕のものになって欲しい」

各務先生が立ち上がって。

「さ、お食事行きましょうか。最後の夜は松本氏も誘ってあげようかなあ」

ん?最後?

「僕もホントの事言うとテレビやらインタビューやらの仕事があるんでね、そろそろ帰ろうかと思ってたんですよ。明日の便で帰るよ、お世話してくれてありがとう。尊クン、みのりちゃん」

あら、バレてるよ。

翌日、各務先生は笑顔で。松本氏はほっとした顔で。

東京へ戻り。

俺、瞳子さんには嫌いとか言われてないし、瞳子さんも憎からずって感じだったしさ。時間かければ俺の事受け入れてくれると思うんだよね?今はまだ戸惑ってるだけだから彼女は。

と、ポジティブなメールを頂き。メールの最後に。

時間出来たら行くからまたお世話してね~!

絵文字つきで書いてあった。

ホテル泊まれっ。




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