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そのじゅうさん
そのじゅうさん-2
しおりを挟む「…痛い」
ぼそっと言ったら。
「「「なにっ!?」」」
「みのりさんっ!?」
「みのりちゃん!?」
「天海先生っ!?」
だから、なんで三人おるんじゃ。
生理痛のもの凄くひどい時より更にひどい人生初体験の痛み。
これが世に聞く陣痛と言うものかっ!
たまらずナースコール。
やってきたナースさんが足元から布団ひっぺがして。
「おっ!お前ら見るんじゃないっ!!」
尊の声。
「うん、まだ三センチくらいですね」
布団戻して去るナースさん。
いや、この痛いのどうにかしてくれよっ!!
て思ったらおさまった。
「痛い?みのりさん?大丈夫?二宮のお母さんと家の母さん連絡したからもうすぐ来るよ」
腰さする尊。
「ねえ、陣痛ってどんな風に痛いの?部位で言うとどこら辺が痛くなるの?」
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「天海先生がこれから出産なさるんで…ええ…編集長の方で…」
病室で編集部に報告するほど焦ってるらしい松本氏。なんでやっ!
「痛い!」
「お前ら見るなっ」
「んー、五センチいったかな」
ナースさん去る。
そのやりとり何度繰り返したのか。何時間経ってるのか。
いつの間にかおかんと瞳子さんもいる。
「新しい命が誕生して家族が増えるなんて感動ですね。僕も笑顔が溢れる家庭を築きたいなあ」
口説くんじゃないっ、各務っ!
とかツッコミ入れてる場合じゃないぞ。
ガンガン痛くなってくる。いや、痛みの間隔が短くなってくる。
「みのりさん、痛いの?頑張って?」
腰さすってくれるアンタには申し訳ないんだがね。
痛いんだよおおおおおおっ!なんとかしてくれえっ!!
「よし!行きましょう!」
ナースさんに言われ分娩室に。
ちくしょうっ!痛ええええっ!!
「お前らっ!入ってくんなあっ!!」
尊がなんか叫んでるけどどうでもいい。
この痛みをなんとかしてくれっ!
「みのりさんっ!頑張って!ほら、呼吸法してっ」
あたしの手握る尊。
それ助産師さんがさっきからしてくれてるがなっ。
ぐあああああっ!!もう殺してくれええええっ!
「はい、いきんでえ」
むがあああああっ!!
休む。
「いきんでっ」
ぐがああああああっ!!
休む。
「頭でますよー」
は?なに?もうなんでもいいからどうにかしてくれっ!
「みのりさんっ!もう少しだよっ、頑張ろうねっ!」
煩いっ!オマエはいるだけだろうがっ!!
あまりの痛みに人格崩壊するあたし。
「はい、もう一回頑張っていきんで」
ぐおおおおおおおおおっ!!!
「うっっっっ!!」
尊が唸る。
あたしが握ってた尊の指が変な音出した。
そして。
「はあい、頑張ったねえ!はっ、はっ、て短く息して」
「……んにゃあ」
猫でもいるのかと思った。
「んっぎゃあっ」
「おめでとうございます!とっても元気な」
泣き声で先生の声が遮られる。
「男の子ですよ!」
それはとても厳粛で尊い。
命に満ちた泣き声。
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