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そのじゅういち
そのじゅういち-6
しおりを挟む松本氏は各務先生とどのくらいのお付き合いなんだろ。
「各務先生と僕は出身大学が同じなので懇意にして頂いてます」
なるほど。
じゃあ各務先生の生い立ちにまつわる過去とか。
「各務先生は一部でしか知られていませんが高名な政治家の血を引いてる方です」
それはあたしも聞いた。お父上に可愛がられた事がないとか。
だから愛情に飢えてるのかな。
誰かに愛されて、愛して幸せな家庭に憧れてる。
それはちょと哀しい人。
「それを良い事に我儘放題で。僕達編集には無理難題押し付けるし」
は?
「気分が乗らなければ締め切り前でも平気で遊びに行くし」
ちょっと待て。各務先生と言う人物が形成された話では無いのかな。
「とにかく女性関係が一番酷いですね。付き合いだしてすぐ結婚って言い出すんですよ」
乱れてらっしゃる様ですね。
「それは別に良いんですが、すぐに別れてまた別の女性に結婚とか言い出す。芸能人相手は止めて欲しいとは言ってるんですけど」
ははは。芸能人相手に変態行為するのかな。
それ、バレたら怖いな。
「ただ見境無く結婚と言う割りに続かないのは、寄って来る女性が自分の名声と財産にしか興味が無い人ばかりだと…」
「お顔も良くてらっしゃいますしね」
「そうですね。それでも好きになれるかもしれないから交際してみて、結局相手が本当に自分を好きにはなってくれないと嘆いて…その度に死ぬと喚いてます。何回それで呼び出された事か」
一体、松本氏は何が言いたいんだ。それはいわゆる愚痴と言うものですよ。
各務先生を許すとかなんだとかの要素がまったく無いんだがっ。
「各務先生は女性が好きなんですが…本当は自分が父親になりたいんですよ」
お。やっと本題に。
「優しくて家族を愛して暖かい家庭の父親、それが各務先生の理想なんですよ」
でも各務先生にはそれが出来ないんだね。
「父親になりたい願望が僕と天海先生を見て刺激受けたんでしょうね」
それで拉致られたあたし。
「一度だけ…各務先生の望みが叶えられそうな機会があって…」
「え?でも各務先生は子供が…」
「民間の団体ですが、精子提供を受けて体外受精する事は出来ます。遺伝学的には自分の子でなくとも愛する女性が身ごもってくれるならそれで良いと…」
愛する女性?
「あははははっ!ダンナ、マジ面白ーっ」
するりとドアの隙間から各務先生が現れる。
「待ちやがれえっ!」
その後から尊。どうやら屋敷内一周して来たらしいな。
「ひらひら逃げやがってえ!待てよっ」
尊の手すり抜けて松本氏の背中に逃げる各務先生。
「くぉんのおっ」
松本氏盾にされたら尊も手が出せん。拳握り締めて歯ぎしりする。
「絵里さんと仰いましたね。あの方がいなくなってから各務先生の我儘ぶりは酷くなりました」
「ん?なに?俺の悲しい過去解き明かしてんの?」
無邪気に笑う各務先生を松本氏が尊の前に突き出す。
「え?なに?」
笑う各務先生。
「貴方は甘やかされ過ぎですからね。たまには我儘の度が過ぎるとどうなるのか体験してご覧なさい。どうぞ、水原さん」
尊は松本氏の言葉に不思議そうな顔した後。
「覚悟しやがれ!各務いっ!」
思いっきり右ストレート放った。
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