上 下
79 / 239
そのきゅう

そのきゅう-6

しおりを挟む



「あらまあ、可愛い名前やね」

おかんの言葉に得意げににっこりする尊。

「ちょっと、なんて読むん?あれ」

あたしに小声で聞くくらいならお愛想言うなっ。

なんとも言えない顔するおとん。

「もう、嫌だわ!」

おっとお!?さすが実の母、ずばり言う瞳子さん。

「なんだよ、母さん。文句あるの?」

「あるわよ。ただの当て字じゃない」

「俺はちゃんと考えて」

「嘘おっしゃい。どうせ珍しい漢字使いたいだけでしょ。名前って一生もんなんだから、ちゃんと考えなさい」

「じゃあ、母さんならどんな名前つけるんだよ?」

瞳子さんなら頭脳明晰やしセンスもいいし。

瞳子さんが首捻りながら。

「そうねえ…セーラとか可愛いかしら」

は?日本人ですよっ!?

「聖夜て書いてのえる。あら良いわね、男のこでも女のこでもどっちでもいけるわね」

と、と、瞳子さんっ!?

「母さんはフランス語が好きなだけだろ。クリスマスに産まれるワケじゃないんだよ」

「なによ、悪かったわね」

あわわわ。

思わぬところで親子ゲンカ勃発。

「まあまあ、二人とも」

お。義父が口挟む。

「名前は人となりを現す大事なもんやから、尊くんも一生懸命考えてるのはわかるから落ち着きなさい」

「あ…すみません」

おとんの言葉に親子ゲンカ未遂に終わる。

「お義父さん、なにか考えてる名前あります?」

一応は義理の父尊重する尊。

「いやあ、考えてると言うか」

ん?やっぱ初孫やし思うとこはあるよな。

「まあ若い人の考えもあるから、二人でよく考えて。ただ、男の子やったら漢字一文字で女の子やったら平仮名とかな、そんなんも参考なるかな」

「あ」

尊がぱっちり眼開いた。

さすがおとん。

それなら漢字センスの不安も払拭。

「そっか…平仮名の名前可愛いし」

「あら、尊だって父親が漢字一文字よ」

「そうだっけ?」

瞳子さんの言葉に不思議そうな顔の尊。

そうか、もうずっと会ってないから忘れてたんだろうな。

とりあえず会議は解散。

名前は再考となった。

帰り際瞳子さんが。

「尊、ここにみのりちゃんと一緒に行ってくれないかしら」

そう言ってプリントアウトされた紙を尊に渡した。

ホスピスの案内。

「なにこれ」

「あなたのお父さんが入院してるから」

「知らねえし。だいたい離婚してから一回も会った事ねえし、病気だろうと俺に関係ねえだろ」

なるべく早く行ってあげて。

瞳子さんがそう言って紙置いて帰った。




しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

さくら🌸咲く

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:1

いや、あんたらアホでしょ

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,448pt お気に入り:688

【完結】今更魅了と言われても

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,450pt お気に入り:623

【完結】獅子は甘く初花を愛でる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:30

 だから奥方様は巣から出ない 〜出なくて良い〜

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:61,416pt お気に入り:2,558

潔癖の公爵と政略結婚したけど、なんだか私に触ってほしそうです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:738pt お気に入り:871

痴漢の犯人、元彼だった件。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:248pt お気に入り:387

2人でいつまでも

BL / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:14

処理中です...