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そのきゅう
そのきゅう-6
しおりを挟む「あらまあ、可愛い名前やね」
おかんの言葉に得意げににっこりする尊。
「ちょっと、なんて読むん?あれ」
あたしに小声で聞くくらいならお愛想言うなっ。
なんとも言えない顔するおとん。
「もう、嫌だわ!」
おっとお!?さすが実の母、ずばり言う瞳子さん。
「なんだよ、母さん。文句あるの?」
「あるわよ。ただの当て字じゃない」
「俺はちゃんと考えて」
「嘘おっしゃい。どうせ珍しい漢字使いたいだけでしょ。名前って一生もんなんだから、ちゃんと考えなさい」
「じゃあ、母さんならどんな名前つけるんだよ?」
瞳子さんなら頭脳明晰やしセンスもいいし。
瞳子さんが首捻りながら。
「そうねえ…セーラとか可愛いかしら」
は?日本人ですよっ!?
「聖夜て書いてのえる。あら良いわね、男のこでも女のこでもどっちでもいけるわね」
と、と、瞳子さんっ!?
「母さんはフランス語が好きなだけだろ。クリスマスに産まれるワケじゃないんだよ」
「なによ、悪かったわね」
あわわわ。
思わぬところで親子ゲンカ勃発。
「まあまあ、二人とも」
お。義父が口挟む。
「名前は人となりを現す大事なもんやから、尊くんも一生懸命考えてるのはわかるから落ち着きなさい」
「あ…すみません」
おとんの言葉に親子ゲンカ未遂に終わる。
「お義父さん、なにか考えてる名前あります?」
一応は義理の父尊重する尊。
「いやあ、考えてると言うか」
ん?やっぱ初孫やし思うとこはあるよな。
「まあ若い人の考えもあるから、二人でよく考えて。ただ、男の子やったら漢字一文字で女の子やったら平仮名とかな、そんなんも参考なるかな」
「あ」
尊がぱっちり眼開いた。
さすがおとん。
それなら漢字センスの不安も払拭。
「そっか…平仮名の名前可愛いし」
「あら、尊だって父親が漢字一文字よ」
「そうだっけ?」
瞳子さんの言葉に不思議そうな顔の尊。
そうか、もうずっと会ってないから忘れてたんだろうな。
とりあえず会議は解散。
名前は再考となった。
帰り際瞳子さんが。
「尊、ここにみのりちゃんと一緒に行ってくれないかしら」
そう言ってプリントアウトされた紙を尊に渡した。
ホスピスの案内。
「なにこれ」
「あなたのお父さんが入院してるから」
「知らねえし。だいたい離婚してから一回も会った事ねえし、病気だろうと俺に関係ねえだろ」
なるべく早く行ってあげて。
瞳子さんがそう言って紙置いて帰った。
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