You Could Be Mine ぱーとに【改訂版】

そのきゅう

そのきゅう-4

「うーん…」

「はっほっはっ」

「ううーん」

「はっはっほっ」

リビングに設置されたランニングマシーン。

なんか某フィットネスクラブとおんなじヤツをメーカーから直接買ったらしい。

テレビついてるし。

風景の設定しとくと景色が流れる。

適度な運動しないとな。

散歩すりゃいいやん。

思ったけどな。また自転車やらと衝突したら、とか。

歩いてて車が突っ込んできたらどうする、だとか。

散歩どころかあらゆる危険を予測されて。

一人で外出してもらえんくなった、化粧箱入り妊婦なあたし。

まあ、あたし自身あれ以来一人で出歩くのちょっと怖くなってるし。

しかし運動は必要、なワケで。

お部屋でランニングマシーン。

ランニングても、速度は早歩きくらいやけど。

うむ。ノってきたぞ。

なんかフルマラソンいけそうな気がする。

よし、みのり！

己との闘いじゃっ。

苦しみの先に見えるものがなにか確かめるんだ。

ランニングの設定に変更したら。

「なにやってるのっ！みのりさんっ！」

尊に怒られた。

 「これは歩く為に買ったの！みのりさんは走っちゃダメでしょっ！」

ち。

自分は毎日10キロランとかしてるくせに。

「妊婦さんがランニングなんかしていいワケないでしょ！？だいたい、みのりさん五分も走ったら息切れするくせに」

五分くらい走れるわ！…多分。

「もう二十分経ったからマシンから降りて」

一日二十分の運動。

後週一回のマタニティヨガ。当然、尊の送迎付き。

おやつ控え目にして体重のコントロール。

今日のおやつは焼きドーナツか。

おからドーナツやな。

最近尊の作るものは低カロリー自然派志向。

ホントに料理本出してみりゃいいのに。

「うーん…」

ところでダンナさまはなにを悩んでオラレル？

本とにらめっこ。珍しいな。

「なに読んでるん」

尊が見せた表紙は。

赤ちゃんの名前辞典。

ほほお。父親っぽいな。

「ねえ、みのりさん。どっちが可愛いと思う？」

開いた本に乗せてたメモ用紙を突き付ける。

む？

稀李唯。蕾美偉。

「…なんて読むん」

「こっちがまりいでこっちがるびい」

なんと。

「英語読みしやすいのがいいよね」

あなどってた、ヤンキーのネーミングセンス。

「宝石の名前も可愛いよね」

と、漢字センス。

どうなるんだ、この子の。

名前。