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そのきゅう
そのきゅう-3
しおりを挟む尊はさ。
あたしべったりで。
あたしから離れてるのは会社行ってる時くらいで。
結婚する前もそうやし、結婚してからなんかべったり度更に上がったし。
ホストの仕事してる時でも。
仕事以外の時はあたしにくっついてた。
だからあたし以外の、とかあり得ん。
だいたいこんだけあたしにくっついてて他の女のとこ行く時間なんて無いやろ。
もしあったら逆に感心するわ。
そんな事絶対無い。
そう思うけど。
あたし達には離れてた時間がある。
その間尊がなにしてたのか、尊から聞いてる。
尊が一人でいたのも知ってる。
「みのりさん。どうしたの?」
うむむむ。
一人の時、えっちどうしてたんだ。
それはちょっと聞きにくいな。
「退院、お昼ご飯食べてからにする?」
ご飯美味しいからな。て、そうやなくて。
もしかして尊の子かも知れんのやから。
妻としてはっきりしとかんとな。
「尊、ちょっとそこに座りなさい」
「ん?なに?」
尊がベッドの側の椅子に座る。
「正直に言いなさい」
「うん?」
「あたしと別れてる間、えっちどうしてましたか?」
「はっ!?」
みるみる赤くなっていく尊のほっぺた。
な、なんでそんな赤くなるんや。
「い、いきなりなんなの、みのりさん」
「いや、ちょっと…」
「そんな事どうでもいいでしょ」
どうでもよくないから聞いておる。
「あのね、尊。別れてた間は誰としてても仕方無いけど、ちゃんと避妊してないとあちこち種撒き散らす様な事してたら」
「そんな事してないよっ。俺みのりさん以外ナマでした事無いもん。病気なると嫌だし」
なに?
「第一、俺みのりさん以外は勃たないもん」
改めて言われるとこっ恥ずかしい。
「じゃあ一人でいた時どうしてたのさ」
「え、いや…それはその…」
増々赤くなる尊。
「んっ」
いきなりキス。ごまかす気か?
「俺はみのりさんに会ってからはみのりさんじゃないとダメなの!変な事言わせないでよ」
変な事って、なんですか。
唐突に思い当たって。赤くなるあたし。
「俺はみのりさんしかダメなんだよ。それくらい愛してるから」
尊の言う事にウソは無い。
ならばここははっきりと。
尊が退院手続き行ってる間に。例の美人の部屋に。
「あら、どうぞ」
笑顔で赤ちゃんにおっぱいあげながら。
側にダンナさんらしき人。
その子は尊の子じゃ無いよ。
ダンナの前じゃ言えんな。どうするかな。
「夕べはごめんねえ、変な事言って」
笑顔の美人。良いのか、ダンナの前で。
「あたし昔尊にフラれちゃってさ。なんか尊が幸せそうなのイラっときたから意地悪しちゃった」
は?なんですと?
「尊とは昨日卒業以来久しぶりに会ったのよ」
んじゃ全部ウソかいっ!
「ね?ダンナに似たらちょっとかわいそうでしょ?」
そう言って美人が笑った。
そしてあたしは。
尊の乱れた過去のしわ寄せがこう言う形できた事に。
諦めとも安堵ともつかないため息を漏らしたのだった。
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