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そのきゅう
そのきゅう
しおりを挟む産婦人科のご飯は。
美味しい。
ま、普通の病院と違うしな。
栄養取らにゃいかんしな。
はっきり言って、この病院選んだのはご飯の評判が良いからだ。
いや、もちろん先生の評判も良いんだけど。
決してあたしの食い意地が張ってるワケじゃございませんよ。
切迫流産しかかったあたし。
もう少し出血してたら危なかったらしい。
尊があたしにぶつかった自転車を探してる。
見つからんやろ。
相手見つけて殺す!
とか言ってるけど、もし赤ちゃんになんかあってたら尊の事やからなにがなんでも見つけ出して本気で殺りかねん。
「みのりさん。これも食べて」
「さっきご飯食べたばっかやし、おやつも来るから食べれんよ」
尊が毎日お菓子作って来る。
あたし太らす気かっ。
て、言うか会社はどうしたんだアンタ。
「みのりさんの側にいろって母さんも言ってるから」
瞳子さん、甘過ぎ。
面会時間いっぱいいる尊。
あたしの晩ご飯食べるの見届けて帰る。
「みのりさん。抱っこさせて」
帰る前は必ずベッド座って抱っこ。
「…ホントの事言っていい?」
どうしたのか、暗い声。
「どしたの」
「うん…」
あたしの肩におでこ乗せて。
「俺ね…」
ぼそぼそ言い出す。
「赤ちゃんが無事でホントに良かったと思ってる。でもね」
「うん」
「みのりさんが危ないかもって思ったら、俺からみのりさんを取り上げないで、って思った。赤ちゃんも危なかったのに…」
泣きそうな声。
「俺、父親失格かなあ…」
あたしを抱き締める。
なんて言っていいのかわかんない。
あたしの不注意でもあるし。
あたしだって、目が覚めた時の恐怖はいまだフラッシュバックする。
でもさ。
「大丈夫だよ。あたしも赤ちゃんも無事だったんだし、あんま考えてたらハゲるよ」
「みのりさん…」
うん?軽く言い過ぎかな?だって無事だったから良かったやん。
尊がほっぺたにキスして。
「みのりさんはわからないかも知れないけど」
あれ?やっぱ変な事言ったかな。
「みのりさんのそう言うとこに俺は救われるんだよ」
そう言ってキスした。
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