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そのなな
そのなな-7
しおりを挟むさて。シチューを作らねば。
冷蔵庫見ても材料がない。
これは買い物行かんとな。
「ママあ!どこいくの?」
む。
「たっくんもいくう!」
あたしの手握って離さない。仕方無い。
連れてくか。
手繋いでお買い物。たっくんは子供なのに。
車道側歩く。
なんだろね。
そう言えば尊とスーパーとかあんま行った事ないな。
尊がいつも仕事帰りに買い物してくれるし。
「ママ、きょうのごはんなあに?」
「き、今日はシチューだよ」
「たっくん、かれーもすきだけどしちゅーもすきだよ」
そうか。けどそのローテーションでいつまでそう言ってられるかな。
じゃがいもやらなんやらカゴに放り込んで。
肉いるな。
適当に取ろうとしたら。
隣で肉のパック手にするたっくん。
真面目な顔で肉見比べて。
「たっくん、こっちがいい」
パックあたしに突き出す。
よくわからんけど。こんなとこで尊が発揮されてんのかね。
「ママあ、たっくんぶらんこのりたい」
手繋いだ帰り道。公園の前で言う。
しょうがないから公園入って。
「たっくんいっぱいこげるよ!」
高身長の大人が子供用ブランコ。
「あっちであそんでいい?」
今度は砂場で遊び出す。
ベンチで眺めながら。
ホントに子供みたいな顔で遊んでるよ。
5、6歳って言えば。
尊のご両親が離婚した頃で。
瞳子さんは忙しくて。
多分、誰も甘える相手いなくて。
子供の尊は。
こんな風にお母さんと公園で遊びたかったやろうな。
「たっくん、もう帰るよ」
「はあい」
服、砂だらけやし。帰ったら手洗わせんと。
たっくんは子供やから。
甘えんぼのたっくんやから。
一番甘えたい盛りに誰にも甘えられんで。
子供の頃の尊は。
寂しかったんだろな。
「ママごはんー」
「もうすぐ出来るから」
尊が甘える相手はあたしで。
だからあたしがママに刷り変わってんのかな。
「たっくん、ママのごはんだいすき!」
野菜煮込んでルー入れただけやけどな。
お風呂入って。
「たっくん、ちゃんとパジャマ着て!」
「きゃあっ」
なぜか追いかけっこ。
裸の成人男性追いかけてパジャマ着せる、異様な光景。
うむ。洗濯物がたまっとる。
どうすりゃいいんだ。
あれこれボタン触ったら。おお。なんとか予約設定出来た。
みのりの家事レベルが上がったぞ。
「ママあ、ねむいー」
はいはい。
ベッド連れてって。手繋いで。
「ママ…たっくん、すき?」
人差し指くわえて言うなっ!
「す、好きだよ」
「じゃあママ、たっくんにちゅーして?」
なんだと。ちゅーだと!?
いや、今たっくんなんやから。変な意味やないよな。
恐る恐るおでこにしてやったら。
「ママ、だいすき」
にっこり。
そのままホントに子供みたいな寝顔見ながら。
尊がもし。
寂しかった記憶の埋め合わせしたくてたっくんになってんのなら。
あたしは。
そんなら、とことん付き合ってやるか。
しょうがない。大事なダンナやからな。
カレーとシチューのローテーションも続けるワケにもいかんし。
第一、赤ちゃんの為に栄養考えんといかんし。
尊のいない間、なんとか頑張ってみるしかない。
とりあえず朝ご飯は。
目玉焼きくらいなら。
作ってみよかな。
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