You Could Be Mine ぱーとに【改訂版】

てらだりょう

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そのに

そのに-8

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「みのりさん、疲れたらちゃんと言うんだよ?無理しちゃダメだよ?」

はいはい。

「盛況ですねえ!ファンは大事にしなきゃ。にこやかにお願いしますよ、先生!」

はいはい。

「…予定時間で終われる様に。テキパキ進めて下さいね」

はいはい。

和やかに始まるサイン会。

「先生の本全部読んでます!」

「ありがとうございます」

サインして握手。

割合としては女性ファンが多いな。

「大ファンです!先生に会えるなんて感激です!」

「ありがとうございます」

サインして握手。

男の人と握手する時、尊の不機嫌オーラが漂う。

これも大事な仕事なんやから。

ふと。

列の後方に異物発見。

赤いバンダナ頭に巻いて。チェックのシャツにリュック。

オタクだ。

しかも超レトロなオタクだ。いつの時代のオタクやっ!

ふ、ファンの皆さまに格差持たせるワケやないけど。

そんなつもりないけど。

あれと握手しないといけないんか。

いや、そんな事考えたらいかん。

大事なファンに対して失礼。

しかし。

近づいてくる度に。

うわ、バンダナ、ペイズリー柄やし。

髪ボッサボサやし。

今時チェックのネルシャツて。

しかもシャツ、ボトムインやし。

「ありがとうございます」

サインして握手。

刻々と近づくレトロオタク。

サインして握手。

アキバでも見らんぞ、こんなオタク。

美少女フィギュア集めてそうやな。

うっ!来た。

いかん、外見で判断するな、あたし!こう見えて純粋に文学青年かも知れんしっ。

「あっ、天海先生っ」

はあはあ。

息づかいが怖っ。

サインしてあ、あく。

「き、記者会見見た時からあまりにも可愛くてっ、すっ」

はあはあ。

あ、あくしゅ。

「好きですっ!」

はあはあ。

「せんせえっ!!」

「みのりさんっ!!」

「先生っ!!」

机乗り越え抱き着こうとしたレトロオタク。

まるでSPさながらにあたしをガードする尊。

飛びかかって重なる編集者と営業マン。

騒然とする場内。

数分後、警備員に連行されるレトロオタク。

サイン会終了後。

「今後妻を人前に出すようなお仕事はお断りします!」

尊があたしを抱き締めながら。

言った。


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