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そのに

そのに-6

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「なんでてめえがいんだよ」

「てめえこそなんでいんだよ」

居酒屋の個室。

「今日撮影が早く上がって暇になったっつうから、呼んだ」

と、加州木くん。

「相変わらずべったりくっついてきやがって。これじゃあ、息抜きも出来ねえだろ?二宮あ?」

「みのりさんはもう二宮じゃねえしっ」

「あ、そっかあ。じゃあ、みのりでいいか。なあ、みのりい?」

「てめっ!桂木っ!俺のみのりさんを呼び捨てすんじゃねえっ!」

「別にトモダチだしい?名前呼ぶくれえいいだろ」

「ざけんなっ、俺のみのりさんを気安く呼ぶんじゃねえよっ!」

「俺の俺のって煩せえな。こんなんと四六時中一緒だと疲れんだろ、今からでも俺んとこ来てもいいんだぞ、みのり?」

「なに言ってやがる!みのりさんは俺んだっ!結婚してんだぞっ!」

「そんなん、紙切れ一枚の話だろ。離婚届けも紙切れ出すだけだぞ」

「てめっ!俺とみのりさんは一生離婚なんかしねえっ!!」

冬馬くんにからかわれてるのわかってない尊。

とりあえずこの二人はほっていて。

「装丁誰がやるんだ?」

「ああ、いつもやってくれてる人なんだけとさ…」

加州木くんと打合せ。

「それなら俺、ちょっとやってみたい事あるんだけどさあ、細い筆で日本画みたいな感じで」

「へえ、なんかいんじゃない?ラフ描いてみてよ」

打合せする隣でまだ言い合いしとる。

「ざけんなっ」

「てめえこそっ」

トイレ行って。

「おう。身体大丈夫か?」

出たらトイレ待ちの冬馬くんに遭遇。

「うん。大丈夫」

「そっか」

ニコニコしながらあたしの頭撫でて。

「ちゃんと幸せか?」

言った。

「うん」

「なら、良い。俺、しばらくいなくなるけど、なんかあったらメールしろよ」

冬馬くんは。

今の映画が終わったらアメリカ行く。

ニューヨークのアクターズアカデミーに勉強しに。

若手俳優として評価されてるのに、更に上目指すらしい。

自分の仕事に真摯に向き合うとこと向上心は尊敬する。

あたしも仕事頑張ろう。

そう思わせてくれる。

「子供産まれたら向こうからなんか贈るわ」

「ありがと」

嬉しいけど、でも。

フィギュアはいらんからね。

冬馬くん。



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