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そのいち
そのいち-9
しおりを挟むお昼過ぎた頃。
「土産無いよ。どうせ尊クンが用意してるんでしょ」
涼香が来た。
鋭い事で。
お湯沸かしてティーポットに入れて。
こんくらい出来るっちゅうねん。
冷蔵庫のケーキと生クリーム出す。
「またあんたの写真増えたね。どんだけみのり好きなんよ、尊クン」
リビングの写真見て涼香が笑う。
やっぱさあ。
他人が見たらおかしいよな。
恥ずかしいわ。
とりあえず。天気もよいので。
「テラスでお茶する?」
「オシャレな事する様になったねえ、みのりも」
テラスには白いテーブル。
若奥様の優雅なティータイム。バナナのシフォンも美味しゅうございます。
「あんまお腹目立たないね」
「チュニック着てるからだよ。触るとぽっこりしてるよ」
「へー、どれどれ。ホントだ」
触りながら。涼香の笑顔は寂しそう。
あたしよりも先に結婚した。
「病院どうなん?」
「まあ、色々やってるよ。お金ばっかかかっちゃってさあ」
涼香は。
不妊治療受けてる。
恭平は。
お前が負担に思う事は無い。
言いながら、一緒に病院行ったり協力してるらしい。
「けど良かったね、みのり」
「なにがあ?」
「色々あったけど尊クンと結婚して。家まで建てちゃってさあ。顔だけの男やなくて実はお坊っちゃまって、みのり玉の輿やん。ウチなんか賃貸のマンションやし」
「あはは…」
「尊クン、みのりにベタ惚れやし。文句つけるとこないわ」
結婚して赤ちゃん授かって。
こんなお家建ててくれて。
なんでもしてくれて。優しくて。
文句なんか。
言えるワケない。
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