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そのじゅうよん

そのじゅうよん15

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意識がとんでたのか。

眠ってたのか。

気がつくと。

ベッドにはあたし一人で。

慌てて身体起こす。

また。

あの時みたいになるんじゃないかと。

ちょっと怖くなる。

泣きそうなって手で顔こすった。

大丈夫だよね。

もうあんな事ないよね。

もう、離れないって言ったよね。

あたしは信じていいんだよね。

息を吐いてふと。

光る。

左手の薬指。

「…え?」

立爪の、ブリリアントカット。

「ええ!?」

散らばった服探すのも面倒。

毛布引っ被ってリビングに出る。

「起きた?」

ソファーの背中越しに振り返って。

灰皿にタバコ揉み消して。

あたしを見てにっこりした。

ちょっと、安心した。

「…尊」
ひっかぶった毛布の隙間からから左手出す。

それを見て尊が微笑んで。

「おいで、みのりさん」

あたしを呼んだ。

ソファーで毛布の上からあたしを抱っこする。

あたしの左手をとってキスした。

「…これ」

どうしたん?

いつの間にこんなもの。

くすっ、と尊が笑った。

「いつかみのりさんにあげたくて。ずっと前に買った」

「ずっと前…?」

「初めて一緒に買い物行った時」

瞳子さんのお店行った時?

「みのりさんのネックレス買ったとこで」

「うん」

「みのりさんがケーキ食べてる間に注文しに行った」

もう凄く前。

そんな前から?

「いつか渡したくて」

「うん…」

「もう渡せないかと思ってたけど…」

あたしのほっぺたにキスした。

一回あたしを抱き締めて。

ソファーから降りた。

あたしの真ん前に座りなおす。

「みのりさん」

手を握って。

「俺のお願い…聞いて?」

微笑んだ。

お願い。

って。

なに?

なんだか泣きそうなってきたよ。

涙たまってきたよ。

尊が両手であたしのほっぺた包んで唇にそっとキスした。

「あのね。みのりさん」

抱き締めながら。

「うん」

ちょっと震えた声で。

「みのりさん。俺の最後の女になって?」

たまってた涙が零れる。

「う…ん」

なんか喉が苦しくてうまく声でないよ。

尊はもっかいあたしをぎゅう、っと抱き締めて。

「それからね?」

あたしを離して。

ほっ、と息吐く。

両手でまたあたしのほっぺた包んで。

あたしを見つめて。

「俺を」

尊の顔。涙でにじんでしまう。

「みのりさんの最後の男にして下さい」

少し低くて柔らかい声で。

言った。
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