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そのじゅうよん
そのじゅうよん-2
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冬馬くんは車道側を歩く。
人混みの中で。
足長い冬馬くんの歩幅はデカい。
並んで歩いてても、ちびのあたしは小走りみたいになってしまう。
そんでいつの間にか遅れてしまう。
人の流れが通る。
二人の距離が開く。
冬馬くんが立ち止まって振り向く。
ちょっとキョロキョロして。
あたしを見つけるとほっとした顔する。
あたしが追いつくのを待って。
今度はゆっくり。
あたしに合わせて歩く。
不器用な人。
冬馬くんは不器用で。
優しい。
冬馬くんのスケジュールに余裕がないから、と。
テレビ局に来てくれ。
言われて、空港行く前に寄った。
やっぱ、俺様だよなあ。
多分収録の合間なんやろうけど。
「二宮あっ!」
ロビーを慌てて走って来る。
「やる!」
小さな紙袋を突き出した。
「なに?」
「だいぶ遅くなったけどクリスマスプレゼント」
二人とも年末年始忙しかったからな。
「あ。ごめん。あたしなんも用意してない」
自分だけもらうの悪いな。
「そんなん、別にいい」
「ありがとう…ございますです」
仁王立ちする冬馬くんに思わず頭下げた。
「なんだろ。開けていい?」
「おう」
紙袋に手突っ込んだら。
「いや、やっぱ後で開けろ」
なんでや。
マネージャーさんが呼びに来て。
「俺もう行くからな、じゃあまたなっ!」
走り去って行った。
ほんの五分程度の為にあたしを呼び出しやがって。
ったく。
何様じゃ。いや、俺様か。
呆れてため息出る。
でもそのあとすぐに着信したメッセージ見てほころぶ。
顔見て渡したかったから。無理言って悪かったな。
ホント。不器用だな。
冬馬くん。
テレビ局からタクシー乗って空港まで行った。
いまだに東京の電車わからん。
でもなあ。
東京住むんやったら乗れる様にならんとなあ。
おとんとおかんは。
あんまりいい顔しない。
特におかんが。
「今さら一人暮らしなんて、ご飯もまともに作れんのに!」
仕事なんてこっちおっても出来るやろ。
と。
意外と箱入り娘だったあたし。
ただ、いくら経費で落とすとは言え。
今月二回は東京出るし、交通費もホテル代も、もったいないんよねえ。
いいトシして実家に寄生し続けんのもなあ。
ああ。てっちゃんと離れるのは辛いな。
飛行機の中でぼんやり考えた。
あ、そだ。
忘れてた。冬馬くんのプレゼント。
冬馬くんって。
言っちゃ悪いけどさ。
誕生日にくれたの、仮面ライダー電王のモモタロスのフィギュアでさ。
プレゼントのセンス、ないんだよ。
自分が好きなもんはお前も好きな筈だ。って感じなんだよな。
でも今回は珍しく違う。
小さな紙袋には女の子に人気のアクセサリーのロゴ。
一体。なんだろな。
紙袋の中に小さな箱。
リボンをほどいて中のケースを開けると。
金色の細い。
リング。
ちっちゃい宝石がついてて。
あたしの誕生石。
指輪もらったの人生で二度目だ。
なんか、こそばゆいな。
冬馬くんどんな顔して買いに行ったんやろ。
あの冬馬くんが。
誰かに頼んだのかな。
いや。そんな事するヤツやないな。
多分自分で行ったんだろな。
顔見て渡したかった。
そうだったのか。
言葉として。
口にするようなひとやないけど。
演技でかっこいいセリフ言ってても、あたしにそんなこと言ったりするひとやないけど。
それでもじゅうぶん。
あたしを大事に想ってくれるの、伝わる。
左手の薬指にはめてみたら、ちょっと大きかったから右手にはめた。
いいのかな。
光るリング。
あたしは。
冬馬くんに応えても。
いいのかな。
いいんだよな。
人混みの中で。
足長い冬馬くんの歩幅はデカい。
並んで歩いてても、ちびのあたしは小走りみたいになってしまう。
そんでいつの間にか遅れてしまう。
人の流れが通る。
二人の距離が開く。
冬馬くんが立ち止まって振り向く。
ちょっとキョロキョロして。
あたしを見つけるとほっとした顔する。
あたしが追いつくのを待って。
今度はゆっくり。
あたしに合わせて歩く。
不器用な人。
冬馬くんは不器用で。
優しい。
冬馬くんのスケジュールに余裕がないから、と。
テレビ局に来てくれ。
言われて、空港行く前に寄った。
やっぱ、俺様だよなあ。
多分収録の合間なんやろうけど。
「二宮あっ!」
ロビーを慌てて走って来る。
「やる!」
小さな紙袋を突き出した。
「なに?」
「だいぶ遅くなったけどクリスマスプレゼント」
二人とも年末年始忙しかったからな。
「あ。ごめん。あたしなんも用意してない」
自分だけもらうの悪いな。
「そんなん、別にいい」
「ありがとう…ございますです」
仁王立ちする冬馬くんに思わず頭下げた。
「なんだろ。開けていい?」
「おう」
紙袋に手突っ込んだら。
「いや、やっぱ後で開けろ」
なんでや。
マネージャーさんが呼びに来て。
「俺もう行くからな、じゃあまたなっ!」
走り去って行った。
ほんの五分程度の為にあたしを呼び出しやがって。
ったく。
何様じゃ。いや、俺様か。
呆れてため息出る。
でもそのあとすぐに着信したメッセージ見てほころぶ。
顔見て渡したかったから。無理言って悪かったな。
ホント。不器用だな。
冬馬くん。
テレビ局からタクシー乗って空港まで行った。
いまだに東京の電車わからん。
でもなあ。
東京住むんやったら乗れる様にならんとなあ。
おとんとおかんは。
あんまりいい顔しない。
特におかんが。
「今さら一人暮らしなんて、ご飯もまともに作れんのに!」
仕事なんてこっちおっても出来るやろ。
と。
意外と箱入り娘だったあたし。
ただ、いくら経費で落とすとは言え。
今月二回は東京出るし、交通費もホテル代も、もったいないんよねえ。
いいトシして実家に寄生し続けんのもなあ。
ああ。てっちゃんと離れるのは辛いな。
飛行機の中でぼんやり考えた。
あ、そだ。
忘れてた。冬馬くんのプレゼント。
冬馬くんって。
言っちゃ悪いけどさ。
誕生日にくれたの、仮面ライダー電王のモモタロスのフィギュアでさ。
プレゼントのセンス、ないんだよ。
自分が好きなもんはお前も好きな筈だ。って感じなんだよな。
でも今回は珍しく違う。
小さな紙袋には女の子に人気のアクセサリーのロゴ。
一体。なんだろな。
紙袋の中に小さな箱。
リボンをほどいて中のケースを開けると。
金色の細い。
リング。
ちっちゃい宝石がついてて。
あたしの誕生石。
指輪もらったの人生で二度目だ。
なんか、こそばゆいな。
冬馬くんどんな顔して買いに行ったんやろ。
あの冬馬くんが。
誰かに頼んだのかな。
いや。そんな事するヤツやないな。
多分自分で行ったんだろな。
顔見て渡したかった。
そうだったのか。
言葉として。
口にするようなひとやないけど。
演技でかっこいいセリフ言ってても、あたしにそんなこと言ったりするひとやないけど。
それでもじゅうぶん。
あたしを大事に想ってくれるの、伝わる。
左手の薬指にはめてみたら、ちょっと大きかったから右手にはめた。
いいのかな。
光るリング。
あたしは。
冬馬くんに応えても。
いいのかな。
いいんだよな。
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