98 / 160
そのじゅうよん
そのじゅうよん-2
しおりを挟む
冬馬くんは車道側を歩く。
人混みの中で。
足長い冬馬くんの歩幅はデカい。
並んで歩いてても、ちびのあたしは小走りみたいになってしまう。
そんでいつの間にか遅れてしまう。
人の流れが通る。
二人の距離が開く。
冬馬くんが立ち止まって振り向く。
ちょっとキョロキョロして。
あたしを見つけるとほっとした顔する。
あたしが追いつくのを待って。
今度はゆっくり。
あたしに合わせて歩く。
不器用な人。
冬馬くんは不器用で。
優しい。
冬馬くんのスケジュールに余裕がないから、と。
テレビ局に来てくれ。
言われて、空港行く前に寄った。
やっぱ、俺様だよなあ。
多分収録の合間なんやろうけど。
「二宮あっ!」
ロビーを慌てて走って来る。
「やる!」
小さな紙袋を突き出した。
「なに?」
「だいぶ遅くなったけどクリスマスプレゼント」
二人とも年末年始忙しかったからな。
「あ。ごめん。あたしなんも用意してない」
自分だけもらうの悪いな。
「そんなん、別にいい」
「ありがとう…ございますです」
仁王立ちする冬馬くんに思わず頭下げた。
「なんだろ。開けていい?」
「おう」
紙袋に手突っ込んだら。
「いや、やっぱ後で開けろ」
なんでや。
マネージャーさんが呼びに来て。
「俺もう行くからな、じゃあまたなっ!」
走り去って行った。
ほんの五分程度の為にあたしを呼び出しやがって。
ったく。
何様じゃ。いや、俺様か。
呆れてため息出る。
でもそのあとすぐに着信したメッセージ見てほころぶ。
顔見て渡したかったから。無理言って悪かったな。
ホント。不器用だな。
冬馬くん。
テレビ局からタクシー乗って空港まで行った。
いまだに東京の電車わからん。
でもなあ。
東京住むんやったら乗れる様にならんとなあ。
おとんとおかんは。
あんまりいい顔しない。
特におかんが。
「今さら一人暮らしなんて、ご飯もまともに作れんのに!」
仕事なんてこっちおっても出来るやろ。
と。
意外と箱入り娘だったあたし。
ただ、いくら経費で落とすとは言え。
今月二回は東京出るし、交通費もホテル代も、もったいないんよねえ。
いいトシして実家に寄生し続けんのもなあ。
ああ。てっちゃんと離れるのは辛いな。
飛行機の中でぼんやり考えた。
あ、そだ。
忘れてた。冬馬くんのプレゼント。
冬馬くんって。
言っちゃ悪いけどさ。
誕生日にくれたの、仮面ライダー電王のモモタロスのフィギュアでさ。
プレゼントのセンス、ないんだよ。
自分が好きなもんはお前も好きな筈だ。って感じなんだよな。
でも今回は珍しく違う。
小さな紙袋には女の子に人気のアクセサリーのロゴ。
一体。なんだろな。
紙袋の中に小さな箱。
リボンをほどいて中のケースを開けると。
金色の細い。
リング。
ちっちゃい宝石がついてて。
あたしの誕生石。
指輪もらったの人生で二度目だ。
なんか、こそばゆいな。
冬馬くんどんな顔して買いに行ったんやろ。
あの冬馬くんが。
誰かに頼んだのかな。
いや。そんな事するヤツやないな。
多分自分で行ったんだろな。
顔見て渡したかった。
そうだったのか。
言葉として。
口にするようなひとやないけど。
演技でかっこいいセリフ言ってても、あたしにそんなこと言ったりするひとやないけど。
それでもじゅうぶん。
あたしを大事に想ってくれるの、伝わる。
左手の薬指にはめてみたら、ちょっと大きかったから右手にはめた。
いいのかな。
光るリング。
あたしは。
冬馬くんに応えても。
いいのかな。
いいんだよな。
人混みの中で。
足長い冬馬くんの歩幅はデカい。
並んで歩いてても、ちびのあたしは小走りみたいになってしまう。
そんでいつの間にか遅れてしまう。
人の流れが通る。
二人の距離が開く。
冬馬くんが立ち止まって振り向く。
ちょっとキョロキョロして。
あたしを見つけるとほっとした顔する。
あたしが追いつくのを待って。
今度はゆっくり。
あたしに合わせて歩く。
不器用な人。
冬馬くんは不器用で。
優しい。
冬馬くんのスケジュールに余裕がないから、と。
テレビ局に来てくれ。
言われて、空港行く前に寄った。
やっぱ、俺様だよなあ。
多分収録の合間なんやろうけど。
「二宮あっ!」
ロビーを慌てて走って来る。
「やる!」
小さな紙袋を突き出した。
「なに?」
「だいぶ遅くなったけどクリスマスプレゼント」
二人とも年末年始忙しかったからな。
「あ。ごめん。あたしなんも用意してない」
自分だけもらうの悪いな。
「そんなん、別にいい」
「ありがとう…ございますです」
仁王立ちする冬馬くんに思わず頭下げた。
「なんだろ。開けていい?」
「おう」
紙袋に手突っ込んだら。
「いや、やっぱ後で開けろ」
なんでや。
マネージャーさんが呼びに来て。
「俺もう行くからな、じゃあまたなっ!」
走り去って行った。
ほんの五分程度の為にあたしを呼び出しやがって。
ったく。
何様じゃ。いや、俺様か。
呆れてため息出る。
でもそのあとすぐに着信したメッセージ見てほころぶ。
顔見て渡したかったから。無理言って悪かったな。
ホント。不器用だな。
冬馬くん。
テレビ局からタクシー乗って空港まで行った。
いまだに東京の電車わからん。
でもなあ。
東京住むんやったら乗れる様にならんとなあ。
おとんとおかんは。
あんまりいい顔しない。
特におかんが。
「今さら一人暮らしなんて、ご飯もまともに作れんのに!」
仕事なんてこっちおっても出来るやろ。
と。
意外と箱入り娘だったあたし。
ただ、いくら経費で落とすとは言え。
今月二回は東京出るし、交通費もホテル代も、もったいないんよねえ。
いいトシして実家に寄生し続けんのもなあ。
ああ。てっちゃんと離れるのは辛いな。
飛行機の中でぼんやり考えた。
あ、そだ。
忘れてた。冬馬くんのプレゼント。
冬馬くんって。
言っちゃ悪いけどさ。
誕生日にくれたの、仮面ライダー電王のモモタロスのフィギュアでさ。
プレゼントのセンス、ないんだよ。
自分が好きなもんはお前も好きな筈だ。って感じなんだよな。
でも今回は珍しく違う。
小さな紙袋には女の子に人気のアクセサリーのロゴ。
一体。なんだろな。
紙袋の中に小さな箱。
リボンをほどいて中のケースを開けると。
金色の細い。
リング。
ちっちゃい宝石がついてて。
あたしの誕生石。
指輪もらったの人生で二度目だ。
なんか、こそばゆいな。
冬馬くんどんな顔して買いに行ったんやろ。
あの冬馬くんが。
誰かに頼んだのかな。
いや。そんな事するヤツやないな。
多分自分で行ったんだろな。
顔見て渡したかった。
そうだったのか。
言葉として。
口にするようなひとやないけど。
演技でかっこいいセリフ言ってても、あたしにそんなこと言ったりするひとやないけど。
それでもじゅうぶん。
あたしを大事に想ってくれるの、伝わる。
左手の薬指にはめてみたら、ちょっと大きかったから右手にはめた。
いいのかな。
光るリング。
あたしは。
冬馬くんに応えても。
いいのかな。
いいんだよな。
1
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
少年少女たちの日々
原口源太郎
恋愛
とある大国が隣国へ武力侵攻した。
世界の人々はその行為を大いに非難したが、争いはその二国間だけで終わると思っていた。
しかし、その数週間後に別の大国が自国の領土を主張する国へと攻め入った。それに対し、列国は武力でその行いを押さえ込もうとした。
世界の二カ所で起こった戦争の火は、やがてあちこちで燻っていた紛争を燃え上がらせ、やがて第三次世界戦争へと突入していった。
戦争は三年目を迎えたが、国連加盟国の半数以上の国で戦闘状態が続いていた。
大海を望み、二つの大国のすぐ近くに位置するとある小国は、激しい戦闘に巻き込まれていた。
その国の六人の少年少女も戦いの中に巻き込まれていく。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる