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そのじゅうさん
そのじゅうさん-6
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どうにか家まで帰り着いて。
玄関のドア閉めて靴脱ぐのもそこそこに。
階段駆け上がった。
「みのりー!?煩いっ」
おかんが台所で怒鳴った。
運転しながら信号で止まる度涙が溢れた。
このまま走ってたら事故るんやないかな。
半分、冷静やった。
ふにーっ
足元のてっちゃんを抱き上げてベッドに転がる。
勘違い。
全部。
恋愛ごっこ。
そんなのありかよっ。
あたしをいつも抱きしめて、話さなかったのに。
それは、尊の思う、恋愛ごっこ。
みのりさん可愛い。
頭撫でる。
みのりさん、好き。
抱き締めてキスする。
みのりさん。
みのりさん。
みのりさん。
あたしを呼ぶ。
勘違い。全部尊の勘違い。
みのりさんは俺の。
ずうっと一緒にいるよ。
みのりさんは死んでも俺のもの。
あたしの中で反芻されるたくさんの言葉。
何回言われたのかわかんないくらい聞いた。
みのりさん、好き。
言葉。
こんなに深く愛された事はないと。
思ってたのに。
ずっと日々は続いていくと。
思ってたのに。
優しく撫でる手も。
優しく微笑む顔も。
あの優しいキスも。
全部。
ホントじゃなかったの?
てっちゃんがほっぺたの涙舐めた。
「てっちゃん…」
ふにぃ
「お姉ちゃん…お兄ちゃんにフラれちゃったよ…」
言ったとたんに溢れてくる大量の涙。
眼の前のてっちゃんがにじむ。
首に下がるアルファベット。
俺が産まれた日はみのりさんに出逢えた事を感謝する日。
こんなもの。
ネックレスを引きちぎろうとして。
意外とちぎれるもんでもなかった。
Tの文字を握り締めて。
また。
泣いた。
頭痛い。
泣きすぎて。
枕カバーぐしゃぐしゃやし。
いつもの朝の電話も。かかってこなかった。
メッセージの通知もない。
勘違いだったんだ。
尊の言葉が頭ん中でぐるぐるする。
ヤりたくなったら相手してやるよ。
投げつけられた言葉も。
一体。なんだったんだろう。
あんだけ一緒にいて。
愛されてると思ってたのは。全部。
尊の。
勘違い。
また涙出てきた。
どこにこんな水分あるんやろな。
昨日からベッドでずっと泣いて。ご飯も食べてない。
携帯が鳴ってる。
なぜに。マイケル。
いつ変えたのか記憶ないけど。
別に。どうでもいいや。
しばらく鳴り続けて切れた。
相手は想像つくし。
少ししてから。
「みのりーっ!松本さんから電話っ!!」
おかんの声がした。
やれやれ。
重たい身体を引き摺ってリビングに行った。
「なんなん!?アンタ、その顔っ」
おかんがぎょっとする。
まあな。眼開けてるけど視界ほとんど薄目状態。
相当腫れてるな、瞼開かん。
「もしもし…」
『居留守使わないで下さい』
松本氏の低い声。
「…そう言うワケでは…ないです」
『……』
「……」
しばし沈黙。
『…何かありましたか?』
「いえ…別に…体調が悪いだけです…」
『大丈夫ですか?病院行かれましたか?』
少し、心配してくれてるらしい松本氏。
「いえ…病院行くほどでは」
行ったところでどうにもならんし。
『原稿の方は大丈夫ですか?』
ああ、そうだよな。松本氏が心配なのはそっちだよな。
「…なんとか…頑張ります」
なにも考えられんが。
『…天海さん』
松本氏はため息をつく、と思ったらつかなかった。
『もし。貴女に今、辛い事や悲しい事があったとしても』
真っ最中です。
『書いて下さい。貴女はプロなんですから』
厳しい。
松本氏の言葉。
でも、それが現実。
プロとして活動してる以上、原稿は書かなきゃならない。
『締め切りまでまだ余裕あるんで少し休んで、また頑張りましょう。そうじゃないとまたカンヅメにしますよ』
松本氏がちょっと笑った。
少し。ちょっとだけ。
休み。下さい。
涙がおさまるまで。
少し。
玄関のドア閉めて靴脱ぐのもそこそこに。
階段駆け上がった。
「みのりー!?煩いっ」
おかんが台所で怒鳴った。
運転しながら信号で止まる度涙が溢れた。
このまま走ってたら事故るんやないかな。
半分、冷静やった。
ふにーっ
足元のてっちゃんを抱き上げてベッドに転がる。
勘違い。
全部。
恋愛ごっこ。
そんなのありかよっ。
あたしをいつも抱きしめて、話さなかったのに。
それは、尊の思う、恋愛ごっこ。
みのりさん可愛い。
頭撫でる。
みのりさん、好き。
抱き締めてキスする。
みのりさん。
みのりさん。
みのりさん。
あたしを呼ぶ。
勘違い。全部尊の勘違い。
みのりさんは俺の。
ずうっと一緒にいるよ。
みのりさんは死んでも俺のもの。
あたしの中で反芻されるたくさんの言葉。
何回言われたのかわかんないくらい聞いた。
みのりさん、好き。
言葉。
こんなに深く愛された事はないと。
思ってたのに。
ずっと日々は続いていくと。
思ってたのに。
優しく撫でる手も。
優しく微笑む顔も。
あの優しいキスも。
全部。
ホントじゃなかったの?
てっちゃんがほっぺたの涙舐めた。
「てっちゃん…」
ふにぃ
「お姉ちゃん…お兄ちゃんにフラれちゃったよ…」
言ったとたんに溢れてくる大量の涙。
眼の前のてっちゃんがにじむ。
首に下がるアルファベット。
俺が産まれた日はみのりさんに出逢えた事を感謝する日。
こんなもの。
ネックレスを引きちぎろうとして。
意外とちぎれるもんでもなかった。
Tの文字を握り締めて。
また。
泣いた。
頭痛い。
泣きすぎて。
枕カバーぐしゃぐしゃやし。
いつもの朝の電話も。かかってこなかった。
メッセージの通知もない。
勘違いだったんだ。
尊の言葉が頭ん中でぐるぐるする。
ヤりたくなったら相手してやるよ。
投げつけられた言葉も。
一体。なんだったんだろう。
あんだけ一緒にいて。
愛されてると思ってたのは。全部。
尊の。
勘違い。
また涙出てきた。
どこにこんな水分あるんやろな。
昨日からベッドでずっと泣いて。ご飯も食べてない。
携帯が鳴ってる。
なぜに。マイケル。
いつ変えたのか記憶ないけど。
別に。どうでもいいや。
しばらく鳴り続けて切れた。
相手は想像つくし。
少ししてから。
「みのりーっ!松本さんから電話っ!!」
おかんの声がした。
やれやれ。
重たい身体を引き摺ってリビングに行った。
「なんなん!?アンタ、その顔っ」
おかんがぎょっとする。
まあな。眼開けてるけど視界ほとんど薄目状態。
相当腫れてるな、瞼開かん。
「もしもし…」
『居留守使わないで下さい』
松本氏の低い声。
「…そう言うワケでは…ないです」
『……』
「……」
しばし沈黙。
『…何かありましたか?』
「いえ…別に…体調が悪いだけです…」
『大丈夫ですか?病院行かれましたか?』
少し、心配してくれてるらしい松本氏。
「いえ…病院行くほどでは」
行ったところでどうにもならんし。
『原稿の方は大丈夫ですか?』
ああ、そうだよな。松本氏が心配なのはそっちだよな。
「…なんとか…頑張ります」
なにも考えられんが。
『…天海さん』
松本氏はため息をつく、と思ったらつかなかった。
『もし。貴女に今、辛い事や悲しい事があったとしても』
真っ最中です。
『書いて下さい。貴女はプロなんですから』
厳しい。
松本氏の言葉。
でも、それが現実。
プロとして活動してる以上、原稿は書かなきゃならない。
『締め切りまでまだ余裕あるんで少し休んで、また頑張りましょう。そうじゃないとまたカンヅメにしますよ』
松本氏がちょっと笑った。
少し。ちょっとだけ。
休み。下さい。
涙がおさまるまで。
少し。
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