You Could Be Mine 【改訂版】

てらだりょう

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そのじゅうさん

そのじゅうさん-3

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 文学賞っても。

アクタガワ賞ほど有名な賞じゃないけどさ。

それでも、新聞に受賞のニュースが載ったりする。

まあ、記事はちっこいけど。

んでも、文芸欄の取材やらなんやかんやで。

賞もらったんだなあ。

て、実感したりして。

先輩の作家さん達がお祝いの品やお手紙やらくださったり。

あたしも、ちょっと真面目にお礼のお手紙書いたり。

冬馬くんからも。

「お前、すっげえじゃん!お前の本、俺も全部読むわ!こっち来た時にメシ行こうな、絶対だぞ!」

とか照れるようなこと言われた。

書店で初めて、単行本平積みされてるの見たときは嬉しさのあまり悶えまくった。

そんな感じで。

慌ただしく時間が過ぎていった。

「みのりさん、こっち来て」

尊がソファーに座って呼ぶ。

あたしは尊の足の間。

背中からあたしを抱き締めて、肩に顎ちょこんと乗せて。

いつもと変わらない、光景。

あたしの慌ただしさも少し、落ち着いてきたけど。

尊は最近あんまり寝ない。

あたし抱きしめながら言葉も少なく。

あたしの頭にほっぺたくっつけて。

「尊、寝不足やないの?」

「ん…大丈夫。みのりさんを抱っこしてたいから」

そう言ってあたしを抱き締める。

「尊…なにかあったん?」

「なにもないよ」

でも。なんか変。

あんましゃべんないし。

元々一緒いる時はくっつきたがるけどさ。

あたしの髪撫でる。

黙って。

「ねえ。眠いんなら寝た方がいいよ?」

言っても。

「みのりさんと一緒にいたいから。こうしてたいから…」

あたしをずっと抱き締める。

ホントは仕事したいとこなんやけどな。

尊の甘え方がちょっと違うから。

なんとなく。あたしも尊から離れられずに。

「…あ…そうだ。みのりさん」

「うん?なに?」

「今度の日曜、母さんが一緒にご飯行こって」

三人で?瞳子さんと会うの、いつも二人だもんな。

尊も一緒とか珍しいな。

「三人でみのりさんのお祝いしようね」

「ホントに!?嬉しいな」

笑って言ったら。

尊は。

「…うん」

微笑んでたし、ぎゅう、っと抱き締めた。

尊の顔は。

なぜだか。あたしには。

寂しそうに見えた。


この頃の尊は口数が少ない。

具合でも悪いのかな。

て、思って聞いても。

「全然大丈夫だよ」

笑って答えるだけ。

なんなんだよ。なんかあるなら言わなきゃわかんないやろ。

「尊、最近おかしい!」

「…どうしたの、みのりさん」

ちょっとびっくりしてあたしを見る。

「尊の方こそどうしたんよ!?」

だって。えっちしてる時もおかしいもん。

ドSのくせに。

「どうもしてないよ」

優しく。あたしの事を優しく抱く。

まるであたしに尊を刻み込む様に。

「みのりさん。大好き」

抱き締めてキスする。

何度も。あたしのほっぺた、優しく撫でながら。

「大好き」

呟くように言いながら。

尊のキスはいつも優しいけど。

優しすぎてあたしは。

せつなくなってしまう。
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