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そのじゅういち

そのじゅういち-10

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吉乃ちゃんが、来る。

尊のベッドでうとうとしてたら、携帯が鳴った。

あー。吉乃ちゃんだ。

ディスプレイの表示を見て、普通に思った。

「んー…」

尊が眼を覚ます。

しまったな。眠ってる時ならリビングで出るけど。

尊が起きてる時に尊から離れて電話すると、誰から?とか、なんの話?とか聞いてくるから鬱陶しい。

「鳴ってるよ、電話」

わかっとるわい。

尊は、あたしの事全部を知っておかんと気がすまんらしい。

ま、隠し事して怒らせた過去もあるしな。

「もしもーし。吉乃ちゃん?」

名前を聞いて、尊の眉毛がピクッとした。

『みのりーん!元気?』

「元気だよお。どうしたの?」

『今日の夜ご飯食べに行こーっ!』

は?今日の?

「なっ、なんで!?吉乃ちゃん、こっち来てんの!?」

尊の顔が険しくなる。

『明日から展示会あるから前乗りで夕方の便で着くよ!』

吉乃ちゃんは、着物デザイナー。

この時期は全国を展示会で回ってる。

「来るなら早く教えてくれれば良いのに」

『うふふー。みのりん、びっくりさせようと思って。夜、大丈夫?』

少し考えた。

まあ、原稿は順調なんでご飯食べに行く余裕はある。

「いいよお。大丈夫」

『じゃ、着いたらまた電話するねえ』

「わかったあ。じゃあね」

電話を切って尊さんを見ると。

「吉乃さん来るの?」

不機嫌でらっしゃる。

「うん。夜一緒にご飯食べるん」

「…みのりさん」

なんですか。その顔は。

浮気しに行くワケやないやろが。

「吉乃ちゃんは女の子だよ」

一応はね。

「…そうだけど。あの人、危ない気がする」

尊センサーに引っ掛かったか。さすが。

「どこに行くの」

「まだ決めてないよ」

尊はあたしの両手を掴んで。

「行き先、ちゃんとメールするんだよ?あの人には気をつけるんだよ!?」

真剣な顔で、言った。




「みのりーん!」

吉乃ちゃんが両手でガシッと、あたしに抱きつく。

某百貨店のライオンの前。

別に女同士やから、尊にやられるほど恥ずかしくはない。

空港まで迎えに行こうか?と言ったら。

みのりんと飲みたいから車やない方が良いわ

と吉乃ちゃんが言うのでライオンさん前で待ち合わせになった。

ホントは涼香逹も誘おうと思ったけど。

「みのりんと遊びたいから。涼香逹はまた今度で良いよ」

吉乃ちゃんが言った。

よくよく考えると、学生時代から吉乃ちゃんと二人きりで遊んだ事、無い。

いつも、涼香とかが一緒やった。

吉乃ちゃんは女好きやけど。

あたしに彼氏いるのもわかってるし。

あたしからすると純粋に友達やし。

襲われるような事は、まあ、無いだろう。

と、思う。

吉乃ちゃんが久しぶりに水炊きが食べたい、と言うから鳥やに行った。

ここで尊にメッセージ。

今、鳥やにいます。

尊から返信。

わかった。移動する時また教えて。

そのうち、本気でGPS付けられんじゃないか、あたし?

さて。鳥やで吉乃ちゃんとお食事。

おばちゃんが、サービスとか言って越乃寒梅をつけてくれた。

おお。さすがに大吟醸。

うめえな。

吉乃ちゃんと昔話が弾んで楽しくなった。

「ねえ、みのりん」

「なにぃ?」

「この後、もう一軒行こう?」

吉乃ちゃんがこっちにいた時の行き付けのバーらしい。

「いーよお」

すっかりたのしくなったから、もうちょっとのみたくなった。

よしのちゃんにつれていかれながら、たけるにめっせーじした。

ビアンカてお店に行きます。

へんしん、ない。

おきゃくさんはいったんやろな。

「ここだよ!」

よしのちゃんにつれてかれたとこは。

おきゃくさん、おんなのひとばっかり。

おとこっぽいかっこしたひともいるけど。

あれえ?

ふつうのばーじゃ。

ないのかなあ?
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