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そのじゅういち

そのじゅういち-7

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それは、尊が発見した。

「あんっ!やあんっ、いっちゃうっ、んっ!」

「みのりさんっ。俺の名前、呼んでっ」

「ああん、たけるっ!もっ…だめえっ」

なんか、バカップルだな。

ま。とりあえず、する事はした。

お互い、落ち着いたところで、尊があたしを左手で抱き締めながら。

「みのりさん、あのね」

空いた右手であたしの左の脇腹撫でた。

「なに?」 

「ここらへんぷつぷつなって赤くなってる」

脇腹の背中側に手をあてる。

「えっ!?なにっ」

触るとぷつぷつの触感。

してる時に気が付いてたくせに。

終わってから言うなよ。

「アレルギーとかじゃないの。動物の」

「それはないね」

産まれてこのかたアレルギーなんてなった事ないし。

「わかんないよ?急になったりするし」

コイツ。てっちゃんが原因とか言いたいんや。

「あたし食べ物も動物も金属もアレルギー無いし!」

「アレルギーじゃなくても…動物から人にうつる病気だってあるんだし」

てっちゃんとあたしを引き裂く気だな。そうはいくか。

例えてっちゃんが原因としても、あたしはてっちゃんから離れん!

「客に医者がいてそう言う話聞いた事あるよ?」

「…アンタ。てっちゃんが病気持ってるって言いたいん?」

不機嫌オーラ漂わせるあたし。

険悪な空気。

「そうじゃなくて…そう言う事もあるって話だよ」

「…わかった」

「みのりさん…」

そうまで言うなら。

「てっちゃん病院連れて行って検査してもらう」

徹底的にな。

その代わり。

「尊も一緒に来なさいよ。心配なんでしょっ」

「…え?」

「一緒に検査結果聞けば安心やろっ!」

こうして。

動物嫌いな尊は、動物のお医者さんに行く事になった。



 「てっちゃーん」

「ぅにーっ」

「キャリーから出さないでよっ、みのりさん!」

日曜日。尊のオフに一緒に病院へ。 

尊はオフと言っても、夜にアポが入ってる。

ユウくんとお客さんのキャバ嬢がいる店に行くらしい。

206の助手席で、キャリーの上のファスナー開けててっちゃんと戯れるあたし。

キャリーを触りたく無い尊が運転。

「後ろに置いとけば?」

最初に尊が言った。

冗談やない。

ただでさえキャリーに閉じ込められてかわいそうなのに。

リアで一人ぼっちなんて、出来るもんかっ。

「ねー。てっちゃん」

「にぃーっ」

持参した猫じゃらしをふりふり。

飛び付くてっちゃん。

なんて愛らしいっ。

てっちゃんもちょっと大きくなって、階段も一人で上がれる様になった。

毎晩、10時になると。

あたしの部屋のドアをカリカリ。 

開けると、オモチャをくわえたてっちゃんが、おりこうに座ってる。

そして心ゆくまで。

遊び。寝る。

あたしも前は遅い時間に風呂入ってたけどさ。

てっちゃんと遊ばないといけないから。

最近は、てっちゃんと遊ぶために尊ん家から帰るとすぐ仕事して、晩ご飯食べて風呂入って仕事して。

お遊びの時間を作っております。

てっちゃんが疲れて寝るまで遊んだら、ちょこっとまた仕事して、一緒に寝る。

前より規則正しく仕事する様になった。

「もう。運転の邪魔になるから出しちゃダメだってば」

キャリーから身体半分出てるてっちゃんを見て、尊が怒る。

だってねえ。

お姉ちゃんと二人の時は膝乗ってるもんねえ。

恐ろしいよな、ミッションなのに。 

尊にバレたら絶対怒るだろな。

やがて車は掛かり付けのペットクリニックへ。

この病院は犬と猫の待合室はパーティションで仕切ってある。

受付して猫の部屋に。

おお。日曜日のせいか。

犬も猫も。大盛況ですな。

動物嫌いの尊。

顔が、強張ってまーす。

待合室には。

チンチラ。スコティッシュ。ロシアンブルー。

どのお子さんも可愛らしい。

キャリーを抱え、空いた長椅子に座る。

隣に、歯を食いしばって耐える尊。

ま、どのお子さんも飼い主さんのキャリーで大人しくしてるけど。

尊の顔が強張る。

うにゃあん

キャリーの中でてっちゃんが可愛い声で出せ、と鳴く。

「あらっ、可愛いー!」

ロシアンちゃんママが寄ってきた。

キャリーの透明な扉から顔のぞかせるてっちゃん。

「小さいねぇ。何ヵ月?」

「あ、はっきりわかんないですけど二ヶ月ちょっとです」

「綺麗なはち割れね、可愛い」

他のママ達も寄ってきた。

人間だろうと動物だろうと。

赤ん坊は人気者なのだ。

尊は、と言えば。

ママ達に囲まれて本来の営業スマイルが出るかと思いきや。

笑顔も出ず。

「あらぁ。かっこいいパパねー」

とか言われても、お子さんたちにびびって。

「はは…どうも…」

ホストにあるまじき、普通の反応しかしなかった。

ホント。

マジで動物ダメだな。

病院まで連れてきて、苛めすぎたかな。

「二宮こてつくーん」

担当の先生がカルテを見ながらやってきた。

担当の田中先生は背は低いけど、じゃに系の顔で飼い主さんの間で人気者。

「この前三種混合しましたよね?今日はどうしました?」

「あの…」

「感染症とかの病気が無いか調べて下さい」

田中先生になんかのセンサーが反応したらしい尊が、あたしを遮って。

てっちゃんを抱え。

先生に突きだし。

言った。

検査は、血液とレントゲン。

午前中いっぱいかかったけど、てっちゃんは健康そのもののお墨付きを頂いた。

ざまあみろ。

三時間も動物に囲まれて、憔悴しきった様子の尊。

あたしのてっちゃんを悪く言うからそんな目に合うんじゃ。

覚えとけよ。みのり二勝目。

「お昼ご飯、どうするの?」

そ言えば昼メシ時だな。

てっちゃんのご飯とおやつは持参してきたけど。

「どっかで食べてく?」

「お店入るのやだ」

だって、てっちゃん一人で置いとけないもん。

「じゃあ帰ってなんか作る?」

「……」

誰が。

「…俺が作るよ。なに食べるの?」

尊が作るなら。

「カルボナーラ!」

尊はため息をついて、スーパーに寄って買い物してきた。

尊の家で、尊が作ったカルボナーラを食べた。

尊は料理上手。

材料があればサラッと作っちゃうのだ。

顔良くて背が高くてかっこいい上に料理男子。

神、やなくて仏様。

尊に与え過ぎですよ。

食ってばかりもなんなんで。

「あたし片付けるね」

皿くらいは洗いましょう。

「いいよっ、俺が」

「てっちゃん、よろしく」

尊の手に猫じゃらしを押し付け、あたしは皿を持ってキッチンへ。

てっちゃん、ご飯の後は遊ぶのが習慣なんだよなあ。

少しはてっちゃんに慣れろ。

洗い物しながらちょっと様子を見ると、無表情で猫じゃらしふりふりしている尊が見えた。

片付け終わって、カウンターの陰からこっそり見ると。

いつの間にやらソファーに寝そべってる尊。

尊の胸の上にてっちゃん。

「大体、俺動物嫌いなんだよ」

ぶつぶつ言ってる。

「お前のその首輪、俺のプレゼントなんだよ。わかってる?お前」

尊が、そおっとてっちゃんの頭を撫でた。

「お前は特別なんだからな。みのりさんのだから、特別に認めてやるんだからな」

どうやら。

みのり、三勝目の様子。

やったね、てっちゃん!

ところであたしのぷつぷつは、と言えば。

皮膚科に行ったら、皮質ホルモンのなんたらとか言われて、塗り薬と飲み薬もらって。

しばらくしたら、治った。
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