You Could Be Mine 【改訂版】

てらだりょう

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そのじゅういち

そのじゅういち-3

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見渡す限り、一面の。

雪。また雪。

真っ白に、激しく舞う雪。

視界はゼロ。

ホワイトアウト。

「さっ!」

吹雪の中、立ち尽くす、あたし。

「寒いんだよおおお!ちくしょおっ!!」

発端は昼食後。

初心者コースの一部に、なんか跳んだり半円形のとこ滑ったりするとこがあって。すんげえ上手な人達が空中跳んだりしてて。

尊以外の三人はそっち行ったんやけど。

「みのりさん一人にしてナンパされたりして連れ去られたりしたら困る」

尊はあたしと一緒に初心者コースにいた。

あたしはと言えば、どうにか転ばずに初心者コースを下まで行けるようになった。

先に下に着いてた尊は、龍二くん達が気になるらしく。ずっとそっちを見てる。

行ってくりゃいいのに。

他の人見ながら。

絶対俺の方が上手い!

とか、思ってんだよ。この人。

「龍二くん達のとこ、行ってくれば?」

「みのりさんを一人で置いとけないもん」

あのさあ?あたし、大人なんやけど。

「あたし一人でリフト乗ってくし。あたしが降りてくるまで、向こうで遊んどいでよ」

尊は結構、長い時間悩んでた。

でも、スラロームで沸き上がる歓声が気になるらしく。

「一回だけ滑ってくる。みのりさんは、滑ってきたら、ここで待ってて?」

悩んだ末に決断した。

「うん。わかった」

そう言うあたしをぎゅうっ、と抱き締めて。

「じゃ行ってくるね」

ボード抱えて去って行った。

あたしはとりあえずリフト乗って。

昨日よりは滑れるぞ。

一人、悦に入ってた。

そして気がつくと。

雑木林に。

ヤバい。コース外れた。

あたしは、緊急災害時に二次災害を引き起こすタイプだ。

つくづく思う。

むやみやたらに歩きまわって、現在地も定かじゃなく。

天候は崩れ。雪は吹雪。

「さみーんだよおっ!ばっかやろおおおっ!!」

現在に至る。

ちくしょう。

なんで遭難してんだよ、あたし?

いきなり吹雪とかひどくない!?

あたしの日頃の行いが悪いってのか、仏様!?

締め切りはギリギリやけど、とりあえず守ってるし。

てっちゃんの事も可愛がってるし。

あ、あれか。

あれがいけないんか!?

仕事終わりで眠たい尊を無理矢理、マリオカートに付き合わせてる事!?

あたし、ヨッシーかノコノコやけど。

尊、いっつもピーチ姫でさ。

汚ねえアイテムばっか使いやがるん。

そんでいっつも勝逃げして。

「早く寝よ」

て。したいだけのくせに。

なんで勝てないかなあ。

ムカつく。

じゃなくて。

仏様。助けて下さい。

助かったら、今度からマリオカートは一人でやりますからっ。

尊の睡眠時間削ったりしませんからっ。

どうにかして下さいいい!! 

「助けてくれえええ!!」

「みのりさんっ!?」

おおっ。

願いが通じた。さすが仏様。

「大丈夫ですかっ!?」

それは尊ではなく。

「探しましたよ」

冷静沈着。キレると怖い、龍二くん。


あたしを見てほっ、と息をついた。

「龍二くーんっ」

安心して涙目なる。

「ああ、泣かないで下さいね。怖かったですよね、もう大丈夫ですから」

龍二くんはあたしの頭をよしよしした。

「元のとこに戻れる?」

「方向はわかってるんですけど。視界が悪すぎて」

そうやね。吹雪いてるもんね。 

「吹雪止むまで動かない方が良いですね。みのりさん」

「うん?」

「あっちで止むの待ちましょう」

龍二くんの示す先は木立。

少しは雪避けになる。

龍二くんの後をついて歩いた。

「座っときましょうか」

龍二くんの隣に座ろうとしたら。

「あ、こっち来て下さい」

ウェアの前を開けて、足拡げてる龍二くん。

「寒いから来て下さい」

言われて、龍二くんの足の間に座ると。

自分のウェアであたしを包み込む。

だから、前が開かない様に龍二くんが腕をまわして。

尊がいつもするみたいな感じやけど。

でも。なんだか。

落ち着かない。

当たり前か。

尊やなくて龍二くんやもん。

雪が吹雪く音だけがして。

龍二くんの吐息が耳に当たる。

心臓が、勝手に速くなる。

紛らわしたくて、適当な話をふる。

「ごっ、ごめんね、寒いでしょ?」

「みのりさんがあったかいから、大丈夫です」

「尊、心配してるかなあ」

「してますよ。みのりさんが戻って来ないから、誰かに連れ去られたんじゃないかって」

ああ。尊の中でいつも拉致られてるな、あたし。

「そこらじゅうの男に殴りかかりそうな勢いだったんで、秀輝が羽交い締めして止めましたけど」

龍二くんが、くすっとわらった。

「尊さん、みのりさんの事になると冷静じゃなくなるから」

そーだね。龍二くんにも迷惑かけてるしね。

「もうしわけナイっす…」

「いえ。俺、昔から尊さん見てきてるけど。今の尊さん、良いと思います。人間ぽくて」

「にんげんぽい…」

尊はにんげんやないんすか?

「怖いですからね、あの人。余計な事言うと怒られるから、俺は余計な事は言いません」

なるほど。

「でも、昔に比べて人間らしくなりましたよ」

そうなんや。昔の尊は知らんけど、あたしの知ってる尊は人間らしいよ。

「俺…」

龍二くんの声が耳の側で聞こえる。

「みのりさんが」

その先は、言わなくてもわかるよ。

「好きですよ」

「うん…」

知ってるもん。

「尊さんて人がこんなに好きになったひとだから。尊さんをちゃんと受け止めてくれるひとだから」

龍二くんは、もっかい小さく笑った。

「尊さんがみのりさんの事好きなくらいに、誰かを好きになれたら良いのにって、ちょっと思いますけど」

ユウも秀輝も、尊さんが羨ましくて、みのりさんの事好きなんですよ。

龍二くんが静かに言った。

尊って、自分でわかってないだけでさ。

結構、まわりに好かれてるよな。

吹雪がおさまって、途中あたしを探してたユウくんと合流した。

秀輝くんに羽交い締めされてた尊は。

「みのりさんっ!!」

あたしに抱きつき、まわりもはばからずに。

ディープなキスをした。

………ここ、日本ですよね?
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