58 / 160
そのきゅう
そのきゅう-4
しおりを挟む
「お前…何した」
「別に?」
胸ぐらを掴まれながら、リカが答える。
わざと嘲りを込めようとしているのがわかる。
リカの上擦った声。
「ウソつくんじゃねえよ。何したんだよ」
「心配?」
リカが小さく笑った。
「そんなに大事なの、このコ」
「…ふざけてんじゃねえぞ」
尊の凄く低い、怖い声。
「お前が俺に嫌がらせすんのは、大目に見てやってたけどな…」
ぐいっ、とリカを持ち上げた。
「俺の大事なもんに手ぇ出しやがって」
リカに顔を近付ける。
「本気で、殺すぞ」
聞いてるあたしでさえ、震えそうな、声。
「ち、ちょっと薬使っただけよ」
リカの声が震えてる。
「……薬?」
「気持ち良くなるだけよっ、死んだりしないわ…意識だってちゃんとあるわよっ」
尊が振り返ってあたしを見た。
一瞬、眼が合うと、尊はリカに向き直った。
リカを、両手で締め上げる。
「くっ…」
苦しそうにリカの顔が歪む。
「お前。何、してくれてんだよ」
尊、ダメだよ!
相手、女だよ!!
「みのりさんに…俺の大事な女に」
尊が握り締めた手を振り上げる。
「何してくれてんだよ!!」
「ダメっ…!」
殴っちゃダメだよ!!
かろうじて声になったあたしの声に、尊の手が止まった。
「次、みのりさんに手ぇ出したら…お前、沈めてやるからな」
「きゃあっ!!」
リカを壁に叩き付けた。
振り向いて、あたしの側に屈み込む。
「なっ何よっ!あんたなんかに…出来るもんかっ!!」
尊の背中にリカが叫ぶ。
顔を強張らせて泣きながら。
「うるせえよ」
尊がリカを振り向く。
あたしから、尊の顔は見えない。
「俺が本気になって出来無え事、あると思ってんのかてめえは」
ひっ、とリカが呻いた。
「みのりさん…」
あたしを、泣きそうな顔して見る。
「家、帰ろうね」
「ふあああっ!!」
尊に抱き上げられて、声があがる。
自分で動いて服で擦れるだけでも、強い刺激。
「はっ…う…」
ほんのちょっと動くだけで、強烈な刺激が、あたしを襲う。
「ごめんね…家まで我慢して…」
今にも泣き出しそうな、尊の、悲しい顔。
その顔に、悲しくなって、涙が出てくる。
「龍二。そのへんで止めとけ。死ぬぞ」
「……はい」
男を殴り続けていた龍二くんは、もうぐったりして動かない男から離れた。
「……行きましょうか」
ハンカチで手についた血を拭いながら、静かな声で、言った。
尊の家へ走る、206。
リアシートに、尊とあたし。
運転は龍二くん。
「あっ…はっ…ぅ」
尊の膝で、声にならない声で呻き続ける、あたし。
呻き声以外、誰も声を発しない車内に、あたしの選んだ音楽が流れる。
今日は、なんとなく選んだUNICORN。
"人生は上々だ"
今の状況にあまりにそぐわなくて、マヌケ過ぎ。
あたしの身体を抱き抱える、尊。
ずっと黙ったまま。
本当は、抱え込まれているのが辛い。
触られてるワケじゃないのに、尊の身体があたしを刺激する。
身体が熱くなりすぎて呼吸がうまく出来ずに、口で空気を吸い込み、呻きと一緒に吐き出す。
どうにかして欲しいと、疼く身体。
催淫剤なんて。
そんなモノ、名前は聞いた事あっても見た事すら無い。
どんな効果があるのかなんて、体験なんてしたくない。
でも、リカに打たれた薬は、あたしの身体をおかしくさせる。
どうなってるのか自分でも理解出来ない、あたしの身体。
あたしの気持ちを無視して。
たまらなく、尊を欲しがる。
この。
おかしな、身体。
どうしたら元に戻れるの。
「ぅ…あ…」
尊の胸で呻くだけ。
流れる続ける涙。
あたしの涙で溶けたファンデーションで。
尊の白いスーツが汚れてしまって。
ごめん。クリーニング出さなきゃね。
そんな事が、頭の片隅よぎる。
「別に?」
胸ぐらを掴まれながら、リカが答える。
わざと嘲りを込めようとしているのがわかる。
リカの上擦った声。
「ウソつくんじゃねえよ。何したんだよ」
「心配?」
リカが小さく笑った。
「そんなに大事なの、このコ」
「…ふざけてんじゃねえぞ」
尊の凄く低い、怖い声。
「お前が俺に嫌がらせすんのは、大目に見てやってたけどな…」
ぐいっ、とリカを持ち上げた。
「俺の大事なもんに手ぇ出しやがって」
リカに顔を近付ける。
「本気で、殺すぞ」
聞いてるあたしでさえ、震えそうな、声。
「ち、ちょっと薬使っただけよ」
リカの声が震えてる。
「……薬?」
「気持ち良くなるだけよっ、死んだりしないわ…意識だってちゃんとあるわよっ」
尊が振り返ってあたしを見た。
一瞬、眼が合うと、尊はリカに向き直った。
リカを、両手で締め上げる。
「くっ…」
苦しそうにリカの顔が歪む。
「お前。何、してくれてんだよ」
尊、ダメだよ!
相手、女だよ!!
「みのりさんに…俺の大事な女に」
尊が握り締めた手を振り上げる。
「何してくれてんだよ!!」
「ダメっ…!」
殴っちゃダメだよ!!
かろうじて声になったあたしの声に、尊の手が止まった。
「次、みのりさんに手ぇ出したら…お前、沈めてやるからな」
「きゃあっ!!」
リカを壁に叩き付けた。
振り向いて、あたしの側に屈み込む。
「なっ何よっ!あんたなんかに…出来るもんかっ!!」
尊の背中にリカが叫ぶ。
顔を強張らせて泣きながら。
「うるせえよ」
尊がリカを振り向く。
あたしから、尊の顔は見えない。
「俺が本気になって出来無え事、あると思ってんのかてめえは」
ひっ、とリカが呻いた。
「みのりさん…」
あたしを、泣きそうな顔して見る。
「家、帰ろうね」
「ふあああっ!!」
尊に抱き上げられて、声があがる。
自分で動いて服で擦れるだけでも、強い刺激。
「はっ…う…」
ほんのちょっと動くだけで、強烈な刺激が、あたしを襲う。
「ごめんね…家まで我慢して…」
今にも泣き出しそうな、尊の、悲しい顔。
その顔に、悲しくなって、涙が出てくる。
「龍二。そのへんで止めとけ。死ぬぞ」
「……はい」
男を殴り続けていた龍二くんは、もうぐったりして動かない男から離れた。
「……行きましょうか」
ハンカチで手についた血を拭いながら、静かな声で、言った。
尊の家へ走る、206。
リアシートに、尊とあたし。
運転は龍二くん。
「あっ…はっ…ぅ」
尊の膝で、声にならない声で呻き続ける、あたし。
呻き声以外、誰も声を発しない車内に、あたしの選んだ音楽が流れる。
今日は、なんとなく選んだUNICORN。
"人生は上々だ"
今の状況にあまりにそぐわなくて、マヌケ過ぎ。
あたしの身体を抱き抱える、尊。
ずっと黙ったまま。
本当は、抱え込まれているのが辛い。
触られてるワケじゃないのに、尊の身体があたしを刺激する。
身体が熱くなりすぎて呼吸がうまく出来ずに、口で空気を吸い込み、呻きと一緒に吐き出す。
どうにかして欲しいと、疼く身体。
催淫剤なんて。
そんなモノ、名前は聞いた事あっても見た事すら無い。
どんな効果があるのかなんて、体験なんてしたくない。
でも、リカに打たれた薬は、あたしの身体をおかしくさせる。
どうなってるのか自分でも理解出来ない、あたしの身体。
あたしの気持ちを無視して。
たまらなく、尊を欲しがる。
この。
おかしな、身体。
どうしたら元に戻れるの。
「ぅ…あ…」
尊の胸で呻くだけ。
流れる続ける涙。
あたしの涙で溶けたファンデーションで。
尊の白いスーツが汚れてしまって。
ごめん。クリーニング出さなきゃね。
そんな事が、頭の片隅よぎる。
1
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
性欲の強すぎるヤクザに捕まった話
古亜
恋愛
中堅企業の普通のOL、沢木梢(さわきこずえ)はある日突然現れたチンピラ3人に、兄貴と呼ばれる人物のもとへ拉致されてしまう。
どうやら商売女と間違えられたらしく、人違いだと主張するも、兄貴とか呼ばれた男は聞く耳を持たない。
「美味しいピザをすぐデリバリーできるのに、わざわざコンビニのピザ風の惣菜パンを食べる人います?」
「たまには惣菜パンも悪くねぇ」
……嘘でしょ。
2019/11/4 33話+2話で本編完結
2021/1/15 書籍出版されました
2021/1/22 続き頑張ります
半分くらいR18な話なので予告はしません。
強引な描写含むので苦手な方はブラウザバックしてください。だいたいタイトル通りな感じなので、少しでも思ってたのと違う、地雷と思ったら即回れ右でお願いします。
誤字脱字、文章わかりにくい等の指摘は有り難く受け取り修正しますが、思った通りじゃない生理的に無理といった内容については自衛に留め批判否定はご遠慮ください。泣きます。
当然の事ながら、この話はフィクションです。
【R18】ドS上司とヤンデレイケメンに毎晩種付けされた結果、泥沼三角関係に堕ちました。
雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向けランキング31位、人気ランキング132位の記録達成※雪村里帆、性欲旺盛なアラサーOL。ブラック企業から転職した先の会社でドS歳下上司の宮野孝司と出会い、彼の事を考えながら毎晩自慰に耽る。ある日、中学時代に里帆に告白してきた同級生のイケメン・桜庭亮が里帆の部署に異動してきて…⁉︎ドキドキハラハラ淫猥不埒な雪村里帆のめまぐるしい二重恋愛生活が始まる…!優柔不断でドMな里帆は、ドS上司とヤンデレイケメンのどちらを選ぶのか…⁉︎
——もしも恋愛ドラマの濡れ場シーンがカット無しで放映されたら?という妄想も込めて執筆しました。長編です。
※連載当時のものです。
イケメン仏様上司の夜はすごいんです 〜甘い同棲生活〜
ななこ
恋愛
須藤敦美27歳。彼氏にフラれたその日、帰って目撃したのは自分のアパートが火事になっている現場だった。なんて最悪な日なんだ、と呆然と燃えるアパートを見つめていた。幸い今日は金曜日で明日は休み。しかし今日泊まれるホテルを探す気力がなかなか起きず、近くの公園のブランコでぼんやりと星を眺めていた。その時、裸にコートというヤバすぎる変態と遭遇。逃げなければ、と敦美は走り出したが、変態に追いかけられトイレに連れ込まれそうになるが、たまたま通りがかった会社の上司に助けられる。恐怖からの解放感と安心感で号泣した敦美に、上司の中村智紀は困り果て、「とりあえずうちに来るか」と誘う。中村の家に上がった敦美はなおも泣き続け、不満や愚痴をぶちまける。そしてやっと落ち着いた敦美は、ずっと黙って話を聞いてくれた中村にお礼を言って宿泊先を探しに行こうとするが、中村に「ずっとお前の事が好きだった」と突如告白される。仕事の出来るイケメン上司に恋心は抱いていなかったが、憧れてはいた敦美は中村と付き合うことに。そして宿に困っている敦美に中村は「しばらくうちいれば?」と提案され、あれよあれよという間に同棲することになってしまった。すると「本当に俺の事を好きにさせるから、覚悟して」と言われ、もうすでにドキドキし始める。こんなんじゃ心臓持たないよ、というドキドキの同棲生活が今始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる