You Could Be Mine 【改訂版】

てらだりょう

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そのはち

そのはち-4

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真っ暗な、リビング。

ソファーに踞る、あたし。

電気つけないのは、あたしの心象風景、表してみました。

店出る時。

「みのりさん?悪い事したら…どうなるか、わかってるよね?」

北極の流氷くらい、冷たい声で、言われた。

北極行ったことないけど。

あれ、相当怒ってる。

眼がマジ、怖かった。

さすが元ヤン。

あの記事の事、素直に話しときゃ良かった。

時、既に遅し。

松本氏の言う事は、至極、もっともだ。

人気俳優とスキャンダルなって、あたしの素性が表に出たら、本売る為の売名行為と世間に思われるかも知れない。

あたしがそれなりに名の通った、実力のある作家なら話しは別やけど。

ぺーぺーのあたしじゃ作品の評価もされず、スキャンダル起こして本売りたいだけ、と言われかねない。

松本氏は、正しい。

けどもですよ。

なぜあのタイミングで、出す!?

しかも、相手、冬馬くんだよ!?

尊、どんだけ怒ってるか想像つかねえし!!

どうしてくれんだよ!?

まつもとおおお!!…さん。

4時を少し回った頃、玄関が開く音がした。

多分、店終わって、速攻で帰って来たんや。

リビングのドアが開いて、部屋が明るくなった。

「電気くらいつければいいのに」

尊の声がした。

「ただいま。みのりさん。顔、上げてよ」

俯いた顔を、少し、上げた。

一度も見た事無い感情すら無さそうな、表情の無い、尊。

そして、もう一人。

龍二くん、が。

いた。 

なんで、龍二くん?

凄く、困った顔の龍二くん。

あたしと眼が、合った。

なんか、違う。

なんとも、言い様の無い、龍二くんの瞳。

違う。

困ってるんじゃなくて、怯えた様な。

尊は、コートとジャケットを脱いで、ソファーに投げ捨てた。

「ひゃっ!」

その音にビビって、声が出る。

「みのりさん」

尊が、あたしの前に立つ。

「尊さんっ!?」

あたしの頭へ伸ばそうとする尊の腕を、龍二くんが両手で掴んだ。

「なんだよ、龍二」

龍二くん見もせず。

「尊さん手、出すのは…」

龍二くんが言った。

「お前、ウザい」

龍二くんの手をもう片方の手で、叩き落とすように引き剝がす。

尊の手が、あたしの頭に触れる。

思わず、ビックっと反応する。

「大体、なんでお前、家までついて来んだよ」

「…それは…」

少し、あたしに視線移し尊にまた戻す、龍二くん。

「大事な女に、傷つけたりするワケねえだろ」

尊があたしの頭、撫でる。

「こんなに可愛いのに」

この人、誰。

「俺が殴ったりするかよ」

知らない。

「俺の一番大事なものなのに」

こんな尊、知らない。

「みのりさん?」

怖い。

「みのりさんは、俺の事、バカにしてるのかな」

怖くて、涙が溢れてくる。

「そ…んな…こと、ない」

声がかすれる。

「じゃあ、なんで俺に隠し事するの?バレなきゃ、なにしてもいいと思ってるの?」

「尊が怒ると…おもっ…」

頭を撫で続ける、尊。

「当たり前でしょ?自分の女が隠れて男と遊んでたら、誰だって怒るよ」

何も言えない。

「俺が知らないところで、アイツとなにしてるのかな」

冬馬くんの事を言う。

「な…にも…してない」

「でも、アイツん家、行ったんでしょ」

「ちがう…あれ…加州木くんの家…」

「………」

どっちにしても男ん家だろ。

吐き捨てる様に、言った。

「ねえ。みのりさん?」

頭を撫で続けながら。

「アイツと、ヤッたの?」

言った。 

冷たい、尊の声。

「し…してないっ!なにも無いっ」

「夜中に男ん家に上がり込んどいて?」

綺麗な顔をいっそう際立たせる、冷たい表情。

「ごめんなさいっ…でも、ホントになにも…」

「みのりさんは、俺じゃなくてもいいのかな。ホントは誰でもいいの?」

「ちがっ…」

言葉が詰まって、上手く出てこない。

「龍二」

尊は側に立つ、龍二くんに声をかけ。

「お前、みのりさんとしてやれば?」

あり得ない言葉を口にした。

「尊さんっ!」

龍二くんは驚いた顔で、尊を見た。

尊は。

一体。

何を。

言ってるん?

「みのりさん、抱いてあげると凄い可愛いんだよ」

ずっと、頭を撫でながら。

「尊さん…」

「お前、俺の言う事、聞けねえのか?」

龍二くんが、小さく、ため息ついた。

「尊さん、少し…落ち着いて下さい」

「………」

尊が膝を折って、あたしと目線を合わせる。

涙で濡れているほっぺた、両手で包む。

「……冗談だ」

哀しそうな顔で、あたしを見つめた。

「俺以外の男に…触らせるワケねえだろ」

凄く、哀しい瞳で。

あたしの、頬を撫でる。

「お前、帰っていいよ」

「…尊さん」

「……大丈夫だから。帰れ」

龍二くんは、また、ため息をついた。

「…わかりました」

そう言うと、一度、心配そうな顔であたしを見て、部屋を出て行った。

二人きりになったリビングに、あたしの嗚咽だけが鳴る。

「……みのりさん…」

尊が、怖くて。

ただ。

怖くて。

涙が。

止まらない。

「来て」

腕を掴んで、あたしを立たせようとする。

「……や」

残った手で、ソファーにしがみつく。

尊は、少し困った様な顔した。

「………」

無理矢理、その場からあたしを抱き上げる。

「やだ…いや…」

抵抗しようと、もがくのを無視して。

「やめて…たける…」

ベッドに下ろす。

「みのりさんが誰のものか、ちゃんとわからせてあげる」

あたしの上で、そう言った。
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