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そのなな
そのなな-2
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神様は、珍しくあたしのお願いを聞いてくれたらしく。
なんとか、平穏無事に時は過ぎた。
そして。
新たな窮地に、立たされてるあたし。
て、ゆーか、追い込まれてる。
『……天海さん』
電話から聞こえる、トーンの低い、声。
今めっちゃ、眉間に皺寄せて、怖い顔してんやろうな。
『……僕の気持ち、わかってくれますよね?』
「あっ…いや、松本さんのお気持ちは…はい」
突然の出来事に、混乱するあたし。
『……僕も、これ以上黙ってられないんです』
「……ハイ」
『貴女が、どう言おうと、僕の気持ちは変えられません』
「……いや、でも、それは…」
『…………』
「…………」
『……いいですか』
「…………」
『これは、お願いじゃなくて、決定、です』
強くなる、松本氏の語気。
決定。
の、部分を強調した。
あたしはもう、逆らう事は出来ない。
『空港まで、どれくらいで着きますか?』
遅筆なあたしは。
「えと。……車で20分くらい、です」
『今5時半ですから…ちょっと待って下さい……ああ。7時15分の便、予約出来ました。間に合いますね?』
締め切りまで、後5日しかないと言うのに。
「……ハイ」
予定の半分しか、原稿が終わっていない。
『羽田まで迎えに行きますから、乗り遅れない様に』
このままじゃ、原稿が、落ちる。
『原稿、落ちたら……わかってますよね?』
出版社御用達のホテルで、ひたすら原稿を書かされる。
「……ハイ」
人生初の。
作家生活初の、"ホテルにカンヅメ"を。
経験する事に、なった。
羽田に着いてすぐ、松本氏に身柄を拘束され、タクシーに乗せられた。
ホテルは、新宿。
羽田から新宿までタクシーなんて、すげえな。
と、思ったけど黙ってた。
だって松本氏、すんごい怖い顔、してるんやもん。
なんか言ったら、怒られそう。
荷物は、着替えのみ。
帰りに着る服以外は、下着とジャージ。
外なんか、出してもらえんしね。
ジャージでいいっす。
さっきから、バッグの中の、マナーモードにしてる携帯の振動が響き続けている。
あたしの携帯、10コールで留守電になる様にしてるけど、切れてもすぐ、かかってくる。
鬼電してやがる。
多分、いや、絶対、尊だ。
急やったから。
東京でカンヅメなってくる。
とだけ、メッセージした。
松本氏がいるから、電話、出られない。
ホテルに連行されて。
「携帯、僕が預かります」
て、言われた。
「集中してもらわないと困りますんで」
「いやっ、あのっ!じっ、実は祖父が」
携帯取り上げられて、連絡取れんかったら、尊が何するかわからんっっ!!
「そふ?」
「き、昨日から危篤なんでっ、よ、夜中とか連絡あるかもしれないんでっ!」
松本氏は、少し考えて。
「…わかりました。でも、自分からかけたりするのは、禁止ですからね」
はーっ、と、ため息をついた。
また明日来ます、と言って松本氏は部屋を出て行った。
もう、夜の11時だ。
鬼電は続いてる。
バッグから携帯を出して、ディスプレイを見ると、やっぱり、尊。
……てか、アンタ。
仕事、してんの!?
なんとか、平穏無事に時は過ぎた。
そして。
新たな窮地に、立たされてるあたし。
て、ゆーか、追い込まれてる。
『……天海さん』
電話から聞こえる、トーンの低い、声。
今めっちゃ、眉間に皺寄せて、怖い顔してんやろうな。
『……僕の気持ち、わかってくれますよね?』
「あっ…いや、松本さんのお気持ちは…はい」
突然の出来事に、混乱するあたし。
『……僕も、これ以上黙ってられないんです』
「……ハイ」
『貴女が、どう言おうと、僕の気持ちは変えられません』
「……いや、でも、それは…」
『…………』
「…………」
『……いいですか』
「…………」
『これは、お願いじゃなくて、決定、です』
強くなる、松本氏の語気。
決定。
の、部分を強調した。
あたしはもう、逆らう事は出来ない。
『空港まで、どれくらいで着きますか?』
遅筆なあたしは。
「えと。……車で20分くらい、です」
『今5時半ですから…ちょっと待って下さい……ああ。7時15分の便、予約出来ました。間に合いますね?』
締め切りまで、後5日しかないと言うのに。
「……ハイ」
予定の半分しか、原稿が終わっていない。
『羽田まで迎えに行きますから、乗り遅れない様に』
このままじゃ、原稿が、落ちる。
『原稿、落ちたら……わかってますよね?』
出版社御用達のホテルで、ひたすら原稿を書かされる。
「……ハイ」
人生初の。
作家生活初の、"ホテルにカンヅメ"を。
経験する事に、なった。
羽田に着いてすぐ、松本氏に身柄を拘束され、タクシーに乗せられた。
ホテルは、新宿。
羽田から新宿までタクシーなんて、すげえな。
と、思ったけど黙ってた。
だって松本氏、すんごい怖い顔、してるんやもん。
なんか言ったら、怒られそう。
荷物は、着替えのみ。
帰りに着る服以外は、下着とジャージ。
外なんか、出してもらえんしね。
ジャージでいいっす。
さっきから、バッグの中の、マナーモードにしてる携帯の振動が響き続けている。
あたしの携帯、10コールで留守電になる様にしてるけど、切れてもすぐ、かかってくる。
鬼電してやがる。
多分、いや、絶対、尊だ。
急やったから。
東京でカンヅメなってくる。
とだけ、メッセージした。
松本氏がいるから、電話、出られない。
ホテルに連行されて。
「携帯、僕が預かります」
て、言われた。
「集中してもらわないと困りますんで」
「いやっ、あのっ!じっ、実は祖父が」
携帯取り上げられて、連絡取れんかったら、尊が何するかわからんっっ!!
「そふ?」
「き、昨日から危篤なんでっ、よ、夜中とか連絡あるかもしれないんでっ!」
松本氏は、少し考えて。
「…わかりました。でも、自分からかけたりするのは、禁止ですからね」
はーっ、と、ため息をついた。
また明日来ます、と言って松本氏は部屋を出て行った。
もう、夜の11時だ。
鬼電は続いてる。
バッグから携帯を出して、ディスプレイを見ると、やっぱり、尊。
……てか、アンタ。
仕事、してんの!?
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