You Could Be Mine 【改訂版】

てらだりょう

文字の大きさ
上 下
38 / 160
そのろく

そのろく-6

しおりを挟む
「うん。今から京都なんだ。違うよ、遊びじゃなくて親戚の法事」

新幹線の中で、スケジュールのチェックに余念の無い、あたし。

「寂しい?俺もだよ。でも、三日で戻るし」

ぺーぺーのあたしの名前じゃ、一般ぴーぽー立ち入り禁止の場所に入ったり、重要な資料を見せて貰えんので、松本氏が社名で取材申し込みをしてくれた。

「俺の事、待っててくれる?…ふふ。嬉しい」

今回、本格的な取材は初めてで、行くトコも大層なトコだったりするんで、松本氏に言われ、生まれて初めて名刺作った。

OL時代にもすら、持った事無いのに。

「そんな事、言わないで?また会えるんだし」

"作家  天海 瞬" 

名刺を見ると、作家になった気がする。

いや、作家なんやけどね。

「うふふ…お店で会おうね。帰ったらすぐ電話するから」

尊は、あたしの隣で営業電話してる。

つーか、お客様あ?
車内での携帯電話のご使用は、お控え下さいぃ?

「あっ!みのりさん!アイスだよ、アイス食べよ!」

尊は、車内販売のお姉さんから、アイスを二つ買った。

はしゃいでやがる。

「ハイ、みのりさん。このアイス、凄く固いんだよ。知ってた?」

知っとるわ!

まあね。

二人でお出かけなんて、滅多に無いし、しかも旅行やし。

「凄いガチガチ!スプーン刺さらないっ」

擦られたネタに嬉しそうな尊。

あたしも嬉しいんやけど。

仕事やなかったらね。

隣ではしゃぐ尊を、可愛い、と思った。

半分、鬱陶しいけど。 

京都駅の、大きな階段を降りて、一息ついた。

京都に住んでる友達と、ランチする約束をしてる。

「…みのりさん。友達って…」

「女の子だよ」

尊は、笑顔になった。

女の子、て聞いて安心したんやろうけど。

「みのりーん!」

タクシー乗り場の方から、背の高いショートカットの、ちょっとV系入ったコが走って来る。

学生ん時の友達、吉乃ちゃんだ。

「あ!吉乃ちゃーん!」

吉乃ちゃんに、手を振った。

吉乃ちゃんは、満面の笑顔で。

「みのりん!久しぶりっ!」

あたしに抱きついた。

「ひ、久しぶり…」

吉乃ちゃんは、両腕で胸にあたしの頭を抱え込み。

「相変わらず可愛い!みのりん!」

頬擦りした。

意外と巨乳な吉乃ちゃんの胸で、窒息しそうになる。

「よ、吉乃ちゃん。苦しい…」

「あっ、ごめん!」

吉乃ちゃんは、あたしの頭を解放して、両手であたしの顔を持ち上げ。 

「大丈夫?ごめんね、久しぶり過ぎて嬉しくて…久しぶりに見ても…可愛い。みのりん!」

また抱きついた。

あたしの頭抱え込み、頬擦りする。

「よ…吉乃ちゃん、彼氏一緒やから」

は、離してくれ。

「彼氏?」

吉乃ちゃんは、やっと気がついた様に尊を見た。

「…初めまして」

尊が、営業用スマイルを吉乃ちゃんに放出した。 

しかし、吉乃ちゃんのATフィールドは、その攻撃を跳ね返した! 

尊の攻撃は、吉乃ちゃんには効かない。

だって。吉乃ちゃんは。

男が嫌いだ。

その代わり。

……………………女好きだ。 

「みのりん、荷物持ってあげる」

「大丈夫です。みのりさんの荷物は俺が」

尊が、吉乃ちゃんが触れる前に、あたしの荷物を奪い取った。

両手に、荷物を持つ尊。

「へえ?優しいね、彼氏」

吉乃ちゃんは、あたしの手を握って。

「じゃ、行こう。みのりん!」

勝ち誇った様に、笑った。

「みっ、みのりさん!」

尊は、何かを感じ取ったらしく。

急いで片手に二人分の荷物まとめて、あたしの空いてる手を握った。

背の高い二人に、両手を繋がれる、チビのあたし。

あたしゃ、NASAに捕まった宇宙人かっっっ!!

「今から二条城行くの?」

「うん。取材しに。その後島原行くん」

吉乃ちゃんおすすめのおばんざい屋さんで、ランチ。

「あー。ホント仕事休めば良かったあ。みのりんと一緒に二条城行きたかった」

尊の存在は全く、アウトオブ眼中な吉乃ちゃん。

尊は、無言でご飯食べてる。

昔、一回、吉乃ちゃんにキスされそーになった事あるけど。

面倒そうやから、尊には言わんどこ。

「夜どうすんの?遊ぼうよ」

吉乃ちゃんが言ったら。

「夕食は旅館で予約してますから。それに、明日も朝早いから遊べません」

尊が答えた。

「みのりん、今度来る時は一人でおいでね!」

あたしに、気の済むまで頬擦りして、吉乃ちゃんは仕事に戻って行った。

「あの人、絶対みのりさんの事、エロい眼で見てた!」

まあ、そーだな。

「みのりさん可愛いから、男だけじゃなくて、女にも気を付けないと!」

吉乃ちゃんは特殊だよ。

「俺がいなかったら、なんかされてたかも!」

尊は、あたしの両手をがっしり握って。

「やっぱり、俺がついてきて良かったね、みのりさん!」

満足気に、言った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...