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そのろく

そのろく-4

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「あたし、結構強いよ」

「俺、負けた事無い」

「いや、加州木、俺に勝った事ねーじゃん」

大の大人が、何の言い合いしてるのか。

UNO強い!

と、言う話で。

昔よくやった遊びの話から、UNOが強いのは自分だ!、みたいな話の流れになり。

ほんと、くだらん事なんやけど。

なんでか、三人ともムキになっちゃってさ。

「決着つけよーぜっ!」

で、一番近い加州木くん家に行く事になった。

止めときゃ良かったのに。

店出て、あたしを真ん中にして、並んで歩きながら。

「二宮ぁ、どーせなら何か賭けようぜ」

冬馬くんが言った。

「賭ける、て何を?」

「んー。俺が勝ったらぁ、二宮が何でも俺の言う事聞く」

「はあ?あたしが勝ったら?」

「俺のサインやる」

「あたしの価値は紙一枚分かっ!」

「なんだと?てめーっ」

冬馬くんが、あたしにヘッドロック。

「この俺様のサインだぞ。ありがたがれっ!」

「いででっ!そんな賭け、誰が乗るもんかっ」

とか、やり合いながら。

普通に、同級生と遊んでる気分やった。

加州木くん家で三人で盛り上がって、深夜までゲームが続いた。 

「ふーん。映画のロケって、大変なんだぁ」

「そ。天気次第だったりなあ」

今は、冬馬くんと二人でゲーム。

早々に連敗した加州木くんは、ネームしよ、て言って仕事部屋に行った。

コンポからは、低めの音量で流れてくるskid row。

「監督が、雲の位置が悪い、とか言い出して雲待ちになったりとかな」

「そりは大変やな。あ、UNO!」

「げ。またかよっ!二宮マジ強ぇ!」

あたしは、連勝してた。

「あー、もう止め!」

冬馬くんは、カードを投げ出す。

散らばったカードを集めながら。

「こんなに勝つなら、マジでなんか賭けときゃ良かった」

マジで思って言った。

「ははは。残念したぁ」

うーん。

冬馬くんのサインでも、貰っとくかなあ。

んで、オークション出したらいくらになるかなー。

本人を目の前に、失礼な事を考えるあたし。

「二宮ぁ。お前の本、結構面白いな」

ええ!?読んでくれたのお!?

「マジでっ!?」

「あ。加州木が絵描いたヤツしか読んでないけど」

それでも、人に褒めたりすると嬉しい!

「ありがとお!」

思わず笑顔が出る。

にやけてると。

「あー。お前ってさあ…」

「ん?なに?」

「……やっぱ、いい。何でもない」

冬馬くんは、何か言いかけて止めた。

「…なぁ、二宮」

「なに?」

まだニコニコの笑顔を、冬馬くんに向けるあたし。

「俺と、イイコト、しねぇ?」

……イイコト。

って。なんですか?

冬馬くんは、それまで笑っていたのに。

一瞬、眼を閉じた後。

まるで違う人みたいに表情が変わった。

凄く真剣な顔で、瞳も真剣で。

その瞳で、あたしの事を真っ直ぐ見つめる。

あたしは、その瞳に捉えられた様に、動けなくなった。

少し、顔を傾けて。

薄く、瞼を閉じて。

冬馬くんの、綺麗な顔が近付いてくる。

思考が停止したあたしは、ただ、近付いてくるその顔を見てた。

冬馬くんは、あたしの顎を軽く持ち上げ、少しだけ上を向かせる。

後、ほんの少し。

唇が、触れる寸前。

「…って、俺、演技力凄くねぇ?」

冬馬くんが、あたしから離れて笑った。

呪縛から解かれた様に、思考が再開する。

「なっ!なにすんだよお!」

一般ぴーぽーからかってんじゃねぇよっっ!! 

「ははっ。二宮、真っ赤になってやんの。俺って、さすがだろ?どーだ、尊敬しろ」

都合の良い時だけ芸能人オーラ出すんじゃねえ!!

「あ、悪趣味なヤツ」

「俺と付き合わね?二宮」

笑いながら、冬馬くんが言った。

まだ言うかっっ!!

「いや、も、いいっす」

「俺、マジで言ってんだけど?」

はい????

「……あたし、彼氏いるもん」

「ふうん。で?」

で?って。

「付き合えるワケないでしょ」

「関係無ぇだろ?お前が俺の事、好きになれば良いだけだし」

な。なんだ、この俺様は。

「いや、無理だし」

尊、いるし。

「あ、そ。まぁ今日のところは、ここまでにしとく」

冬馬くんは。

「俺、明日早いから、寝るわ」

そのまま寝てしまって、あたしは加州木くんにタクシーを呼んでもらって、ホテルに帰った。

なんなんだああああ!?
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