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そのろく

そのろく-2

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大先生のパーティー、ってもね。

あたしみたいなヒヨッこなんか、知り合いなんているワケでもなく。

大石先生にご挨拶済ませた後は、松本氏にくっついて他の作家さん達のところに挨拶回り。

それも終わって、松本氏もどっか行ってしまって一人でぼーっ、としてたら。

「天海先生?」

知らない人に、声かけられた。

「ハイっ!?」

先生、とか呼ばれて、びっくりした。

「ああ、突然で失礼しました。僕、宝文出版の坂崎と申します」

と、名刺をくれた。

「先生、お噂通り、可愛らしい方ですね」

どっ、どんな噂ですか、それっ!?

「いや、あはは…」

「この間の短編、拝読させて頂きましたよぉ。いやあ、先生の文章良いですね。透明感があって、表現力もあるし」

「あっ、ありがとうございます」

作品を褒められたりすると、舞い上がってしまう。

「今後はどう言う路線でいくんですか?」

坂崎さんはニコニコしてて、感じは悪くないけど。

やたらと肩とか触ってくる。

年は松本氏と同じくらいかな。

松本氏、32歳やけど。

「あ。まあ、路線て言うか、時代物書きたいなと…」

「そうなんですか?」

「や、まだ、なかなか書きたいものが書けなくて」

「ふうん。良かったら、ウチで書いてみませんか?」

へっ!?書いて良いの!?

「ほ、ホントですかっ!?」

坂崎さんは、ニコニコしながら、肩に手を回してきた。

な、なに。この人。

「あ、あの…?」

な、なんで肩に手が?

坂崎さんは、ニコニコしている。

「その辺りの事、お話しませんか?」

近いっ!顔が近いっっ!!

「そ、それは、書かせて頂けるなら…」

「じゃあ、どこか静かな所で…」

なっ、なぜに耳元で言う必要があるっ!?

「はは…き、今日は約束があるんで…」

「天海先生、お住まいは地方でしょう?こう言う機会が無いとゆっくりお話出来ないから…」

「天海さん?何してるんですか?」

松本氏が、慌てた様に走って来た。

坂崎さんは、何でもなかった様に。

「じゃあ、また」

と、去って行った。

へ、変なヤツ…。

顔を上げて松本氏を見ると。

「ひっ」

松本氏は、いつもより更に怖い顔をしていた。

「…外に出ましょう」

あたしを、パーティー会場から連れ出した。

「…アイツは、コレ、と思った新人にすぐ手をつけるので有名なんですよ」

「はあ…まあ、でもあたしなんて手つけられるようなもんじゃないし…」

ははは、と笑った。

松本氏は、呆れた様にあたしを見た。

「……貴女、自覚無いんですか!?」

「いや…それは、作家としての自覚はまだ足りないとは思いますが…」

松本氏は、はーっ、とため息をついた。

「もう、いいです…で、何の話してたんですか?」

「あ、まあ、ウチで書いてみないか、的な話を」

「依頼来たら、受けるんですか?」

「それは…書きたいものであれば」

「書きたいもの?」

「いや、そのぉ…時代物が書きたいって言うか…」

「………」

多分、松本氏には、書けるスキルが足りないと言われるだろうけど。

松本氏は、無言であたしを見た。

うっ。怖いっ!

「プロット、出せますか?」

「……ハイ?」

「出せるなら、会議にかけます」

「え…?」

「貴女は、ウチで育ててる大事な作家です。書くなら、ウチで書いて下さい」

………ま。

マジ…ですかああああ!? 
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