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そのさん
そのさん
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朝っぱらから。
携帯が鳴る。
掛け布団から、手だけ出して。
もぞもぞと枕元に置いてた携帯を探す。
ベッド横の目覚まし時計を見たら。
針が指す時刻は7時半。
誰だよ。
こんな朝早くに。
あたしゃ朝4時まで仕事しとったんじゃい!
不機嫌全開で発信元も見ず、着信ボタンを押した。
誰か知らんが、くだらん用件なら殺す!
『あ。みのりさん?』
「………」
誰だ。
朝っぱらから電話してくるアホ男は。
『もしもし?みのりさん?』
……男?
『…俺だよ?』
…た。
「たけ…る?」
電話から聞こえる声の主は。
昨日、降って湧いて出来た、あたしの彼氏。
『おはよう、みのりさん』
「おはよ…」
尊の声に半覚醒から動き出す脳みそ。
『寝起きの声も可愛いね』
うひゃあ!
朝っぱらからなんちゅう甘いセリフ!
おかげで目が覚めました。
「どしたの」
『うん。みのりさんの声聞きたくて』
ひゃああ。
目が覚めるどころか、顔が赤くなってきた。
『まだ寝てた?ごめんね』
「あっ、だいじょぶ。起きた」
『俺、今から帰って寝るんだけど』
あ。そうだよな。
今まで仕事だったんだ。
水商売も大変だなあ。
『俺の家で一緒に寝よ?』
「…は?」
『声聞いたら、会いたくなっちゃった』
はい?
『ダメ?』
ダメ?って言う尊の声は、何だか哀しそう。
哀しそうにする尊の顔、浮かんできた。
ダメだ。
あの顔には弱い。
「…今どこにいるん?」
尊は、繁華街にあるドーナツショップの名前を言った。
「ちょっと時間かかるけど」
『いいよ。来てくれるまで待ってる』
「うん。わかった」
『ありがと。みのりさん、大好き』
うぎゃああああああああ!
電話切って。
急いで階段駆け降りて顔を洗う。
「みのり!煩い!朝からバタバタするんやないよ!」
台所から響くおかんの怒鳴り声。
鏡を見て。
やっぱ化粧くらいはしたほうがいいよな。
か、彼氏に会うんだもんな。
ジャージを脱いで、いつも着てるデニム手にしたところで。
ス、スカートのほうがいいかな。
引き出しを開けてみたけど、無い。
スカートとか、OL時代のしかないからどっかにしまいこんでる。
仕方無しに、長袖Tとジーンズを着てとりあえず、首にリネンのスカーフ。
化粧して、台所に行くとおとんが朝ごはん中。
二宮家恒例、トーストに目玉焼き。
おとんのトシじゃいい加減、和食が食べたかろうに。
「なんや、みのり。早いな」
おとんが目、丸くする。
朝、おとんに会うのは何年振りか。
冷蔵庫から牛乳を出してコップにどぶどぶ注ぐ。
「早う起きようて思ったら出来るんに。なんでいつもちゃんと出来んかな、この子は」
おかんが朝から攻撃してくる。
無視して牛乳を一気飲みして。
「出掛けてくる」
と、台所を出た。
アンタどこ行くん!仕事は!?
おかんが言ったけど、聞こえてないふり。
車のエンジンをかけ、尊の待つドーナツショップへ。
朝の道路は、思った以上の渋滞。
通勤時間帯なの忘れてたぜ。
車の列は進まない。
信号が赤になってからようやく数メートル動く。
裏道を行こうにも、ドーナツショップは大きな通り沿い。どっちみち渋滞に捉まる。
はあぁ。
ステアリング握りながら溜息。
そもそも、朝っぱらから何してんや、あたし。
朝早くから呼び出されて。
ほいほい飛び出てきたは良いけど。
そんな言うこと聞いてあげるとか、尊のこと好きなんかな?
自問自答。
顔、綺麗でまあ、好き。
性格、まだよくわからん。
優しいけど。でも。
えっちの時はドS。
でも、えっち上手い。
や、だからといって、身体目当てなワケでは。
声、好きだな。
低くて、あたし好みの声で。
みのりさん。
って呼ばれるの、なんか好き。
尊に"みのりさん好き"って言われるの、好き。
好きって言われるから好きなんかな?
なんだかわからんくなる。
渋滞がようやく収まる頃。
あたしの車はやっとドーナツショップの前にたどり着く。
ハザードつけて、車を降りる。
結局、一時間くらいかかったけど、まだ待ってるかな?
もう帰ったかも、と思いながら店内を見渡すと。
窓際の席で、タバコを吸いながら外を眺めてる尊を見つけた。
尊は、あたしに気付くと嬉しそうに笑った。
一番最初に見たときと同じで。子どもがいっぱい楽しいときみたいに。
ほんとに嬉しそうに。
ああ。
あたし、尊のこの顔が好き。
そう思った。
携帯が鳴る。
掛け布団から、手だけ出して。
もぞもぞと枕元に置いてた携帯を探す。
ベッド横の目覚まし時計を見たら。
針が指す時刻は7時半。
誰だよ。
こんな朝早くに。
あたしゃ朝4時まで仕事しとったんじゃい!
不機嫌全開で発信元も見ず、着信ボタンを押した。
誰か知らんが、くだらん用件なら殺す!
『あ。みのりさん?』
「………」
誰だ。
朝っぱらから電話してくるアホ男は。
『もしもし?みのりさん?』
……男?
『…俺だよ?』
…た。
「たけ…る?」
電話から聞こえる声の主は。
昨日、降って湧いて出来た、あたしの彼氏。
『おはよう、みのりさん』
「おはよ…」
尊の声に半覚醒から動き出す脳みそ。
『寝起きの声も可愛いね』
うひゃあ!
朝っぱらからなんちゅう甘いセリフ!
おかげで目が覚めました。
「どしたの」
『うん。みのりさんの声聞きたくて』
ひゃああ。
目が覚めるどころか、顔が赤くなってきた。
『まだ寝てた?ごめんね』
「あっ、だいじょぶ。起きた」
『俺、今から帰って寝るんだけど』
あ。そうだよな。
今まで仕事だったんだ。
水商売も大変だなあ。
『俺の家で一緒に寝よ?』
「…は?」
『声聞いたら、会いたくなっちゃった』
はい?
『ダメ?』
ダメ?って言う尊の声は、何だか哀しそう。
哀しそうにする尊の顔、浮かんできた。
ダメだ。
あの顔には弱い。
「…今どこにいるん?」
尊は、繁華街にあるドーナツショップの名前を言った。
「ちょっと時間かかるけど」
『いいよ。来てくれるまで待ってる』
「うん。わかった」
『ありがと。みのりさん、大好き』
うぎゃああああああああ!
電話切って。
急いで階段駆け降りて顔を洗う。
「みのり!煩い!朝からバタバタするんやないよ!」
台所から響くおかんの怒鳴り声。
鏡を見て。
やっぱ化粧くらいはしたほうがいいよな。
か、彼氏に会うんだもんな。
ジャージを脱いで、いつも着てるデニム手にしたところで。
ス、スカートのほうがいいかな。
引き出しを開けてみたけど、無い。
スカートとか、OL時代のしかないからどっかにしまいこんでる。
仕方無しに、長袖Tとジーンズを着てとりあえず、首にリネンのスカーフ。
化粧して、台所に行くとおとんが朝ごはん中。
二宮家恒例、トーストに目玉焼き。
おとんのトシじゃいい加減、和食が食べたかろうに。
「なんや、みのり。早いな」
おとんが目、丸くする。
朝、おとんに会うのは何年振りか。
冷蔵庫から牛乳を出してコップにどぶどぶ注ぐ。
「早う起きようて思ったら出来るんに。なんでいつもちゃんと出来んかな、この子は」
おかんが朝から攻撃してくる。
無視して牛乳を一気飲みして。
「出掛けてくる」
と、台所を出た。
アンタどこ行くん!仕事は!?
おかんが言ったけど、聞こえてないふり。
車のエンジンをかけ、尊の待つドーナツショップへ。
朝の道路は、思った以上の渋滞。
通勤時間帯なの忘れてたぜ。
車の列は進まない。
信号が赤になってからようやく数メートル動く。
裏道を行こうにも、ドーナツショップは大きな通り沿い。どっちみち渋滞に捉まる。
はあぁ。
ステアリング握りながら溜息。
そもそも、朝っぱらから何してんや、あたし。
朝早くから呼び出されて。
ほいほい飛び出てきたは良いけど。
そんな言うこと聞いてあげるとか、尊のこと好きなんかな?
自問自答。
顔、綺麗でまあ、好き。
性格、まだよくわからん。
優しいけど。でも。
えっちの時はドS。
でも、えっち上手い。
や、だからといって、身体目当てなワケでは。
声、好きだな。
低くて、あたし好みの声で。
みのりさん。
って呼ばれるの、なんか好き。
尊に"みのりさん好き"って言われるの、好き。
好きって言われるから好きなんかな?
なんだかわからんくなる。
渋滞がようやく収まる頃。
あたしの車はやっとドーナツショップの前にたどり着く。
ハザードつけて、車を降りる。
結局、一時間くらいかかったけど、まだ待ってるかな?
もう帰ったかも、と思いながら店内を見渡すと。
窓際の席で、タバコを吸いながら外を眺めてる尊を見つけた。
尊は、あたしに気付くと嬉しそうに笑った。
一番最初に見たときと同じで。子どもがいっぱい楽しいときみたいに。
ほんとに嬉しそうに。
ああ。
あたし、尊のこの顔が好き。
そう思った。
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