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第二章 凰雅side 13

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日本からは母親がすごい朗報をもたらした。

若い頃習っていた華道を俺が結との協力要請した三年前からまた習い始め その先生宅が結の本家筋だったらしく結の父親兄妹を凄く可愛がっていたそうだ。どうでもいい話 系譜で大叔父で血縁では叔父になるらしい。
同じ流派だったのはラッキーな偶然。

その華道の先生とうちの母親が気が合い親しくしていて二人で出掛ける仲だという。母親の言葉を借りると仲良しだそうだ。

習い始める時から結との繋がりを知っていて 上手くいけば と下心があったと言っていた。

この一連の事は全て父親の入れ知恵らしいが 役者が悪けりゃ務まらない。

....やる時はやる人だったな。
そう言えば昔は豹変するタイプだった。
ガキの頃怒る時は急に鬼より恐ろしい形相になった。いつもその変身ぶりに感心していた。竜一なんかは度肝を抜かれていたしな。

それは兎も角
母親が 息子が結さんに惚れてて見合いなんてどうだろうか と話をふってくれ 
すると何を勘違いしたのか 俺は内気で真面目で一途な男設定で認識され何としても上手くいかそう と絶対的な協力を申し出てくれたのだ。
その先生の旦那さん 後々結にきくと“世田谷の大叔父様”と呼んでいたが その大叔父様夫婦に呼び出された。

実質的な面接なんだろう。これは。


勿論俺は結に近づく為ならとアメリカから急ぎ帰国した。
大学は六月の卒業を待つばかりとなっていた。

釣書は先だって母親から届けて貰い 手土産に大叔父好物の入手困難な日本酒と先生好物の高級チョコレートも持参の上喜び勇んで駆け付ける。

にこやかに笑う72才の大叔父様はなかなかどうして目の奥が鋭い。俺の本心を見極めようと心の中を覗き込んできた。

望ましい。俺の本心を見てくれと思う。
誰にだって負けない。全てを賭けたっていい。

華道の先生の後押しも凄く どの家でも妻の意見は珍重されるようで初めからウェルカムで迎えてもらっていたが最終的に申し分無いと太鼓判を押して貰った。
大叔父様が直接結の父親に話を持っていてくれ トントン拍子に話は進み見合いの日取りが決まった。思った通り大叔父様からだと無下に出来ないようで今までとは全く違う反応だった。
タイミングも良かったのかも知れない。

68才の華道の先生は俺と目が合うとぽっと頬を染め こんな素敵なんだから断るなんて無いだろうけどそうならないよう先生と母親で作戦まで考えていたようだった。

実にありがたい。
今度こそ失敗は許されない。
使えるものは何でも使う。外堀まで埋めてくれた女性二人には頭が上がらなくなった。
勿論成婚の折りには非常識な程のお礼はさせて頂いた。成金らしく。
そちらからのお祝いは差し引いております と付け加えて。
じゃないと式の時に奮発されても意味ねえしな。
そう 無論母親にも。
実際母親には見合い成立時に欲しい物をリストアップされ丁重に全て進上させて頂いた。父親にもそれで充分礼になる。 

そんな世田谷の大叔父様の面接に訪れていた頃 結が帰国すると里美から知らされた。
気持ちが高揚する。
落ち着け。
あれから事前に帰国すると聞いたのはこれが初めて。
どうやら大学は日本で通うようで死にモノ狂いで卒業にたどり着いた甲斐があった。
機は熟しつつある。
ここまで待ったんだ。間違えるな。

里美には久し振りに二人で会うから絶対に来るな と釘をさされた。
待ち合わせの店も時間もきいてある。

ーーこの東京に結がいる。
俺が一番会いたい奴が近くにいる。

色んな角度から考えて 今回行ってもいいと結論付けた。

里美 悪いな。俺のほうが結に惚れてるんだよ。
邪魔でも何でも行くことにする。
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