エリート先輩はうかつな後輩に執着する

みつきみつか

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番外編18 続・野球帽と初恋(和臣視点)

八 追いかけられる

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 休日。朝。
 ベッドの中でまどろんでいると、多紀くんがすり寄ってきた。抱き合ったり口づけ合ったり。このままエッチするのかな、という雰囲気になってくる。
 ちゃんと勃つかな……。かなり不安。多紀くんの体を触っていたら反射的に勃つだろうけど。
 チャイムが鳴り、俺は起き上がった。
 多紀くんを置いてベッドを立ち、廊下に出てインターフォンに応じる。

「はい」
「上に引っ越してきたものです」

 あぁ、引っ越しの挨拶か。
 モニターを見ると、若い女性だった。出ようとする俺を、多紀くんが押し留めた。

「俺が出ます」
「え……そう?」
「はいっ! 和臣さんはまた寝てて!」
「ん、うん」

 多紀くんは大急ぎで着替えて、応対。俺は寝室でのんびり着替え。
 なんなんだろう。俺は女性と顔を合わせるとろくなことが起こらないから、多紀くんに任せたいけれど、多紀くんが女性と話をしているのも嫌だな……。

「引っ越し蕎麦もらいました!」
「よかったね」
「はいっ、あ、起きるんですか?」

 なんだか残念そう。あ、エッチしたかったのかな。最近控えめだもんね。

「あ、うん。勉強しよっかなって」
「俺も! 俺もします!」

 なんでそんな、嬉しそうな顔をしているの。
 見ていると辛くて涙が滲んでくる。堪えられそうにない。情けない。

「ひとりで勉強したいから、ごめん。外に出てくるね」

 というと、多紀くんは急に悲しそうな顔になって、それも心が痛い。
 悲しませたいわけじゃないんだ。傷つけたくもない。
 俺、何がしたいんだろう。

「ですよね、うるさくてすみません」
「ううん。難しくて、頭に入ってこなくてさ」

 そんな言い訳をして、夕方まで、図書館で勉強していた。帰りたくなくて、でもどうしようもなく、カフェに入ってまた勉強。
 すると、多紀くんが現れた。
 なんで追いかけてくるんだろう。まるで俺のことを探していたみたいに。
 もし何か――話があるからだとしたら、いやだ。多紀くんの切り出そうとする話なんて、聞きたくない。聞きたくないよ。受け入れられない。
 きっと、誰かを好きになってしまって、結婚パーティーを取り止めないといけない。一緒に暮らしている部屋から出ていくことになる。二人ともつけている指輪を外さないといけない。
 そういう話。

「ここにいたんですねっ」
「あ、図書館にいって、ここに」
「話したくて」

 その嬉しそうな顔から視線をそらして、俺は我慢できずに席を立った。
 聞きたくないんだ。
 多紀くんが追いかけてくる。俺は途中で気力がなくなって道端で立ち尽くし、多紀くんはとうとう俺の腕を取った。
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