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番外編17 リクエストなどなど3
イチャイチャしてる
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「多ー紀くん」
と呼ばれて、ゆらゆらと水に浮いていくみたいにゆるやかに覚醒。
日差しが明るいので顔に帽子をかぶせていたら、いつの間にか寝ていた。目を細く開けると、寝転がっている俺の帽子をとって、和臣さんが覗き込んでくる。
相変わらずきらきらしてるなー。快晴の青空を背負ったイケメン。
愛おしそうに俺を見つめていて、にこにことご機嫌。
鼻高いし、目も大きくて、唇の形もよくて、少し気弱そうな雰囲気で、清楚で上品でお優しそう。
とてもじゃないけれど、午前二時過ぎまで俺の耳をかじりながらかすれた甘い声で卑猥語を連発し、もうやめてと泣きじゃくる俺を構わず責め続けた絶倫男と同一人物とは思えない。ベッドの上では、本当にどうかしている。下半身は別の人格に乗っ取られている。
午前十時。
今朝は公園にピクニックに来ている。
芝生の木陰にシートを引いて軽食にしたあと、寝転がっているわけだけれど、道中、和臣さんはナンパに二回遭い、雑誌の撮影に声をかけられ、カットモデルのスカウトに遭っていた。一人で歩いてたらもっとひどいと言っていた。
途中でメガネをかけて俺の帽子をかぶらせて、マスクをして移動し、公園に来たものの、いまもまだ視線を集めている。背の高さや体のバランスのよさは隠せないのである。
木陰でビニールシートを敷いて二人で寝転がってからは、視線も少しは気にならなくなったけど、見られてるなぁという感覚は抜けない。
俺たちが周囲にゲイのカップルだと思われているのは間違いなくて、俺はいつまで経っても「違うんです。これには理由があるんです」と声を大にして言いたいし、かといって何も違わない気もするし、何一つ口に出せない事情がエベレスト級の山積み。
「多紀くん、寝てる?」
「んん、はぁい」
あくび。ふぁ~。
「寝てた?」
「んー。うつらうつら」
「ごめん、起こしたね~」
「大丈夫で~す」
「Love~」
和臣さんはキスを落としてくる。絶対見られてるし、見せつけてるだろ。
外でいちゃいちゃするのは苦手だよ。バカップルだと思われるじゃん。もっと遠慮して。
「んー、可愛い可愛い」
和臣さんは、俺に対して愛の言葉をためらいなく口にする。
俺も別に言えないわけではないのだけど、どういうタイミングで、どんなふうに言えばいいのか迷っている。最近は、俺は和臣さんの言動を観察してみることにしている。参考になるかなって。ならないけど。
和臣さんは、寝ぼけている俺の寝癖頭を梳かしながら、額にちゅーちゅーしている。
やりたい放題だな。
「イチャイチャするなら帰りますよー」
「それもいいね」
家に帰ってもっと濃厚なイチャイチャをするつもりだな。そうはいくか。
「イチャイチャしちゃうと人目が気になるじゃないですか」
「嫌?」
「気兼ねなく楽しく外デートしたいのに、見られてるなぁって思うと……」
二人で楽しく過ごしたいんだ。なーんにも気にせずにバカ話でもして笑っていたい。
でもすぐナンパされてるし、注目を集めちゃうし、その上イチャイチャすると、俺は居たたまれなくなってしまう。
それに、余計なことを考えてしまう。俺が恋人なんだから、俺のだから、見ないでくれとか。
「恋人に見せる顔は、二人きりのときだけがいいです」
「多紀くんの考えはわかった。けど、そんな可愛いこと言われると、ついイチャイチャしたくなる俺の気持ちもわかって」
体育座り可愛いな。唇尖らせちゃってさ。上目遣いで瞳をうるうるさせてる。
あざとい。
「帰ったらイチャイチャしましょ。それまでおあずけ」
「わかった」
しょんぼりしてる。耳と尻尾が垂れているね。
仕方ないなぁ。
「和臣さん。ひざ貸して」
「……!」
体育座りからあぐらになった和臣さんの太ももに頭をのせる。
和臣さんは俺の頭を優しくよしよししている。しばらくして和臣さんは言った。
「あ、やば。勃っちゃった」
「どうすんの……」
「どうにかしてくれるの?」
「帰ってからね」
「あ~。一刻も早く帰りたいし、でも膝枕もよくって、選べないや」
すごく嬉しそう。
「和臣さん」
「ん?」
唇を寄せようと前屈みになってきた和臣さんに腕を伸ばして、俺は和臣さんの顔を引き寄せ、その耳元でささやいた。和臣さんは固まり、真っ赤な顔をして口元を押さえながら、感極まって震えている。
……俺たちは、どう見てもバカップルだな。
〈イチャイチャしてる 終わり〉
と呼ばれて、ゆらゆらと水に浮いていくみたいにゆるやかに覚醒。
日差しが明るいので顔に帽子をかぶせていたら、いつの間にか寝ていた。目を細く開けると、寝転がっている俺の帽子をとって、和臣さんが覗き込んでくる。
相変わらずきらきらしてるなー。快晴の青空を背負ったイケメン。
愛おしそうに俺を見つめていて、にこにことご機嫌。
鼻高いし、目も大きくて、唇の形もよくて、少し気弱そうな雰囲気で、清楚で上品でお優しそう。
とてもじゃないけれど、午前二時過ぎまで俺の耳をかじりながらかすれた甘い声で卑猥語を連発し、もうやめてと泣きじゃくる俺を構わず責め続けた絶倫男と同一人物とは思えない。ベッドの上では、本当にどうかしている。下半身は別の人格に乗っ取られている。
午前十時。
今朝は公園にピクニックに来ている。
芝生の木陰にシートを引いて軽食にしたあと、寝転がっているわけだけれど、道中、和臣さんはナンパに二回遭い、雑誌の撮影に声をかけられ、カットモデルのスカウトに遭っていた。一人で歩いてたらもっとひどいと言っていた。
途中でメガネをかけて俺の帽子をかぶらせて、マスクをして移動し、公園に来たものの、いまもまだ視線を集めている。背の高さや体のバランスのよさは隠せないのである。
木陰でビニールシートを敷いて二人で寝転がってからは、視線も少しは気にならなくなったけど、見られてるなぁという感覚は抜けない。
俺たちが周囲にゲイのカップルだと思われているのは間違いなくて、俺はいつまで経っても「違うんです。これには理由があるんです」と声を大にして言いたいし、かといって何も違わない気もするし、何一つ口に出せない事情がエベレスト級の山積み。
「多紀くん、寝てる?」
「んん、はぁい」
あくび。ふぁ~。
「寝てた?」
「んー。うつらうつら」
「ごめん、起こしたね~」
「大丈夫で~す」
「Love~」
和臣さんはキスを落としてくる。絶対見られてるし、見せつけてるだろ。
外でいちゃいちゃするのは苦手だよ。バカップルだと思われるじゃん。もっと遠慮して。
「んー、可愛い可愛い」
和臣さんは、俺に対して愛の言葉をためらいなく口にする。
俺も別に言えないわけではないのだけど、どういうタイミングで、どんなふうに言えばいいのか迷っている。最近は、俺は和臣さんの言動を観察してみることにしている。参考になるかなって。ならないけど。
和臣さんは、寝ぼけている俺の寝癖頭を梳かしながら、額にちゅーちゅーしている。
やりたい放題だな。
「イチャイチャするなら帰りますよー」
「それもいいね」
家に帰ってもっと濃厚なイチャイチャをするつもりだな。そうはいくか。
「イチャイチャしちゃうと人目が気になるじゃないですか」
「嫌?」
「気兼ねなく楽しく外デートしたいのに、見られてるなぁって思うと……」
二人で楽しく過ごしたいんだ。なーんにも気にせずにバカ話でもして笑っていたい。
でもすぐナンパされてるし、注目を集めちゃうし、その上イチャイチャすると、俺は居たたまれなくなってしまう。
それに、余計なことを考えてしまう。俺が恋人なんだから、俺のだから、見ないでくれとか。
「恋人に見せる顔は、二人きりのときだけがいいです」
「多紀くんの考えはわかった。けど、そんな可愛いこと言われると、ついイチャイチャしたくなる俺の気持ちもわかって」
体育座り可愛いな。唇尖らせちゃってさ。上目遣いで瞳をうるうるさせてる。
あざとい。
「帰ったらイチャイチャしましょ。それまでおあずけ」
「わかった」
しょんぼりしてる。耳と尻尾が垂れているね。
仕方ないなぁ。
「和臣さん。ひざ貸して」
「……!」
体育座りからあぐらになった和臣さんの太ももに頭をのせる。
和臣さんは俺の頭を優しくよしよししている。しばらくして和臣さんは言った。
「あ、やば。勃っちゃった」
「どうすんの……」
「どうにかしてくれるの?」
「帰ってからね」
「あ~。一刻も早く帰りたいし、でも膝枕もよくって、選べないや」
すごく嬉しそう。
「和臣さん」
「ん?」
唇を寄せようと前屈みになってきた和臣さんに腕を伸ばして、俺は和臣さんの顔を引き寄せ、その耳元でささやいた。和臣さんは固まり、真っ赤な顔をして口元を押さえながら、感極まって震えている。
……俺たちは、どう見てもバカップルだな。
〈イチャイチャしてる 終わり〉
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