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6 ある三百万円のゆくえ
九 和臣(※)
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次郎兄さんの名前で介入通知の叩き台を軽く作成して、帰宅。
多紀くんにシャワーを浴びてもらって、ベッドに転がして、ぐいぐい押しつけながら忙しなく脱がせて、あちこち責める。すぐに正常位で入れる。
つながりたくて仕方なかった。多紀くんも期待していて、少し触るだけで体が熱を帯びて、たまらなさそうな吐息。とろとろ。両足を大きく開かせて、腿の裏を押さえつけたり、時々足首を掴みながら、中をかき混ぜる。
「あっあっあっ、だめ、壊れちゃう、壊れちゃう、だめ」
「やめよっか?」
訊ねてみる。潤んだ瞳で俺を見上げて、口の端から涎を垂らしてる。こんな格好をさせられるのもすっかり慣れた、快感に従順な多紀くん。揺さぶるのはやめない。
「やめ、ないで……!」
「壊れちゃうんでしょ?」
「やめないで……!」
「じゃあなんていうの?」
両足を抱いて、片手で足の付け根を押さえたり、おなかを押さえたり。奥を押してみる。
「やめちゃだめ」
「違うでしょ?」
「もっとして……!」
甘えるのが苦手な多紀くんのおねだり。なんでも聞いてあげたくなってしまう。気持ちよさそうによがって、俺のものを咥えこんで締めつけてくる。奥のほう。先っぽ気持ちいいな。
「おねだりかわいい。ここきもちーねー」
腰が引けてる。敏感な場所をつつかれてあられもない声をあげる。
誰にも聞かせることのない甲高い喘ぎ声。
「あああっ、ぐりぐりしたら」
「したら?」
「あっ、壊れちゃう……」
「どこが?」
「おなかっ、奥、奥、しないで、や、あ、らめ、それ以上、い、入れたら、あ、あ、あ、あ」
「しないでほしいなら、やめたほうがいいねー」
「やっ、やめないで」
「壊れちゃうんでしょ?」
「あ、あたま、おかしくなる、あっあっ」
「困っちゃうねー」
「おかしくして……!」
「ふふ、どうしたらいいの? なにが好き?」
「もっとぐりぐりして」
でも俺も気持ちいいから、出ちゃうかも。
多紀くんの下半身を押し潰すように、入れながら上に座る。多紀くんは声にならない声をあげた。涙が溢れている。舐めたいから前屈みになってこめかみを舐めてみる。汗と涙がまじってしょっぱい。
「俺のかたちでぎちぎち。ふふ」
耳元で囁くと、多紀くんは俺の背中に腕を回してしがみついてくる。背に触れる指先が肌を掻いて、限界を迎えつつあることを知る。
「あっあっあふっ、う、うあ、きもちい、あっ、いい、あっ、いく」
「どこがいくの?」
「あっあっ、奥、奥が」
「ここかな」
「いっ、あっ、は、あ、和臣さん、届いてる、あっあっ」
「出てるよ」
「うっ、あっ、あううう、イく、イってるから、あっ、ああああっ、イく……っ」
体が強張って達した多紀くんと同時に、俺も中に出した。
俺もとっくに限界で我慢してた。
「はっ、はぁ、多紀くん」
「きもちい、んん、和臣さん……」
「多紀くん……」
「和臣さん……」
多紀くんの唇に指で触れながら口づける。もっと名前を呼んで。たくさん呼んで。そんなふうに願いながら。
この時間が永遠に続けばいいのに。
多紀くんは両腕を伸ばして、俺のことを思い切り抱きしめてくる。嬉しい。
「和臣さん……」
「多紀くん、好き。それ好き」
俺が多紀くんの髪を吸いながら言うと、多紀くんはくすぐったそうに笑った。
このままお昼寝したい、とぼんやり考えていたとき、多紀くんが言った。
「言い忘れてたんですけど」
「うん?」
「和臣さんに話してよかったです。助かりました。ご迷惑おかけして申し訳なかったです」
俺は、多紀くんのほっぺたをむにっと引っ張る。
「???」
「迷惑なんかじゃない。わかるでしょ?」
多紀くんはほっとしたような表情。俺は多紀くんの手を握って、自分の頬に誘導。
俺もほっとする。
「親が借金まみれだなんて、恥ずかしいです」
「多紀くんが?」
「はい」
「どうして? 親は親だし、子は子。それぞれ別の人間だよ。同じ遺伝子の兄弟だってあんなに違うんだよ」
「あはは」
「そこは笑うとこじゃないよ?」
多紀くんは、少し涙目になっている。心の底から安心してくれたらいいな。
多紀くんの父親を切り捨てられない気持ちや、思考のプロセスは、俺にはないものだ。
だから多紀くんが好きなんだ。
だけど、父親の状況を法的手続きで解決することに、義理人情に厚い多紀くんは抵抗があるのではないか、と考えていた。
実際、破産という言葉を出したときには、少し顔色を変えていた。
一般社会で聞こえがよくないのは確かではある。多紀くんの心理的抵抗感を思うと、任意整理になったのは幸いだった。
結局、労働事件と同様、次兄を頼ることになったものの、今回は途中で復代理になって交渉するつもり。
やっと多紀くんの力になっていると実感している。
「俺のこと見直した?」
「見直すって……いつも、頼りになる先輩だと思ってます」
「でも、がっかりさせることが多いでしょ」
「……仕方ないひとだな、と思うことはありますが」
「褒めてほしい」
「これ以上、なんて言えばいいんでしょうね」
俺のことを必要だと言って。いてよかったって言って。
俺のことが頼りになると、もっと言って。拙い言葉で構わないから、たくさん言って。
質も欲しいけどまずは量が欲しい。多紀くんの言葉に溺れたい。
「和臣さん」
多紀くんは、俺の名前を呼んで、口づけてくる。
「もう一回、欲しい」
あ、その一言だけで充分かも。
多紀くんにシャワーを浴びてもらって、ベッドに転がして、ぐいぐい押しつけながら忙しなく脱がせて、あちこち責める。すぐに正常位で入れる。
つながりたくて仕方なかった。多紀くんも期待していて、少し触るだけで体が熱を帯びて、たまらなさそうな吐息。とろとろ。両足を大きく開かせて、腿の裏を押さえつけたり、時々足首を掴みながら、中をかき混ぜる。
「あっあっあっ、だめ、壊れちゃう、壊れちゃう、だめ」
「やめよっか?」
訊ねてみる。潤んだ瞳で俺を見上げて、口の端から涎を垂らしてる。こんな格好をさせられるのもすっかり慣れた、快感に従順な多紀くん。揺さぶるのはやめない。
「やめ、ないで……!」
「壊れちゃうんでしょ?」
「やめないで……!」
「じゃあなんていうの?」
両足を抱いて、片手で足の付け根を押さえたり、おなかを押さえたり。奥を押してみる。
「やめちゃだめ」
「違うでしょ?」
「もっとして……!」
甘えるのが苦手な多紀くんのおねだり。なんでも聞いてあげたくなってしまう。気持ちよさそうによがって、俺のものを咥えこんで締めつけてくる。奥のほう。先っぽ気持ちいいな。
「おねだりかわいい。ここきもちーねー」
腰が引けてる。敏感な場所をつつかれてあられもない声をあげる。
誰にも聞かせることのない甲高い喘ぎ声。
「あああっ、ぐりぐりしたら」
「したら?」
「あっ、壊れちゃう……」
「どこが?」
「おなかっ、奥、奥、しないで、や、あ、らめ、それ以上、い、入れたら、あ、あ、あ、あ」
「しないでほしいなら、やめたほうがいいねー」
「やっ、やめないで」
「壊れちゃうんでしょ?」
「あ、あたま、おかしくなる、あっあっ」
「困っちゃうねー」
「おかしくして……!」
「ふふ、どうしたらいいの? なにが好き?」
「もっとぐりぐりして」
でも俺も気持ちいいから、出ちゃうかも。
多紀くんの下半身を押し潰すように、入れながら上に座る。多紀くんは声にならない声をあげた。涙が溢れている。舐めたいから前屈みになってこめかみを舐めてみる。汗と涙がまじってしょっぱい。
「俺のかたちでぎちぎち。ふふ」
耳元で囁くと、多紀くんは俺の背中に腕を回してしがみついてくる。背に触れる指先が肌を掻いて、限界を迎えつつあることを知る。
「あっあっあふっ、う、うあ、きもちい、あっ、いい、あっ、いく」
「どこがいくの?」
「あっあっ、奥、奥が」
「ここかな」
「いっ、あっ、は、あ、和臣さん、届いてる、あっあっ」
「出てるよ」
「うっ、あっ、あううう、イく、イってるから、あっ、ああああっ、イく……っ」
体が強張って達した多紀くんと同時に、俺も中に出した。
俺もとっくに限界で我慢してた。
「はっ、はぁ、多紀くん」
「きもちい、んん、和臣さん……」
「多紀くん……」
「和臣さん……」
多紀くんの唇に指で触れながら口づける。もっと名前を呼んで。たくさん呼んで。そんなふうに願いながら。
この時間が永遠に続けばいいのに。
多紀くんは両腕を伸ばして、俺のことを思い切り抱きしめてくる。嬉しい。
「和臣さん……」
「多紀くん、好き。それ好き」
俺が多紀くんの髪を吸いながら言うと、多紀くんはくすぐったそうに笑った。
このままお昼寝したい、とぼんやり考えていたとき、多紀くんが言った。
「言い忘れてたんですけど」
「うん?」
「和臣さんに話してよかったです。助かりました。ご迷惑おかけして申し訳なかったです」
俺は、多紀くんのほっぺたをむにっと引っ張る。
「???」
「迷惑なんかじゃない。わかるでしょ?」
多紀くんはほっとしたような表情。俺は多紀くんの手を握って、自分の頬に誘導。
俺もほっとする。
「親が借金まみれだなんて、恥ずかしいです」
「多紀くんが?」
「はい」
「どうして? 親は親だし、子は子。それぞれ別の人間だよ。同じ遺伝子の兄弟だってあんなに違うんだよ」
「あはは」
「そこは笑うとこじゃないよ?」
多紀くんは、少し涙目になっている。心の底から安心してくれたらいいな。
多紀くんの父親を切り捨てられない気持ちや、思考のプロセスは、俺にはないものだ。
だから多紀くんが好きなんだ。
だけど、父親の状況を法的手続きで解決することに、義理人情に厚い多紀くんは抵抗があるのではないか、と考えていた。
実際、破産という言葉を出したときには、少し顔色を変えていた。
一般社会で聞こえがよくないのは確かではある。多紀くんの心理的抵抗感を思うと、任意整理になったのは幸いだった。
結局、労働事件と同様、次兄を頼ることになったものの、今回は途中で復代理になって交渉するつもり。
やっと多紀くんの力になっていると実感している。
「俺のこと見直した?」
「見直すって……いつも、頼りになる先輩だと思ってます」
「でも、がっかりさせることが多いでしょ」
「……仕方ないひとだな、と思うことはありますが」
「褒めてほしい」
「これ以上、なんて言えばいいんでしょうね」
俺のことを必要だと言って。いてよかったって言って。
俺のことが頼りになると、もっと言って。拙い言葉で構わないから、たくさん言って。
質も欲しいけどまずは量が欲しい。多紀くんの言葉に溺れたい。
「和臣さん」
多紀くんは、俺の名前を呼んで、口づけてくる。
「もう一回、欲しい」
あ、その一言だけで充分かも。
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