エリート先輩はうかつな後輩に執着する

みつきみつか

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5 ある何の変哲もない日常(和臣視点)

四 ポークチャップ

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「んん……」

 何時だろう。
 時計を確認しようと体を捩じるものの、仰向けで眠る多紀くんの横顔が眼の前にあって、吸い寄せられるみたいに頬に唇を寄せる。
 多紀くんのほっぺた。
 多紀くん、全然起きない。疲れすぎたかな。
 何回イかせたのやら。
 風呂場で二回して、それでもおさまらない多紀くんに煽られて、もつれるようにベッドに移動して、真夜中まで激しくエッチしてた。
 多紀くんが欲しがるから両足を肩に乗せて上から潰すように種付け、バックでも獣じみた交尾。満足。
 ふたりともふらふらになりながらシャワーを浴びて軽食をとって、少し休んで、明け方まで、雑談したりイチャイチャしたり、またつながったり。
 無我夢中でエッチしたの久しぶり。多紀くんの耳元で愛してると言い続けたら、愛情表現に乏しい多紀くんも朦朧としながら愛してるって返してくれた。継続は力なり。
 ……洗脳かな?
 ふたたびシャワーを浴びて寝始めたときには外が少し明るくなっていた気がする。
 時計を見ると、午前十時。
 お昼ごはん、外に行こうかな。なにを食べよう。多紀くん、何を食べたいかな。
 雨はあがっているみたい。雨あがりの秋の街を手を繋いで歩きたいな。
 多紀くんが呻いた。

「ん、おはよございます……」
「おはよう、多紀くん」
「早いですねぇ……」
「十時。でもお昼までだらだらしたいねー」
「大賛成……」

 多紀くんは、横向きの俺の胸にもぐりこんでくる。肩を覆うように腕で抱くと、俺の胸に頬ずりして満足そうに息を吐いている。
 多紀くんの額に口づけて生え際をくんくん。

「和臣さん、あったかい」
「多紀くんも」
「ん……」
「多紀くんも、あったかいよ」 
「あ、昨日、大雨だったのに帰ってきてくれて、ありがとうございます」
「うん。多紀くんに会いたかったから」
「ふふ」
「会いたかった。多紀くん、多紀くん」

 苦しくないようにやんわり抱いていると、多紀くんは何かを言おうとして、躊躇って、しばらくして呟いた。

「好き……」

 恥ずかしそうな小声。
 俺は幸せすぎて溶けそう。溶けてもいいや。

「多紀くん、大好き」
「うん……」
「なにか食べに行く?」
「あとで……」
「食べたいものは? なんでもいいよ」
「和臣さんの味噌汁……」

 俺の手料理。胃袋を掴んだね。お料理を習っていて本当によかった。瑞穂さんに感謝。スパルタだったけど。

「具は何がいい?」
「豆腐、人参、玉ねぎ、こんにゃく……」
「全部入りにしよう。多紀くんの好きなものを全部」
「ごぼうと、芋も」
「お芋は、里芋、じゃがいも、長芋、さつまいも、何が好き?」
「好きなのは長芋……」
「味噌汁に入れる? 焼いてもいいし、おろしてもいいし、短冊切りもいいね」
「わさび醤油……。ごはんと、ほうれん草の巣ごもり卵……」
「食材あるね。メインは、冷凍庫の豚ロースをポークチャップにしようかな。玉ねぎとマッシュルームと、トマトケチャップとウスターソースとバターでソテー。あ、白出汁を入れて、和風にしようか」

 多紀くんは、上掛けの中で俺の腰に腕を回してきた。

「好き……!」

 これはポークチャップのことだね。憎らしい。肉だけに。
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