エリート先輩はうかつな後輩に執着する

みつきみつか

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4 ある夏のふたり

八 このあとの予定

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 部室棟までやってきた。
 ありがたいことに開放されていて、和臣さんと一緒に、ランドリー室に入る。
 誰もいない。
 洗濯機数台と乾燥機数台と待ち用のベンチが置いてある小さい部屋。
 むかし入ったことあるな。

「そうだ、ここで乾かしたんでしたねー」
「ジャージとシャツね。ほら、あの卒アルの集合写真の直後」
「細かいこと覚えてないんですが」
「多紀くん、寝てたもん」
「和臣さん、よく覚えてますね」
「多紀くんとの思い出だから……」

 肌着も濡れているので、お互いにワイシャツと肌着を脱いで、乾燥機に放り込んだ。半裸だけど、ここは冷房が効いていなくて暑いな。
 冷房をつけて待っていると、狭い部屋はすぐに涼しくなってくる。

「風邪引かないようにしないとです」
「うん」

 ふたりきりで、ベンチに並んで掛けたのをいいことに、くっついていって、どちらともなく目を閉じて口づけた。
 そっと唇を重ねるだけ。
 体温に触れた瞬間、俺は思い知る。
 どれだけひとりに慣れたと思っても、ふたりに戻ってしまう。
 このキスが好きで、和臣さんが好きで、こうしていることが気持ちいいのだと。
 だからひとりはいやだ。ふたりがいい。
 ふたりでいるためになら、なんでもする。だからふたりがいい。
 一センチの距離で、俺は訊ねた。

「……明日、お休みですよね」
「うん」

 貪るようなキスも、絡まり合うみたいにお互いを抱くことも、なにもかも、俺にだって必要なことだ。
 額を合わせたり、鼻先を触れたり、また唇をついばんだり。寒くならないように、お互いに手のひらで相手の素肌を撫でる。

「何か予定ありますか?」
「何もないよ」
「今日は、これからの予定は?」

 壁掛け時計は午後二時を示している。

「いまの理事長が『あとで、うちの家族と軽くお茶でも』って。うちの母の再従兄弟なんだ。距離が離れているから、あまり交流はなかったんだけど、俺のことですごく喜んでくれて」
「よかったですね」
「お世話になったから、挨拶するつもり。それが終わったら何もない。友人関係は、後日あらためての予定」
「そうなんですか」
「今日にすると、飛び込みの女性ばかりになっちゃうから。気をきかせてくれた」

 俺は失礼にも、和臣さんにも友達がいてよかったな、などと思う。友達の話ってぜんぜん聞かないもんね。ちょっとくらい旧交をあたためるほうがいいよ。

「多紀くんは、この後の予定は?」
「飲み会があるみたいなんですけど、いつもの友達グループはいないので、俺もいいかなって。雰囲気が合うひととはさっき大分しゃべって、連絡先も交換しましたし、どうせあんなの、戻れないし」
「そっか」

 家に帰って勉強したいしね。
 三十目前だと飲み会もけっこう辛いんだな。
 俺は訊ねた。
 本題。

「今夜、帰ってきませんか?」
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