上 下
189 / 366
番外編7 カンヅメ小旅行

しおりを挟む
「わー、きれーな景色ですねぇ!」

 広い部屋。海を一望できる一面の窓。なんの障害物もない水色の空と紺碧の海。すごく近い。水平線。ベランダが広くて、外にヒノキ風呂がついてる。
 振り返ると和臣さんは後ろ手にドアを閉めて、にこにこしながら荷物をおろしてる。

「ねー。露天風呂がついてるのいいよね」
「めっちゃいい部屋です!」
「気に入った?」
「はい!」

 俺が元気よく答えると、和臣さんはとろけるような笑顔。ドキッとして、顔が熱くなって、不自然にならないように目をそらしてしまう。なんて嬉しそうに笑うんだよ。反則だろ。

「海が見えるの、いいですよね」

 今日はふたりで旅行。近場の海沿いのホテルに泊まるだけなんだけど、気分転換に。近くに古い町並みもあるし、町歩きしたりさ。

「ベランダ広いね」

 早速窓に寄っていって開けてみる。潮騒と潮風。涼しいなー。和臣さんが後ろからついてきて、隣に並ぶ。顔を見合わせて笑ってみたり。

「俺、あっちのベッド使いますね」
「多紀くん、窓側使って。どのみち一緒に寝るし」

 それもそっか。もぐりこんでくるね。

「少し休憩したら、散歩しにいこうか」
「はい!」

 薄手の上着を脱いでTシャツ一枚になって、靴も脱いでベッドにうつ伏せに倒れ込む。解放感ー。
 和臣さんも上着を脱いで、ポロシャツ。靴を脱いで、俺のベッドに早速もぐりこんできた。隣にうつ伏せてきた和臣さんの肩にすり寄って、こっちを向いたタイミングで口づける。ちゅ。

「旅行、叶いましたねー!」
「うん。ふふ」

 和臣さんは、俺の髪を優しく優しく撫でてくる。少し暑いから汗っぽいのに。
 風呂に入りたいな。露天風呂楽しみだなぁ。
 和臣さん、今日はいつも以上に優しい。気遣ってくれてる。嬉しいな。忙しい時間を縫って計画してくれてありがたい。
 そんなふうに思いながら、俺はふたたび和臣さんの唇に吸いついていく。最初は重ねるだけだけど、舌の先を出して唇を割りにいくと、和臣さんも応えるように唇をひらいて、濡れた舌先を合わせてくる。
 それをきっかけに、ふたりとも息を吸い込みながら、目を閉じて、くちゅくちゅ音を立てながらのキス。和臣さんは遠慮がち。俺のほうが積極的にしていくから、吐息を漏らしている。
 手を繋いで、指先を絡ませる。

「ん、ふ、ん」

 すっかり耳まで熱くなった頃。唾液を引きながら、唇を離した。
 和臣さんは困ったように顔をしかめている。

「せっかく、我慢してるのに」
「へ?」
「このままじゃ、観光できなくなるよ。抱きたくて仕方ない……多紀くん」

 真っ赤な和臣さんが可愛くて、俺はくすぐったい気持ちになる。バンコクでは軟禁だったので、ちゃんと観光したいです、と釘を差しておいたので、我慢してたのか。申し訳ないことをしたな。
 和臣さんとのキスがやめられない。俺も我慢できなくなってる。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

執着男に勤務先を特定された上に、なんなら後輩として入社して来られちゃった

パイ生地製作委員会
BL
【登場人物】 陰原 月夜(カゲハラ ツキヤ):受け 社会人として気丈に頑張っているが、恋愛面に関しては後ろ暗い過去を持つ。晴陽とは過去に高校で出会い、恋に落ちて付き合っていた。しかし、晴陽からの度重なる縛り付けが苦しくなり、大学入学を機に逃げ、遠距離を理由に自然消滅で晴陽と別れた。 太陽 晴陽(タイヨウ ハルヒ):攻め 明るく元気な性格で、周囲からの人気が高い。しかしその実、月夜との関係を大切にするあまり、執着してしまう面もある。大学卒業後、月夜と同じ会社に入社した。 【あらすじ】  晴陽と月夜は、高校時代に出会い、互いに深い愛情を育んだ。しかし、海が大学進学のため遠くに引っ越すことになり、二人の間には別れが訪れた。遠距離恋愛は困難を伴い、やがて二人は別れることを決断した。  それから数年後、月夜は大学を卒業し、有名企業に就職した。ある日、偶然の再会があった。晴陽が新入社員として月夜の勤務先を訪れ、再び二人の心は交わる。時間が経ち、お互いが成長し変わったことを認識しながらも、彼らの愛は再燃する。しかし、遠距離恋愛の過去の痛みが未だに彼らの心に影を落としていた。 更新報告用のX(Twitter)をフォローすると作品更新に早く気づけて便利です X(旧Twitter): https://twitter.com/piedough_bl 制作秘話ブログ: https://piedough.fanbox.cc/ メッセージもらえると泣いて喜びます:https://marshmallow-qa.com/8wk9xo87onpix02?t=dlOeZc&utm_medium=url_text&utm_source=promotion

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

鬼ごっこ

ハタセ
BL
年下からのイジメにより精神が摩耗していく年上平凡受けと そんな平凡を歪んだ愛情で追いかける年下攻めのお話です。

処理中です...