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番外編5 何気ない休日2
六* 目が離せない
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夜は晴天。風もない。
部屋はタレと塩で焼いた手羽先の香ばしいにおいが充満してる。
窓を開けると夏らしく蒸してとても暑いけれど、首を動かしている扇風機とキンキンに冷えたビールがあれば、オールオッケー。
ビールをあおりながら外を見ていると、一発目があがった。上下のどっちかで拍手の音がする。近所のひとも見てるんだな。俺も思わず声をあげる。
「おおっ、きれいに見えますね!」
「ねー」
続いて、二発、三発。
ひらいた花。その後、火花がぱらぱらとこぼれる乾いた音が響いてくる。
こんなに近くで打ち上げ花火をみるの、初めてかもしれない。
「おっ、でかい」
「音がはやいね。近いね」
「ですねっ」
部屋は暗くして、リビングのテーブルを窓際によせて、風呂上がり。
夏場の寝巻きにしてる甚平を着て、ふたりして床に座って、開けた窓に向かってビールを飲みながら。
花火と花火の間が少し開く。
俺は和臣さんを見て言った。
「毎日、仕事に勉強に、たいへんですね」
午前中は勉強に行ってたし、いつもは勉強ばかり。午後はエッチしてたけど、たまにはこういう日があってもいいな。気分転換になるかな。
和臣さんはビールを飲みながら笑ってる。
「こんなご褒美があるんだから、大丈夫だよ」
「料理もしてもらって、すみません」
「ううん。美味しい?」
それは皿を見ればわかってもらえる。
ビールがじゃんじゃん進む。手羽先何本目だろ。
「おいひいれふ」
「よかった」
「もぐもぐ」
「たいへんなことも、多紀くんとだったら平気だよ」
和臣さんは言った。
俺の口元についたタレを舐めにくる。ぴちゃぴちゃ音を立てるせいで、先ほど味わった強烈なセックスの感覚を思い出してしまう。和臣さんも思い出してる。
花火に照らされた瞳に捉えられる。
「は、花火みましょ」
「多紀くんは花火みてたらいいよ。花火みてる多紀くんをみておくから。俺のご褒美。あのさ、本当に好きなんだけど。どうしてそんなに可愛いの? なんで毎日どんどん可愛くなっていくんだろうね?」
「もー」
なんかいろいろ言ってるけど、せっかくこんな絶景なのにもったいない。
隣に並んで、手を繋ぎながら、頬を甘く噛んでくる。ぺろぺろしてる。
俺のことしか見てない変態だから。
「多紀くん、多紀くん……」
「ほら、一緒に見ましょ。同じ景色をみるのも、いいでしょ? 思い出」
「見る。目がたくさんあったらよかったのに」
「怖いですよっ」
俺も和臣さんも、笑った。笑いながら、キスしながら。
花火もみないとだし、手羽先は美味いし。ビールも飲まないとで、忙しいよ。
これ以上やること増えたらこなせない。なのに、和臣さんは幸せそうに笑っていて、心から幸福そうで、きれい。
そんなまぶしい笑顔でいられると、俺のほうだって和臣さんから目が離せないんですけど。
<次の話に続く>
部屋はタレと塩で焼いた手羽先の香ばしいにおいが充満してる。
窓を開けると夏らしく蒸してとても暑いけれど、首を動かしている扇風機とキンキンに冷えたビールがあれば、オールオッケー。
ビールをあおりながら外を見ていると、一発目があがった。上下のどっちかで拍手の音がする。近所のひとも見てるんだな。俺も思わず声をあげる。
「おおっ、きれいに見えますね!」
「ねー」
続いて、二発、三発。
ひらいた花。その後、火花がぱらぱらとこぼれる乾いた音が響いてくる。
こんなに近くで打ち上げ花火をみるの、初めてかもしれない。
「おっ、でかい」
「音がはやいね。近いね」
「ですねっ」
部屋は暗くして、リビングのテーブルを窓際によせて、風呂上がり。
夏場の寝巻きにしてる甚平を着て、ふたりして床に座って、開けた窓に向かってビールを飲みながら。
花火と花火の間が少し開く。
俺は和臣さんを見て言った。
「毎日、仕事に勉強に、たいへんですね」
午前中は勉強に行ってたし、いつもは勉強ばかり。午後はエッチしてたけど、たまにはこういう日があってもいいな。気分転換になるかな。
和臣さんはビールを飲みながら笑ってる。
「こんなご褒美があるんだから、大丈夫だよ」
「料理もしてもらって、すみません」
「ううん。美味しい?」
それは皿を見ればわかってもらえる。
ビールがじゃんじゃん進む。手羽先何本目だろ。
「おいひいれふ」
「よかった」
「もぐもぐ」
「たいへんなことも、多紀くんとだったら平気だよ」
和臣さんは言った。
俺の口元についたタレを舐めにくる。ぴちゃぴちゃ音を立てるせいで、先ほど味わった強烈なセックスの感覚を思い出してしまう。和臣さんも思い出してる。
花火に照らされた瞳に捉えられる。
「は、花火みましょ」
「多紀くんは花火みてたらいいよ。花火みてる多紀くんをみておくから。俺のご褒美。あのさ、本当に好きなんだけど。どうしてそんなに可愛いの? なんで毎日どんどん可愛くなっていくんだろうね?」
「もー」
なんかいろいろ言ってるけど、せっかくこんな絶景なのにもったいない。
隣に並んで、手を繋ぎながら、頬を甘く噛んでくる。ぺろぺろしてる。
俺のことしか見てない変態だから。
「多紀くん、多紀くん……」
「ほら、一緒に見ましょ。同じ景色をみるのも、いいでしょ? 思い出」
「見る。目がたくさんあったらよかったのに」
「怖いですよっ」
俺も和臣さんも、笑った。笑いながら、キスしながら。
花火もみないとだし、手羽先は美味いし。ビールも飲まないとで、忙しいよ。
これ以上やること増えたらこなせない。なのに、和臣さんは幸せそうに笑っていて、心から幸福そうで、きれい。
そんなまぶしい笑顔でいられると、俺のほうだって和臣さんから目が離せないんですけど。
<次の話に続く>
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