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3 ある長期休暇の頃

七 そういうことをしていた②(※)

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 薄暗くした寝室。
 ベッドの上で、カズ先輩は上半身を起こす。硬直して体育座りの俺。
 向かい合う。
 俺は緊張しすぎて心臓鳴りすぎ。
 部屋の温度が一気にあがった感じがする。そんなはずないのに。
 汗すごい。マジで……。
 カズ先輩は、あぐらをかいて、自分の膝に片肘で頬杖をつく。で、俺を見たり、視線を落としたりしてる。
 何をしてもさまになる。イケメン。部屋の暗さもあってか、陰が落ちている。
 目を合わせるのはなんだか怖い。
 俺は膝を抱えて縮こまりながら、ちらっと見る。
 さらさらの髪。センター分けの前下がり、刈り上げマッシュ。顔小さい。眉、長い睫毛、瞼。鼻も高くて、薄くて形のいい唇。顎から耳にかけてのシャープさ。正面も横顔もきれい。相変わらず、ちょっと気弱そうな美しい顔。
 優しくて、のんびり控えめで、俺の話を楽しそうに聞いてくれる、高校のときの先輩。
 今は何を考えてるのかわからない。
 いや、何を考えているのかっていつもわからない。基本は寡黙。高校のときはあまり笑わなくて、警戒心丸出しの猫っぽかったけど、再会してからはよく笑うようになってた。
 でもやっぱり何を考えているかは言わないほう。
 だけど、これまではあまり不安に思わなかった。俺ばっかしゃべり過ぎたかなって反省することがあっても、カズ先輩は定期的に誘ってくれるし、タキくんの話を聞いてるとむかしに戻ったみたいで楽しいんだって、時々言ってくれてたし。
 道端でばったり会うといつも声を掛けてくれた。嫌いだったら離れるだろうから、俺のおしゃべりは嫌じゃないんだって思ってた。女の子のおしゃべりは苦手みたいだったから、俺は特別っぽくて優越感があったな……。
 カズ先輩は目をあげて、くすくす笑ってる。
 俺も苦笑する。

「あ、冗談ですね! すみません。勘違いしちゃって」
「ううん。冗談ではないけど?」
「えー……えっと……」

 冗談じゃないんだ……。
 どうしよ……。

「びびらなくてもいいよ。ひとりがいいなら、ひとりでしてきたら? 俺はもう寝るね。リビングでもキッチンでもトイレでも好きな場所でどうぞ」
「え、あ、たぶん疲れてるだけなんで」
「疲れマラ? あるよね」

 あるんだ……?
 カズ先輩と猥談もしたことなかったのに、ずいぶん仲良しなんだな。四年後の俺。打ち解け度がすごい。
 こういうことが時々あったんだったら、気兼ねする必要はないのかな……。
 心臓がすごい鳴ってる。でも好奇心に負ける。

「ふたりでって……どうするんです?」
「とりあえず下脱ぐ」

 俺の目の前で、カズ先輩のほうが先んじて自分の半パンとボクサーパンツを脱いだ。
 俺もつられて寝間着代わりの半パンと下着をおろす。
 Tシャツ一枚だけになって心許ない。
 ベッドの上であぐらをかくカズ先輩の指示で、向かい合って、性器同士を近づけるように座る。玉が触れ合う。
 どうしてこんなことしてるんだろと思いながら。
 カズ先輩、勃ってないのにでかいな。

「後ろに肘ついてていいよ。あとはしてあげる」

 胸を押されて後ろに倒れる。俺は肘をついて上半身を少し起こす。
 俺の両足を抱え上げながら、カズ先輩は膝をひらく割り座で、股間をぐいっと押しつけてくる。
 正常位みたい。
 カズ先輩は、重なり合った二本を片手で掴んだ。
 力強さと、なまぬるい体温と、むわっとした皮膚の感覚に慄く。

「先輩、あの、恥ずかしいです」
「だよね」

 共感しつつ、カズ先輩はそのまま扱きはじめる。聞いてるようで聞いてない。
 俺は童貞だから、他人にされるのなんか初めてなんだけど。
 あ、そういえば恋人がいるんだっけ。過去形だっけ。もし現在進行形ならこれって浮気じゃないの? それはよくないな……。

「あの、俺って恋人いるんですか? だったらこういうの……」
「あ、それは大丈夫だよ」

 カズ先輩はあっさり答える。恋人のことを訊いても何一つ教えてくれなかったのに、そういうのは答えてくれるんだ? やっぱり全部を知っていてあえて言わないんだな。
 大丈夫なら……、まあ、いっか。
 人にされるって気持ちいい。液体を垂らしたようで、ぬるぬるする。お互いに昂っていて、抵抗感があって、大きな手が包み込むようにしてくる。気持ちよさを体が覚えている感じがある。
 俺、これしたことあるな、と思う。
 カズ先輩としたんだな……。
 されるのが気持ちよくて、後ろに肘をつきながら胸をそらせる。

「あー……やばい、せんぱい、気持ちい……」

 こらえながら言うと、カズ先輩の手が速度を増していく。裏筋をこすりあって、カリで引っかけて、カウパー液の溢れる先っぽを合わせて揉んで、ちゅくちゅく音をたてる。
 カズ先輩はもう片方の腕を伸ばしてきて、俺のシャツ越しに、薄い胸に手を這わせて、乳首を探し当てて指先で引っかいている。
 たまらなくなって腰が浮く。

「カズ先輩、それ……っ」
「うん」

 強くしたり弱くしたり、右をしたり左をしたり。
 指の腹で潰すように押したり、爪で掻くように抉られたり。

「多紀くん、こするのできる?」

 俺は片方の手を伸ばして、カズ先輩がしてくれたみたいに二本ともを握る。拙い動きになってしまうけれど、真似して擦りはじめた。動きに合わせて、カズ先輩は軽く腰を揺らしている。
 カズ先輩は空いた両手で俺の左右の乳首を責めてくる。尖った敏感な先端を、親指と人差し指で摘まんで弾ませるみたいにこねてくる。

「あ……」
「声出していいよ」
「カズ先輩、俺、も、もう、い、イきそ……」
「イっていいよ。俺の、好きに使っていいよ。乳首、どうされたい?」
「やっ、こりこりしないで」
「こんなにびんびんなのに? じかに触ってもいい?」
「あっ、んん、気持ちい、せんぱい」

 カズ先輩は、俺のTシャツを胸までたくし上げて、手を差し入れてくる。
 布越しだった指先。布の厚みがなくなって、湿り気のある人差し指と親指で挟んで、固くなっている尖りを優しく摘まんでくる。少し引っ張るみたいにしたあと、また優しくこりこりされて、腰が抜けそう。

「あああ、イく……!」

 俺は手を止めて、射精する。カズ先輩も腰と手を止めた。
 びくびくしながら何度か放つ。

「あっあっ……」

 うあああ、気持ちよかった……。
 嘘だろ……。
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