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4 ある二月の雪の夜

八 恋人ごっこの続きをしたいらしい(※)

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 俺は、カズ先輩を自分のマンションのワンルームに招き入れた。
 借りたワンルームは、築三年と新しい。狭いのでベッドを置いてそれでほぼいっぱい。
 お互いにシャワーを浴びて、寝間着姿でベッドに入る。カズ先輩には俺の寝間着の一番でかくてぶかぶかのを貸したけれど、丈が短くてつんつるてん。
 枕を並べて二人ともうつ伏せで横たわる。
 カズ先輩は猫みたいに、俺の肩にこめかみをすりよせてくる。

「タキくん」
「はい?」
「えへへ。会えて嬉しい。ごっこ遊びしていい?」
「いいですけど」

 俺の手を取って、手のひらをすんすん嗅いだり、髪を撫でさせたりしている。俺はされるがままになりつつ、指先でカズ先輩の髪の毛を弄ぶ。

「土日も一緒にいていい? ちゃんと日曜の夜には帰るから」
「じゃあ、せっかくだからどっか出掛けます?」
「一緒に出掛けてくれるの? 嬉しいな。あ、俺は、遠出じゃなくてもいいんだけど。むしろ、タキくんが毎日過ごしてる景色を見てみたいな。タキくんの視点を感じたいんだ。ちょっとした買い物とか、食事とか、そういうのがいい。タキくんはそれだと退屈かな」

 そうは言うけど、たまに来てたりしない?
 疑いすぎかな。
 カズ先輩はにこにこしている。そんなに喜ばれるとは思わなくて、微笑ましいとは思う。

「いえ。俺もやっと慣れてきたとこですし、案内というほどのことはできないですが」
「いいよ。デートすることに意味があるから」
「これをデートと呼ぶんですね……」
「うん。あと大事なことは、エッチしたい」
「和臣さんそればっか……」
「呼ばれるとスイッチ入るってわかってるよねー、多紀くん」

 カズ先輩の手が俺の腹部を探って、寝間着の隙間から大きな手が滑り込んでくる。腹、胸、つねるようにされて潰すように擦られると、じんじんしてくる。

「っ……」

 背後から抱かれる。胸を広くさすって、撫でたり、また突起をつまむ。
 口の中に指をいれられて、舌を這わせたり、唾液を絡ませるみたいにカズ先輩の指を舐める。

「上手だね、可愛い。多紀くん」

 耳元で吐息みたいな囁き。胸をぐりぐりされてのけぞる。

「うあ、ああ……っ」
「多紀くん、そのうち乳首でイけるようになると思うんだよね。素質あるよ」
「そういう素質はいらなかったです……」
「だって勃ってきてる。ほら、自分で触ってみて。扱いて。ひとりでしてみて」

 俺は寝間着の下に手を入れて、下着にも手を差し入れて、自分の竿を右手で握る。

「いつもしてるみたいにしてみて」
「っ……」

 俺は目を閉じて上下に動かす。その間にも、カズ先輩は指でいじってくる。敏感な部分をなぞられて、こすられて、ぞくぞくする。
 首筋に吐息がかかる。舐めてくる、首筋。耳朶をかじられる。

「くすぐったい……」
「多紀くんはひとりでこうするんだね。気持ち良さそう。出していいよ。出すとこ見ててあげる」
「や……うう……ん」
「多紀くん。咥えられるのは好き?」
「好きです……」
「正直でいいね。口でされたい?」
「はい……」
「俺も口でしてもらいたいな。できる?」
「し、したことないです……」
「したことあったら嫌だ。多紀くんのお口か。考えるだけでイくかも。できそう?」

 嫌とは言わせない雰囲気だ。こっちは毎回のようにされてるし……。
 俺が無言でいると、カズ先輩は身を起こし、仰向けになった俺の顔の上に馬乗りになってくる。膝をついて、ズボンと下着をおろして、顔に突きつけられる。
 もうしっかり勃ってる。何センチくらいあるんだろ。それ。
 カズ先輩は座るように腰を落として、根元を持って先の方を俺の顔に押し付けてきた。
 そういえば、顔とか肩に掛けられたことはある気がする。
 唇に当てられる。弾力のある肉の棒が、唇を割るように押し入ってくる。
 先走りで濡れてて生々しくてしょっぱい。

「うわ、エロいな……。口開けて、咥えてみて。限界まで飲み込んでみて。喉を開いて。そう、上手だね。指を舐めたときみたいに、舌を使って、もっとツバ出して、唇に力入れて、吸うようにしてみて。手も添えて、根元つかんで。動かして。そうそう」

 竿を上下すると、口の中で固さが増していく。けっこういろんな細かい動作を同時にしないといけなくて難しい。指示を追うので必死。

「多紀くん、上手だよ。ほんとに初めて?」

 初めてだよ。当たり前じゃん。訊かれても困る。口いっぱいだし。返事できない。

「多紀くんの口で咥えてもらえる日が来るなんて。出るかも。あー、出そう」

 と、カズ先輩は、俺の頭を挟むように掴む。髪の毛も掴まれる。痛くはないけど。俺の口を使うみたいにカズ先輩の腰が動く。このまま出すのかな。
 なんかすごい恐ろしい状況。
 こんなことになるなんて、五分前には想像すらしてなかったな……。

「多紀くん、多紀くん……」
「っ、ん、っ」
「出そ……あ……イく。多紀くんの口の中で出したいな。ねえ多紀くん、出していい?」

 俺は困る。困らされてばっかり。
 顔を掴まれていて、頷くことも首を振ることもできない。
 見下ろしてくる。
 目が合う。真剣。本気っぽい。有無を言わさぬような、据わった目。
 あ、出される。
 喉を使うようにして強く前後して、カズ先輩は眉を寄せて射精した。はち切れそうだったそれがどくどくと脈打って、徐々に力が抜けていく。口内に生臭さが広がってくる。咽そう。
 口の中から、カズ先輩が出ていく。あとには精液。
 カズ先輩は、顔を赤くして、なまめかしい表情で、はあはあ言いながら。
 俺の口を、大きな手のひらで押さえた。
 吐き出させないように。

「多紀くん、飲んで」
「っ……」
「俺の精液、一滴もこぼさないように飲み込んで」

 俺は涙目。仰向けだし、溺れそう。
 前の職場の飲み会で、罰ゲームで青汁を一気飲みしたことを思い出しつつ、少しずつ飲みくだす。あれは食物繊維とビタミンで、これはたんぱく質か……。
 飲み終えて、喉の動きを確認したあと、カズ先輩の手のひらが離れていく。
 そこにカズ先輩は覆いかぶさってきて、口づけてくる。舌を入れてくる。唾液が流れ込んでくる。
 背徳を共有するみたいに、カズ先輩の精液まじりの生臭い唾液を混ぜ合わせる。
 いろんなことが一気に起こってる。
 頭の中ぐっちゃぐちゃ。
 しばらくそうして、カズ先輩は、冷蔵庫のペットボトルの水を出してきた。口移しで飲ませてくる。冷たくて美味しい。味のない水、最高。
 何口かを口移しで飲ませられて、やっと口の中から生臭さが消えた。
 カズ先輩はにこにこしながら、俺の髪を優しく撫でて、額とか頬に口づけてくる。
 俺は少し泣いてる。ぐったり。

「今日のこと一生覚えておこう。多紀くんが俺の咥えてくれて、精液を飲んでくれた日」
「俺は早めに忘れたいです……」
「頑張ってくれてありがとう。好きだよ。多紀くん、好き。大好き。すごく可愛かった。さて続きしよ。エッチしよ。やりたい。つながりたい」
「ちょ、ちょっと休憩したいんですけど……」
「大丈夫。俺に任せておけばいいよ」

 人の話を聞いていないカズ先輩は、物凄く興奮しながら、俺の服を手早く脱がせ始めた。
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