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3 ある八月の熱帯夜

六 引っ越したい(※)

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 日曜日、午後六時。
 俺はまだベッドの上。

「あっ、あっ、い、イくっ、イく、先輩、先輩っ、俺、もう、イきすぎて、へんになる、あっ、あっ、あっ……!」
「タキくん、っ、俺もイく……!」
「あっ、あっ、先輩、カズ先輩っ、あっ、だめ、イくっ、イくっ」

 バックで何時間も犯されて、何度もイかされて、最後はカズ先輩とほとんど同時で、引き抜かれた俺は痙攣しながらベッドに突っ伏して、枕を抱いて顔を埋めながら息を整える。

「っ、はあ……はあ……」

 俺の後ろ髪をやんわり掴んで、カズ先輩は俺の背中の上になって、後ろ頭に口づけてくる。

「タキくん、熱いね。気持ちよかった?」
「……聞かないでくださいよ……さんざん言わせてるくせに……」
「あはは」

 手のひらで背中を撫でられる。優しい手つきが気持ちいい。お互いに汗だくだ。しばらく撫でたあと、カズ先輩はベッドの端で拭いたり、下着を履いたり。
 俺の下着、どこだろ。あとでいっか。
 疲れた。けだるい。ぼんやりとカズ先輩の様子を見る。裸の広い背中。筋肉質な体つきに、ほっそりした横顔。
 部屋はカーテンを開けていて、外は夏の夕方の光に変わっている。
 日曜日。けっきょく、一度もウィークリーマンションに帰ることなく、金曜日の晩からずっと一緒に過ごしてる。
 丸二日間、エッチ、メシ、買い物、メシ、エッチ、その繰り返し。ほぼ裸でつながりっぱなし。
 寝るときでさえ体とか手とか離してくれないし。暇さえあればキスしてくるし。くっつき虫みたい。
 外ではしないという分別はあるようだけど、その分、視線が物語っているので、なんともいえない。なんで俺のことばかりずっと見てるのこの人、って感じ。

「タキくん、落ち着いたら、シャワーを浴びて、食事に出よう。なにが食べたいか、考えといて」

 結局ぜんぶ奢られて、美味しいものばかり食べている。まあ、これはもういいか。

「何にしようかな……。ところでカズ先輩、今日何時に帰るんです?」
「俺は明日こっちで仕事。明日の夜に帰る予定」

 本当に仕事だったんだ。実は疑ってたよ。

「タキくん明日仕事でしょ。マンションはわりと近いよね。あとで送るよ」
「……ありがとうございます」

 そりゃ、マンションの場所を知ってるよね。言ってないけどね。
 カズ先輩は、力尽きてうつ伏せている俺の隣に横たわって、背中やら頭やらを撫でてくる。手つきが本当に優しくて気持ちいい。犬や猫が撫でられて気持ちよさそうにしている理由がわかる。撫でられるって気持ちいいんだな……。

「タキくん、仕事、無理はしないように。君が身を粉にして朝まで働くような会社じゃないよ、そこ。やめるの、真剣に考えてほしい。俺が言えることじゃないかもしれないけれど……、よく考えてほしいな」

 俺は得意になって言った。

「ふふ、実はこっちは遅くても夜八時までには帰れるんですよ」
「えっ、そうなの? いいね」
「でしょ。給料とかは変わらないんですけど、時間だけ短くなって。それだけでも体が楽だなって。…………だからこっちに異動させてもらいたいなって……。会社やめなくて済むし。こっちの社宅は近いらしいです。たぶん、追い出されもしないし」

 言えた。
 カズ先輩は少し考えて、訊ねてくる。

「……引っ越すの?」
「スーツケース一個で……。3泊4日の大きさの。まあ異動の希望が通ったらですけど」
「…………寂しくなるね」
「まだわかんないですけどね。社長がOKするか。本社のほうが人手不足ですし。でも俺、営業という名のただの雑用係だし、俺じゃないとできない仕事してるわけじゃないし、ってそれ言ったらどこででも同じなんですけど、絶対に異動させてもらえないわけでもないかなって」

 俺は頭を掻く。
 カズ先輩は静かに言った。

「タキくん。明日の夜も……、君が早く終わったらでいいんだけど、一緒にごはん食べない?」
「いいですよ。支店の人に美味しいところ聞いておきます。食通の人がいて、色々教えてくれるんで。カズ先輩は何が食べたいですか?」
「タキくんは?」
「えー、どうしよっかな。味噌カツ? 最初はカツに味噌? って感じだったんですけど」
「しかも甘いんだよね」
「そう! そうなんですよ。でもハマっちゃって。こっちの食文化いけるかも」
「……よかったね」

 そう言って、カズ先輩は俺の後ろ頭をよしよししてきた。気持ちいい。
 ……なんだ。よかった。思っていたほど、何も言われなかった。
 もう少し寂しがられるかなって思ってたけど。
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