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三 僕のものにする(※)
しおりを挟むくちゅくちゅと濡れた音がする。何の音だろう。
「まったく、父の命だと? 戻り次第撤回させなければ……」
なんだろう。肌寒い。実験用の魔術師のローブは防寒仕様なのに……。
あれ? 服を着てない。
ヴィンセント殿下の声が降ってくるのに、目が開けられないし、身体を動かすこともできない。
魔術だ。ヴィンセント殿下は魔力がすこぶる高く、国内随一の魔術師でもあり、アカデミーを首席で卒業している。
しかしなんだって、身体拘束の魔術を?
状態異常の魔術も少しはいっている。麻痺だ。身体が痺れて、力を入れても目も開かないし声も出せない。
「なにが親友なのです。親友だなんて、一度も思ったことはありません」
それは、申し訳なかった。僕の思い上がりだったらしい。言うんじゃなかったな……。ちゃんと線引きしていたつもりでいたのに。僕は相手との関係を客観視できていなかったようだ。
「先生、お目覚めですね」
温かい手が顔に触れ、顔が動かせるようになった。かかった効果を解いたらしい。
目を開けると、僕は寝台の上で仰向けに寝ていた。全裸で。
そして、なぜかヴィンセント殿下は、全裸の僕の両足を開かせている。
その着衣はやや乱れ、一部が露出している。ヴィンセント殿下は下衣の前を開け、猛々しい性器を、僕の粗末な性器とこすりあわせていた。
僕の書斎の寝台だ。窓の外は暗く、夜だ。一体何が起こっているのだろう。
事態がうまく呑み込めない。ただ、自分でもあまりしないことをされて、気持ちよかった。
「気持ちいいですか、先生」
「ン……ヴィンセント、殿下……」
「ああ、甘い声……お可愛らしい」
「んん……これはいったい……」
ヴィンセント殿下の大きな手が僕の胸を揉む。
指先で先端を弄ばれる感覚はあるのに、動けない。
「ひゃっ、あっ、あう……!」
「感度を上げさせてもらいました。気持ちいいでしょう?」
「な、なに……」
「先生がいけないんです。なぜわからないんですか。なぜ僕を避けるんですか」
「避けてなんか……」
「いつも、いつもいつも! 残ってほしいとお願いしたのに、勝手にアカデミーに行き、こちらが卒業したと思ったら勝手にこんな研究所にいて、あげく、縁談だと!」
ヴィンセント殿下は怒りに任せたように、僕の先端をくりくりと執拗にいじり、ぷっくりと膨らんだそこはじんじんと熱い。
腰がくねりそうに切ないのに身体を動かすことはできず、一方的に与え続けられる逃せない快感に、頭がおかしくなりそうだ。
なぜ怒られているのかはわからないが、僕に対して怒っているとはわかる。
「申し訳、ございません……もう、もうそこをいじるのは、や、やめ……」
ヴィンセント殿下が屈んできて、形の良い唇で乳首を食んだ。
途端、びりっと背筋にとてつもない快感が走る。
「あっ、あっ、ああっ!」
ちゅ、ちゅ、と何度も吸われ、熱い舌で丁寧にすり潰され、唇でしこしこと引っ張られ、溢れる涙と鼻水と唾液で顔がぐちゃぐちゃに濡れていく。
「あっあっ、いけません、殿下、殿下……!」
「こんなにも膨らんで……ああ、先生……」
ヴィンセント殿下は、もう片方の乳首も丹念に舐めほぐした。果物のように赤く熟れた先端は尖り、唾液に濡れている。
「はぁっ、はぁ……殿下……こんなことを……あっ、そこは、そこは……!」
ヴィンセント殿下の手が、双丘を広げた。何か熱い液体を塗られて、身体がかっと熱を帯びる。
少しずつ侵入してくる細くて固いものがヴィンセント殿下の指だと気づくのに、時間がかかった。
「あっ、おやめ、ください、あぁ、殿下、いけません、いけません……!」
「痛くはしません。ですが、どうしても先生を隣国の令嬢などに渡すわけにはいきません」
指がなかをかき混ぜる。いつしか本数が増え、二本の指が性器の裏側を探り当て、未知の快楽に、僕はあっけなく果てた。
放った精液がヴィンセント殿下の服を汚した。
「あっ、あっ、申し訳、ございません」
「構いません。それより、気持ちいいと言ってください」
「気持ち、いい、です。そこ、押したら、やっ、また、また、い、いく……」
たまらず漏らすと、ヴィンセント殿下はそこばかり責めてくる。
「ひっ、でちゃ、出ちゃう、や、あ、いく」
熱く集まって発散すると、やっと指が出ていった。
「先生、僕は先生が欲しい」
「殿下……?」
「僕のものになってくださいーー今から、僕のものにします」
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