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三年目の秋の話

四 おかしくなる(※)

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 ルイスはレンのジャケットとカマーバンドを脱がせて、手結びの蝶ネクタイとウイングカラーシャツのボタンを外してゆるめる。
 肌着をはだけさせて、胸元まであげる。スラックスを膝まで脱がせる。下着も膝までおろす。横向きになっていて動けないので、中途半端な脱ぎ方になる。
 ルイスはワセリンをたっぷりとって、レンの秘部に塗った。いつもと違う感覚に、レンは身を震わせる。ローションよりも粘性が高い。ルイスはそこを念入りにほぐす。

「あっ、あ、なんか、へん」

 そうしながら、ルイスはレンに口づけた。キスだけで勃起するくせに、そしてすぐとろとろになって挿入されたがるくせに、なぜ素直ではないときがあるのだろう。それもいいけれど。
 ルイスもジャケットを脱いで、スラックスと下着をおろす。すでに大きくなっている。狙いを定める。

「入るかな」
「え、ちょっと、まって、あの、するなら、全部、脱がせて、ください」
「ごめん、もう無理。一秒も我慢できない」

 ルイスは先端をレンの後孔に当てる。ワセリンを足して、覆いかぶさって、レンの片足をやや開きながら、レンの耳のふちをかじりながら、挿入を試みる。ローションも少し使っている。いつもよりきついので、あまり強く出し入れしないほうがいいなとルイスは思う。

「は、は……っ、ん、んん」

 レンは横向きなので、声を我慢したいのに、うつ伏せることも枕に顔を埋めることもできない。シーツに頬を押しつけて、噛むようにする。両手で口を押さえる。
 ルイスはゆっくりと小刻みに、深く挿入していく。
 身体を交差しているので、いつもより深く入れられる気がする。

「レン、顔真っ赤、可愛いね。可愛いレン」
「ん、んん」
「どうやっておねだりするの?」

 腰を少し揺らしながらルイスはレンに訊ねる。

「ん、ジェイミー、ゆっくり、あの、苦しい、ん、んん、ふ、っ、ん」
「ふふ。可愛い」

 レンは、日常生活において、ルイスの名前を呼ばなくなった。どうしても慣れないせいだ。ルイスが呼ぶように強要するときと、セックスのときだけ、ミドルネームの愛称を呼ぶことで折り合いがついている。

「ジェイミー、あー、くるし、苦しいです、やめ、あ」
「痛みは?」
「い、痛くは、ないです」

 レンは、ただなんだかへんな感じがする。ぞくぞくして、いつもの気持ちいい場所の感覚も異なる。何なんだろう、これ、とレンは思う。
 決して痛いわけでも、気持ち悪いわけでもない。むしろ気持ちいいのだが、なんとなく痒いところに手が届かないような感じだ。だが擦り続けられると、電流が走るような、その寸前のような感覚が起こる。

「なにこれ……」
「ねっとりしてるからかな」

 と、ルイスは奥のほうで、あまり出し入れをしないようにしながら擦る。自分が動くより、レンの身体を揺らす。汗ばんでくる首元や、うなじに鼻をこすりつける。舐めたり、痕にならない程度に吸う。

「あ……ああ……」

 レンは身を震わせた。ルイスはそろそろかと思って、ベッドボードのティッシュを取る。取ろうと身体を伸ばした瞬間に、奥へ押しつけたせいでレンは痙攣した。

「っ……」

 レンは、頭の中が真っ白になる。息ができない。慌てて息を吸い込む。

「や、や、あ、あああ」

 なんだ、これ。
 こみ上げてくる。身体が震えて、レンはシーツを掴む。手が震える。びくびくする。
 いつまで経っても痺れるように、絶頂が終わらない。まだ身体が震える。声が溢れて我慢できない。

「ああああ、は、あ、ああ」

 思わず大声をあげるレンの姿に、ルイスは動きを止めて、レンの前髪を寄せたりする。
 痙攣がやっとおさまってくる。レンは達したように息が荒い。顔も赤く、汗が滲んでいる。
 だが不思議なことに、ティッシュの中に精液が出ていない。

「レン。まだイってない? ごめん、イけなかったか」
「ちが、な……なにこれ……は……はあ、あ、待って、動かないで、ジェイミー、イった、イったから、待って、終わんない」

 いつものような感覚ではない。達したはずなのに、その感覚が終わらない。急降下しないので、快感が持続している。いま動かれると、また同じようにおかしくなる。
 レンはとうとう泣き出した。涙が溢れてくる。強烈すぎる。ほんの少し擦れるだけで、痛いほど痺れる。陰茎は張りつめているのに、射精していない。少しだけ溢れているような感覚もある。

「レン」

 と、ルイスは覆いかぶさって、耳元で意地悪く笑う。

「僕の可愛いレン。これ、初めてかな」
「これって、なに……?」
「こういう風にイくの、今まで味わったことない? 知らない? 初めて? どう?」
「な、ない、ないです」
「ふうん」

 ルイスは、レンの耳朶を食みながら、ふたたびゆっくりと腰を動かした。
 出し入れよりも、押しつけるようにする。前後の動きにしたり、押したり引いたりする。執拗に責める。レンの胸の突起をいじったり、臀部をつねったりする。
 レンの身体は少し触れるだけでたまらなさそうに震える。

「ああ、もう、だめ、やめて、ああ、ああ、お願い、ジェイミー、俺、おかしくなる、やめて、お願いだから……」

 レンは押し潰されながら、泣いて懇願する。どこもかしこも敏感になっていて、本当につらい。横向きにされて、中途半端な脱ぎ方で、服に気を遣っていて、思うように動けないために、快感を逃せないせいだ。
 ルイスはあちこちをしつこく愛撫しながら、ピストンを続ける。ルイスのほうも限界が近くなってくる。レンは力が抜けて、されるがままになっている。

「あ、なに、なにこれ……」
「ナカでね、メスイキしちゃったんだよ、レン」
「なにそれ……」
「ドライオーガズムともいうね」
「もうだめ、は、あっ、っ、息が」

 レンは息ができない。ルイスは動きを止めて、レンに呼吸をさせる。深呼吸して、やっと落ち着く。涙を舐めて、ルイスは深く入れた。入れられるとレンはまた苦しい。

「あああ、ジェイミー、お願い、深くしないで、あ、もう、苦しい」
「これ、気持ちよくない?」
「気持ちいい、でも、怖い、へん、こんなの、だめです。おかしくなっちゃう、怖い、んん……」
「よしよし、怖くないよ。たぶん、すごく気持ちいい。レン、身を任せてみて」
「ん……」

 レンは素直に、ルイスのいうとおりに、受け入れる。
 ルイスは平静でいられない。嬉しすぎて興奮が高まっている。腰の動きを激しくしそうになるのをなんとか留める。
 レンの耳を責める。耳朶や、ふち、穴に舌を入れたり、こめかみをかいだり、耳の裏に鼻を埋めて吸う。汗っぽくていいにおいがする。
 覆いかぶさって、きつく抱きしめた。レンの後ろ髪を少し強くつかむ。後頭部に顔をすりつける。たまらない。同じワックスを使ったので、レンは今日、ルイスと同じ香りである。

「ああ、可愛い。レンの初めてなんて、ふふ、嬉しいなあ」

 ルイスはうっとりと笑い、執拗に突き、レンは快感に泣きじゃくっている。ルイスはレンの初めての男になりたいのである。

「ジェイミー、こんなの、いや……」
「本当にいや?」
「あああ、だめ、訊かないで」
「あーもう、中に出すしかないね。レンの中に、僕の精液、全部注ごうか」
「ああっ、っ、は、あっ」
「どうする?」
「あああ、欲しい、欲しいです、お願い、も、イく、イきたい、出したい」
「レンは男の子だけど、大きいペニスを挿入されて、中に出されて、イきたいんだね。そういうのが好きだね。そんなによがっちゃって。メスみたいにされて激しくイっちゃうね。ちゃんと射精できるかな。また中でイっちゃうかも」
「い、いじわる、いじわるです、あ、あー」
「可愛い。可愛いよ」

 レンは突かれながら、はらはらと涙を溢れさせる。ルイスは嬉しい。

「レン、ふふ。女の子じゃなくてよかったね。僕の濃い精液、中出ししたら、すぐ妊娠しちゃうよ、ねえ。レン。いつもレンにいっぱい出してるもんね」
「や、あ、やめ、あ、あー」
「ほら、僕の目を見なさい」

 ルイスは、レンの解けた蝶ネクタイをつかみ、レンに上を向かせながら優しく命じる。苦しくなりながらも、ルイスの命令どおり、レンは身をよじって上を向く。ルイスはレンの支配者だ。レンは逆らえない。

「は、はい……」

 ルイスはレンの前髪を分けて、レンの泣き顔を覗き込む。
 レンはこげ茶色の瞳をしている。うつろな目からは涙が溢れる。顔が真っ赤だ。唾液に濡れた唇。かすれた声。可哀相なほど荒くなった息。ぞくぞくする。腕の中で狂わせてしまいたい。
 焦点が合って、レンもルイスを見つめる。空色の瞳。熱っぽい、色っぽいなと、レンは少し冷静に思う。この人は、自分の身体で、こんなに欲情して、こんな目をする。惹きつけられる。なんて気持ちよさそうで、嬉しそうなんだろう。もっと強く求められたい。自分の身体で果ててほしい。
 視線を合わせながら、ルイスはレンを掻き抱く。腰を早めて追い詰めていく。優しい手つきで身体や髪を撫でる。レンの性器をいつものように扱く。

「レン。大好き。本当に好き。愛してる。ねえ、レン?」

 耳元で、上手におねだりできるか問われ、レンは局部を必死にこすりつけた。

「好き、好き。あっ、あ、あっ、く、ください、俺の中に、ジェイミーの精液、出してください、お願い」

 レンはルイスのシャツにすがりついて、ルイスを引っ張る。もっと深くきてほしい。この人は俺のものだとレンは思う。独占したい。

「おかしくなる、いやだ、気持ちいい、あ、あああああ」
「レン、もう出る……!」
「あ、俺も、イく……」

 ルイスは、レンに口づけて、舌を強く入れた。お互いの唾液を混ぜて飲んで飲ませながら、精液を注ぐ。
 絶頂を味わって、息を整えながら、どのように至ったのか、工程を分析して再現性を上げる必要があるとルイスは思う。おかわりしたい。くせになりそうだ。
 レンはぐったりである。
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