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三年目の秋の話

三 靴擦れ

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 映画に出てくる、外国のホテルのスイートルームのような部屋だとレンは思った。バスルームがあるのにシャワー室もついていて、トイレがひとつ、手洗いは二つある。
 広々としたリビングルームは、部屋の中で二箇所に分かれて、猫脚のソファのほうと、窓際にダイニングセットがある。リビングを過ぎて、奥に、大きなダブルベッドが置いてあるベッドルームがある。その向こうには専用バルコニーもついている。
 とにかく広い。自宅がシンプルでモダンな内装なのに比べ、ここは装飾が多くて優雅な雰囲気だ。洋館みたいだ。カーテンが体育館の緞帳みたいに分厚いとレンは思う。
 ルイスに連れられて、レンはダブルベッドに座らされる。両足を放り出して、後ろに両手をついて、されるがままになる。
 ルイスはレンの足元に膝をつき、レンのエナメル革靴と靴下を脱がせた。

「水ぶくれになりそうかな。いや、少し皮膚が擦れてるだけか。ワセリンと絆創膏があるから」
「すみません」
「なると思ってた。オペラパンプスなんてレンは履きなれてないもの」

 と、赤くなった肌に薬を塗り、当たりそうな部分にワセリンを塗って、絆創膏を貼ったりして、手早く処置をする。

「はい、部屋にいるうちはスリッパを履いておいて」
「ありがとうございます」

 痛みが引いて、レンはほっとする。
 ベッドの脇に新しいスリッパがあったので、寝転がって手を伸ばして袋から出して、コートや上着を脱ぐべく、立ち上がろうとしたときだ。
 ルイスは、コートを脱いでベッド際のソファに放り捨て、レンをふたたびベッドに押し倒した。

「……あー、我慢できない」

 と、覆いかぶさって口づける。レンは舌を絡めたりなどをして応じつつ、起き上がろうと試みるが、ルイスはレンが起き上がるのをしつこく阻止する。

「あのー、服がよれるので」

 レンのタキシードをまさぐって、ルイスはレンのサスペンダーを外す。
 レンは、なんだかとても嫌な予感がする。すぐそこに、手当てに使ったワセリンがある。おそらく彼はローションも持っている。
 レンは慌てて逃げようとするが、レンを横向きに寝かせて、ルイスはレンが逃げられないように自分の足でレンの足を固定する。松葉崩しのような格好になる。まずい。すでに体位すらも決まっているとレンは怯える。

「よれるし、絶対皺になるし、汚れるから……」
「脱げばいいんだよ、脱げば」
「なに興奮してるの。もー」
「あのね、レン。服をプレゼントすることの意味は、脱がせたい、です。古典だよ。ここテストに出ます」
「はあ」
「時間もあるし、レンは可愛いし」

 ルイスは今日、レンがタキシードに袖を通して、髪をセットしたり、おしゃれをして楽しそうに準備していたときから、脱がせることばかり考えていたのである。
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