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三年目の夏の話

三 体温(※)

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 午前二時。
 ふたりでベッドに入る。明かりを消して、片手をつないで目を閉じる。
 気密性が高い頑丈な高級マンションだ。窓のシャッターをおろしてあるし、小さな窓も二重窓なので防音性が高いのだが、それでも風雨の音が響いてくる。

「すごい嵐ですね」
「ゆっくりした動きらしいですよ。夜中に停電になるかもしれません」
「休みでよかった……恭介大丈夫かな。あのあたり、浸水はしないんですけど」
「恭介はレンよりしっかりしているから大丈夫だと思いますよ」

 そう言われるとたしかにそうなのだが、腑に落ちない。
 つんと向こうを向くと、ルイスは笑った。

「冗談です。恭介のことを思い出したレンをからかいたくなっただけです」

 そうだ、この人は、自分の口から従業員の名前が出ることすら嫌がる人だった。
 反対方向を向いたレンの細い顎を、ルイスは手を伸ばして捕まえて上向かせ、レンの上になって唇を奪う。
 食むようにして口づけ、うっとりするようなキスをする。

「ん、あ」

 舌をねじこまれて、レンは思わず苦しい声をあげた。重ねた隙間から、生温かい唾液が流れ込んでくる。むせて溺れそうになる。あわてて飲みくだす。
 ルイスはレンに唾液を飲ませるのが好きだ。レンはレンで、ルイスの体液を飲むのが好きである。一気に、支配されている感覚に陥る。

「ん、ん」

 口づけながら、ルイスはレンの上に本格的に乗り上げる。レンの両手に自分の両手をからめてみる。レンの口腔を犯すように口づけたあと、唇を離して、あがった息を整える。

「は……」
「レン、今日できる?」
「……あの、したいです」
「ふふ。レン、可愛いね。でも毎日辛くないですか? 仕事も忙しそうですし、最近、疲れていませんか?」
「大丈夫です……」

 とレンが答えると、ルイスはレンの首筋に顔を埋めてキスをする。優しく抱擁しながら、お互いに肌を触れ合わせるために服を脱ぐ。
 空調はきいているが、少し暑い。全裸になって肌を合わせるうちに、汗ばんでくる。
 ルイスが会社に行く時間を少なくするようになって、セックスする回数が増えた。時間と体力ができたせいである。
 上掛けの中で、ルイスはレンの上になりながら、お互いの性器を片手で一緒にして扱く。ローションを少し使っているので滑りがよい。

「あっ、あ、ルイスさん、気持ちい」

 レンはルイスの首にしがみつく。ルイスはレンの気持ちいい場所をすべて把握しており、おそろしく的確に刺激する。粘着質な音とともに、根元に向かって少し強く引かれて、形のはっきりした先端を指先でこねるようにされると、レンはたまらなくなる。

「あっ、いい、あ、あ」
「レン。おいで。こんなになっちゃって、そんなに気持ちいいの?」
「気持ちい、です、ん、ん」
「感じやすいね。ああ、可愛い。好き。レン、大好きです」
「あ、好き、好きです、あっ、っ」
「君は本当に可愛いですねえ」

 と、ルイスはレンの後孔を責めるべく、レンの額にキスをしながら、レンの両足を抱えあげる。指を体内に挿入していく。

「あっ、ああ」

 レンは掠れるような声をあげた。ルイスは違和感を覚えて指を抜いた。身体を離して、レンの額に手を当てる。汗ばんでいる。
 レンはぼんやりしている。彼がとろんとしてぼんやりするのはいつものことではあるのだが、いつもと少し様子が違う気もする。

「ちょっと待って、レン。身体が熱くないですか?」
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