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サイドストーリー
水の神と白蛇
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橙色の明かりが煌々と照らす荒削りな岩肌の壁。
湧き出した清水が作る水たまり。
どこからか響く、水滴が水面を叩く音。
そんな静謐な雰囲気に満ちたこの空間は、水の神の居所、屋敷、神殿だ。
ほとんどの神にも出入り口さえ知られていないこの屋敷は【天界】のとある洞窟の中にあって、他の屋敷とは一線を画すような造りをしている。
神々はそれぞれ自身の神力を使って好みの場所に好みの造形の屋敷を構えるものなのだが、水の神はこのように洞窟そのものを屋敷、居所としているのだ。
身を清めるための泉と瞑想するための閨。そして日々の務めの記録を記す文机と記録を収める記録棚。
その他には燭台が点々とあるだけの空間。
他の神の屋敷のように柱を建てることすらせず、元々あった洞窟を控えめな装飾で飾ったこの屋敷は、水の神の性格と思想をよく反映していると言えるだろう。
『絶えず清水の音がする、岩肌がむき出しの屋敷』というのは一見すると寒々しいようだが、実際はなんとも心安らぐ温かさに満ちている。
それは灯っている明かりが炎の神(灯火の神)によるものであるということも関係しているだろうが、もう一つ、この屋敷に住まう存在によるところが大きい。
屋敷に住まう、水の神とその側仕え。
側仕えとは、言わずもがなあの白蛇だ。
ーーーーーー
「んんっ、んっ…」
滴る水滴の清々しい音に混ざって響く、くぐもった声。
水の神の屋敷の一番奥まったところにある 質素でありながらも張られた布地が美しい閨の中では、ちょうど一柱の男神が口を使って寝転ぶ男の男根への奉仕をしている。
奉仕している立派な男根は『口に含む』『舐める』『しゃぶる』などという表現では物足りないほど水の神の口内を奥までいっぱいに埋め尽くしていて、むしろくぐもった声しか出していないことが不思議に思えるくらいだ。
長さも十分な男根を躊躇なく喉奥まで導いては、強く吸い付きつつ先端まで抜き出し、くびれたところを唇で食む水の神は、視界の端にかかる自身の髪を除けて男根の持ち主をちらりと見やる。
男は片手を頭の下に置いて枕にしながら、奉仕する水の神をじっと見つめている。
(気持ちいい?)
髪紐を解いて艶やかな髪を枝垂れさせている水の神が男根の先端をなにか甘いものでも味わっているかのように舌でなぞりながら視線だけで問いを投げかけると、男はそんな水の神の頬を小さくつまんで「スイ…最高だよ」と歯を食いしばって答えた。
敏感な部分を温かく濡れた口内で扱われている男は、自身の男の象徴たるものを硬く上に突き上げている。
「上手いよな、っとに…スイの口が良すぎてこんなに勃ってる、スイが俺をこうさせてるんだ、スイの全部が俺を…」
(んんっ…)
「苦しいだろ、スイの口には絶対に入らないって感じだから。それなのに全部しゃぶって…なぁ、スイ。奥まで突かせたり舌で舐めたりって、よくそんなに熱心にやってくれるよな。すごくそれ…が…うっ…」
じゅっと音を立てて男根を吸われた男は腰を浮かせながら片手で寝具を握りしめる。
水の神による、初めにくすぐるように舐めてから徐々に刺激を強めていくというような口技は実に見事なもので、閨に誘われた時はまだ半勃ちにもなっていなかった男根は今、完全に準備が整っている状態にまでなっていた。
唇で、舌で、視覚で。
男根の立ち上がりをつぶさに感じ取っていた水の神は、伏せていた体を起こし、口元を指で拭いながら妖しげな瞳で「おっきくなった…」と男にすり寄る。
「ねぇ、『リン』…気持ちい?僕の口がリンのことをこんなにおっきくしちゃったの?ね、きもちい…?」
それはほとんど分かりきっているようなことであるのに、それでもなにか信じられないというような、不安げな様子で訊ねる水の神。
『リン』と呼ばれた男は「当たり前だろ」と水の神を両腕で抱き寄せて言った。
「こんなに尽くされてどうにかならないやつなんかいないって…分かってるくせによく言うよ」
「ん…」
男が水の神の長い髪の中に手を挿し込み、美しい丸みを帯びた頭の形をはっきりと感じ取るようにして撫でると、水の神は男の首に腕を回して引き寄せながら深い深い口づけをする。
口づけの合間に「リン…」と囁かれ、男はクスクスと笑う。
「悪くないな、『リン』ってのも…『くじゃ』って読んでくるスイも可愛かったけどさ」
『リン』と呼ばれている男。
彼は人型になっている白蛇、水の神の側仕えだ。
ーーーーー
神格を得るために【地界】へ転生して帰ってきた後、白蛇は主である水の神によって『白蛇』から『黄鱗』と名を改められ、愛称も『くじゃ』から『リン』へと変わっていた。
白蛇が名を改める理由を尋ねると、水の神は「僕だけが呼ぶ名前じゃなきゃ、やだ。だめ…!」と駄々をこねるように口を尖らせたものだ。
「人間達が…【地界】の人間達が皆、僕が君につけた名前を真似しはじめた。君の仲間のことを『蛇』って。白っぽい蛇のことを『白蛇』って」
「だめ、だめなの。『白蛇』は僕だけが呼ぶ君の名前だったのに…!他が呼ぶのはだめ、僕だけが呼ぶ名前がいい、皆が呼ぶようなのは絶対だめなの…!!」
元々、神々がそれぞれの側仕えに付けていた『蛇』や『馬』という名の読みの響きは陸国の発音にはないものだったのだが、どうやら人間達は神々がこっそり【地界】を訪れた時に側仕えの動物をそれぞれそう呼んでいるのを聞きかじり、真似て、そのまま同じ動物達を『蛇』や『馬』などと呼ぶようになったらしい。
そもそもの陸国の始まりは遠い他国から遥か長い道のりを旅して来た人々がこの地に住むことを決めたことに起因していて、言語も他国から持ち込んだものだ。
その特色が各地域の言葉、方言として今も残っているわけだが、陸国におけるこうした『蛇』や『馬』などのいくつかの言葉は陸国由来の独特な響きを持つ単語、として定着している。
神々が側仕えの動物につけた名は、本来はまったく違った意味などを持っていたにもかかわらず、陸国では(もしくは一部の地域では)側仕えと同じ種族の動物全体をさす名称となっていたのだ。
それが、水の神はとてもとても気に食わなかった。
そのため、白蛇が転生を終えて帰ってきた後、水の神は彼に『黄金の鱗をもつ者』という意味の『黄鱗』と新たな名を与え、愛称も『リン』として呼ぶようになったのだ。
神々には本来なかった名前、呼び名。
それらは側仕えを迎えたことで【天界】に浸透し、やがてそれぞれの主従の絆を示すものになっていった。
他の神や側仕えからは『水の神』と恭しく呼ばれている水の神も、もはや伴侶となっている『白蛇』あらため『黄鱗』にとっては『水』という愛おしい存在に他ならない。
水の神が愛する存在へ贈った名も、側仕えの蛇がつけた愛称も。
どちらも互いが互いを呼ぶための、特別なものなのだ。
ーーーーー
「ねぇ、リン…もっと僕のこと、『スイ』って呼んで?いっぱい、いっぱい呼んでよ…リンの声が聞きたいの、ずっと聞きたくて仕方なかった、ずっと、ずっと…ずっと待ってたんだから…」
体中をまさぐり、衣を脱がせながらねっとりと繰り返し囁く水の神。
その手は忙しなく黄鱗の胸や肩や わき腹を辿り、そして腰と尻の方へと伸びていく。
尻の肉を掴めるだけ掴み、手のひらに収めて揉みしだくそれは水の神の要求をあからさまに表していて、黄鱗はむずむずとした感覚を覚えながらも「スイ…もう我慢出来ないんだな」と水の神の尻を同じく揉んで問う。
「はは、そうだよな…さっきはスイがあんなに奉仕してくれたんだから…今度は俺が気持ちよくしなくちゃだめだよな、うん?」
それまで水の神の下にいた黄鱗は、パッと起き上がって身を翻すと、逆に水の神を下に組み敷いて真上からまっすぐに見下ろす。
元が蛇である黄鱗の瞳はどこか鋭く睨みを利かせるようであり、その瞳に見つめられるのが何よりも好きな水の神はたったそれだけで何かの術にでもかかったかのようにうっとりと、身を委ねてしまう。
上になっていたときは忙しなく動いていた手も今はすっかりその勢いを失い、完全に形勢が逆転していた。
「スイ…スイもたくさん声を聞かせてくれよ、なぁ…」
衣を完全に脱がしながら下腹部の方へと手を伸ばしていく黄鱗に、水の神は抵抗せずそれを受け入れながら「も、う…僕がたくさん気持ちよく…させてあげたかったのに…」と自ら進んで足を開く。
「いつもリンがしてくれるの、気持ちいから…僕もいっぱいよくしてあげたくて…」
「なに、お返しってこと?だからあんなにいっぱいしゃぶったのか」
「ん…そ、だよ…」
脱がされた衣を端に追いやって体を寝台の上に投げ出す水の神の答えに、黄鱗は ため息をつくようにしつつ自らも一糸纏わぬ姿になった。
「可愛すぎるって、スイ…」
黄鱗が水の神の秘部に指を挿し込み、弱く神力を流しながらそこを弄ると、水の神は体内で神力が混ざる感覚に身を震わせる。
「スイ、1本と2本、どっちがいい?」
意味深いその問いを投げかけられた水の神は、顔の紅潮などは見られないものの、分かりやすく恥ずかしがって逡巡するように目を伏せた。
そうしたまま、いつまで経っても答えを出さなそうな水の神に、黄鱗は《いいから、望む方を言ってごらん》とさらに指の数と深さを増して囁く。
《今、されたい方を選ぶだけ…な?今日はどっちがいいんだ?素直に言ってくれって。ほら》
いよいよ抑えきれなくなっていく情欲。
すると水の神は目を伏せたまま、指で『2』を作って黄鱗の前に突き出した。
2本。
黄鱗は目の前に差し出された水の神の2本の指をまとめて咥えると、目を閉じて意識を集中し、ふるっと体を震わせる。
次に水の神が見た黄鱗の姿は、それまでとは少し異なるものだった。
思わず「あっ、すっごく好き…大好き…」ともらす水の神。
水の神の前にいたのは、まさに『黄金の鱗をもつ者』という名の通りの、頬や首筋など所々に金の鱗が付いた美しい人。
それは神格を得て、格段にたくましさが増した黄鱗の姿だった。
転生を終えた側仕え達は皆 きちんとした『魄』と神格を得るため、本来の動物の姿に戻ることはほとんどないのだが、神との交わりで膨大な神力を扱えるようになるとそれを利用して部分的に姿を戻すこともできるようにもなる。
多くの側仕え達は転生前と同じく、わずかでもそのように元の姿を混ざらせてしまうということは『姿を保ちきれない、神力を扱いきれていない未熟者』として恥と思っているのだが、この黄鱗だけは違った。
元の蛇としての姿を人型の時にも覗かせることを、むしろ好んでいるのだ。
今のこの姿がそれだ。
転生を経て白色よりも金の鱗が目立つようになった黄鱗。
金の鱗が体のあちこちに散らばるその姿は、人型であるのにどこか蛇らしさを兼ね備えていて、なんだか動物的な、異形的な魅力を秘めている。
さらに全身には筋肉の塊によってくっきりとした線がいくつも描き出されていて、まるで堅牢な鎧を纏っているかのようにさえ見えるのだ。
腹部だけでも、いくつに割れているのかを正確に数えるのは難しいだろう。
そしてなによりも、この姿をした黄鱗の下腹部には、本来1本であるはずのそれが間違いなく2本ついていた。
1本の時よりはそれぞれいくらか小振りだが、そこにたしかに勃起した2本のものが、燦然と、そこに輝いている。
「じゃ…挿れるね」
指を抜き挿しするとジュプジュプと激しい水音がする水の神の秘部。
準備が完全に整っていることを確認した黄鱗は、自身の反り勃つ2本のものをまとめて持つと、その2つの切っ先を水の神にあてがい、わずかな抵抗はものともせずに最奥まで一息で挿入する。
1本ずつの大きさなど、2本まとめての挿入には何の関係もないだろう。
挿入と同時に男根から注がれる神力の量に、水の神は四肢でしがみつきながら身悶えた。
ーーーーー
閨を覆う薄布に2人の影がおぼろげに映る。
体の前面をぴったりとくっつけながら腰を深く打ち付ける黄鱗と、足を深く折り曲げて抱きつく水の神。
水の神は注がれる神力の強さをもっと強めてほしいと要求するが、黄鱗に「じっくりしなきゃ、な?」と諭されてお預けを食っている。
【天界】の夜はまだまだ長い。
それこそじっくり絡み合うだけの時間は十分にあるのだ。
「ね、リン…」
「うん?」
「あの…ぎゅってするやつ…やってほし、い…」
水の神は黄鱗と鼻先がくっつくほどの距離で、少し言いづらそうに言葉を途切れさせながらねだる。
「いっぱいぎゅって…してほし…」
「あれ、してほしいの?」
「うん…して…」
間近で吐息混じりにねだられた黄鱗が水の神の望みを跳ね除けられるはずもない。
快諾するのを態度で示すように、黄鱗は水の神に腕を回して抱きしめると、腕の位置を整えながら、そのまま徐々に腕の力を強めていった。
「いくよ………」
腕の力は信じられないほど強くなり、やがて水の神は胸を圧迫されて呼吸ができないほどにまでなっていく。
それでもなお力を込め続ける黄鱗。
その力は本来獲物を絞めるためのもの、蛇としての性質がなせるものだ。
きっと腕の中にいるのがただの人間であったなら、とっくに意識を失い、骨もなにもかも無事では済まなかっただろう。
だが水の神の肉体は魄が創り出したものであり、呼吸も人間がするものとは用途が違うのだ。
強すぎる抱擁も、まったく苦しいものではない。
全身が筋肉ともいえるほど発達した体を持っている蛇であった黄鱗の性質がありありと感じられる抱擁に、水の神は恍惚とする。
黄鱗の方も、この抱擁は様々な点において心地いいと思えるものだった。
獲物を捕らえるための行動を愛する者に対して行うということは、それはすなわち自らのものにしたということと同義であり、今では必要なくなった『食事』『捕食』を、また別の意味で水の神に対して行っているということなのだ。
これから、いや、すでに。
水の神は黄鱗の手中にあり、捕食の対象だ。
そして、黄鱗自身も水の神の手中にある。
存分に抱き絞めあげた黄鱗が腕の力を抜くと、ぷはっ、と息を吐いて水の神が黄鱗の耳に齧りついた。
「きもちい…ありがと、これ…大好き」
とろりとしたとろけるような瞳で満足そうにしている水の神だが、黄鱗は加減しつつも強く抱きしめたことに心配になって「本当に大丈夫?苦しくない?」と訊ねる。
神々は人間のように痛みなどを感じることがないため、もちろん水の神も『大丈夫』と言うように頷いて応えたのだが、その後に続いた言葉に、思わず黄鱗は動きを止めた。
「僕が苦しいと思うのは…リンが僕のそばにいないときだけだよ」
「君がいなくなって初めて…初めて僕は『苦しい』ってことがどういうことか、分かったんだ…」
黄鱗が神格を得るために【転生の泉】に入った日。
あの日、水の神は目醒めて初めて『寂しさ』『苦しさ』というものを身をもって知った。
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神として目醒めた頃の水の神は孤独そのものであり、たった1人で毎日を過ごしていても、なんとも思っていなかった。
落ち着く場所を探して辿りついたこの洞窟が他の神々の屋敷から遠く離れていたとしても不安になることはなく、淡々と自らの務めをはたしながらどの神とも言葉を交わさない日が幾日あっても気にすることがなかった水の神。
ところが【地界】で出逢った1匹の白蛇を側仕えに迎えたことで、水の神は誰かと共に暮らすことのよさを知り、そしてそれに慣れていったのだ。
白蛇と共にあることが当たり前になっていた水の神は、白蛇がわずかな神力を得て言葉を交わせるようになってからはさらにその生活の心地よさに身を委ねるようになり、自身でも知らないうちに白蛇なしの日々は考えられないほどになっていった。
白蛇と共にいることが当たり前になりすぎて、離れて暮らすということがどういうことなのかがまったく想像できなかった水の神は、実際に白蛇が転生しに【天界】から出ていてしまった後、務めを放棄するほど打ちのめされ、涙に明け暮れた。
元々 身体的な苦痛を感じることがない神だが、こうして側仕え達がいない日々を経験したことのある神は皆 精神的な苦痛というものを味わい、よりいっそう側仕えや自らの愛する者への思いを深めるのだ。
ーーーーー
当時を詳しく思い出すのも辛い水の神に、黄鱗はそっと口づけて「辛い思いをさせて、悪かったな」と微笑む。
その微笑みに応えるように、水の神は黄鱗の頬を両手で包み込んだ。
「ずっと…ずっと一緒にいてよ、リン…もう二度とあんな日々、僕には耐えられないよ」
「すごく寂しくて辛かったんだから…本当にすごく、すごく…」
うるうると揺らめいている水の神の目元をそっと指の腹で拭いながら、黄鱗は「あぁ、ずっと一緒だ。決まってるだろ」と宥めるように言った。
「何のために俺は【地界】まで行ったんだ?何のためにスイから離れて暮らしたんだよ、何のために…」
「なぁ、俺が泉に入る前に言ったこと、覚えてるだろ。忘れたとは言わせないぞ、スイの耳元で俺はなんて言った?」
ぐっと重い一突きを繰り出された水の神は喉を反らして喘ぐと、ふわりと顔をほころばせる。
黄鱗が【転生の泉】に入る前、ひどく落ち込む水の神に囁いた約束。
それは水の神と黄鱗だけが知るものだが、2人の絆を固く結んでいることはたしかだ。
囁きで満たされる閨はどこまでも甘く穏やかだが、ふいに黄鱗は「なぁ、スイ。俺だって苦しかったのを知ってるか?」と水の神に問う。
「俺だってスイのおかげですごく苦しい思いをしたんだぞ」
「ん…僕のせい、で…?」
「あぁ、すごくすごく苦しかったんだ。…なんだ、本当に分からないのか?」
片眉をあげて訊ねる黄鱗だが、水の神は何のことか心当たりもなく首をかしげる。
水の神は白蛇のいない期間を【天界】での時にして60年も耐えなければならなかったわけだが、黄鱗がその間 に人間としての30年を、【天界】での一切を忘れて楽しく過ごしていたということは牧草地の神を通じてよく知っているのだ。
自身との記憶を失っていた黄鱗が、なぜ苦しい思いをしたのか。
やはりまったく心当たりがない水の神に、黄鱗は「っとに分かんないのか」と小さくため息をついた。
頬を撫でながら、じっと水の神の瞳を覗き込む黄鱗。
「スイ。待ちきれなくて俺を迎えに来たのは誰だ?うん?俺を【天界】に呼んだのは誰なんだよ」
その言葉の一部分を強調する話し方に、水の神はようやく「あっ…」と1つ思い立つ。
「あれ…そんなに苦しかった?」
すると黄鱗はスッと目を細めながら「苦しかったよ、死ぬほどにな」と水の神の手を取った。
「おおかた、スイは俺が帰って来るのを待ちきれなかったんだろ…だからわざわざ迎えに来たんだよな?あんな風にして…」
「こんな綺麗な人が湖に立ってたら駆けつけるに決まってる。たとえ水がどんなに…冷たくったって」
黄鱗は水の神の手を自身の首に当て、首を圧迫させるように力を込めさせながら「あれ以上苦しいことはないだろうな」と薄く笑う。
「体の中に、体中にスイが入り込んでくる感覚。息ができなくなって、もがいてもどうにもならないんだ…捕らわれて、包み込まれて、全身がこうやって…」
水の神が手を引こうとすると、突然黄鱗はありったけの神力を注ぎ込もうとするかのように抽挿を再開させた。
腹にある魄のすぐ近くに直接流れ込む黄鱗の神力はあまりにも多く、それでいて力強いため、混ざり合う神力の勢いも凄まじい。
「あんっ、やっ、あぁっ…~~~っ!!!」
周囲を憚らず大きな喘ぎ声を上げて目を白黒させる水の神同様に、黄鱗にも水の神の体内から押し出されるようにして溢れた大量の神力がなだれ込み、尋常ではない快感がもたらされる。
どちらかが快感を覚えれば必然的にもう一方も快感を感じる交わり。
それはまさしく愛にあふれたものと言えるだろう。
水の神の足を肩にかけながらさらに奥を目指して腰を打ち付ける黄鱗と、必要以上に抱きついて抽挿を妨げないようにしつつそれを受け入れる水の神。
黄鱗の2本の男根は水の神の体内で左右に広がり、抜き挿しするたびにその異物感を強めている。
2本の良い点は互いの触れ合う面積が多いということだ。
触れ合う面積が多いということはそれだけ一度に混ぜあう神力も多いということであり、たった一突きでも目の周るような快感を得ることができる。
では1本では2本に劣るのかというと、そういうわけでもない。
1本の場合は2本のときと比べて長さが出るため、よりいっそう水の神の腹にある魄に近づくことができ、ほとんど直接神力を魄へと注ぎ込むことができるのだ。
神格をもつ者にとっての『魄』とは、神力の源であり、本体であり、魂そのものと言えるほどの重要なものだ。
そこへ直接神力を注ぎ込まれることの快感とはもはや言葉で表すことのできない強烈な感覚で、ひとたび味わってしまえば決して忘れることはできない。
2本と1本。つまり『太さ』と『長さ』。
その優劣をつけることなどできるはずもない。
そしてその2つを味わい、その時の好みで選ぶことができるのは、この水の神と黄鱗だけの特権だといえる。
なにせ、普通は誰でも1本なのだから。
「~~~っ、リン…で、出ちゃ…出ちゃ、うっ…!」
「スイ…俺も…っ」
「う、~~っ……!!」
指を絡めて硬く握り合った手。
長いこと絡み合った果てに、いよいよ水の神は自らの腹へ白濁を散らし、そして黄鱗は水の神の体内へと射精した。
体中を巡るすべての神力を残らず黄鱗に受け渡しながら混ぜたことで、水の神は気を失ったようにぐったりと眠り込む。
本来は眠ることのない神が、唯一眠るとき。
その寝顔を見ることができるのは特別な者だけだ。
黄鱗は、水の神のどこかあどけない寝顔を眺めながら、同じく横にぐったりと横たわった。
体内で水の神のものである神力が蠢き、自らのものと混ざり合う感覚はぐるぐると持続的な快感をもたらしている。
寝顔をまだ眺めていたいと思うものの、やはり強い眠気が襲ってきて抗えない。
水の神の横顔を眺めながら何度か瞬きをすると、いつの間にか黄鱗も瞳を閉じていた。
ーーーーーー
なんとなく感じる気配、視線。
「…いつ起きたんだ」
黄鱗が眼を閉じたまま訊ねると、それまでじっとしていた水の神はもぞもぞと黄鱗の体に腕を回す。
胸元から聞こえる声は小さく、くぐもっているが、どうやら水の神も今さっき起きたところらしい。
体は長らく閨の中のお飾り状態だった掛け具に覆われている。
きっと先に目を覚ました水の神が端の方から引っ張ってきていたのだろう。
水の神の衣にあしらわれているのと同じ薄水色をした艶やかな掛け具の中で、黄鱗は水の神を抱き寄せると、足を太ももからふくらはぎ、つま先まで余すところなく摺り寄せあう。
彼らが放つ白濁や愛液などは すべて神力が形をなしたようなものであり、2人が休んでいる間にそれらは吸収されて跡形もなくなっている。
水の神の腹はもちろん、体内に出された黄鱗のものも。
抽挿によって愛液に塗れ、白濁が零れていた寝具もすっかり綺麗なものだ。
さらりとした肌触りのいい閨の中、黄鱗は水の神の尻を両手で揉みながら「なんか…変わりはないか」と問いかける。
「腹とか、どっか…卵、みたいなのは」
すると水の神はふるふると首を振り、黄鱗の胸元で顔を上げた。
「なんにも…ただ神力が高まってるのが分かるだけ」
水の神の答えに「…そっか」と小さく応え、黄鱗は水の神を自らの上に腹ばいに乗せて髪を撫でる。
交わりによって神力が高まっているということは、今の水の神を見ればはっきりとしている。
普段から美しく艶やかな髪をしているのは確かだが、今はいっそう青の色が濃くなっていて、濡れたような、しっとりとした重厚感が感じられるような艶を放っているからだ。
他にも瞳の色などにもそれは色濃く表れている。
まさに潤っているといった様子だろう。
「子作り、合ってるはずなのにな…」
ぼそりと呟く黄鱗。
「そりゃ俺らは男体だけど、でも『銀』のとこも森の神のところも…風の神のところにだって子供が、精霊がいるんだから。男同士は関係ないよな」
「俺、銀よりも熱心にシてると思うんだけど」
黄鱗は水の神の髪を1房すくって指で弄ぶ。
実は、まだ水の神と黄鱗の間には2人の神力を引き継ぐ子供が、精霊が生まれていなかった。
どちらも精霊を生みだすための正しい方法を、精霊を生み出すのにはどうすればよいかということを知らなかったのだ。
同じ頃に転生を済ませた牧草地の神の側仕えである白馬にはすでに3体もの精霊がいて、顔を合わせると『水の神様』『黄鱗様』と可愛らしく挨拶をしてくれるのだが、そんな精霊の姿を目にする度に(僕達にも互いの神力を受け継ぐ精霊がいたら…)と考えていた水の神達。
互いの神力を高めてさえいればそのうち、と思い続けてきたが、どうやらそうとも限らないのではないかと感じ始めていた。
「ねぇ、リン」
「うん?」
「僕…いつかリンに似た白蛇ちゃんに会いたいな」
えへへ、と顔を隠すようにして照れ笑いをする水の神。
その照れた表情は、黄鱗の目には水の神の耳が赤く染まったように見えるほど、愛らしくはにかんだものだ。
その表情によって一瞬にして再び心に火を点けられた黄鱗は、反り立つ男根を隠そうともせずに「あぁ…そうだな」と寝具の中で水の神の体を撫でる。
「銀に聞くよ、『精霊を生み出すのはどうやるのか』ってさ」
「俺も…スイが俺との子蛇を抱いてる姿が見たくてたまらない」
後日、黄鱗が親友でもある『銀白』に精霊の生み出し方を教えてくれとしきりに迫って戸惑わせることになるのは、また別の話だ。
陸国のすべての人々が寝静まった真夜中に、【地界】での丸一日に相当する時間が流れる【天界】の夜。
その長さのおかげで、寝具の中で存分に絡み合った後の今でさえもまだその半分も過ぎていない。
もじもじと黄鱗の胸の上でなにか言いたそうにする水の神。
「スイ、どうした?」
水の神がどんなことを言いたいと思っているのか、黄鱗にはよく分かっている。
しかしあえてそれを言わせようと促すと、水の神は少し間をおいてから小さな唸り声をあげ、上目遣いになって言った。
「リン…」
「次は…1本で…シて?」
先ほどまで散々に突かれていた秘部はまだ柔らかく、瑞々しいままだ。
いつの間にか黄鱗の体からは金の鱗が消え失せ、どこからどう見ても立派な人間の美丈夫に変わっていた。
恭しく「いくらでも…お望みのままに」と囁きながら黄鱗は水の神の腰のあたりを大きな少しひやりとした手のひらで撫でる。
「我が主、水の神…スイ様」
跳ね除けられた掛け具はまたもや端に追いやられ、再びこの閨で必要とされる時を静かに待つ。
黄鱗の腹に手をつき、その上で体を上下させる水の神。
激しい抽挿の音と漏れ出る喘ぎ声はあちこちに反響し、この屋敷、洞窟中を隅々まで熱気で満たしながら静謐な空気をすっかり消し去っていた。
湧き出した清水が作る水たまり。
どこからか響く、水滴が水面を叩く音。
そんな静謐な雰囲気に満ちたこの空間は、水の神の居所、屋敷、神殿だ。
ほとんどの神にも出入り口さえ知られていないこの屋敷は【天界】のとある洞窟の中にあって、他の屋敷とは一線を画すような造りをしている。
神々はそれぞれ自身の神力を使って好みの場所に好みの造形の屋敷を構えるものなのだが、水の神はこのように洞窟そのものを屋敷、居所としているのだ。
身を清めるための泉と瞑想するための閨。そして日々の務めの記録を記す文机と記録を収める記録棚。
その他には燭台が点々とあるだけの空間。
他の神の屋敷のように柱を建てることすらせず、元々あった洞窟を控えめな装飾で飾ったこの屋敷は、水の神の性格と思想をよく反映していると言えるだろう。
『絶えず清水の音がする、岩肌がむき出しの屋敷』というのは一見すると寒々しいようだが、実際はなんとも心安らぐ温かさに満ちている。
それは灯っている明かりが炎の神(灯火の神)によるものであるということも関係しているだろうが、もう一つ、この屋敷に住まう存在によるところが大きい。
屋敷に住まう、水の神とその側仕え。
側仕えとは、言わずもがなあの白蛇だ。
ーーーーーー
「んんっ、んっ…」
滴る水滴の清々しい音に混ざって響く、くぐもった声。
水の神の屋敷の一番奥まったところにある 質素でありながらも張られた布地が美しい閨の中では、ちょうど一柱の男神が口を使って寝転ぶ男の男根への奉仕をしている。
奉仕している立派な男根は『口に含む』『舐める』『しゃぶる』などという表現では物足りないほど水の神の口内を奥までいっぱいに埋め尽くしていて、むしろくぐもった声しか出していないことが不思議に思えるくらいだ。
長さも十分な男根を躊躇なく喉奥まで導いては、強く吸い付きつつ先端まで抜き出し、くびれたところを唇で食む水の神は、視界の端にかかる自身の髪を除けて男根の持ち主をちらりと見やる。
男は片手を頭の下に置いて枕にしながら、奉仕する水の神をじっと見つめている。
(気持ちいい?)
髪紐を解いて艶やかな髪を枝垂れさせている水の神が男根の先端をなにか甘いものでも味わっているかのように舌でなぞりながら視線だけで問いを投げかけると、男はそんな水の神の頬を小さくつまんで「スイ…最高だよ」と歯を食いしばって答えた。
敏感な部分を温かく濡れた口内で扱われている男は、自身の男の象徴たるものを硬く上に突き上げている。
「上手いよな、っとに…スイの口が良すぎてこんなに勃ってる、スイが俺をこうさせてるんだ、スイの全部が俺を…」
(んんっ…)
「苦しいだろ、スイの口には絶対に入らないって感じだから。それなのに全部しゃぶって…なぁ、スイ。奥まで突かせたり舌で舐めたりって、よくそんなに熱心にやってくれるよな。すごくそれ…が…うっ…」
じゅっと音を立てて男根を吸われた男は腰を浮かせながら片手で寝具を握りしめる。
水の神による、初めにくすぐるように舐めてから徐々に刺激を強めていくというような口技は実に見事なもので、閨に誘われた時はまだ半勃ちにもなっていなかった男根は今、完全に準備が整っている状態にまでなっていた。
唇で、舌で、視覚で。
男根の立ち上がりをつぶさに感じ取っていた水の神は、伏せていた体を起こし、口元を指で拭いながら妖しげな瞳で「おっきくなった…」と男にすり寄る。
「ねぇ、『リン』…気持ちい?僕の口がリンのことをこんなにおっきくしちゃったの?ね、きもちい…?」
それはほとんど分かりきっているようなことであるのに、それでもなにか信じられないというような、不安げな様子で訊ねる水の神。
『リン』と呼ばれた男は「当たり前だろ」と水の神を両腕で抱き寄せて言った。
「こんなに尽くされてどうにかならないやつなんかいないって…分かってるくせによく言うよ」
「ん…」
男が水の神の長い髪の中に手を挿し込み、美しい丸みを帯びた頭の形をはっきりと感じ取るようにして撫でると、水の神は男の首に腕を回して引き寄せながら深い深い口づけをする。
口づけの合間に「リン…」と囁かれ、男はクスクスと笑う。
「悪くないな、『リン』ってのも…『くじゃ』って読んでくるスイも可愛かったけどさ」
『リン』と呼ばれている男。
彼は人型になっている白蛇、水の神の側仕えだ。
ーーーーー
神格を得るために【地界】へ転生して帰ってきた後、白蛇は主である水の神によって『白蛇』から『黄鱗』と名を改められ、愛称も『くじゃ』から『リン』へと変わっていた。
白蛇が名を改める理由を尋ねると、水の神は「僕だけが呼ぶ名前じゃなきゃ、やだ。だめ…!」と駄々をこねるように口を尖らせたものだ。
「人間達が…【地界】の人間達が皆、僕が君につけた名前を真似しはじめた。君の仲間のことを『蛇』って。白っぽい蛇のことを『白蛇』って」
「だめ、だめなの。『白蛇』は僕だけが呼ぶ君の名前だったのに…!他が呼ぶのはだめ、僕だけが呼ぶ名前がいい、皆が呼ぶようなのは絶対だめなの…!!」
元々、神々がそれぞれの側仕えに付けていた『蛇』や『馬』という名の読みの響きは陸国の発音にはないものだったのだが、どうやら人間達は神々がこっそり【地界】を訪れた時に側仕えの動物をそれぞれそう呼んでいるのを聞きかじり、真似て、そのまま同じ動物達を『蛇』や『馬』などと呼ぶようになったらしい。
そもそもの陸国の始まりは遠い他国から遥か長い道のりを旅して来た人々がこの地に住むことを決めたことに起因していて、言語も他国から持ち込んだものだ。
その特色が各地域の言葉、方言として今も残っているわけだが、陸国におけるこうした『蛇』や『馬』などのいくつかの言葉は陸国由来の独特な響きを持つ単語、として定着している。
神々が側仕えの動物につけた名は、本来はまったく違った意味などを持っていたにもかかわらず、陸国では(もしくは一部の地域では)側仕えと同じ種族の動物全体をさす名称となっていたのだ。
それが、水の神はとてもとても気に食わなかった。
そのため、白蛇が転生を終えて帰ってきた後、水の神は彼に『黄金の鱗をもつ者』という意味の『黄鱗』と新たな名を与え、愛称も『リン』として呼ぶようになったのだ。
神々には本来なかった名前、呼び名。
それらは側仕えを迎えたことで【天界】に浸透し、やがてそれぞれの主従の絆を示すものになっていった。
他の神や側仕えからは『水の神』と恭しく呼ばれている水の神も、もはや伴侶となっている『白蛇』あらため『黄鱗』にとっては『水』という愛おしい存在に他ならない。
水の神が愛する存在へ贈った名も、側仕えの蛇がつけた愛称も。
どちらも互いが互いを呼ぶための、特別なものなのだ。
ーーーーー
「ねぇ、リン…もっと僕のこと、『スイ』って呼んで?いっぱい、いっぱい呼んでよ…リンの声が聞きたいの、ずっと聞きたくて仕方なかった、ずっと、ずっと…ずっと待ってたんだから…」
体中をまさぐり、衣を脱がせながらねっとりと繰り返し囁く水の神。
その手は忙しなく黄鱗の胸や肩や わき腹を辿り、そして腰と尻の方へと伸びていく。
尻の肉を掴めるだけ掴み、手のひらに収めて揉みしだくそれは水の神の要求をあからさまに表していて、黄鱗はむずむずとした感覚を覚えながらも「スイ…もう我慢出来ないんだな」と水の神の尻を同じく揉んで問う。
「はは、そうだよな…さっきはスイがあんなに奉仕してくれたんだから…今度は俺が気持ちよくしなくちゃだめだよな、うん?」
それまで水の神の下にいた黄鱗は、パッと起き上がって身を翻すと、逆に水の神を下に組み敷いて真上からまっすぐに見下ろす。
元が蛇である黄鱗の瞳はどこか鋭く睨みを利かせるようであり、その瞳に見つめられるのが何よりも好きな水の神はたったそれだけで何かの術にでもかかったかのようにうっとりと、身を委ねてしまう。
上になっていたときは忙しなく動いていた手も今はすっかりその勢いを失い、完全に形勢が逆転していた。
「スイ…スイもたくさん声を聞かせてくれよ、なぁ…」
衣を完全に脱がしながら下腹部の方へと手を伸ばしていく黄鱗に、水の神は抵抗せずそれを受け入れながら「も、う…僕がたくさん気持ちよく…させてあげたかったのに…」と自ら進んで足を開く。
「いつもリンがしてくれるの、気持ちいから…僕もいっぱいよくしてあげたくて…」
「なに、お返しってこと?だからあんなにいっぱいしゃぶったのか」
「ん…そ、だよ…」
脱がされた衣を端に追いやって体を寝台の上に投げ出す水の神の答えに、黄鱗は ため息をつくようにしつつ自らも一糸纏わぬ姿になった。
「可愛すぎるって、スイ…」
黄鱗が水の神の秘部に指を挿し込み、弱く神力を流しながらそこを弄ると、水の神は体内で神力が混ざる感覚に身を震わせる。
「スイ、1本と2本、どっちがいい?」
意味深いその問いを投げかけられた水の神は、顔の紅潮などは見られないものの、分かりやすく恥ずかしがって逡巡するように目を伏せた。
そうしたまま、いつまで経っても答えを出さなそうな水の神に、黄鱗は《いいから、望む方を言ってごらん》とさらに指の数と深さを増して囁く。
《今、されたい方を選ぶだけ…な?今日はどっちがいいんだ?素直に言ってくれって。ほら》
いよいよ抑えきれなくなっていく情欲。
すると水の神は目を伏せたまま、指で『2』を作って黄鱗の前に突き出した。
2本。
黄鱗は目の前に差し出された水の神の2本の指をまとめて咥えると、目を閉じて意識を集中し、ふるっと体を震わせる。
次に水の神が見た黄鱗の姿は、それまでとは少し異なるものだった。
思わず「あっ、すっごく好き…大好き…」ともらす水の神。
水の神の前にいたのは、まさに『黄金の鱗をもつ者』という名の通りの、頬や首筋など所々に金の鱗が付いた美しい人。
それは神格を得て、格段にたくましさが増した黄鱗の姿だった。
転生を終えた側仕え達は皆 きちんとした『魄』と神格を得るため、本来の動物の姿に戻ることはほとんどないのだが、神との交わりで膨大な神力を扱えるようになるとそれを利用して部分的に姿を戻すこともできるようにもなる。
多くの側仕え達は転生前と同じく、わずかでもそのように元の姿を混ざらせてしまうということは『姿を保ちきれない、神力を扱いきれていない未熟者』として恥と思っているのだが、この黄鱗だけは違った。
元の蛇としての姿を人型の時にも覗かせることを、むしろ好んでいるのだ。
今のこの姿がそれだ。
転生を経て白色よりも金の鱗が目立つようになった黄鱗。
金の鱗が体のあちこちに散らばるその姿は、人型であるのにどこか蛇らしさを兼ね備えていて、なんだか動物的な、異形的な魅力を秘めている。
さらに全身には筋肉の塊によってくっきりとした線がいくつも描き出されていて、まるで堅牢な鎧を纏っているかのようにさえ見えるのだ。
腹部だけでも、いくつに割れているのかを正確に数えるのは難しいだろう。
そしてなによりも、この姿をした黄鱗の下腹部には、本来1本であるはずのそれが間違いなく2本ついていた。
1本の時よりはそれぞれいくらか小振りだが、そこにたしかに勃起した2本のものが、燦然と、そこに輝いている。
「じゃ…挿れるね」
指を抜き挿しするとジュプジュプと激しい水音がする水の神の秘部。
準備が完全に整っていることを確認した黄鱗は、自身の反り勃つ2本のものをまとめて持つと、その2つの切っ先を水の神にあてがい、わずかな抵抗はものともせずに最奥まで一息で挿入する。
1本ずつの大きさなど、2本まとめての挿入には何の関係もないだろう。
挿入と同時に男根から注がれる神力の量に、水の神は四肢でしがみつきながら身悶えた。
ーーーーー
閨を覆う薄布に2人の影がおぼろげに映る。
体の前面をぴったりとくっつけながら腰を深く打ち付ける黄鱗と、足を深く折り曲げて抱きつく水の神。
水の神は注がれる神力の強さをもっと強めてほしいと要求するが、黄鱗に「じっくりしなきゃ、な?」と諭されてお預けを食っている。
【天界】の夜はまだまだ長い。
それこそじっくり絡み合うだけの時間は十分にあるのだ。
「ね、リン…」
「うん?」
「あの…ぎゅってするやつ…やってほし、い…」
水の神は黄鱗と鼻先がくっつくほどの距離で、少し言いづらそうに言葉を途切れさせながらねだる。
「いっぱいぎゅって…してほし…」
「あれ、してほしいの?」
「うん…して…」
間近で吐息混じりにねだられた黄鱗が水の神の望みを跳ね除けられるはずもない。
快諾するのを態度で示すように、黄鱗は水の神に腕を回して抱きしめると、腕の位置を整えながら、そのまま徐々に腕の力を強めていった。
「いくよ………」
腕の力は信じられないほど強くなり、やがて水の神は胸を圧迫されて呼吸ができないほどにまでなっていく。
それでもなお力を込め続ける黄鱗。
その力は本来獲物を絞めるためのもの、蛇としての性質がなせるものだ。
きっと腕の中にいるのがただの人間であったなら、とっくに意識を失い、骨もなにもかも無事では済まなかっただろう。
だが水の神の肉体は魄が創り出したものであり、呼吸も人間がするものとは用途が違うのだ。
強すぎる抱擁も、まったく苦しいものではない。
全身が筋肉ともいえるほど発達した体を持っている蛇であった黄鱗の性質がありありと感じられる抱擁に、水の神は恍惚とする。
黄鱗の方も、この抱擁は様々な点において心地いいと思えるものだった。
獲物を捕らえるための行動を愛する者に対して行うということは、それはすなわち自らのものにしたということと同義であり、今では必要なくなった『食事』『捕食』を、また別の意味で水の神に対して行っているということなのだ。
これから、いや、すでに。
水の神は黄鱗の手中にあり、捕食の対象だ。
そして、黄鱗自身も水の神の手中にある。
存分に抱き絞めあげた黄鱗が腕の力を抜くと、ぷはっ、と息を吐いて水の神が黄鱗の耳に齧りついた。
「きもちい…ありがと、これ…大好き」
とろりとしたとろけるような瞳で満足そうにしている水の神だが、黄鱗は加減しつつも強く抱きしめたことに心配になって「本当に大丈夫?苦しくない?」と訊ねる。
神々は人間のように痛みなどを感じることがないため、もちろん水の神も『大丈夫』と言うように頷いて応えたのだが、その後に続いた言葉に、思わず黄鱗は動きを止めた。
「僕が苦しいと思うのは…リンが僕のそばにいないときだけだよ」
「君がいなくなって初めて…初めて僕は『苦しい』ってことがどういうことか、分かったんだ…」
黄鱗が神格を得るために【転生の泉】に入った日。
あの日、水の神は目醒めて初めて『寂しさ』『苦しさ』というものを身をもって知った。
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神として目醒めた頃の水の神は孤独そのものであり、たった1人で毎日を過ごしていても、なんとも思っていなかった。
落ち着く場所を探して辿りついたこの洞窟が他の神々の屋敷から遠く離れていたとしても不安になることはなく、淡々と自らの務めをはたしながらどの神とも言葉を交わさない日が幾日あっても気にすることがなかった水の神。
ところが【地界】で出逢った1匹の白蛇を側仕えに迎えたことで、水の神は誰かと共に暮らすことのよさを知り、そしてそれに慣れていったのだ。
白蛇と共にあることが当たり前になっていた水の神は、白蛇がわずかな神力を得て言葉を交わせるようになってからはさらにその生活の心地よさに身を委ねるようになり、自身でも知らないうちに白蛇なしの日々は考えられないほどになっていった。
白蛇と共にいることが当たり前になりすぎて、離れて暮らすということがどういうことなのかがまったく想像できなかった水の神は、実際に白蛇が転生しに【天界】から出ていてしまった後、務めを放棄するほど打ちのめされ、涙に明け暮れた。
元々 身体的な苦痛を感じることがない神だが、こうして側仕え達がいない日々を経験したことのある神は皆 精神的な苦痛というものを味わい、よりいっそう側仕えや自らの愛する者への思いを深めるのだ。
ーーーーー
当時を詳しく思い出すのも辛い水の神に、黄鱗はそっと口づけて「辛い思いをさせて、悪かったな」と微笑む。
その微笑みに応えるように、水の神は黄鱗の頬を両手で包み込んだ。
「ずっと…ずっと一緒にいてよ、リン…もう二度とあんな日々、僕には耐えられないよ」
「すごく寂しくて辛かったんだから…本当にすごく、すごく…」
うるうると揺らめいている水の神の目元をそっと指の腹で拭いながら、黄鱗は「あぁ、ずっと一緒だ。決まってるだろ」と宥めるように言った。
「何のために俺は【地界】まで行ったんだ?何のためにスイから離れて暮らしたんだよ、何のために…」
「なぁ、俺が泉に入る前に言ったこと、覚えてるだろ。忘れたとは言わせないぞ、スイの耳元で俺はなんて言った?」
ぐっと重い一突きを繰り出された水の神は喉を反らして喘ぐと、ふわりと顔をほころばせる。
黄鱗が【転生の泉】に入る前、ひどく落ち込む水の神に囁いた約束。
それは水の神と黄鱗だけが知るものだが、2人の絆を固く結んでいることはたしかだ。
囁きで満たされる閨はどこまでも甘く穏やかだが、ふいに黄鱗は「なぁ、スイ。俺だって苦しかったのを知ってるか?」と水の神に問う。
「俺だってスイのおかげですごく苦しい思いをしたんだぞ」
「ん…僕のせい、で…?」
「あぁ、すごくすごく苦しかったんだ。…なんだ、本当に分からないのか?」
片眉をあげて訊ねる黄鱗だが、水の神は何のことか心当たりもなく首をかしげる。
水の神は白蛇のいない期間を【天界】での時にして60年も耐えなければならなかったわけだが、黄鱗がその間 に人間としての30年を、【天界】での一切を忘れて楽しく過ごしていたということは牧草地の神を通じてよく知っているのだ。
自身との記憶を失っていた黄鱗が、なぜ苦しい思いをしたのか。
やはりまったく心当たりがない水の神に、黄鱗は「っとに分かんないのか」と小さくため息をついた。
頬を撫でながら、じっと水の神の瞳を覗き込む黄鱗。
「スイ。待ちきれなくて俺を迎えに来たのは誰だ?うん?俺を【天界】に呼んだのは誰なんだよ」
その言葉の一部分を強調する話し方に、水の神はようやく「あっ…」と1つ思い立つ。
「あれ…そんなに苦しかった?」
すると黄鱗はスッと目を細めながら「苦しかったよ、死ぬほどにな」と水の神の手を取った。
「おおかた、スイは俺が帰って来るのを待ちきれなかったんだろ…だからわざわざ迎えに来たんだよな?あんな風にして…」
「こんな綺麗な人が湖に立ってたら駆けつけるに決まってる。たとえ水がどんなに…冷たくったって」
黄鱗は水の神の手を自身の首に当て、首を圧迫させるように力を込めさせながら「あれ以上苦しいことはないだろうな」と薄く笑う。
「体の中に、体中にスイが入り込んでくる感覚。息ができなくなって、もがいてもどうにもならないんだ…捕らわれて、包み込まれて、全身がこうやって…」
水の神が手を引こうとすると、突然黄鱗はありったけの神力を注ぎ込もうとするかのように抽挿を再開させた。
腹にある魄のすぐ近くに直接流れ込む黄鱗の神力はあまりにも多く、それでいて力強いため、混ざり合う神力の勢いも凄まじい。
「あんっ、やっ、あぁっ…~~~っ!!!」
周囲を憚らず大きな喘ぎ声を上げて目を白黒させる水の神同様に、黄鱗にも水の神の体内から押し出されるようにして溢れた大量の神力がなだれ込み、尋常ではない快感がもたらされる。
どちらかが快感を覚えれば必然的にもう一方も快感を感じる交わり。
それはまさしく愛にあふれたものと言えるだろう。
水の神の足を肩にかけながらさらに奥を目指して腰を打ち付ける黄鱗と、必要以上に抱きついて抽挿を妨げないようにしつつそれを受け入れる水の神。
黄鱗の2本の男根は水の神の体内で左右に広がり、抜き挿しするたびにその異物感を強めている。
2本の良い点は互いの触れ合う面積が多いということだ。
触れ合う面積が多いということはそれだけ一度に混ぜあう神力も多いということであり、たった一突きでも目の周るような快感を得ることができる。
では1本では2本に劣るのかというと、そういうわけでもない。
1本の場合は2本のときと比べて長さが出るため、よりいっそう水の神の腹にある魄に近づくことができ、ほとんど直接神力を魄へと注ぎ込むことができるのだ。
神格をもつ者にとっての『魄』とは、神力の源であり、本体であり、魂そのものと言えるほどの重要なものだ。
そこへ直接神力を注ぎ込まれることの快感とはもはや言葉で表すことのできない強烈な感覚で、ひとたび味わってしまえば決して忘れることはできない。
2本と1本。つまり『太さ』と『長さ』。
その優劣をつけることなどできるはずもない。
そしてその2つを味わい、その時の好みで選ぶことができるのは、この水の神と黄鱗だけの特権だといえる。
なにせ、普通は誰でも1本なのだから。
「~~~っ、リン…で、出ちゃ…出ちゃ、うっ…!」
「スイ…俺も…っ」
「う、~~っ……!!」
指を絡めて硬く握り合った手。
長いこと絡み合った果てに、いよいよ水の神は自らの腹へ白濁を散らし、そして黄鱗は水の神の体内へと射精した。
体中を巡るすべての神力を残らず黄鱗に受け渡しながら混ぜたことで、水の神は気を失ったようにぐったりと眠り込む。
本来は眠ることのない神が、唯一眠るとき。
その寝顔を見ることができるのは特別な者だけだ。
黄鱗は、水の神のどこかあどけない寝顔を眺めながら、同じく横にぐったりと横たわった。
体内で水の神のものである神力が蠢き、自らのものと混ざり合う感覚はぐるぐると持続的な快感をもたらしている。
寝顔をまだ眺めていたいと思うものの、やはり強い眠気が襲ってきて抗えない。
水の神の横顔を眺めながら何度か瞬きをすると、いつの間にか黄鱗も瞳を閉じていた。
ーーーーーー
なんとなく感じる気配、視線。
「…いつ起きたんだ」
黄鱗が眼を閉じたまま訊ねると、それまでじっとしていた水の神はもぞもぞと黄鱗の体に腕を回す。
胸元から聞こえる声は小さく、くぐもっているが、どうやら水の神も今さっき起きたところらしい。
体は長らく閨の中のお飾り状態だった掛け具に覆われている。
きっと先に目を覚ました水の神が端の方から引っ張ってきていたのだろう。
水の神の衣にあしらわれているのと同じ薄水色をした艶やかな掛け具の中で、黄鱗は水の神を抱き寄せると、足を太ももからふくらはぎ、つま先まで余すところなく摺り寄せあう。
彼らが放つ白濁や愛液などは すべて神力が形をなしたようなものであり、2人が休んでいる間にそれらは吸収されて跡形もなくなっている。
水の神の腹はもちろん、体内に出された黄鱗のものも。
抽挿によって愛液に塗れ、白濁が零れていた寝具もすっかり綺麗なものだ。
さらりとした肌触りのいい閨の中、黄鱗は水の神の尻を両手で揉みながら「なんか…変わりはないか」と問いかける。
「腹とか、どっか…卵、みたいなのは」
すると水の神はふるふると首を振り、黄鱗の胸元で顔を上げた。
「なんにも…ただ神力が高まってるのが分かるだけ」
水の神の答えに「…そっか」と小さく応え、黄鱗は水の神を自らの上に腹ばいに乗せて髪を撫でる。
交わりによって神力が高まっているということは、今の水の神を見ればはっきりとしている。
普段から美しく艶やかな髪をしているのは確かだが、今はいっそう青の色が濃くなっていて、濡れたような、しっとりとした重厚感が感じられるような艶を放っているからだ。
他にも瞳の色などにもそれは色濃く表れている。
まさに潤っているといった様子だろう。
「子作り、合ってるはずなのにな…」
ぼそりと呟く黄鱗。
「そりゃ俺らは男体だけど、でも『銀』のとこも森の神のところも…風の神のところにだって子供が、精霊がいるんだから。男同士は関係ないよな」
「俺、銀よりも熱心にシてると思うんだけど」
黄鱗は水の神の髪を1房すくって指で弄ぶ。
実は、まだ水の神と黄鱗の間には2人の神力を引き継ぐ子供が、精霊が生まれていなかった。
どちらも精霊を生みだすための正しい方法を、精霊を生み出すのにはどうすればよいかということを知らなかったのだ。
同じ頃に転生を済ませた牧草地の神の側仕えである白馬にはすでに3体もの精霊がいて、顔を合わせると『水の神様』『黄鱗様』と可愛らしく挨拶をしてくれるのだが、そんな精霊の姿を目にする度に(僕達にも互いの神力を受け継ぐ精霊がいたら…)と考えていた水の神達。
互いの神力を高めてさえいればそのうち、と思い続けてきたが、どうやらそうとも限らないのではないかと感じ始めていた。
「ねぇ、リン」
「うん?」
「僕…いつかリンに似た白蛇ちゃんに会いたいな」
えへへ、と顔を隠すようにして照れ笑いをする水の神。
その照れた表情は、黄鱗の目には水の神の耳が赤く染まったように見えるほど、愛らしくはにかんだものだ。
その表情によって一瞬にして再び心に火を点けられた黄鱗は、反り立つ男根を隠そうともせずに「あぁ…そうだな」と寝具の中で水の神の体を撫でる。
「銀に聞くよ、『精霊を生み出すのはどうやるのか』ってさ」
「俺も…スイが俺との子蛇を抱いてる姿が見たくてたまらない」
後日、黄鱗が親友でもある『銀白』に精霊の生み出し方を教えてくれとしきりに迫って戸惑わせることになるのは、また別の話だ。
陸国のすべての人々が寝静まった真夜中に、【地界】での丸一日に相当する時間が流れる【天界】の夜。
その長さのおかげで、寝具の中で存分に絡み合った後の今でさえもまだその半分も過ぎていない。
もじもじと黄鱗の胸の上でなにか言いたそうにする水の神。
「スイ、どうした?」
水の神がどんなことを言いたいと思っているのか、黄鱗にはよく分かっている。
しかしあえてそれを言わせようと促すと、水の神は少し間をおいてから小さな唸り声をあげ、上目遣いになって言った。
「リン…」
「次は…1本で…シて?」
先ほどまで散々に突かれていた秘部はまだ柔らかく、瑞々しいままだ。
いつの間にか黄鱗の体からは金の鱗が消え失せ、どこからどう見ても立派な人間の美丈夫に変わっていた。
恭しく「いくらでも…お望みのままに」と囁きながら黄鱗は水の神の腰のあたりを大きな少しひやりとした手のひらで撫でる。
「我が主、水の神…スイ様」
跳ね除けられた掛け具はまたもや端に追いやられ、再びこの閨で必要とされる時を静かに待つ。
黄鱗の腹に手をつき、その上で体を上下させる水の神。
激しい抽挿の音と漏れ出る喘ぎ声はあちこちに反響し、この屋敷、洞窟中を隅々まで熱気で満たしながら静謐な空気をすっかり消し去っていた。
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