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サイドストーリー
風の神と鶲
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その屋敷は工芸地域と鉱業地域の間にある山を越えた向こうの、神々でも訪れる者はいないほど離れたところに建っている。
前面は草原、背面は砂漠という2つの風景を隔てるようにして建っているこの屋敷は風を隅々まで通す開放的な造りをしていて、風が吹く度にあちこちで部屋の仕切りとなる薄布が揺らめくという、なんとも美しい屋敷だ。
白い柱や床も相まって、まさに【神殿】という名称がこれ以上ないほどによく似合っている。
そんな【天界】においても一風変わった造りをしているこの屋敷の主は、黒い羽織姿が特徴的な風の神だ。
そして今、その屋敷に風の神と共に住んでいるのが…
ーーーーーーーー
文机に向かい、黙々と記録を書き連ねている風の神。
わずかに眉間にしわを寄せながら陸国に吹く風の状態や嵐の強さなどに関する細かな記録を寡黙にまとめているその姿は、まさにこの屋敷の『主』と呼ぶに相応しい風格を備えている。
それに対し、部屋の中に数々並ぶ本棚のそばでは、一冊の記録の書を胸に抱えたまま後ろを向いてうなだれている、少々頼りない姿の男がいた。
きちんとした神格を得ているらしいということは明らかであるのに、なんだか頼りない雰囲気が漂っている男。
風の神は手元から目を離さず、その男に向かって「鶲|《ひたき》、それを持ってきなさい」と一言言った。
「見つけたんだろう、記録を。抱えていないで早く持ってきなさい」
頼りないようなその男 ー 風の神の側仕えである『鶲』は、主である風の神の呼びかけに一瞬びくりとするものの、それでも動かない。
シン…とした空気の中、屋敷を吹き抜けていく一陣の風が響かせた風鐸の涼やかな音に顔を上げる風の神。
「おい、鶲」
もう1度声をかけてみるも、鶲はピクリとも動かずにこちらに背を向け続けていて、風の神はため息をつきながら「また泣いているのか」と再び机に向かった。
「よく飽きもせずに泣くものだ。今度は何だ」
「…泣いてません」
「泣いているだろう。そもそもお前がそう言う時は8割方泣いている時だ」
呆れたというような風の神の声を聞きながら、鶲はこっそりと衣の袖で目元を拭う。
「いいから、早くその記録を持ってきなさい。私の務めを妨げるようなことをするな」
なおも集中しながら記録を書き上げていく風の神。
季節などによってその性質を変える風は陸国の人々の農業から生活にも密接に関わってくるため、特に毎年同じ頃の記録を参考にしながら吹かせる風の種類や込める神力を調節しなければならないのだが…今、そのために過去の記録を持ってこさせようとした鶲はそれに従わず、今後の見通しを立てようとしていた風の神の務めを阻害してしまっていた。
現在、陸国は(というよりも【地界】は)未曾有の嵐に見舞われている。
水の神が務めを半ば放棄していて、本来はもっと押さえ込むはずだった雨をほとんど野放しにしているからだ。
その理由は誰に訊ねるまでもなく明らかである。
つい先日、鶲や森の神の側仕えである梟が転生を終えて戻ってきたその後すぐに、今度は水の神の側仕えである白蛇が牧草地の神の側仕えである白馬と共に【地界】へと転生をしに行ってしまったのだ。
誰が見ても明らかなほど互いを強く想い合っていた水の神と白蛇。
神々の住む【天界】での時間に換算するとこれから先 約60年もの間白蛇と別れて暮らさなければいけなくなった水の神は、数日の内はまだきちんと務めを果たせていたようだったものの、ある日突然胸の内にあった何かが決壊したかのように雨量などの水の管理を放棄してしまった。
その結果がこの嵐だ。
水の神がきちんと雨量を調節して嵐の強さを抑えていないため、それに従って風の神も難しい風の管理を強いられてしまっている。
神力を使いながらのこの数日間は風の神にとって、非常に忙しく厳しいものだった。
そうこうしているうち、ついに今日の分の記録をすべて書き終えた風の神。
あとは過去の記録を参考にしつつ今後の方針を決めなければならないのだが…鶲はやはり記録を持ってこようとはしない。
机に頬杖をつき、足を組みながら鶲の後姿をじっと見つめていた風の神は、やがて大きく息を吸うと、おもむろに立ち上がって歩き出した。
衣擦れと共に近づいてくる小さな足音に思わず振り返った鶲の胸には、風の神が持ってくるようにと言った記録が抱えられている。
膨大な数の記録を書き留めた書が並ぶ記録棚だが、すべてきちんと管理されているため、何十年前のものであろうともこうして簡単に見つけ出せるはずなのだ。
鶲のすぐ側まで来た風の神は「見つけたのなら早く持ってきなさい」とだけ言うと、しっかりと抱きしめられていた記録をどういうわけか いとも簡単に鶲の腕の中から抜き出し、それを手にして机の方へと戻って行った。
あまりにも一瞬のうちに手元から記録を取られてしまった鶲は、記録を抜き取られたままの格好で、今度はめそめそと憚ることなく涙を流し始める。
このような光景は、はっきり言ってこの屋敷では日常茶飯事だ。
そのため風の神もまったくお構いなしに記録を開くと、過去の記録を参考に計画を立て始める。
「風様は…僕がお嫌いなんです」
ぼそりと涙声で言う鶲。
「風様は僕のことがお嫌いなんです。そうです、そうに違いありません」
それがどんなに小さな声であったとしても、相手は神だ。
風の神は記録の項を捲りながらやれやれといった様子で「また言い出したのか」と首を振る。
「私の務めを補佐する。それがお前の務めだろう、鶲。いじけるのは一向に構わないが、私の務めを妨げるべきではない」
「ほら…またそう仰って、僕のことを……やっぱりお嫌いなんだ」
「……」
そうして続くぼそぼそとした呟きに、いよいよ風の神も受け流していられなくなったらしく、顔を上げて「なんだ」といくらか鋭く言った。
「そんなに俺に嫌ってほしいのか」
「そ、そんな!そんな…わけじゃない、ですけど…」
「だったらなんなんだ。誰が嫌ってるやつをわざわざ自分の屋敷に住まわせる?誰が嫌ってるやつを側仕えにする?少し考えてみればわかることだろう、まったく」
「そんなこと…そ、そんなこと言ったって!風様は僕にいじわるです、いじわるをなさいます!そんなの、僕のことがお嫌いだからに決まってるんです!」
「なんだと…!」
思わず机に手をついて立ち上がった風の神。
その威圧感は相当なものだが、もはや鶲も引くことができずに「だって、僕が嫌だということを、風様は進んでなさるじゃないですか!」と口を尖らせる。
「今だって、僕から記録を乱暴に取り上げました!」
「乱暴だと?渡そうとしないお前の手から抜き取ったんだ。力づくだったか?そうではなかっただろう。そもそも、お前がさっさと記録を持ってきさえすればよかったことだ、違うか鶲。俺は何度も言っていたんだぞ。早く記録を持ってきさえすればその分早く今日の務めを終えられる、そうじゃないのか鶲」
「でも…僕から奪い取っていきました、こうやって、パッて!それだけじゃないです!転生の時だって、僕は何度も嫌だって言ったのに風様が僕を無理やり【地界】へやったんです!何度も嫌だって言ったのに!…ふんっ…いいですよ、分かってます。どうせ僕のことを厄介払いしたいとお思いだったんでしょう?うぅっ…『うるさい側仕えなんか【地界】へやってしまえ』って、そうお思いだったんです、風様は。そうだったに違いありません、風様は僕のことなんか、僕のことなんか…!!」
風の神は開いていた記録を閉じるとそのまま鶲のいる方へ向かっていった。
「言わせておけば…勝手にあぁだこうだと、お前は本当に…!」
「な、なんですか…や、止めてください!嫌だ!降ろして…うわぁ!嫌だ、嫌だぁ!!」
1歩、2歩と後ずさって風の神から逃れようとしていた鶲だったが、風の神はそんな鶲をお構いなしに抱き上げると、薄布をくぐって部屋を移り、喚く鶲を自分ごと寝台の上へ倒れ込ませる。
抵抗して暴れる鶲の四肢を押さえつけ、強引に唇を重ねた風の神。
喉奥から苦しげな声を漏らす鶲はその口づけを受け入れる他なく、風の神が唇を離すのを待った。
「僕…僕、僕だって風様の事、嫌いです…」
「嫌いです…嫌い、風様の事、嫌いだ!!」
肩で息をしながら、ようやく解放された口で言う鶲。
風の神が「…本心か、それは」と鋭く訊ねると、鶲はしゃくりあげて話す。
「うぅ…だって、風様は僕のことを【地界】に行かせた!無理やり僕をこの屋敷から、あなたのおそばから引きはがした!転生だなんて…戻ってこれるかも分からないような、不確かな試みだったのに!僕が【地界】でどんな思いをしてきたのか、風様には分からないでしょう?僕がどうやって【地界】で暮らしてきたのか、知らないでしょう?この【天界】でのことを何一つ覚えていない僕が、人間として転生した僕が、どう生きていたか…知らないでしょう?」
「僕は…人間として生きていた僕は…いつも恋しくて悲しくて、苦しかったんです、ずっと。ずっとそうだったんです。なぜかも分からずに涙が出て、何をしていても寂しくて仕方がなかった…どうせ風様にはそのつらさが分からないでしょう。恋しさも、つらさも、僕の気持ちなんて何もかも全部…!」
鶲の双眸は風の神をまっすぐに見つめながらも、じわりと涙を滲ませている。
「お前が【地界】にいるとき…時々風を吹かせてお前の頬を撫でてやっただろう」
風の神が眉をひそめると、鶲は抵抗するように首を振った。
「だから…だからそれが…!それが僕にはつらかったんです!心の奥では風様のことが分かっているのに、それを思い出すことができなくて…風が吹くたびにいつも僕は…」
「僕は…僕は、風様が嫌いだ!うわぁぁん!嫌いだ、嫌いだ!嫌いで嫌いで、それでもやっぱり……」
「やっぱり…大好きなんだ」
雫が一粒、また一粒と頬を滑り落ちる中、鶲は風の神に腕を増して抱きつく。
「大好きなんです、風様のこと…僕は風様のことが、本当に好きなんです、好きなんです」
「……」
「風様に何をされても、僕はおそばを離れません…離れたくありません…僕はずっと風様のおそばにいるんです……だって大好きだから…風様のおそばにいていいのは、僕だけなんです…誰がなんて言ったって、僕だけですもん…」
その言葉はもはやほとんど聞こえないくらいに小さくなっていたが、鶲が充分に言いたいだけ言ったらしいとみた風の神は鶲の頬に手を添えて再び深く口づける。
先ほどの荒々しいものとは違い、ゆっくりとした動きで唇を食み合うそれは、見ているだけでなんとも気まずい気分にさせられるものだ。
風の神は鶲の髪を撫で、瞳を覗き込む。
「…早く転生を済ませたからこそ、今こうしていられるんだろう」
言葉の一つ一つをしっかりと言い聞かせるようにする風の神に、鶲は「でも…僕が【天界】に帰ってこれなくなってたら…」と不安を口にする。
すると風の神は鶲の額を軽く指で弾いた。
「俺がそんなことをさせると思うのか。もし、万が一、あの森の神の側仕えの言うことが間違いだったとしたら…」
「その時は【地界】にいるお前を無理にでもこの屋敷へと連れ帰っていた」
夜の爽やかな風がこの閨の中をも通り抜け、辺りを包み込むようにしている薄布をさらさらと揺らしていく。
鶲は子供のように風の神にしがみつきながら顔を胸元にうずめると、「風様…」と甘えた声で呼びかけた。
「僕…本当に風様のことが好きです、大好き。愛してるんです…本当に、本当に好き…」
「つい今さっきまで『嫌いだ』と喚いていたくせに」
「でも……でも、大好きなんですもん」
頬を膨らませて言う鶲。
風の神がその顎に手を添えて上向かせると、鶲は従順に口づけを受け入れて深く舌を絡ませる。
吐息を漏らしながらひとしきり顔を傾け合った後、鶲の額に薄く紋様が現れ、そしてそれはみるみるうちに濃くはっきりとしていった。
上気した頬に潤んだ瞳、そしてその紋様。
鶲は「風様ぁ…」と風の神の背を手のひらで擦りながら言う。
「僕、風様の額のそれ…ほどきたいです…」
「だめだ。まだ記録に目を通しきれていない」
「もう…またいじわる言ってる…僕は今、見せてほしいのに…」
身を起こそうとする風の神だが、鶲はそれよりも早く風の神の額を覆っている布帯の端を引っ張って結び目を解いた。
露わになった額には鶲のものと同じ紋様がくっきりと浮かび上がっている。
「風様だって…僕とおんなじの、出てます」
「…」
「我慢しないで、今…いいじゃないですか」
その誘うような声には抗えるはずもなく、風の神が「…お前が早く記録を渡していればよかったものを」と苦々しく言うと、鶲は眉根を寄せて「ごめんなさい…」と詫びた。
「ごめんなさい、風様…」
風の神が袖を一振りしていくらか強い風を吹かせると、その風は屋敷に灯る明かりを次々と消してしまう。
薄暗くなった閨の中、鶲は衣に手を差し込まれて軽く喘ぎながら「風様はいつ…紋様が出たんですか?」と嬉しそうに訊ねた。
「僕も…風様の紋様が出るところが見たいのに…どうしていつも隠しているんですか?んんっ…ふ、ぅ…っ…僕は風様の紋様が出たらすぐにでも、いつでも…っ」
「いいから…こっちに集中して」
「うっ、ああっ…!!」
体がびくりと跳ねた次の瞬間には鶲の衣はすでにはだけていて、それまで隠していた滑らかな胸と腹部と、そして妖しい下腹部とを薄明りの下にさらけだしていた。
ーーーーーーー
(鶲はなぜ俺をあんな風にして焚きつけてくるのか。まったく理解できない)
【天界】の夜が明け、【地界】でもまた新たな一日が始まるという頃。
風の神は屋敷の前で自らが吹かせる風に乗って楽しそうに飛び回る鶲を見ながら考えていた。
風の神と鶲は重要な務めの一つである【地界】への見回りをしに行くために屋敷から出たのだが、いざ向かおうとしたところで鶲が「風様の風に乗って少し飛んでからではいけませんか?ね、少しくらい いいでしょう?」とねだったのだ。
人の姿のまま、背から翼だけを出して楽しそうに飛び回る鶲。
(そもそも…鶲がこの【天界】に戻ってきてからというもの、毎日ああして肌を合わせているというのに。それなのに、なぜ俺が『嫌ってる』だのなんだのと言われなければならないんだ…なぜなんだ)
(紋様に関してもそうだ。なぜ鶲はあんな風になるまでしなければ紋様が出ない?俺とは なにか…想いの種類みたいなものでも違うんだろうか。鶲だってあんなに『好きだ』と言うくせに…)
《 「嫌いです、嫌い!風様の事、嫌いだ!!」 》
昨夜聞いた鶲の言葉を思い返し、思わず胸を抑えて眉をひそめた風の神だが、鶲はそれを目敏く見つけるとすぐにそばへと降りたって「どうされたんですか、風様」と風の神を支えるかのようにして左腕に抱きついてきた。
「お具合が悪いんですか?大丈夫ですか?」
「…あぁ」
「でも…なんだかお苦しそうですよ」
「いいから。それより早く見回りに行かなければ」
「あっ、はい!」
歩き出した風の神に寄り添う鶲は機嫌よく「やっぱり風様の風に乗って飛ぶと気持ちがいいです!」と笑う。
「ありがとうございました、風様!そうだ、今度 僕が風様をお連れして飛んでみましょう!ご自身で風に乗るのとは違うでしょう?私の翼で風に乗ると…」
「お前が私を抱えるというのか?無理だろう」
「いえいえ、大丈夫ですってば!風様のこと、こうして…」
「やめなさい、鶲」
「恥ずかしがってるんですか?えへへ、僕は恥ずかしくありませんよ!こうやっていっぱいくっついちゃいますから!」
「やめなさいと言っているだろう、鶲」
はしゃいで風の神に抱きついていた鶲はぴしゃりと言いつけられてしまい、明らかにしゅんとして俯く。
風の神が「また泣いているのか」とため息をつくと、鶲は俯いたまま首を振った。
「…泣いてません。僕は泣いてません」
「泣いているじゃないか。なにも私だって最初からこう言っているわけではないというのに」
「泣いてませんってば!」
顔をそむけていくらかそう強く言い放った鶲の声は、涙声とまではいかないにしても細かく揺れている。
そんな鶲の姿を横目で見た風の神は足を止めると、掴まれているままの左腕を一瞬強く引き、重心を崩して近づいた鶲の髪にそっと口づけた。
右手で頬を撫で、涙を乾かしてやってから再び歩き出す風の神。
鶲はその隣にぴったりとくっついたまましばらく無言でいたが、やがて「ねぇ、風様」と甘ったるい声を出しながら頭をすり寄せてきた。
「…好きです、とっても」
「そうか」
「もうっ。素直じゃないんだから、風様ったら。でも…僕はそんなところも好き」
ーーーーーーー
【地界】とは違い、どんな時でも天候が荒れることのない【天界】。
そんな【天界】の清々しい草地を風の神とその側仕えである鶲は横並びのまま歩いていく。
「少し離れなさい」
そう声をかけるも、腕に抱きついている鶲は「もう少しだけ、いいでしょう?」と離れようとしない。
「もっとくっつきたいのを堪えているんです、これでも。本当は抱きつきたいくらいなんですよ?もう少ししたらきちんと離れますから、だから今はまだ…許してください」
さらにぎゅっと力を込めて風の神の腕に抱きついた鶲。
きっと鶲は気づいていないだろう。
自由が利かないほど左腕を強く抱きしめられている風の神が、実はひっそりとその口角を柔らかく上げていることを。
辺りにはまだどの神、側仕えの姿も見えない。
やれやれと小さくため息をついた風の神は結局鶲の好きにさせることに決め、すっかりご機嫌になっている鶲へ「この丘を登りきったら離れるように」と声をかけた。
すると、「はい」というきちんとした返事が返ってくる。
「分かりました、それまではずっとこうしてます。でも…風様、もうちょとだけゆっくり歩いていただけませんか?」
「だめだ。先ほど散々時間を使ってしまっただろう。早く見回りをしなければ」
「別にもう少しくらい…あっ、いえいえ!いいです、この早さでも充分ですから!ね、このまま歩きましょう?」
真っ直ぐに前を見据えたまま道を行く風の神と、その横をニコニコと朗らかに話をしながら寄り添って歩く鶲。
そんな2人の様子を見るに、どうやら今日も【天界】が賑やかな一日となることは間違いなさそうだ。
前面は草原、背面は砂漠という2つの風景を隔てるようにして建っているこの屋敷は風を隅々まで通す開放的な造りをしていて、風が吹く度にあちこちで部屋の仕切りとなる薄布が揺らめくという、なんとも美しい屋敷だ。
白い柱や床も相まって、まさに【神殿】という名称がこれ以上ないほどによく似合っている。
そんな【天界】においても一風変わった造りをしているこの屋敷の主は、黒い羽織姿が特徴的な風の神だ。
そして今、その屋敷に風の神と共に住んでいるのが…
ーーーーーーーー
文机に向かい、黙々と記録を書き連ねている風の神。
わずかに眉間にしわを寄せながら陸国に吹く風の状態や嵐の強さなどに関する細かな記録を寡黙にまとめているその姿は、まさにこの屋敷の『主』と呼ぶに相応しい風格を備えている。
それに対し、部屋の中に数々並ぶ本棚のそばでは、一冊の記録の書を胸に抱えたまま後ろを向いてうなだれている、少々頼りない姿の男がいた。
きちんとした神格を得ているらしいということは明らかであるのに、なんだか頼りない雰囲気が漂っている男。
風の神は手元から目を離さず、その男に向かって「鶲|《ひたき》、それを持ってきなさい」と一言言った。
「見つけたんだろう、記録を。抱えていないで早く持ってきなさい」
頼りないようなその男 ー 風の神の側仕えである『鶲』は、主である風の神の呼びかけに一瞬びくりとするものの、それでも動かない。
シン…とした空気の中、屋敷を吹き抜けていく一陣の風が響かせた風鐸の涼やかな音に顔を上げる風の神。
「おい、鶲」
もう1度声をかけてみるも、鶲はピクリとも動かずにこちらに背を向け続けていて、風の神はため息をつきながら「また泣いているのか」と再び机に向かった。
「よく飽きもせずに泣くものだ。今度は何だ」
「…泣いてません」
「泣いているだろう。そもそもお前がそう言う時は8割方泣いている時だ」
呆れたというような風の神の声を聞きながら、鶲はこっそりと衣の袖で目元を拭う。
「いいから、早くその記録を持ってきなさい。私の務めを妨げるようなことをするな」
なおも集中しながら記録を書き上げていく風の神。
季節などによってその性質を変える風は陸国の人々の農業から生活にも密接に関わってくるため、特に毎年同じ頃の記録を参考にしながら吹かせる風の種類や込める神力を調節しなければならないのだが…今、そのために過去の記録を持ってこさせようとした鶲はそれに従わず、今後の見通しを立てようとしていた風の神の務めを阻害してしまっていた。
現在、陸国は(というよりも【地界】は)未曾有の嵐に見舞われている。
水の神が務めを半ば放棄していて、本来はもっと押さえ込むはずだった雨をほとんど野放しにしているからだ。
その理由は誰に訊ねるまでもなく明らかである。
つい先日、鶲や森の神の側仕えである梟が転生を終えて戻ってきたその後すぐに、今度は水の神の側仕えである白蛇が牧草地の神の側仕えである白馬と共に【地界】へと転生をしに行ってしまったのだ。
誰が見ても明らかなほど互いを強く想い合っていた水の神と白蛇。
神々の住む【天界】での時間に換算するとこれから先 約60年もの間白蛇と別れて暮らさなければいけなくなった水の神は、数日の内はまだきちんと務めを果たせていたようだったものの、ある日突然胸の内にあった何かが決壊したかのように雨量などの水の管理を放棄してしまった。
その結果がこの嵐だ。
水の神がきちんと雨量を調節して嵐の強さを抑えていないため、それに従って風の神も難しい風の管理を強いられてしまっている。
神力を使いながらのこの数日間は風の神にとって、非常に忙しく厳しいものだった。
そうこうしているうち、ついに今日の分の記録をすべて書き終えた風の神。
あとは過去の記録を参考にしつつ今後の方針を決めなければならないのだが…鶲はやはり記録を持ってこようとはしない。
机に頬杖をつき、足を組みながら鶲の後姿をじっと見つめていた風の神は、やがて大きく息を吸うと、おもむろに立ち上がって歩き出した。
衣擦れと共に近づいてくる小さな足音に思わず振り返った鶲の胸には、風の神が持ってくるようにと言った記録が抱えられている。
膨大な数の記録を書き留めた書が並ぶ記録棚だが、すべてきちんと管理されているため、何十年前のものであろうともこうして簡単に見つけ出せるはずなのだ。
鶲のすぐ側まで来た風の神は「見つけたのなら早く持ってきなさい」とだけ言うと、しっかりと抱きしめられていた記録をどういうわけか いとも簡単に鶲の腕の中から抜き出し、それを手にして机の方へと戻って行った。
あまりにも一瞬のうちに手元から記録を取られてしまった鶲は、記録を抜き取られたままの格好で、今度はめそめそと憚ることなく涙を流し始める。
このような光景は、はっきり言ってこの屋敷では日常茶飯事だ。
そのため風の神もまったくお構いなしに記録を開くと、過去の記録を参考に計画を立て始める。
「風様は…僕がお嫌いなんです」
ぼそりと涙声で言う鶲。
「風様は僕のことがお嫌いなんです。そうです、そうに違いありません」
それがどんなに小さな声であったとしても、相手は神だ。
風の神は記録の項を捲りながらやれやれといった様子で「また言い出したのか」と首を振る。
「私の務めを補佐する。それがお前の務めだろう、鶲。いじけるのは一向に構わないが、私の務めを妨げるべきではない」
「ほら…またそう仰って、僕のことを……やっぱりお嫌いなんだ」
「……」
そうして続くぼそぼそとした呟きに、いよいよ風の神も受け流していられなくなったらしく、顔を上げて「なんだ」といくらか鋭く言った。
「そんなに俺に嫌ってほしいのか」
「そ、そんな!そんな…わけじゃない、ですけど…」
「だったらなんなんだ。誰が嫌ってるやつをわざわざ自分の屋敷に住まわせる?誰が嫌ってるやつを側仕えにする?少し考えてみればわかることだろう、まったく」
「そんなこと…そ、そんなこと言ったって!風様は僕にいじわるです、いじわるをなさいます!そんなの、僕のことがお嫌いだからに決まってるんです!」
「なんだと…!」
思わず机に手をついて立ち上がった風の神。
その威圧感は相当なものだが、もはや鶲も引くことができずに「だって、僕が嫌だということを、風様は進んでなさるじゃないですか!」と口を尖らせる。
「今だって、僕から記録を乱暴に取り上げました!」
「乱暴だと?渡そうとしないお前の手から抜き取ったんだ。力づくだったか?そうではなかっただろう。そもそも、お前がさっさと記録を持ってきさえすればよかったことだ、違うか鶲。俺は何度も言っていたんだぞ。早く記録を持ってきさえすればその分早く今日の務めを終えられる、そうじゃないのか鶲」
「でも…僕から奪い取っていきました、こうやって、パッて!それだけじゃないです!転生の時だって、僕は何度も嫌だって言ったのに風様が僕を無理やり【地界】へやったんです!何度も嫌だって言ったのに!…ふんっ…いいですよ、分かってます。どうせ僕のことを厄介払いしたいとお思いだったんでしょう?うぅっ…『うるさい側仕えなんか【地界】へやってしまえ』って、そうお思いだったんです、風様は。そうだったに違いありません、風様は僕のことなんか、僕のことなんか…!!」
風の神は開いていた記録を閉じるとそのまま鶲のいる方へ向かっていった。
「言わせておけば…勝手にあぁだこうだと、お前は本当に…!」
「な、なんですか…や、止めてください!嫌だ!降ろして…うわぁ!嫌だ、嫌だぁ!!」
1歩、2歩と後ずさって風の神から逃れようとしていた鶲だったが、風の神はそんな鶲をお構いなしに抱き上げると、薄布をくぐって部屋を移り、喚く鶲を自分ごと寝台の上へ倒れ込ませる。
抵抗して暴れる鶲の四肢を押さえつけ、強引に唇を重ねた風の神。
喉奥から苦しげな声を漏らす鶲はその口づけを受け入れる他なく、風の神が唇を離すのを待った。
「僕…僕、僕だって風様の事、嫌いです…」
「嫌いです…嫌い、風様の事、嫌いだ!!」
肩で息をしながら、ようやく解放された口で言う鶲。
風の神が「…本心か、それは」と鋭く訊ねると、鶲はしゃくりあげて話す。
「うぅ…だって、風様は僕のことを【地界】に行かせた!無理やり僕をこの屋敷から、あなたのおそばから引きはがした!転生だなんて…戻ってこれるかも分からないような、不確かな試みだったのに!僕が【地界】でどんな思いをしてきたのか、風様には分からないでしょう?僕がどうやって【地界】で暮らしてきたのか、知らないでしょう?この【天界】でのことを何一つ覚えていない僕が、人間として転生した僕が、どう生きていたか…知らないでしょう?」
「僕は…人間として生きていた僕は…いつも恋しくて悲しくて、苦しかったんです、ずっと。ずっとそうだったんです。なぜかも分からずに涙が出て、何をしていても寂しくて仕方がなかった…どうせ風様にはそのつらさが分からないでしょう。恋しさも、つらさも、僕の気持ちなんて何もかも全部…!」
鶲の双眸は風の神をまっすぐに見つめながらも、じわりと涙を滲ませている。
「お前が【地界】にいるとき…時々風を吹かせてお前の頬を撫でてやっただろう」
風の神が眉をひそめると、鶲は抵抗するように首を振った。
「だから…だからそれが…!それが僕にはつらかったんです!心の奥では風様のことが分かっているのに、それを思い出すことができなくて…風が吹くたびにいつも僕は…」
「僕は…僕は、風様が嫌いだ!うわぁぁん!嫌いだ、嫌いだ!嫌いで嫌いで、それでもやっぱり……」
「やっぱり…大好きなんだ」
雫が一粒、また一粒と頬を滑り落ちる中、鶲は風の神に腕を増して抱きつく。
「大好きなんです、風様のこと…僕は風様のことが、本当に好きなんです、好きなんです」
「……」
「風様に何をされても、僕はおそばを離れません…離れたくありません…僕はずっと風様のおそばにいるんです……だって大好きだから…風様のおそばにいていいのは、僕だけなんです…誰がなんて言ったって、僕だけですもん…」
その言葉はもはやほとんど聞こえないくらいに小さくなっていたが、鶲が充分に言いたいだけ言ったらしいとみた風の神は鶲の頬に手を添えて再び深く口づける。
先ほどの荒々しいものとは違い、ゆっくりとした動きで唇を食み合うそれは、見ているだけでなんとも気まずい気分にさせられるものだ。
風の神は鶲の髪を撫で、瞳を覗き込む。
「…早く転生を済ませたからこそ、今こうしていられるんだろう」
言葉の一つ一つをしっかりと言い聞かせるようにする風の神に、鶲は「でも…僕が【天界】に帰ってこれなくなってたら…」と不安を口にする。
すると風の神は鶲の額を軽く指で弾いた。
「俺がそんなことをさせると思うのか。もし、万が一、あの森の神の側仕えの言うことが間違いだったとしたら…」
「その時は【地界】にいるお前を無理にでもこの屋敷へと連れ帰っていた」
夜の爽やかな風がこの閨の中をも通り抜け、辺りを包み込むようにしている薄布をさらさらと揺らしていく。
鶲は子供のように風の神にしがみつきながら顔を胸元にうずめると、「風様…」と甘えた声で呼びかけた。
「僕…本当に風様のことが好きです、大好き。愛してるんです…本当に、本当に好き…」
「つい今さっきまで『嫌いだ』と喚いていたくせに」
「でも……でも、大好きなんですもん」
頬を膨らませて言う鶲。
風の神がその顎に手を添えて上向かせると、鶲は従順に口づけを受け入れて深く舌を絡ませる。
吐息を漏らしながらひとしきり顔を傾け合った後、鶲の額に薄く紋様が現れ、そしてそれはみるみるうちに濃くはっきりとしていった。
上気した頬に潤んだ瞳、そしてその紋様。
鶲は「風様ぁ…」と風の神の背を手のひらで擦りながら言う。
「僕、風様の額のそれ…ほどきたいです…」
「だめだ。まだ記録に目を通しきれていない」
「もう…またいじわる言ってる…僕は今、見せてほしいのに…」
身を起こそうとする風の神だが、鶲はそれよりも早く風の神の額を覆っている布帯の端を引っ張って結び目を解いた。
露わになった額には鶲のものと同じ紋様がくっきりと浮かび上がっている。
「風様だって…僕とおんなじの、出てます」
「…」
「我慢しないで、今…いいじゃないですか」
その誘うような声には抗えるはずもなく、風の神が「…お前が早く記録を渡していればよかったものを」と苦々しく言うと、鶲は眉根を寄せて「ごめんなさい…」と詫びた。
「ごめんなさい、風様…」
風の神が袖を一振りしていくらか強い風を吹かせると、その風は屋敷に灯る明かりを次々と消してしまう。
薄暗くなった閨の中、鶲は衣に手を差し込まれて軽く喘ぎながら「風様はいつ…紋様が出たんですか?」と嬉しそうに訊ねた。
「僕も…風様の紋様が出るところが見たいのに…どうしていつも隠しているんですか?んんっ…ふ、ぅ…っ…僕は風様の紋様が出たらすぐにでも、いつでも…っ」
「いいから…こっちに集中して」
「うっ、ああっ…!!」
体がびくりと跳ねた次の瞬間には鶲の衣はすでにはだけていて、それまで隠していた滑らかな胸と腹部と、そして妖しい下腹部とを薄明りの下にさらけだしていた。
ーーーーーーー
(鶲はなぜ俺をあんな風にして焚きつけてくるのか。まったく理解できない)
【天界】の夜が明け、【地界】でもまた新たな一日が始まるという頃。
風の神は屋敷の前で自らが吹かせる風に乗って楽しそうに飛び回る鶲を見ながら考えていた。
風の神と鶲は重要な務めの一つである【地界】への見回りをしに行くために屋敷から出たのだが、いざ向かおうとしたところで鶲が「風様の風に乗って少し飛んでからではいけませんか?ね、少しくらい いいでしょう?」とねだったのだ。
人の姿のまま、背から翼だけを出して楽しそうに飛び回る鶲。
(そもそも…鶲がこの【天界】に戻ってきてからというもの、毎日ああして肌を合わせているというのに。それなのに、なぜ俺が『嫌ってる』だのなんだのと言われなければならないんだ…なぜなんだ)
(紋様に関してもそうだ。なぜ鶲はあんな風になるまでしなければ紋様が出ない?俺とは なにか…想いの種類みたいなものでも違うんだろうか。鶲だってあんなに『好きだ』と言うくせに…)
《 「嫌いです、嫌い!風様の事、嫌いだ!!」 》
昨夜聞いた鶲の言葉を思い返し、思わず胸を抑えて眉をひそめた風の神だが、鶲はそれを目敏く見つけるとすぐにそばへと降りたって「どうされたんですか、風様」と風の神を支えるかのようにして左腕に抱きついてきた。
「お具合が悪いんですか?大丈夫ですか?」
「…あぁ」
「でも…なんだかお苦しそうですよ」
「いいから。それより早く見回りに行かなければ」
「あっ、はい!」
歩き出した風の神に寄り添う鶲は機嫌よく「やっぱり風様の風に乗って飛ぶと気持ちがいいです!」と笑う。
「ありがとうございました、風様!そうだ、今度 僕が風様をお連れして飛んでみましょう!ご自身で風に乗るのとは違うでしょう?私の翼で風に乗ると…」
「お前が私を抱えるというのか?無理だろう」
「いえいえ、大丈夫ですってば!風様のこと、こうして…」
「やめなさい、鶲」
「恥ずかしがってるんですか?えへへ、僕は恥ずかしくありませんよ!こうやっていっぱいくっついちゃいますから!」
「やめなさいと言っているだろう、鶲」
はしゃいで風の神に抱きついていた鶲はぴしゃりと言いつけられてしまい、明らかにしゅんとして俯く。
風の神が「また泣いているのか」とため息をつくと、鶲は俯いたまま首を振った。
「…泣いてません。僕は泣いてません」
「泣いているじゃないか。なにも私だって最初からこう言っているわけではないというのに」
「泣いてませんってば!」
顔をそむけていくらかそう強く言い放った鶲の声は、涙声とまではいかないにしても細かく揺れている。
そんな鶲の姿を横目で見た風の神は足を止めると、掴まれているままの左腕を一瞬強く引き、重心を崩して近づいた鶲の髪にそっと口づけた。
右手で頬を撫で、涙を乾かしてやってから再び歩き出す風の神。
鶲はその隣にぴったりとくっついたまましばらく無言でいたが、やがて「ねぇ、風様」と甘ったるい声を出しながら頭をすり寄せてきた。
「…好きです、とっても」
「そうか」
「もうっ。素直じゃないんだから、風様ったら。でも…僕はそんなところも好き」
ーーーーーーー
【地界】とは違い、どんな時でも天候が荒れることのない【天界】。
そんな【天界】の清々しい草地を風の神とその側仕えである鶲は横並びのまま歩いていく。
「少し離れなさい」
そう声をかけるも、腕に抱きついている鶲は「もう少しだけ、いいでしょう?」と離れようとしない。
「もっとくっつきたいのを堪えているんです、これでも。本当は抱きつきたいくらいなんですよ?もう少ししたらきちんと離れますから、だから今はまだ…許してください」
さらにぎゅっと力を込めて風の神の腕に抱きついた鶲。
きっと鶲は気づいていないだろう。
自由が利かないほど左腕を強く抱きしめられている風の神が、実はひっそりとその口角を柔らかく上げていることを。
辺りにはまだどの神、側仕えの姿も見えない。
やれやれと小さくため息をついた風の神は結局鶲の好きにさせることに決め、すっかりご機嫌になっている鶲へ「この丘を登りきったら離れるように」と声をかけた。
すると、「はい」というきちんとした返事が返ってくる。
「分かりました、それまではずっとこうしてます。でも…風様、もうちょとだけゆっくり歩いていただけませんか?」
「だめだ。先ほど散々時間を使ってしまっただろう。早く見回りをしなければ」
「別にもう少しくらい…あっ、いえいえ!いいです、この早さでも充分ですから!ね、このまま歩きましょう?」
真っ直ぐに前を見据えたまま道を行く風の神と、その横をニコニコと朗らかに話をしながら寄り添って歩く鶲。
そんな2人の様子を見るに、どうやら今日も【天界】が賑やかな一日となることは間違いなさそうだ。
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