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7「卵」
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神々がそれぞれもっている神力は無尽蔵に扱えるというわけではない。
森の神や転生を終えた側仕え達のように身に纏える神力が以前よりも強く、多くなったという例はあるが、それでも結局は1日に扱える神力の量には限りがあるのだ。
それは牧草地の神も同じであり、日々の務めをこなしながら『器』である仔犬へ大量の神力を分け与え続けるのは なかなか難しく、仔犬を十分に成長させるには かなりの時間がかかってしまう。
毎日神力を与え続けても目に見えるような変化が感じられないところをみると、ようやく よたよたと歩けるようになるかという程度の大きさにするのでさえ、それなりの日数を要することになるだろう。
あまりにも小さな可愛らしい仔犬の姿で白馬に会いに行ってしまうと、元々動物好きな人々の集まりでもある酪農地域では すぐさま保護されてしまうに違いない。
野良犬として保護されてしまえば牧草地の神が【天界】に戻っている間の『器』はただ眠り続ける仔犬になってしまい、こっそり【天界】に連れ帰ったとしたらそれはそれで「仔犬の姿が消えた」などと言って大騒ぎになってしまうはずだ。
あくまでも【地界】の人々からは自然な『犬』でなければならない以上、保護されるのは都合が悪すぎる。
何十年も会いに行くことが出来ないと考えていたのに比べれば仔犬が成長するまでの数年間など牧草地の神にとってはどうということもなく、むしろ希望をもって日々を送ることができた。
ーーーーーーーーーー
ある日、いつものように見回りを終えて屋敷へと続く道を歩いていた牧草地の神は、同じく1日の務めを終えてきたらしい風の神とその側仕えの鶲に出会った。
風の神と鶲に会うのも随分と久しぶりのことで、牧草地の神は嬉しい気持ちで挨拶を交わす。
「風の神に鶲殿」
「牧草地の神」
礼をし合う神々の隣でにこにことしている鶲。
彼も森の神の側仕えのように転生前とは随分雰囲気が変わっている。
【地界】で30年の月日を過ごしたにも関わらず童顔であるということや いくらか伸びたとはいえ風の神よりも頭1つ分ほど低い身長は変わらないが、やはり高まった神力とそれが宿る髪、居住まいなどがその姿を立派な青年にさせているのだ。
鶲から かすかに風の神の神力が感じられるのも…以前よりも神力が高まっていることと関係があるというのは間違いないだろう。
「牧草地の神様!ご無沙汰しております!」
風の神の真横にほとんどくっつくようにしながら明るい笑顔を見せる鶲。
これまでに幾度となく周りの神や側仕えをよく晴れた春の日のような気分にさせてきた笑顔だ。
「やぁ鶲殿、君は相変わらず元気で明るいね。この【天界】も晴れやかになったようだよ、風の神も賑やかで楽しいのでは?」
牧草地の神がそう声をかけると、風の神は「そうでしょうかね」とだけ言って否定も肯定もしない。
だが、それを聞いた鶲は「もう、風様ったら」と とろけるような笑顔になりながら風の神の袖を取った。
「風様ぁ、もうちょっとくらい素直に仰ってくださったっていいじゃありませんか。僕との毎日は楽しいって、ね?そうでしょう?」
「…鶲、袖を離しなさい」
「んー、風様ぁ」
「離しなさい」
「ねぇ風様ったら、ねぇ、ねぇ、そうなんでしょう?楽しいとお思いなんでしょ。僕はちゃんと知っ……」
「離しなさい、鶲。他の神の御前だろう、みっともないと思わないのか」
ぴしゃりとはねつけるように言い放った風の神。
牧草地の神は途端に気まずい雰囲気が漂い始めたことに対する動揺によって苦笑いを浮かべてしまう。
それまで笑顔だった鶲は唇を噛み締め、しょんぼりとしながら掴んでいた風の神の袖を離すと、胸元にある包みを抱えて項垂れた。
小さく肩を震わせているところを見ると、どうやら泣いているらしい。
風の神は鶲の方を見ることもなく「泣くんじゃない」と再び言い放つ。
「初めに言った時に止めないからそうやって泣くことになるんだろう。いい加減学びなさい」
「………泣いてません」
「泣いていないだと。私には なきべそをかいているようにしか見えないが」
「な…ない…泣いてなんか、いません……」
「そうか、泣いていないのか。なるほどな」
やれやれ、と首を振る風の神。
この光景も久しぶりに見る、懐かしい光景だ。
凛としている風の神に散々じゃれつき、よせばいいのに はしゃぎ続け、いつも最終的にはこうして シュンとすることになる鶲。
風の神の言うように、いい加減多少は大人しくなってはどうだろうかなどと考えてしまうくらいだが、このいつまで経っても変わらない性格こそが鶲の良さでもあるのだろう。
しかし、いくらそれが良さだといっても今この瞬間に彼自身がひどく落ち込んでいるのは事実だ。
彼の元の姿が鳥ではなく馬や犬だったら、きっと耳が悲しげにペタリと伏せられていたに違いない。
牧草地の神は項垂れている鶲がいよいよ可哀想になり「鶲殿、その包みは?」とわざとらしく明るい声音で訊ねる。
「胸元に抱えてとても大事そうにしているね、君の宝物なのかな?」
すると、鶲は自らの袖で顔をぐいっと拭ってからこくんと頷いて応えた。
「…はい、僕の大切なものなんです」
顔をあげた鶲の目は潤んでいるが、すでにそこにはまた元の笑顔が戻っている。
「風様と僕の、大切な『卵』なんです」
「…『卵』?」
「はい!屋敷に1人ぼっちで残しておくのは可哀想だから、こうして一緒に連れているんですよ」
その大きさはちょうど鶲の手のひらくらいだろうか。
鶲が包みを撫でると、たしかにその中にあるものが卵の形をしていることが分かる。
「1人が可哀想だと言うならお前も屋敷に残ってやればいいだろう」
「え!そんな…僕は風様と一緒にいたいんです!」
「だからといって連れ歩くやつがあるか。まったく」
ため息をつくように言う風の神に「僕が抱えて歩くくらい、構わないでしょう!?」と反論する鶲。
そんなやり取りを前に、牧草地の神はただただ驚いていた。
風の神は今、鶲が『風様と僕の、大切な卵』と言ったことをちっとも否定しなかったのだ。
風の神の性格からして間違ったことはすぐさま訂正するだろうし、もし鶲がその『卵』を大切にするあまり『風様と僕の』と口走ったのなら、それこそいつもの調子でぴしゃりと言うはずだ。
しかし、風の神はそうしなかった。
ということはつまり、その『卵』は鶲にはもちろん、風の神にとってもかなり大切なものだということになる。
だが…一体どういう訳で?
あの『卵』は、一体どんな縁があって風の神達の元にあるのだろうか。
【地界】から引き取ってきたものなのだろうか?
そもそもあれは…鳥類の卵なのだろうか?
(風の神も『器』を創り出すことはできる、でも『命』は創れない…私達 神は皆同じだ。だからあの卵は私が仔犬を創ったのとは違うはず…そう、違うはず…違うはず、なのに……)
牧草地の神はどうにも不思議でならない。
いくら鶲が懇願したとしても風の神は命や魄の宿っていない『器』を創るはずがないだろうと思うのに、それなのになぜか 牧草地の神は自らの神力を分け与えて創った仔犬に対して抱いた情とよく似たものを風の神が『卵』に抱いていると感じているのだ。
さらに、もう1つ不思議なことがある。
(風の神は…いつから額を隠すようになったのかな)
以前は利発に額を晒していた風の神なのだが、なぜか今はその額に金の布を巻いている。
目を覆い隠す森の神に、額を覆い隠す風の神…。
(神格が高い神は体のどこかしらに布を巻かねばならないのだろうか)と思う牧草地の神に、風の神は「うるさくて すまない」と言って礼をする。
「牧草地の神、私はこれで失礼する。そろそろ屋敷に戻らなければならなさそうだ」
「え、えぇ…」
「では」
2柱の神が礼を交わし合うと、鶲も慌てて「失礼します、牧草地の神」と頭を下げた。
風に髪をなびかせながら淡々とした様子でその場から去る風の神の後を、鶲はやはり大事そうに胸元の包みを抱えながらついていく。
「お屋敷に帰ったら君の巣にもっと羽根を敷いてあげるね」などと語りかけながら。
「僕がふかふかにしてあげるよ、もっと居心地がいいように…でも枝とか草とか、苔のほうが良かったらどうしよう?そうだったら言ってほしいんだけどな…」
「そういったものは必要ないと言っているだろう、いい加減にしないか」
「で、でも、風様…」
「もう巣が羽根だらけだろう。毎日せっせと抜いた羽根を巣に突っ込んでいること、本当に俺が知らないとでも思っているのか」
「えっ…い、いえ!?僕はそんな事してませんよ!?」
「では鶲、お前でなければ誰が俺の屋敷に出入りしていると言うんだ。誰が卵の下に羽根を敷いている?鶲、今またここで元の姿になってみろ。羽根を抜いたせいでみっともなくボサボサになっているだろう。務め以外で神力を損なうような真似をするな」
「べ、別にあれくらい…換羽期なら普通ですよ!風様だってご存知でしょ?ただの鳥だった頃の僕とも散々一緒だったんですもん…みっともないって…す、すぐに元に戻りますよ、僕はお屋敷にただ羽根を散らかすならこの子にって…思ってるだけで…」
そんな言い合いを続けながら屋敷の方へと帰っていく風の神と鶲。
牧草地の神はそんな2人の姿を謎に包まれた気分で見送った。
ーーーーーーー
どんなに小さな変化であっても、それが毎日積み重なればやがてはっきりとしたものになる。
「ようやくここまで…!
牧草地の神はすっかり成犬の大きさになった『器』を「これくらいなら、もういいだろうね」と大事そうに撫でた。
暖かな春の日。
それは白馬が転生してから、【地界】の月日にして8年もの時が経過した日のことだった。
森の神や転生を終えた側仕え達のように身に纏える神力が以前よりも強く、多くなったという例はあるが、それでも結局は1日に扱える神力の量には限りがあるのだ。
それは牧草地の神も同じであり、日々の務めをこなしながら『器』である仔犬へ大量の神力を分け与え続けるのは なかなか難しく、仔犬を十分に成長させるには かなりの時間がかかってしまう。
毎日神力を与え続けても目に見えるような変化が感じられないところをみると、ようやく よたよたと歩けるようになるかという程度の大きさにするのでさえ、それなりの日数を要することになるだろう。
あまりにも小さな可愛らしい仔犬の姿で白馬に会いに行ってしまうと、元々動物好きな人々の集まりでもある酪農地域では すぐさま保護されてしまうに違いない。
野良犬として保護されてしまえば牧草地の神が【天界】に戻っている間の『器』はただ眠り続ける仔犬になってしまい、こっそり【天界】に連れ帰ったとしたらそれはそれで「仔犬の姿が消えた」などと言って大騒ぎになってしまうはずだ。
あくまでも【地界】の人々からは自然な『犬』でなければならない以上、保護されるのは都合が悪すぎる。
何十年も会いに行くことが出来ないと考えていたのに比べれば仔犬が成長するまでの数年間など牧草地の神にとってはどうということもなく、むしろ希望をもって日々を送ることができた。
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ある日、いつものように見回りを終えて屋敷へと続く道を歩いていた牧草地の神は、同じく1日の務めを終えてきたらしい風の神とその側仕えの鶲に出会った。
風の神と鶲に会うのも随分と久しぶりのことで、牧草地の神は嬉しい気持ちで挨拶を交わす。
「風の神に鶲殿」
「牧草地の神」
礼をし合う神々の隣でにこにことしている鶲。
彼も森の神の側仕えのように転生前とは随分雰囲気が変わっている。
【地界】で30年の月日を過ごしたにも関わらず童顔であるということや いくらか伸びたとはいえ風の神よりも頭1つ分ほど低い身長は変わらないが、やはり高まった神力とそれが宿る髪、居住まいなどがその姿を立派な青年にさせているのだ。
鶲から かすかに風の神の神力が感じられるのも…以前よりも神力が高まっていることと関係があるというのは間違いないだろう。
「牧草地の神様!ご無沙汰しております!」
風の神の真横にほとんどくっつくようにしながら明るい笑顔を見せる鶲。
これまでに幾度となく周りの神や側仕えをよく晴れた春の日のような気分にさせてきた笑顔だ。
「やぁ鶲殿、君は相変わらず元気で明るいね。この【天界】も晴れやかになったようだよ、風の神も賑やかで楽しいのでは?」
牧草地の神がそう声をかけると、風の神は「そうでしょうかね」とだけ言って否定も肯定もしない。
だが、それを聞いた鶲は「もう、風様ったら」と とろけるような笑顔になりながら風の神の袖を取った。
「風様ぁ、もうちょっとくらい素直に仰ってくださったっていいじゃありませんか。僕との毎日は楽しいって、ね?そうでしょう?」
「…鶲、袖を離しなさい」
「んー、風様ぁ」
「離しなさい」
「ねぇ風様ったら、ねぇ、ねぇ、そうなんでしょう?楽しいとお思いなんでしょ。僕はちゃんと知っ……」
「離しなさい、鶲。他の神の御前だろう、みっともないと思わないのか」
ぴしゃりとはねつけるように言い放った風の神。
牧草地の神は途端に気まずい雰囲気が漂い始めたことに対する動揺によって苦笑いを浮かべてしまう。
それまで笑顔だった鶲は唇を噛み締め、しょんぼりとしながら掴んでいた風の神の袖を離すと、胸元にある包みを抱えて項垂れた。
小さく肩を震わせているところを見ると、どうやら泣いているらしい。
風の神は鶲の方を見ることもなく「泣くんじゃない」と再び言い放つ。
「初めに言った時に止めないからそうやって泣くことになるんだろう。いい加減学びなさい」
「………泣いてません」
「泣いていないだと。私には なきべそをかいているようにしか見えないが」
「な…ない…泣いてなんか、いません……」
「そうか、泣いていないのか。なるほどな」
やれやれ、と首を振る風の神。
この光景も久しぶりに見る、懐かしい光景だ。
凛としている風の神に散々じゃれつき、よせばいいのに はしゃぎ続け、いつも最終的にはこうして シュンとすることになる鶲。
風の神の言うように、いい加減多少は大人しくなってはどうだろうかなどと考えてしまうくらいだが、このいつまで経っても変わらない性格こそが鶲の良さでもあるのだろう。
しかし、いくらそれが良さだといっても今この瞬間に彼自身がひどく落ち込んでいるのは事実だ。
彼の元の姿が鳥ではなく馬や犬だったら、きっと耳が悲しげにペタリと伏せられていたに違いない。
牧草地の神は項垂れている鶲がいよいよ可哀想になり「鶲殿、その包みは?」とわざとらしく明るい声音で訊ねる。
「胸元に抱えてとても大事そうにしているね、君の宝物なのかな?」
すると、鶲は自らの袖で顔をぐいっと拭ってからこくんと頷いて応えた。
「…はい、僕の大切なものなんです」
顔をあげた鶲の目は潤んでいるが、すでにそこにはまた元の笑顔が戻っている。
「風様と僕の、大切な『卵』なんです」
「…『卵』?」
「はい!屋敷に1人ぼっちで残しておくのは可哀想だから、こうして一緒に連れているんですよ」
その大きさはちょうど鶲の手のひらくらいだろうか。
鶲が包みを撫でると、たしかにその中にあるものが卵の形をしていることが分かる。
「1人が可哀想だと言うならお前も屋敷に残ってやればいいだろう」
「え!そんな…僕は風様と一緒にいたいんです!」
「だからといって連れ歩くやつがあるか。まったく」
ため息をつくように言う風の神に「僕が抱えて歩くくらい、構わないでしょう!?」と反論する鶲。
そんなやり取りを前に、牧草地の神はただただ驚いていた。
風の神は今、鶲が『風様と僕の、大切な卵』と言ったことをちっとも否定しなかったのだ。
風の神の性格からして間違ったことはすぐさま訂正するだろうし、もし鶲がその『卵』を大切にするあまり『風様と僕の』と口走ったのなら、それこそいつもの調子でぴしゃりと言うはずだ。
しかし、風の神はそうしなかった。
ということはつまり、その『卵』は鶲にはもちろん、風の神にとってもかなり大切なものだということになる。
だが…一体どういう訳で?
あの『卵』は、一体どんな縁があって風の神達の元にあるのだろうか。
【地界】から引き取ってきたものなのだろうか?
そもそもあれは…鳥類の卵なのだろうか?
(風の神も『器』を創り出すことはできる、でも『命』は創れない…私達 神は皆同じだ。だからあの卵は私が仔犬を創ったのとは違うはず…そう、違うはず…違うはず、なのに……)
牧草地の神はどうにも不思議でならない。
いくら鶲が懇願したとしても風の神は命や魄の宿っていない『器』を創るはずがないだろうと思うのに、それなのになぜか 牧草地の神は自らの神力を分け与えて創った仔犬に対して抱いた情とよく似たものを風の神が『卵』に抱いていると感じているのだ。
さらに、もう1つ不思議なことがある。
(風の神は…いつから額を隠すようになったのかな)
以前は利発に額を晒していた風の神なのだが、なぜか今はその額に金の布を巻いている。
目を覆い隠す森の神に、額を覆い隠す風の神…。
(神格が高い神は体のどこかしらに布を巻かねばならないのだろうか)と思う牧草地の神に、風の神は「うるさくて すまない」と言って礼をする。
「牧草地の神、私はこれで失礼する。そろそろ屋敷に戻らなければならなさそうだ」
「え、えぇ…」
「では」
2柱の神が礼を交わし合うと、鶲も慌てて「失礼します、牧草地の神」と頭を下げた。
風に髪をなびかせながら淡々とした様子でその場から去る風の神の後を、鶲はやはり大事そうに胸元の包みを抱えながらついていく。
「お屋敷に帰ったら君の巣にもっと羽根を敷いてあげるね」などと語りかけながら。
「僕がふかふかにしてあげるよ、もっと居心地がいいように…でも枝とか草とか、苔のほうが良かったらどうしよう?そうだったら言ってほしいんだけどな…」
「そういったものは必要ないと言っているだろう、いい加減にしないか」
「で、でも、風様…」
「もう巣が羽根だらけだろう。毎日せっせと抜いた羽根を巣に突っ込んでいること、本当に俺が知らないとでも思っているのか」
「えっ…い、いえ!?僕はそんな事してませんよ!?」
「では鶲、お前でなければ誰が俺の屋敷に出入りしていると言うんだ。誰が卵の下に羽根を敷いている?鶲、今またここで元の姿になってみろ。羽根を抜いたせいでみっともなくボサボサになっているだろう。務め以外で神力を損なうような真似をするな」
「べ、別にあれくらい…換羽期なら普通ですよ!風様だってご存知でしょ?ただの鳥だった頃の僕とも散々一緒だったんですもん…みっともないって…す、すぐに元に戻りますよ、僕はお屋敷にただ羽根を散らかすならこの子にって…思ってるだけで…」
そんな言い合いを続けながら屋敷の方へと帰っていく風の神と鶲。
牧草地の神はそんな2人の姿を謎に包まれた気分で見送った。
ーーーーーーー
どんなに小さな変化であっても、それが毎日積み重なればやがてはっきりとしたものになる。
「ようやくここまで…!
牧草地の神はすっかり成犬の大きさになった『器』を「これくらいなら、もういいだろうね」と大事そうに撫でた。
暖かな春の日。
それは白馬が転生してから、【地界】の月日にして8年もの時が経過した日のことだった。
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