熊の魚

蓬屋 月餅

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番外編

『喧嘩』後編

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(はぁ…なんだよ、もう…)

 彼は内心、ひどく疲れきりながら入浴を終えて濡れた体を拭う。
 体は温まっているにもかかわらず、ちっとも疲れが取れていないばかりか、かえって手足が重くなっているようにさえ感じられる。

 昨晩、堪えきれなくなって自らのものを扱ったものの、同時に芽生えていた『後ろの快感への欲』はその場では果たせなかったため、彼は今晩、浴室でそれを果たそうと考えていた。
 『熊』と交わる時に凄まじい快感をもたらす1点をこれから刺激するのだという興奮に彼は前のものまでそそり勃たせるほどだったが、どういうわけかいくら中を探っても思わず身をすくめてしまうほどのあの強い感覚は得られず、体は冷えるばかりだ。

(なんで…?ここなんだけどな…なんでそんなに気持ち良くないんだ?だって熊はいつもここを指とかアレで突いてきて、その度に俺は…)

 そこで彼はもしかして、と指の動きを止める。

(まさか…熊じゃないとだめとか…?いや、俺の体なのに なんでそうなるんだよ!?だって自分で自分の良いところを触っても気持ち良くならないとか…そんなことあるか!?もうちょっとやってれば気持ち良くなるはずだ、うん、そうだよな?そのはずだろ…)

 だが、そんな彼の思いとは裏腹に勃っていた前のものまでが次第に大人しくなっていってしまい、すでに入浴を始めてから随分と時間が経ってしまっていることもあって、彼は結局快感を得られないまま終わりにするしかなくなってしまった。

(…もう、なんなんだ本当に…せっかく気持ち良くなろうと思ってたのに…)

 重い足取りで浴室を出ると、いつものように戸締まりを終えた『熊』がそばへ寄ってきて、ほとんど会話もないまま2人は2階へと上がっていった。

ーーーーーー

(はぁ…また前だけでヤるしかないかな。まだせめてこっちは自分でするのでも良いみたいだから…)

 彼はそんなことを考えながら『熊』の火傷の手当をする。
 あの少女から渡された薬は火傷用の薬ということもあってよく効き、3日目には赤みも消えていたが、念の為にと使い続けて今日、ついに容れ物は空になった。

「…薬、使い切ったけど。具合はどうだ」
「うん、もうなんともないよ」
「そっか。じゃ、今日で手当もおしまいだな」

 彼が手当に使った物を片付けようと机の上に手を伸ばすと、「あのさ」と『熊』から声がかかる。

「僕達、話をしよう」

 彼は一瞬迷ったものの、片付けていた手を止めて短く返事をした。

(ようやくか…9日、10日?まぁそんなのはどうでもいいけど…)

 『熊』は目を伏せる彼にまっすぐに向き合い、はっきりとした声で「ごめん」と告げる。

「まずは、ごめん」
「…なにがだよ」

 刺々しくならないように注意するものの、『熊』の耳にはどう聞こえているのかが分からず、彼は緊張しながら声を出す。

「なにが…ごめんって…」
「うん、話をするのをこんなに長く引き延ばしたこと。あと、もう1つ。君は言ったよね『自分でも考えてみろよ』って。ずっと考えていたけど、まだ分からなくてごめん。この2つ」
「…うん」

(はぁ…あの時よりは俺も考えはまとまってるけど…でもやっぱり言わなきゃだめなのか。なんか…あらためて言うのって、自分が小さいようで嫌だな…だけどずっとこのままになる方がもっと嫌だし、とにかく話をしないと)

 彼が心を決めて口を開こうとすると、「待って」と止められた。

「まず僕から話をさせてくれないかな」
「あ、あぁ…」
「ありがとう」

 『熊』は一呼吸おいてから「はっきりとは分かってないけど」と話し始める。

「ずっと考えても答えは出なかったけど、でもあの日、君が僕に何か思うことがあったということだけは充分に理解してる。だからね、まずはあの日僕が思っていたことを話そうと思うんだ」
「……」

 『あの日』と聞いただけで脳裏に傾く天板や赤くなった『熊』の手の甲がよぎり、彼は眉根を寄せて目を瞑った。
 思い出したくもないその光景が、後悔をはじめとする様々な感情を心に渦巻かせる。
 だが、その次に『熊』が語ったのは彼の予想だにしないものだった。

「あの日…この火傷をした時ね、僕、すごく幸せだったんだよ、実は」
「…は?」
「幸せな気分だったの、僕」

 彼は思わず『熊』の目をまっすぐに見つめたが、そこには嘘や偽りは全く感じられない。
 
「何言ってるんだ…怪我したのに『幸せ』って、そんな…そんなわけないだろ…」
「ううん、本当だよ。嘘を言ってないことぐらい君には分かるはず、でしょ?」
「でも…」

 『熊』は穏やかに続ける。

「あのね、君はいつも料理をする僕に『器用だ』『すごい』って言ってくれるけど、最初からそうだったわけじゃないんだよ。僕は本当に小さな時からこの食堂にいるけど、料理は見てたからって出来るようになるものじゃないからね。子供の頃は切り傷とか火傷は当たり前のことで、どれだけ気をつけてても怪我はしてた。この火傷よりも、もっと酷いのなんか数え切れないくらいあったんじゃないかな。仕方がないんだ、手も体も小さかったし、そもそも怪我をしないためにはどういうことに気をつければいいのかを学んでいる途中だったんだから」

 『熊』は昔を思い出し、ふと口の端に柔らかな笑みを浮かべた。

「…父さんがいなくなってから1人でここに暮らすようになって、怪我の手当も自分でしてた。長い間、この部屋には丁寧に薬を塗ってくれる人もいなかったし、きちんと包帯も巻いてくれる人もいなかったんだ。だけど今はどうかな、君がいるね。あの日、君が心配して手が冷たくなるのも構わずに僕の手を冷やしてくれた事も、薬を塗ってくれた事も、包帯を巻いてくれたことも…僕にとってはすごく幸せなことだったんだ。『僕にはこんなに心配してくれて、手当までしてくれる人がいるんだ』って思って」
「熊…」

 今、彼を見つめている『熊』はあの日少女に向けていたのと同じように微笑んでいる。

(あ…この表情…)

 彼はそれでも、怪我をした原因について思うといたたまれない気持ちになり、暗い表情のまま口を開く。

「でも怪我は怪我だろ…あの子を庇って…」
「え、違うよ。いや、違うと言ったらあの子に悪いかな…でも違うよ、僕が庇ったのはあの子じゃなくて君だ」
「え…?」
「『え…?』って…そうでしょ。君はあの時、僕があの子を庇ったんだと思ってたの?」
「だって…天板が…傾いた天板があの子の方に…」
「まさかね。そうか、ようやく分かった気がする」

 『熊』は軽くため息をついて何から話そうかと考えているようだが、彼はあの一瞬の出来事を詳細に思い出そうとしていた。
 傾いて滑り落ちていきそうな天板と、横から伸びてきた『熊』の手…。

「僕、後からこの薬を持ってきたあの子に確か『違いますよ』って言ったと思うけど。あれは別にあの子に『気にするな』って意味で言ったんじゃなくて、本当に『違う』から『違う』って言ったんだよ」
「いや、でも…熊がすごく嬉しそうだったっていうか…」
「まったく、君はその前の僕を見てなかったんだな。鏡を見てないから僕がどんな表情をしてたかは知らないよ、でもあの子が来る前のほうがもっと嬉しそうな顔をしてた。絶対にね。だってそうでしょ、愛しい人が無事だったんだから。それにさっきも言ったけど、君がすごく心配してくれているっていうのが幸せで、嬉しかったんだし」

 たしかに、彼は手を冷やしている時には1度も『熊』の方を見ず、火傷の程度ばかりを気にしていて、『熊』の顔を見たのは、少女がやってきてからだった。

「だ、だけど、俺を庇ってって…?」
「あのね、僕が手を出さなかったら君はどうしてたと思う?あの時の君は今にも天板を掴みそうな勢いだったよ。あんなのを手掴みしたら指から何から大火傷だ。僕は火傷には慣れてるし、一瞬触れたくらいだったからこれで済んだんだよ」
「そうかな…」
「そうだよ。だいたい、あの子を庇おうとしたのは君の方でしょ。僕が君のことを見てなかったら、すぐに反応できてなかったらと思うとゾッとする。他の人を庇って君が大怪我なんて、考えたくもない」
「だけど…それは…俺が…」

 彼は正直に話した。
 天板がぐらつき、危険だったのを知っていたにもかかわらず何もしなかった事。
 上にのっていた菓子が無くなって傾き始めた天板へ、咄嗟に手を伸ばしていた事…。
 深い罪悪感と後悔とを抱きながら話す彼に、『熊』はじっと耳を傾けていた。

「…だから、元はと言えば全部俺のせいで…それなのに熊はなんか嬉しそうだし、俺ばっかり色々考えてるんだと思ったらわけ分かんなくなっちゃって…あんな…」
「…そっか」

 両腕を広げて待つ『熊』にそっと近付き、彼は久しぶりにあの温かな胸と鼓動を頬と耳とで存分に感じる。
 安堵感をもたらし、全身を預けたくなるようなそれは、なぜこんなにも長く離れていられたのかと不思議な気持ちにさせた。

「本当に…ごめんね。君はずっと苦しい思いを抱えていたのに、話をするのを先延ばしにしてた。でも、これも君のせいだと言ったら…怒る?」
「なにが?」
「…本当はね、3日くらいして君が落ち着いたら話そうと思ってたんだ。だけど君があまりにも可愛くて…もう少しこのままにしておきたくなった。だって、僕が作る料理を食べると『美味しい』って言い出したくなるのを抑えようとしてたり、僕が焼いたお菓子を隠れて全部食べてたり…この6年間でも見たことのない姿が沢山見れたから。『明日は大好物のあれを作ってみよう』とか『君はどんな反応をするかな』って考えるのが楽しくて…君から話を切り出すまでは、もうこのままでもいいかなと思ってたんだ」
「じゃあ…なんで今日、話をしようって?」
「それは…さ」

 身を離した『熊』は彼の顎に手を添えて少し上に向かせると、射るような目つきで言う。

「1人でヤッて…気持ち良かった?」
「…っ!」

 彼はギクリとした。
 顔を上に向かされているせいで逃れられず、『熊』を見つめ続けるしかできない。

「ま、まさか…お、起きてたのか…」
「起きてたんじゃなくて『眠れてなかった』んだ、あの日からずっとそうだったよ。横にいるのに距離があって…もどかしさと、もし君がどこかへ行ってしまったらどうしようって不安で眠る気になんかならなかった。だけど君はいつもよく眠ってて…まさか昨日、あんなことをし始めるとは思ってなかったから驚いた。僕の様子を窺ってたのは知ってたけど、それから勝手に1人で始めるなんてね」
「そ、それは…」
「僕がどれだけ大変だったか、君には分からないでしょ。隣であんな風に物音を立てて喘ぎ声まで…すごくいやらしかった、すぐにでも突き挿れたくなって仕方がなかった」
「あ…えっと…」

 なるべく音や声を抑えようとしていたのだが、すぐ隣にいた『熊』にはまったくそれらは意味をなさなかったようだ。
 羞恥のためすぐに言葉を返すことができず、んと言えばいいのかと考えていた彼はふと開き直った。

(いや…なんで俺が1人でするのがだめなことになってるんだ?だって、熊がこんなに長く俺を放っておいたのがそもそもの原因じゃないか。なのに…こんな責めるように言われるなんて)

「…そうだな、眠ったフリをしてる熊の隣で1人だけ気持ち良くなって悪かったよ。だけどさ、熊は散々俺の反応を面白がってたっていうのに、俺が1人で楽しむのはだめなわけ?」
「それはごめんって。でも…」
「でも?」

 彼は机の上に置いてあるままの包帯を掴み取ると、『熊』の手首を引いて寝台へ連れていき、勢いのままに引き倒す。

「ちょ、ちょっと…!」

 困惑の声を上げる『熊』に構わず、素早く包帯で両手首を縛りあげ、何重にも寝台の端へ巻いて固定した彼は満足したように笑みを浮かべながら『熊』に跨った。
 無防備な姿で自らの下にいる『熊』を見るのは久しぶりということもあって、彼はひどく興奮してくる。

「本当にごめんって…ちょっと、これ…」
「いや、許してやらない。まったく、俺の気も知らないで…今日まで俺を放っておいたことも、あんな顔を他に見せたことも…」
「だ、だからあれは君に向けての…!」
「へぇ?それじゃ、俺が同じようにしたとしても熊はなんとも思わないんだな?『あれは熊に向けての笑顔だったんだから』ってさ」
「それは…」
「ほらな。お前、自分は良くて俺はだめなのか?そんなわけあるか。俺がだめならお前もだめだろ」

 答えに窮する『熊』の上衣に手をかけると、彼は一息のうちに胸を露わにさせ、その真ん中を人差し指でつつっとなぞった。
 戸惑いの表情を浮かべながらも小さく反応を示す『熊』にのせられ、昨晩から積もり積もった『欲』は再び心の内に姿を表す。
 彼は不敵に微笑むと、『熊』の両足の間に移動し、胸にしたのと同じように下衣にも人差し指を滑らせた。

「ねぇ、ちょっと…」

 『熊』は手を上に縛りあげられている上、両足の間には彼がいるせいで大きく動くことができず、抵抗といえばせいぜい身を左右に捩らせる程度だ。
 手のひらは使わずにあくまでも指1本で、丸を描いたり、線を引いたり、なぞったり、押したりと様々に扱っていると、柔らかかったそこは次第に硬く形を示し始める。
 充分に反応を楽しんだ彼が下衣の紐を咥えながら引っ張って解くと、すぐさま見慣れた形のいい『熊』のものが現れた。

(はぁ…もうこんなに勃ってるなんて、本当にいやらしいのはどっちなんだか…)

 彼が下衣を脱がせると、『熊』は「ま、待って!」と困惑した声をあげる。

「待って、あの…」
「なんだよ」
「いや、その…」

 言い淀む『熊』がじれったく、彼は太ももの素肌に手を置いて待つ。

「だ、だから、その…ぼ、僕に挿れる…なら、もう1度湯を浴びてこないと…」
「なに、お前、俺に挿れてほしいの?」

 彼は軽く笑うと、眼下にそり勃つものを手のひらで覆って「だめだよ」と言い放った。

「お前の望み通りになんかしない。俺はまだ、許してない」

ーーーーーー

「うんん…んっ、あっ…っあ!」

 『熊』の腹を白濁が汚していく。
 すでに1度放出させられた後だったためにいくらか薄くなってはいるものの、溜まりに溜まっていた白濁は依然として濃厚さを損なっていない。
 彼は長い時間をかけて手で扱ったり根元に口づけをしたりし、『熊』の2度の放出を間近で見たことでようやく多少満たされた気分になった。
 当初はこのまま枯れ果てるまでいじめ抜いてやろうかとも思っていたのだが、自分の中へ挿れる前にそうなってしまっては困るため、そろそろこれはこのあたりで切り上げることにする。
 果てた後で激しく胸を起伏させる『熊』は妖艶さが漂っていて、痛いほどに『欲』を掻き立てられた彼は自らの下衣を素早く脱ぎ捨てると、白濁に塗れた『熊』の下腹部へ跨った。

「すごいな…こんなに沢山出てるなんてさ…」

 彼は腰を前後に動かし、白濁を尻全体に塗り付ける。
 相変わらず身動きのとれない『熊』は、自らの上で腰を滑らせて白濁を塗り付ける彼の姿を見せられたことで再び欲情し、苦しげな表情を浮かべた。

「暑い…なぁ熊、俺がさっきしたようにさ…これ、解けよ…」

 彼が僅かに上体を傾けると、『熊』は彼の上衣の紐をしっかりと咥え込む。
 身を起こすと紐は引っ張られ、いとも簡単に彼の上衣ははだけた。

「うん…それじゃ、始めようか…」

 一糸まとわぬ姿になった彼は僅かに尻を上げると、後ろから『熊』のものを手で支えて自らの秘めた部分にあてがう。
 元々自分で後ろの快感を得ようと散々いじっていたせいもあって、ほぐす必要はまったくない。
 大きな期待感と高揚感の中、彼はゆっくりと腰を下ろした。

「う、あぁ…」

 先端が入ってきただけで、吐息とともに甘い声が漏れる。
 中を押し拡げるそれは自らの指とは比べ物にならない心地良さをもたらし、頭の先までもが痺れるようだ。

(これだ…あぁ、もう最高だな…挿れただけで…おかしくなりそ…)

 息が止まりそうになりながらも最奥まで飲み込み終え、彼は中で熱く脈打つものの存在をじっくりと味わう。
 目の前にある『熊』の腹部は、彼が尻で白濁を塗り広げたせいで艶を放ち、僅かな灯りを美しく反射している。

(絶景…このなめらかな、1個も欠点のない体が…綺麗でいやらしくて、たまらない…)

「う……っ」

 彼が動かずにいると、堪えきれなくなったらしい『熊』は膝を曲げて下から突き上げるように腰を動かしてきた。
 だが、彼はそんな『熊』の両膝を後ろ手で押さえつけると、自ら足を開き、二人の繋がったところを見せつけるようにして挑発的に口を開く。

「はぁっ…言っただろ、お前の望み通りにはしないって…好きに動けないのは辛いか?はは…俺はまだ許したわけじゃないからな…んんっ」

 彼は『熊』の方を見つめたまま腰を上下させ、先端だけが中に残るまで抜き出しては再び根元まで飲み込むという動きをゆっくりと、丁寧に、時間をかけて行う。
 苦悶に満ちた『熊』の表情は「早く動きたくてたまらない」と言わんばかりだ。
 何度かそうしているうちに自身も強い快感を受けたくなってきた彼は、徐々に動きを早め、尻がぶつかり合う淫らな音を響かせるまで体を上下させる。
 『熊』はすぐ目の前で激しく上下に揺れる彼のものに触れることができず、かといって目を逸らすことさえできない。
 妖しく誘うように揺れ動くそれは『熊』を存分に苦しめ、彼によって包帯が結び付けられた寝台の端は軋む音をたてた。

「うっ、あっあっ…んぅ、ああっ!!」

 尻全体に塗られていた白濁も粘り気のある音をたてていて、2人分の喘ぎ声と尻のぶつかり合う音とが混ざりあったそれは、たとえ何も知らない人が耳にしただけでもこの状況を悟らせるのには十分だろう。
 すっかり欲情のおもむくまま体を動かし、そのあまりの良さに喉をそらして顔を天井へ向けていた彼は、自身の放出が迫っていることを感じると硬くそり勃つ自らのものへ手を重ねた。
 きつく眉根を寄せている『熊』も、あと少しで果ててしまいそうなのだろう。
  彼にはまだ1つ考えていることがある。
 肩で荒く息をしながら数回自らを擦った彼は、突然後ろから『熊』のものを抜き出すと、立膝になった。

「あぁ…くま…」

 目を微かに血走らせている『熊』に彼は自らを擦り、放出する様を見せつける。
 あと少しで絶頂を迎えるというところで刺激を止められた上に目の前で見せつけられたそれは、苦痛以外の何物でもないだろう。
 『熊』の胸元に飛び散る白濁を見た彼はすっかり満足して、尻を『熊』のものに擦り付けながら「…もういい、許すよ」と熱っぽく言う。

「辛かったろ?」

 彼がそう何度も動かないうちに、『熊』はくぐもった声と共に果てた。
 彼はまだ1度しか放っていないものの、すでに5回は絶頂を迎えたかのように満ち足りた気分で『熊』に抱きつく。
 唇を重ね合わせるのもあの日の朝以来初めてで、彼は全てが元通りになったということを確かめるように何度も口づけた。

「くま…くまぁ…」

 肩口に顔をうずめてそう囁いていると、急に『熊』は体を反転させ、彼を下に組み敷く。
 さらに頭上では布の裂ける嫌な音がして、まさかと顔を上げた彼は思わず「うわ!」と声をあげた。

「おい熊!こんなことをしなくてもお前が怪力なのは知ってるよ!」

 『熊』は寝台に繋がっていた部分を引きちぎった後、両手首を強く横に引っ張り、なんと全ての拘束を力づくで解いてしまう。
 あまりにも無茶苦茶なその行動に、彼は「もう解いてやるつもりだったのに」と唖然とした。

「熊…せっかく火傷が治ったのに今度は手首を怪我するつもりか?なぁ大丈夫か?っていうか、寝台が壊れちゃったら面倒なのに…」

 彼が手首を診ようとすると『熊』は逆に彼の手を捉え、指先を甘噛する。
 その仕草に覚えのある彼は「本気か?」と半笑いで問いかけた。

「なぁ熊、お前はもう3回も出したんだぞ?それも普通にじゃない、いじめられた末に、だ。意地なんか張るなよな、疲れきってるくせに」
「…今度は僕の番でしょ」
「は?」

 彼が目を瞬かせていると、不意に胸の突起を摘まれ、「あっ!」と声を出す。

「僕が止めなかったら君は大怪我をしてたんだ、僕の目の前で、他人を庇って。そのことについてなにか弁明はある?話してよ、聞くから」
「いや、は、話せって言われても…!こんなことされながらじゃ話せないって!」
「ううん、きちんと話せてるでしょ。それに、僕はまだ『許してない』」

 『熊』が手のひらで乳首を擦ったり押したりする中、彼は身を捩らせながら途切れ途切れに話していく。 
「だ、からそれは…元々天板が不安定なのを、俺は知ってたから…んっ…それが、あの子の方へ、滑っていきそうになっ、ただけ…」
「それで?」
「うっ…ほ、本当に咄嗟の、ことだっ…たから!思わず手を伸ばし…てたんだ、考える前…にもう動いてて…」
「咄嗟…ね」
「ん…」
「まぁ、それは理解するよ。思わず手が出た、というのはね」

 彼がほっとしたのも束の間、今度は「1人でシて気持ち良かった?」と尋ねられる。

「夜の間、僕は君がどこかへ行ってしまったら気付けないんじゃないかと思って眠れなかったのに。スヤスヤ眠るどころかあんなことをして…あぁ、気持ち良かったかなんて訊くまでもないね、『良かった』から声も出てたんだし。うん?これに関して言うことはある?」
「それは…ん、ぅああっ!!」
「ほら、話してよ。ちゃんと聞くから…」

 左の乳首を甘噛され、彼は苦しげに非難の声をあげた。

「くま…くまが話…をしないから、だろ!んぅっ…おれを放っておいた、くせに…!!」
「うん、僕のせい、か。僕が話をせず、君に触れもしなかったから、1人で気持ち良くなったんだね。あんな声までさせながら…隣に僕がいても気づかれないって?それとも、わざとだった?」
「ち、ちが…ぅ、あぁっ!!」
「それじゃ、どうして『その気』になったのかな」
「ちょ…それ、やめ…話すから、やめて…」

 あいていた右側までもが摘まれ、弾かれ、捏ねられた彼は懇願するように言うものの、まったく止む気配がない。

「僕もまだ『許してない』ってば。ほら、答えてよ。シたくなっちゃったのはどうして?」
「あっ、あん…う…く、くまを見て…んっ、ヤッてるときの事、思い、だしたら…我慢でき、なくなっ…て…」
「思い出して、ね。最後にシてから時間も経ってて、体が疼いちゃった?」
「ん…」
「…かわいいね」

 『熊』は乳首を吸い上げながら片手を彼の下の方へ伸ばし、それをゆっくりと覆う。
 すでに限界を迎えそうだった彼は下にも刺激がされたことで堪えきれなくなり、ほとんど悲鳴に近いような喘ぎ声をあげながら放った。
 『熊』が吸い付いていたところはピンと張って赤く色づき、まるでよく熟れた果実のようだ。

「すごく沢山出てる、見て。さっき自分で出したのよりも多いみたいだけど、どう?」
「はぁ…あ、ん……」
「…それじゃもう1つ、ね」

 『熊』は彼が放ったばかりの白濁を指に取ると、彼の秘めた部分へ塗りつけてから奥まで挿し込み、今度は右の乳首へ吸い付く。

「さっき、久しぶりなのに慣らしもしないで挿れてたけど…どうしてかな。こうなるって知らなかったはずなのに、洗うどころかほぐしてたの?」
「だ、だめ…いま、出したばっか…」
「うん?言ってごらん、ほら」

 浴室で自らの中を触っていた時とはまったく異なる感覚がその1点から全身へと広がっていくのを感じ、彼は抗えずにただ荒く呼吸を繰り返す。
 彼が何も言えず、強い快感のために喉を反らせたのを見た『熊』は、突然手の動きを止めると、身を起こしてされるがままになっている彼を見下ろした。

「はぁ、あっ…あぁっ…んん……」
「……」
「ぁ、んぅ…な、なん…で…」

 彼が潤む瞳で問いかけると、『熊』は中を一撫でして答える。

「君の『望み通りにはしない』」
「あ…あぅ…」
「今、ただ気持ち良くなってるでしょ。君はこのまま続けてほしいと思ってるんだ。それなら僕は止めないと」
「はぁ、あっ…ん、そん、な…」
「これで終わりにする?それとも、答える?」
「な、に…を?」

 すっかりわけが分からなくなっている彼の頬を撫でながら、『熊』は再び問いかけた。

「後ろのここ、自分でいじったの?」
「ん…」

 彼が頷くのを見て、さらに『熊』は続ける。

「気持ち良かった?」

 彼は何度も首を横に振った。

「良くなかったの?」
「ん…よく…なかっ、た…」
「これはどう?」
「うっ、ん…きもちい…いい…」
「そうだね、そう思ってるって、よく分かるよ」
「んん…っ」

 彼の中を再び擦りながら、『熊』は彼の汗ばんだ前髪を横に分けて微笑む。

「ねぇ…僕達、もう数え切れないくらいこうしてきたね。だから僕は君の良いところを全部知ってるんだ。たとえばここ。こうすると…」
「っぁああ!!!」
「ほらね…体が動いちゃうくらい感じてる」

 彼は執拗に中を攻められ、太ももと尻とを絶えずひくつかせながら嬌声をあげる。
 巧みな『熊』の指使いはたちまち彼を快感の頂点へと押しやり、そのあまりの良さに息までもが止まってしまいそうなほどだ。
 腰が浮き上がり、いよいよ苦しげなうめき声が聞こえだした。
 『熊』は彼の耳元に唇を近付けると、柔らかな耳たぶへそっと口づけをして囁く。

「いいよ…もう許してあげる」
「う、あぁ……」
「出したいでしょ?ほら…気持ち良くなっていいよ」

 『熊』が手の動きを早く、強くしながら腹部で彼のものを上から押さえつけると、それは一層熱く熱を持ち、今にも放ってしまいそうなほどビクビクと跳ねる。

「はぁ…あ、ん…んんっ…」
「…息をして…僕の…かわいい『魚』…」
「……~~~っ!!!」

 耳を優しく食まれながら、彼は果てた。
 2度ほど大きく跳ねた後は先端からほとんど透明になった白濁を滴らせるのみで、それらは胸まで達さずに下腹部付近へ散らばる。
 『熊』が中から指を抜き出す時、彼はまた小さく体を跳ねらせた。

ーーーーーー

 全身が汗や白濁に塗れた2人は、それが相手に付くのも構わず抱きしめ合う。
 彼が絶頂を迎える際に寝具を強く握りしめていたせいで できたシワがあちこちにあり、引き千切られた包帯やこぼれ落ちた白濁と相まって寝台の上はひどい有様だ。
 先程まで絶えず喘ぎ声が響いていた部屋は今では水を打ったように静まり返り、時々の囁き声の他には何も聞こえない。

「…ちょっと落ち着いてきた?」
「うん…」
「…そっか」

 『熊』は彼の鼻先に自らの鼻を擦り合わせて微笑むと、横にずれて自らも体を横たえた。
 何度も額と髪とを撫でられながら、彼はただただじっと自らを映す『熊』の瞳を見つめて穏やかに呼吸をする。
 慈愛に満ちたそれは、どんな芸術品や景色、鉱石よりも美しいと思えてならない。

(俺…本当に、どうして何日もこの瞳を見ずにいられたんだ?こんなに綺麗で、かっこよくて、信じられないくらい温かい瞳を…俺だけが映ってるこの瞳を、どうして見ずにいられたんだよ)

「…どうしたの?」
「なぁ、熊…」

 小さく「うん?」と答える『熊』に、彼は瞳を覗き込んだまま真面目な表情で口を開く。

「好き」

 突然の告白に頬が崩れたかのような満面の笑みを浮かべた『熊』は、「僕も」と額を擦り寄せた。

「分かりきってることでも、やっぱり嬉しいね…何度でも聞きたいし、言いたくなる。僕も、君が好き。大好き、愛してるよ」
「うん…知ってる」
「そっか、知ってるか」

 くすくすと笑い声をあげる『熊』の唇に彼は自らの唇を重ね、睫毛が触れ合う距離で目を合わせてからさらに深く口づける。
 乱れ始めた呼吸が互いの頬を撫でたところで、『熊』は囁いた。

「君も3回出したね…疲れてる…?もう今日は眠ろうか…?」
「…俺、熊より3つも若いんだけど」
「わぁ…僕が年寄りみたいに言わないでくれる?まだ全然、でしょ」

 彼は目の前にある温かくて広い胸元に唇で触れる。

「なぁ…一緒がいいよ…熊…」
「うん、そうだね…僕もそう思ってた」
「んん…くま…」

 舌を絡め合いながら彼は『熊』の動きに合わせて仰向けになり、力が抜けてしまいそうな両足を開いてしっかりと膝裏を抱えた。
 体勢を整え、『熊』は彼のひくつく後ろに自らのものをあてがうと、彼に覆い被さりながら腰を動かして進める。
 つい先程まで絶頂に押しやられていた彼の中は従順にそれを飲み込んだ挙げ句、激しくうねり、キツく締め付けて吸い付いたまま離そうとしない。
 受け入れた彼の方も自分が上になって挿れた時より体が敏感になっているということもあって、その強すぎる快感にうめき声をあげた。

「う、ああ、くま…ちょっと…ゆっくり…ゆっくりしようよ…なぁ…」
「うん…しばらく、このままでいよう…」

 互いの熱を感じながら見つめ合い、交互に額や瞼、鼻筋、頬、耳、口の端と口づけ合う。
 どれだけ時間が経ったか、少しずつ余裕が出てきた『熊』は彼を抱きしめて囁く。

「起き上がれる…?手を引いてあげるから…うん、そう…そのまま…」

 彼は中に『熊』を飲み込んだまま誘導される通りに身を起こし、向かい合って座った。

「どう…?好きでしょ、これ…」
「ん…すき…これ、いいの…」
「うん…このまま…もうちょっとこのままで…いようね…」

 『熊』は彼を抱きしめ、まるで子供をあやすかのようにゆっくりと前後に揺れる。
 激しく突かれるのとは違うこの穏やかな快感はじわじわと気を高め、彼を背筋の下から痺れさせていく。
 『熊』は、この男は。
 一体どこまで自分に優しくするのだろうか。
 そう思った彼は、言葉を考える前に口を開いていた。

「くま…ごめんな、けがさせて…おれの…せいで…」
「ううん、大丈夫だよ」
「……」

 彼の頬を1つ2つと涙が伝う。
 それを見た『熊』は、微笑みながら手のひらや手の甲でそれを拭った。

「そっかそっか、そんなに気にしてたんだね。涙まで流して…もう…君は本当に可愛いんだから」
「う…でも…」
「大丈夫。大丈夫だよ」

 『熊』は再び彼を抱きしめると、背中を優しく擦り、温かな声で言う。

「君が無事で、本当に良かった」

ーーーーーー

 いつも通り、昼食のための調理が慌ただしく進む食堂。
 彼はその中を食材や食器を持って行き来し、調理やその後の配膳が滞りなく行えるよう準備を整えていく。

「それ、今俺があっちに持って行くから…あっ!その後ろの鍋、熱いぞ!気を付けて」
「あら、これ?…本当ね、ありがとう」

 彼は常に周囲に気を配り、慌ただしく作業が進む中でも危険そうなものへ対処したり、こうして注意を促すなどしていた。
 彼が棚から使う皿を出すと、「本当に気が利くわね」と声をかけられる。

「この間も食器が落ちそうだったのに気がついてくれて…助かったわ」
「そうよね、食堂が人でいっぱいになってもあちこち見てくれてるのよ」
「働き者で気が利くだなんて、あのオヤジ達に知られたらまた引き抜きの話をされるわね」
「だめよ、そんなの!この子が居なくなっちゃったらあたし達はどうしたらいいのさ」
「まったくだわ…ねぇ、ここにいてくれるわよね?」

 彼は「もちろん」と笑顔で答えると、一瞬だけ『熊』の方を見てからさらに続けた。

「俺の家はここだし、誰に何を言われたってずっといるよ」

 その言葉を聞いた女性達が嬉しそうに「本当?」と聞くと、彼は「本当だってば!」とわざとらしく声をあげる。
 女性達は一様に笑みを浮かべると「そんなに言うんだもの、大丈夫ね」と再び食堂の机を拭ったりとそれぞれの作業をし始めた。

「それにしても、あなたは身の回りの危険に気が利く上に子供達の相手も上手いんだから、子守なんかにも向いてるわね。城の託児所とかでもきっと活躍するわよ」
「そうかな?」
「えぇ…あっ、でも城から要請が来ても行っちゃだめよ?」
「もちろんだってば!」
「そうよ、ここに居てもらわなくちゃ。この子の子守を頼みたいんだから」
「あ!来たのか!」

 彼はちょうど食堂の扉を開けて入ってきたあの姪っ子に気づくと、すぐさま椅子を引いて座らせてやる。
 姪っ子がお礼を言いながら大きなお腹を抱えて席につくと、厨房で調理を終えた彼女の叔母も飲み物を持ってやってきた。

「あんた、1人できたの?」
「ううん、彼も一緒よ。入る前に職人仲間に会ったから話をしてるの、多分すぐ来るわ。ここでお昼をもらおうと思って散歩がてら来たんだけど、今日の料理は何?」
「はぁ…あんたって本当に、知ってたんじゃないかっていうぐらい絶妙な時に来るわ。あんたの好きなものばかりよ、偶然にも」

 彼女は献立を聞くと「大当たり」と口角を上げ、料理をよそいにいった叔母を見送る。
 それから傍らの彼に「久しぶりね」と微笑んだ。

「彼は時々ここに食べに来てるみたいだけど、私はしばらく来れてなかったでしょ?だから、今日はどうしてもここに来たかったの」
「あっはははっ!それ、あいつが聞いたら拗ねるんじゃないか?」
「拗ねるかな?まぁ、大丈夫でしょ。さっきの子守の話だって彼が言い出したのよ、『あいつになら任せても』とかなんとかって。もうすっかり仲良くなっちゃって!初めて会った時のあの険悪な雰囲気はどうしちゃったのよ、私よりも仲良くなってるじゃない」
「いやぁ、たしかにな。あいつも可愛いよ、なんだかんだ言ってよく気を遣ってくれてるし…え、あいつが俺に子守をって言ったって?まさかそこまで言うなんてな」

 姪っ子は「あなたの面倒見の良さを認めてるのよ」と微笑む。

「だから、たまにはこの子とも遊んであげてね」
「もちろん!」
「…何の話だ」

 その声を聞いた姪っ子は扉の方に顔を向けて「分かってるくせに!」と笑い声をあげた。

「子守の話をしてたのよ、任せてもいいって言ったでしょ?」
「お、俺は…!」
「なによ、言ってたじゃないの」
「言ったのか?」
「……っ」

 青年は答えずに椅子を引いて座るも、彼や姪っ子にさらに詰め寄られ、ますます口を一文字に結ぶ。

「あまりからかっちゃだめだよ」
「熊!なんだよ、俺はただ聞いてるだけだぞ」
「わざわざ聞かなくてもいいでしょ、彼がそう思ってるのは分かりきってる」
「そうか?」
「うん。だって、この前、君を見ながら『子供と遊ぶのが上手いんだな』って羨ましそうに…」
「おい!言うなよ!」

 『熊』は持ってきた昼食を姪っ子と顔を赤くしながら抗議する青年の前に置くと、彼の肩に手を置いて微笑んだ。

「まだこの子が何に興味を持つかなんてまだ分からないもの。私達どちらかの仕事か、工房の他の仕事か、こうして食堂の仕事か…触れ合うものは多い方がいいんだし、頼んだわよ『お兄さん達』」
「うん。…あ、でも実は靴の仕事に興味を持ってほしいと思ってるんだろ、どうだ?」
「お、俺は別に…そんなこと…」
「たしかに!本当は靴作りを教えたいんでしょ、ね?」
「そ、そんなことない!」
「ムキになってる、図星だなぁ」
「なってない!も、もう黙ってくれ…」

 賑やかに笑い声をあげていると、姪っ子の叔母はさらに2人分の昼食を持ってきて「これはあなた達の分ね」と机に置く。

「なかなか集まれないんだし、少し早めだけどいい機会だから一緒にお昼にしちゃいなさい」
「ありがとう、叔母さん」
「いいのよ。その分、この子達には後で沢山働いてもらうから」
「それは任せてよ!な、熊!」
「うん」

 食堂の中、楽しげな4人の食事風景は調理の仕上げをする女性達にも笑みをもたらした。
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