彼と姫と

登場人物について～物語読了後推奨～

『燦』

　他地域での生活という経験をするために漁業地域へ来ていた男。
　名前は『燦々と射す陽光』という意味があります。
　草木にとってなによりも重要である陽光。
　『燦々と降り注ぐ陽光のような人に』という願いを込めて父親に名付けられました。
　愛称は『燦さん』。
　出身は陸国の城がある広大な敷地内（どの地域にも属さない特殊な地）であり、彼はそこで庭木などの手入れを行う専門職一家の長男として生まれました。
　陸国の城の敷地内は地域にかかわらず様々な植物や動物が住むことのできる特別な区域であり、そこにある植木などは有事の際に植樹して環境をもとに戻すという重要な役割を担っているため、それらの管理を行う『庭師』は城お抱えの専門職として重宝されています。
　燦は幼い頃からそうした家族の『木々の医者』とも言われる働きを目にして憧れを抱いており、自らもそこに加わるべく父や祖父から日々学んでいます。
　漁業地域の端の方にある作業場を社会経験の地として選んだのは、そこで作られる肥料が実際に家族が木々の世話のために使用しているものだったからでした。
　まさかあんな経験をすることになるとは夢にも思っていなかったわけですが…しばらく狐につままれたような気分で作業にも身が入っていなかった彼も、次第に元の調子に戻って一回り成長し、満を持して実家に戻りました。
　その後数年してから街中で出逢った女性と恋をし、結婚して幸せな家庭を築いたのだとか。
　あの一連の出来事はあまりにも現実的ではなかったため、彼自身もその衝撃のせいもあってか一時の白昼夢のようなものだとして深く思い出すこともなく、やがて新たな生活での慌ただしさと数々の思い出によってそれらは記憶の奥の奥に追いやられていったということのようです。
　彼は将来 立派な庭木の手入れ職人となり、素晴らしい腕前による活躍で木々を守り続けていきます。