酪農地域にて

蓬屋 月餅

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エピローグ

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「若!また来たんですか、きちんと仕事に集中して…」
「いや、この記録を取りに来ただけだ」
「…っ!」

 雪が深く積り始める頃、彼は屋敷へと移り住んでいた。
 当初、彼はそう簡単には認められないだろうと考えていたものの、新たな医学書の編纂には多くの医師達から期待の声が寄せられ、想定していたよりもずっと早く仕事の方向性が定められたのだ。
 さらに、屋敷への居住に関しても若領主が屋敷にある図書の管理の必要性等を領主へ熱心に説いたこともあり、そう時間もかからず許可が下りた。
 
 彼は屋敷の図書の管理をしながら医学書の編纂を進め、時々実家の薬草採りといった細やかな作業を手伝いに行ったり、急患の報せがあれば飛び出していくという生活を送っている。
 本来であれば冬の間はあまり顔を合わせる機会のない若領主と彼だったが、同じ屋敷に住まう者同士、雪深くなるせいで外に出づらくなる今ではむしろそれが共に過ごす時を増やしてくれていた。


「ほら、この記録が欲しかったんだ。…うん?なぜそんなに顔が赤いんだ?」
「わ、若がそうやってからかうからですよ!」
「私が?私はただこの記録を取りに来ただけなのに」

 飄々と言う若領主に対し、彼はわざとらしくため息をついて「困りましたね」と対抗する。

「僕は若領主のためにも良いと思ってお屋敷に来たのに、こうして何度も若領主の仕事の手を止めさせてしまうのでは意味がありません。仕方ない、明日からしばらく家の手伝いにでも…」
「わ、分かったよ!ここに君がいるというのを つい確かめたくなってしまうんだ…だって君が帰る時間を気にしなくてもいいというのが、まだ少し信じられなくて…」

 申し訳無さそうに言う若領主はいつもより小さく見え、彼はどういうわけか自分が悪いことをしたかのような気分になる。
 彼は「若」と呼びかけると、ふと息を吐いて続けた。

「僕はここにいますよ、だって、もうここが僕の家になったんですから。後でお茶を淹れて持っていきます、それまでしっかりとお仕事を進めていてくださいね。…夜になったら、早く2人で小屋へ帰れるように」

 彼の言葉に目を輝かせた若領主は彼の額に素早く口づける。
 口づけられたばかりの額に手を当てながら頬を紅く染める彼を残し、若領主は足早に執務室へと戻っていった。
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蓬屋のBLに興味をもって下さった方へ…ぜひ他作品の方も併せてご覧下さい。【以下、蓬屋のBL作品紹介】《陸国が舞台の作品》: ・スパダリ攻め×不遇受け『熊の魚(オメガバース編有)』 ・クール(?)攻め×美人受け『彼と姫と(オメガバース編有)』 ・陸国の司書×特別体質受け『図書塔の2人(今後オメガバース編の予定有)』 ・神の側仕え×陸国の神『牧草地の白馬(多数カップル有)』   《現代が舞台の作品》:・元ゲイビ男優×フリーランス税理士『悠久の城(リバあり)』 それぞれの甘々カップル達をよろしくお願いします★
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