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第三部
29「誘い」
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一体、彼は今、なんと言ったのだろうか。
彼の言いたいことがよく理解できず、若領主は困惑していた。
(…もしかしたら、私の『そういう知識』って変だった…のかな?『男でも』ってそれはどういう…?)
若領主がなんと反応しようかと戸惑っていると、彼はなおも続けて言う。
「お、男でも…よ、よくなる場所があって!その…じょ、女性とするみたいに…男…でも…」
「それ…って…つまり…」
自らの知識に間違いがなければ、『そういうこと』を『女性と同じようにする』には、つまり『挿れる場所』が必要なはずだ。
自分も男だから、身体のつくりは同じはず。
とすれば、男にそのようなことができそうなのは、一所しかないはずではないか。
「ほ、本気で言ってる…?だってそれって…」
「ぼ、僕の思いつきじゃないですよ!でも…た、試してみませんか…?僕、その…綺麗に…してきたんです…」
「…っ」
彼の誘うような声と視線に刺激され、若領主は弾かれたように彼を寝台へと連れて行った。
「…大丈夫?」
「ん…大丈夫です…」
寝台の上、彼は足を深く折り曲げながら秘められた部分に1本の指を受け入れている。
屋敷の風呂場で自ら中を洗った時とは違い、若領主の指が、自分の意志とは関係なく動く指が中を撫でているという事実に強い羞恥を感じて逃げ出しそうになってしまうのを必死に抑えていた。
「『良くなる場所』って…どこ?」
「わ、分かりません…お腹側に…ある…みたい…」
「そうか…ねぇ、君が思いついたんじゃないなら…どうしてこんなことを知ってる?」
「それは…そういう事を書いた本を昔見たことがあって…」
「本?」
彼は中を撫でられながら事の顛末を話した。
彼が読んだ本には男同士の情事に関するありとあらゆることが詳細に書かれていて、大真面目な研究の記録とも呼べるものだった。
まさに指南書といった風で、中の洗い方から拡げ方、感じる場所、さらに後ろを痛めた際によく効く薬の調合方法までもが書き記されている。
にわかには信じがたいが、内容がよくまとめられているのをみると、そそり勃つものに触れる以外にも強い快感を感じられる場所があるというのも、本当のことらしい。
「そんな本があるとはね…私も読んでおくべきかもしれないな。…少し慣れてきたみたいだけど、どう?」
「はい…僕は大丈夫、若の思うようにして…ください…」
「…うん。それじゃ、増やすよ…」
彼の、少し柔らかくなってきた後ろに2本目の指が挿し込まれる。
身体を強張らせてしまうとせっかく挿し込まれた指を押し出してしまうため、彼は後ろの柔らかさを保つために意識を集中させた。
中を探りながら抜き挿しされるも、まだそそり立ったものに触れたときのような『気持ちよさ』は感じられない。
「それにしても、昔読んだ本のことを思い出すなんて…いつものでは物足りなかったのかな?」
「っ!そ、そうじゃなくて…!」
耳たぶに口づけるようにしながら囁かれ、彼はゾクゾクと身体が震えるのを感じる。
「そうじゃなくて…あなたはいつも僕を良くしてくれるのに…僕にはあなたのものを舐めさせてくれないでしょ…あなたにも知ってほしかったんです、包み込まれることの良さを…だから僕が…ぅああっ!!」
「ご、ごめん!痛かった?」
若領主は突然声を上げた彼に驚き、身を起こして彼の表情を伺う。
1本目のときよりも柔らかくなるのが早く感じられたため、3本目の指を入れようと中の2本の指を折り曲げてのことだ。
彼の柔らかい中を傷付けたのではないかと心配になるものの、彼の方は激しく胸を上下させ、目を瞬かせている。
彼は「これだ」とはっきり理解していた。
下腹部から一瞬にして全身に広がるこの感覚。
前のものに触れたときのような、痺れと、腰の浮くほどの快感をもたらす場所…。
「…やっぱり今日はやめよう、またゆっくり慣らしてから…」
「や、やめないで!」
彼は指を抜こうとする若領主を両腕でしっかりと抱き寄せ、少し抜き出された指を再び中へと導く。
「そこ…」
「…ここ?」
「ぅああっ!!」
若領主が指を折り曲げて刺激すると、彼は身体を大きく跳ねさせ、まったく初めての感覚に抗いようもなく呑まれた。
初めは若領主の目を見ていたもの、そのうち耐えきれないほどの強い快感のために目を瞑り、抑えられない嬌声を漏らす。
自らの指の動きに合わせて激しく喘ぐ彼を見ているだけで、若領主も酷く興奮してきた。
「ここがそうなんだね…見つけられてよかった…分かる?もう3本も入ってる…」
「ぅあっ!んっ…んぅっ…はぁ…あっ!わ、若…もう大丈夫…若も気持ちよくなって…僕の…僕の中で…」
目を潤ませながら懇願するように言う彼に、ついに我慢しきれなくなった若領主は指を抜き出し、自らのものを彼の両足の間にある秘められた場所にあてがった。
指3本には慣れきっていても、それよりもずっと大きなものを受け入れるにはまだ足りない。
先の方を挿れられただけで彼の身体は痛みのために強張り、意志とは関係なく侵入を拒む。
「ちょっ、ちょっと待ってください…うぅ…ち、力を抜かないといけないのに…はぁ…はぁ…」
若領主はすでに理性を失いかけているために何も耳に入ってこないという状況だが、そんな中でも彼の「力を抜かないと…」という声だけが聞こえてきて、若領主は漠然と(力を抜けばいいのか)と考えていた。
(力を抜かせるには…)
若領主は彼の身体に腕を回し、胸の辺りを抱き上げるようにして浮かせると、胸の突起に強く舌を押しあててから吸い付く。
「あっ!うぁぁ、あっ、んっ…うぅ…っ!!」
ひとしきり吸い付いてから腕の力を解いて彼を寝床に下ろすと、案の定彼は身体をぐったりとさせる。
若領主は彼の身体をきつく抱きしめると、そのまま勢いよく自らのものを根本まで挿し込んだ。
それは想像以上の経験だった。
人の身体とは思えないほど熱を帯びたその中は、敏感なそそり勃つものをきつく締め付け、千切られてしまうのではないかとさえ感じる。
あまりの強い刺激に動くことができずにいると、少しずつ彼の様子に目を向けることができるようになってきて、若領主はそっと腕の中にいる彼を見た。
「うぅ…はぁ…はぁ…」
彼の頬は涙に濡れ、眉根はきつく寄せられていた。
どんなに理性がとびかけていても、今の彼が快感を味わっているわけではないと分かる。
若領主は途端に目が覚め、大きな罪悪感に襲われた。
「ご、ごめん…無理に…ほ、本当にごめん…」
若領主は自らの手のひらで包み込むようにして彼の涙を拭うも、すぐにまた新たな涙が伝う。
「な、なんて言ったらいいのか…本当にごめん…」
繰り返して詫びる若領主に、彼はふるふると首を横に振って答える。
「大丈夫、これは…若が、もっともっと近くに感じられて嬉しいだけ…」
「嘘を言うんじゃない…痛いんだろう?こんな…」
「でも嬉しいのも本当だから…」
彼は微かに笑顔を見せる。
若領主は申し訳無さと愛おしさから目尻に浮かぶ涙に口づけ、再び強く抱き寄せた。
「はぁ…うぅ…ねぇ、若…若のが指3本なんかとは比べ物にならないくらい大きくて…僕、びっくりしただけなんです。だから…もう大丈夫」
彼はそれまで深く折り曲げていた両足を若領主の腰に絡みつけて囁く。
「若、動いて…僕が痺れるところ、沢山突いて…」
ーーーーーー
「はぁ…うぅ、ん…わ、若…もうそこはいいから…」
彼は執拗に胸を口に含んで刺激し続ける若領主の肩を押して、やめさせそうと試みていた。
だが、若領主は一向に顔を離す気配がない。
「だめだ、もっと…もっとよくしてあげたいから…」
「だ、だから!もう大丈夫ですってば…もういいから…」
彼が身を捩って抵抗すると、若領主の表情は一気に強張った。
若領主のものはずっと彼の中にあるため、彼が身を捩ることでほんの少し抜き出されてはまたのみ込まれる。
たったそれだけの刺激でおかしくなりそうだというのに、もしこのまま腰を打ち付けたなら一体どうなってしまうのか。
若領主は先程のように彼のことを思いやれなくなるのではないかと恐れていた。
「動かないで…もう、おかしくなりそうなんだよ。乱暴にしたくないんだ、だから…」
「おかしくなりそう…?」
彼はわざと腰を動かし、若領主のものを数回抜き挿しする。
「おかしくなったらいいじゃないですか…僕も…僕もおかしくなりそうだし…若と…あなたと一緒にもっとおかしくなりたい…」
「…煽らないで、だめだ…」
「さっき指で触ったところ、若しか知らないところ…そこに当ててください…ねぇ、早く…痺れさせて、おかしくさせて…」
若領主は彼に深く口づけると、自らのものが先端だけになるまで抜き出し、それからもう一度深く、ゆっくりと挿し込んだ。
固く張り詰めた敏感なものが彼の熱い中を押し拡げると、中の肉は侵入してきたものを型どるかのように隙間なく包み込んでくる。
奥まで入りきると、また抜き出してゆっくりと挿し込んだ。
「あ、あ…はぁ…あっ…」
彼は若領主の首にしがみつきながら、甘い吐息を漏らす。
そして次第に早まっていく若領主の動きに応えるように、彼も喘ぎ声を大きくしていった。
他と比べようもないことだが、2人の相性はこれ以上ないというほど良いものだと言える。
若領主が意識して動かなくてもそそり勃つものは彼の一番良いところを撫でさすり、彼が身体を跳ねさせた拍子に腰を浮かせればその快感は何倍にも高まる。
彼が快感を感じれば感じるほど中はきつく締まり、若領主にも耐え難いほどの快感がもたらされるのだ。
彼の方もすでに痛みなどは感じておらず、あるのは全身を駆け巡るような痺れる快感と幸福感だけだ。
「あっ、あぁっ!うっ、んぅ…!!!」
「もう…そろそろ…」
若領主は限界が迫ってきて、彼の中から自らのものを抜き出すべく身を起こそうとする。
しかし、彼が腰に絡みつけている両足はそれを許さないというように締め付け、抜くことなどできそうにもない。
「だ、だめ、でていかないで…このまま…このまま、なかに…」
「でも…足を離して…」
「やだ、ぼくもあと少しだから、最後まで突いて…!なかに、ぼくのなかに…あっ、んん…あぁぁっ!!」
逃れられない若領主が彼を強く抱きしめたまま数回腰を打ち付けると、2人は同時に大きく身体を跳ねさせた。
すべてを放ち終わるまで彼の首筋に顔を埋めていた若領主は、ようやく少しの平静を取り戻して彼に口づけようと顔を上げる。
しかし、彼は苦しそうにハァハァと肩で息をし、目を潤ませていた。
「ど、どうしたの…痛むの?」
「ち、違います…でも…うっ…!!」
彼の様子は痛みに耐えているのとは少し違うようで、むしろ上気した艶めかしさがある。
彼は息を荒らげたまま途切れ途切れに答えた。
「い、いいのに…きもちいいのに…た、たりない、でない…だせなくて、く、くるしい…んっ…うっ、あぁぁっ!!」
見ると、彼のものは勃ったまま先端からほんの少しの白濁だけを滲ませただけで、未だにドクドクと強く脈打っている。
身体を跳ねさせていたにもかかわらず、存分に放てずにいたようだ。
彼が我慢しきれなくなり、手を伸ばして触れようとするのを止めた若領主は、彼の耳元で囁く。
「…今、楽にしてあげる…」
若領主が滲み出している先端の白濁を全体に塗り拡げるように手のひらで包み込んで擦ると、そう何度もしないうちに彼は放った。
2種類の強い快感に晒されたせいでぐったりとした彼は、両手で顔を覆ってそのまま身を横にする。
若領主は彼が彼自身の下腹部に放った白濁が流れ落ちていきそうなのを見ると、手近にあった布巾を手に取り、彼を後ろから抱き締めるようにしながらそれらを拭った。
「は、はずかしい…」
「うん?」
彼は顔を覆う両手の隙間からくぐもった声で話す。
「こんな…若に気持ちよくなってほしいからだったのに、結局は僕の方が…その…」
しっとりと汗ばんだ肌と髪、そして手の隙間から覗く潤んだ瞳と赤い頬がなんとも心をくすぐってくる。
若領主は布巾を床に落とすと、両腕でしっかりと彼を抱き寄せてからそっと労るように手を下腹部へ置いた。
「私のほうが恥ずかしいよ…今したばかりなのに、まだ足りないと思って…こんなになってるんだから…」
若領主はまだ抜き出していない自らのものの存在感を彼に知らせる。
すると、下腹部に置いた若領主の手の甲にも熱く固いものが当たった。
それを優しく手の内に収め、若領主は彼の耳と肩とに口づける。
それからすぐに彼はまた仰向けになり、両足を拡げて若領主が動きやすいように体制を整えた。
達してからそう時間も経たないうちに再び刺激を与えると、痛いほどの快感が伴ってくる。
その上、彼の中には放ったばかりの白濁があるせいで、始めた時よりもずっとなめらかに動かせるようになっていた。
若領主の動きに合わせて響く彼の喘ぎ声と濡れそぼった部分からの淫靡な音は、小屋を甘く、妙な空気で包む。
「や、音が…うぅ…んっ…ぅああっ!!あっ、あっ…んぅっ…っ!」
彼の中は一層きつく締まり、若領主の手の内に収められているものも拍動を強める。
2人は互いの指を絡めて固く握り合い、それぞれ2度目を放った。
彼の言いたいことがよく理解できず、若領主は困惑していた。
(…もしかしたら、私の『そういう知識』って変だった…のかな?『男でも』ってそれはどういう…?)
若領主がなんと反応しようかと戸惑っていると、彼はなおも続けて言う。
「お、男でも…よ、よくなる場所があって!その…じょ、女性とするみたいに…男…でも…」
「それ…って…つまり…」
自らの知識に間違いがなければ、『そういうこと』を『女性と同じようにする』には、つまり『挿れる場所』が必要なはずだ。
自分も男だから、身体のつくりは同じはず。
とすれば、男にそのようなことができそうなのは、一所しかないはずではないか。
「ほ、本気で言ってる…?だってそれって…」
「ぼ、僕の思いつきじゃないですよ!でも…た、試してみませんか…?僕、その…綺麗に…してきたんです…」
「…っ」
彼の誘うような声と視線に刺激され、若領主は弾かれたように彼を寝台へと連れて行った。
「…大丈夫?」
「ん…大丈夫です…」
寝台の上、彼は足を深く折り曲げながら秘められた部分に1本の指を受け入れている。
屋敷の風呂場で自ら中を洗った時とは違い、若領主の指が、自分の意志とは関係なく動く指が中を撫でているという事実に強い羞恥を感じて逃げ出しそうになってしまうのを必死に抑えていた。
「『良くなる場所』って…どこ?」
「わ、分かりません…お腹側に…ある…みたい…」
「そうか…ねぇ、君が思いついたんじゃないなら…どうしてこんなことを知ってる?」
「それは…そういう事を書いた本を昔見たことがあって…」
「本?」
彼は中を撫でられながら事の顛末を話した。
彼が読んだ本には男同士の情事に関するありとあらゆることが詳細に書かれていて、大真面目な研究の記録とも呼べるものだった。
まさに指南書といった風で、中の洗い方から拡げ方、感じる場所、さらに後ろを痛めた際によく効く薬の調合方法までもが書き記されている。
にわかには信じがたいが、内容がよくまとめられているのをみると、そそり勃つものに触れる以外にも強い快感を感じられる場所があるというのも、本当のことらしい。
「そんな本があるとはね…私も読んでおくべきかもしれないな。…少し慣れてきたみたいだけど、どう?」
「はい…僕は大丈夫、若の思うようにして…ください…」
「…うん。それじゃ、増やすよ…」
彼の、少し柔らかくなってきた後ろに2本目の指が挿し込まれる。
身体を強張らせてしまうとせっかく挿し込まれた指を押し出してしまうため、彼は後ろの柔らかさを保つために意識を集中させた。
中を探りながら抜き挿しされるも、まだそそり立ったものに触れたときのような『気持ちよさ』は感じられない。
「それにしても、昔読んだ本のことを思い出すなんて…いつものでは物足りなかったのかな?」
「っ!そ、そうじゃなくて…!」
耳たぶに口づけるようにしながら囁かれ、彼はゾクゾクと身体が震えるのを感じる。
「そうじゃなくて…あなたはいつも僕を良くしてくれるのに…僕にはあなたのものを舐めさせてくれないでしょ…あなたにも知ってほしかったんです、包み込まれることの良さを…だから僕が…ぅああっ!!」
「ご、ごめん!痛かった?」
若領主は突然声を上げた彼に驚き、身を起こして彼の表情を伺う。
1本目のときよりも柔らかくなるのが早く感じられたため、3本目の指を入れようと中の2本の指を折り曲げてのことだ。
彼の柔らかい中を傷付けたのではないかと心配になるものの、彼の方は激しく胸を上下させ、目を瞬かせている。
彼は「これだ」とはっきり理解していた。
下腹部から一瞬にして全身に広がるこの感覚。
前のものに触れたときのような、痺れと、腰の浮くほどの快感をもたらす場所…。
「…やっぱり今日はやめよう、またゆっくり慣らしてから…」
「や、やめないで!」
彼は指を抜こうとする若領主を両腕でしっかりと抱き寄せ、少し抜き出された指を再び中へと導く。
「そこ…」
「…ここ?」
「ぅああっ!!」
若領主が指を折り曲げて刺激すると、彼は身体を大きく跳ねさせ、まったく初めての感覚に抗いようもなく呑まれた。
初めは若領主の目を見ていたもの、そのうち耐えきれないほどの強い快感のために目を瞑り、抑えられない嬌声を漏らす。
自らの指の動きに合わせて激しく喘ぐ彼を見ているだけで、若領主も酷く興奮してきた。
「ここがそうなんだね…見つけられてよかった…分かる?もう3本も入ってる…」
「ぅあっ!んっ…んぅっ…はぁ…あっ!わ、若…もう大丈夫…若も気持ちよくなって…僕の…僕の中で…」
目を潤ませながら懇願するように言う彼に、ついに我慢しきれなくなった若領主は指を抜き出し、自らのものを彼の両足の間にある秘められた場所にあてがった。
指3本には慣れきっていても、それよりもずっと大きなものを受け入れるにはまだ足りない。
先の方を挿れられただけで彼の身体は痛みのために強張り、意志とは関係なく侵入を拒む。
「ちょっ、ちょっと待ってください…うぅ…ち、力を抜かないといけないのに…はぁ…はぁ…」
若領主はすでに理性を失いかけているために何も耳に入ってこないという状況だが、そんな中でも彼の「力を抜かないと…」という声だけが聞こえてきて、若領主は漠然と(力を抜けばいいのか)と考えていた。
(力を抜かせるには…)
若領主は彼の身体に腕を回し、胸の辺りを抱き上げるようにして浮かせると、胸の突起に強く舌を押しあててから吸い付く。
「あっ!うぁぁ、あっ、んっ…うぅ…っ!!」
ひとしきり吸い付いてから腕の力を解いて彼を寝床に下ろすと、案の定彼は身体をぐったりとさせる。
若領主は彼の身体をきつく抱きしめると、そのまま勢いよく自らのものを根本まで挿し込んだ。
それは想像以上の経験だった。
人の身体とは思えないほど熱を帯びたその中は、敏感なそそり勃つものをきつく締め付け、千切られてしまうのではないかとさえ感じる。
あまりの強い刺激に動くことができずにいると、少しずつ彼の様子に目を向けることができるようになってきて、若領主はそっと腕の中にいる彼を見た。
「うぅ…はぁ…はぁ…」
彼の頬は涙に濡れ、眉根はきつく寄せられていた。
どんなに理性がとびかけていても、今の彼が快感を味わっているわけではないと分かる。
若領主は途端に目が覚め、大きな罪悪感に襲われた。
「ご、ごめん…無理に…ほ、本当にごめん…」
若領主は自らの手のひらで包み込むようにして彼の涙を拭うも、すぐにまた新たな涙が伝う。
「な、なんて言ったらいいのか…本当にごめん…」
繰り返して詫びる若領主に、彼はふるふると首を横に振って答える。
「大丈夫、これは…若が、もっともっと近くに感じられて嬉しいだけ…」
「嘘を言うんじゃない…痛いんだろう?こんな…」
「でも嬉しいのも本当だから…」
彼は微かに笑顔を見せる。
若領主は申し訳無さと愛おしさから目尻に浮かぶ涙に口づけ、再び強く抱き寄せた。
「はぁ…うぅ…ねぇ、若…若のが指3本なんかとは比べ物にならないくらい大きくて…僕、びっくりしただけなんです。だから…もう大丈夫」
彼はそれまで深く折り曲げていた両足を若領主の腰に絡みつけて囁く。
「若、動いて…僕が痺れるところ、沢山突いて…」
ーーーーーー
「はぁ…うぅ、ん…わ、若…もうそこはいいから…」
彼は執拗に胸を口に含んで刺激し続ける若領主の肩を押して、やめさせそうと試みていた。
だが、若領主は一向に顔を離す気配がない。
「だめだ、もっと…もっとよくしてあげたいから…」
「だ、だから!もう大丈夫ですってば…もういいから…」
彼が身を捩って抵抗すると、若領主の表情は一気に強張った。
若領主のものはずっと彼の中にあるため、彼が身を捩ることでほんの少し抜き出されてはまたのみ込まれる。
たったそれだけの刺激でおかしくなりそうだというのに、もしこのまま腰を打ち付けたなら一体どうなってしまうのか。
若領主は先程のように彼のことを思いやれなくなるのではないかと恐れていた。
「動かないで…もう、おかしくなりそうなんだよ。乱暴にしたくないんだ、だから…」
「おかしくなりそう…?」
彼はわざと腰を動かし、若領主のものを数回抜き挿しする。
「おかしくなったらいいじゃないですか…僕も…僕もおかしくなりそうだし…若と…あなたと一緒にもっとおかしくなりたい…」
「…煽らないで、だめだ…」
「さっき指で触ったところ、若しか知らないところ…そこに当ててください…ねぇ、早く…痺れさせて、おかしくさせて…」
若領主は彼に深く口づけると、自らのものが先端だけになるまで抜き出し、それからもう一度深く、ゆっくりと挿し込んだ。
固く張り詰めた敏感なものが彼の熱い中を押し拡げると、中の肉は侵入してきたものを型どるかのように隙間なく包み込んでくる。
奥まで入りきると、また抜き出してゆっくりと挿し込んだ。
「あ、あ…はぁ…あっ…」
彼は若領主の首にしがみつきながら、甘い吐息を漏らす。
そして次第に早まっていく若領主の動きに応えるように、彼も喘ぎ声を大きくしていった。
他と比べようもないことだが、2人の相性はこれ以上ないというほど良いものだと言える。
若領主が意識して動かなくてもそそり勃つものは彼の一番良いところを撫でさすり、彼が身体を跳ねさせた拍子に腰を浮かせればその快感は何倍にも高まる。
彼が快感を感じれば感じるほど中はきつく締まり、若領主にも耐え難いほどの快感がもたらされるのだ。
彼の方もすでに痛みなどは感じておらず、あるのは全身を駆け巡るような痺れる快感と幸福感だけだ。
「あっ、あぁっ!うっ、んぅ…!!!」
「もう…そろそろ…」
若領主は限界が迫ってきて、彼の中から自らのものを抜き出すべく身を起こそうとする。
しかし、彼が腰に絡みつけている両足はそれを許さないというように締め付け、抜くことなどできそうにもない。
「だ、だめ、でていかないで…このまま…このまま、なかに…」
「でも…足を離して…」
「やだ、ぼくもあと少しだから、最後まで突いて…!なかに、ぼくのなかに…あっ、んん…あぁぁっ!!」
逃れられない若領主が彼を強く抱きしめたまま数回腰を打ち付けると、2人は同時に大きく身体を跳ねさせた。
すべてを放ち終わるまで彼の首筋に顔を埋めていた若領主は、ようやく少しの平静を取り戻して彼に口づけようと顔を上げる。
しかし、彼は苦しそうにハァハァと肩で息をし、目を潤ませていた。
「ど、どうしたの…痛むの?」
「ち、違います…でも…うっ…!!」
彼の様子は痛みに耐えているのとは少し違うようで、むしろ上気した艶めかしさがある。
彼は息を荒らげたまま途切れ途切れに答えた。
「い、いいのに…きもちいいのに…た、たりない、でない…だせなくて、く、くるしい…んっ…うっ、あぁぁっ!!」
見ると、彼のものは勃ったまま先端からほんの少しの白濁だけを滲ませただけで、未だにドクドクと強く脈打っている。
身体を跳ねさせていたにもかかわらず、存分に放てずにいたようだ。
彼が我慢しきれなくなり、手を伸ばして触れようとするのを止めた若領主は、彼の耳元で囁く。
「…今、楽にしてあげる…」
若領主が滲み出している先端の白濁を全体に塗り拡げるように手のひらで包み込んで擦ると、そう何度もしないうちに彼は放った。
2種類の強い快感に晒されたせいでぐったりとした彼は、両手で顔を覆ってそのまま身を横にする。
若領主は彼が彼自身の下腹部に放った白濁が流れ落ちていきそうなのを見ると、手近にあった布巾を手に取り、彼を後ろから抱き締めるようにしながらそれらを拭った。
「は、はずかしい…」
「うん?」
彼は顔を覆う両手の隙間からくぐもった声で話す。
「こんな…若に気持ちよくなってほしいからだったのに、結局は僕の方が…その…」
しっとりと汗ばんだ肌と髪、そして手の隙間から覗く潤んだ瞳と赤い頬がなんとも心をくすぐってくる。
若領主は布巾を床に落とすと、両腕でしっかりと彼を抱き寄せてからそっと労るように手を下腹部へ置いた。
「私のほうが恥ずかしいよ…今したばかりなのに、まだ足りないと思って…こんなになってるんだから…」
若領主はまだ抜き出していない自らのものの存在感を彼に知らせる。
すると、下腹部に置いた若領主の手の甲にも熱く固いものが当たった。
それを優しく手の内に収め、若領主は彼の耳と肩とに口づける。
それからすぐに彼はまた仰向けになり、両足を拡げて若領主が動きやすいように体制を整えた。
達してからそう時間も経たないうちに再び刺激を与えると、痛いほどの快感が伴ってくる。
その上、彼の中には放ったばかりの白濁があるせいで、始めた時よりもずっとなめらかに動かせるようになっていた。
若領主の動きに合わせて響く彼の喘ぎ声と濡れそぼった部分からの淫靡な音は、小屋を甘く、妙な空気で包む。
「や、音が…うぅ…んっ…ぅああっ!!あっ、あっ…んぅっ…っ!」
彼の中は一層きつく締まり、若領主の手の内に収められているものも拍動を強める。
2人は互いの指を絡めて固く握り合い、それぞれ2度目を放った。
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蓬屋のBLに興味をもって下さった方へ…ぜひ他作品の方も併せてご覧下さい。【以下、蓬屋のBL作品紹介】《陸国が舞台の作品》: ・スパダリ攻め×不遇受け『熊の魚(オメガバース編有)』 ・クール(?)攻め×美人受け『彼と姫と(オメガバース編有)』 ・陸国の司書×特別体質受け『図書塔の2人(今後オメガバース編の予定有)』 ・神の側仕え×陸国の神『牧草地の白馬(多数カップル有)』 《現代が舞台の作品》:・元ゲイビ男優×フリーランス税理士『悠久の城(リバあり)』 それぞれの甘々カップル達をよろしくお願いします★
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