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特別編
「団欒」
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陸国の年末の過ごし方。
それは家族全員が集まって一家団欒を楽しむというものである。
全員で長寿や無病息災などの願いを込めた麺料理を食べ、好きに語り合ったりして思い思いに一年の締めくくりを楽しむ…それが一般的なのだ。
工芸地域の中央広場に面した とある食堂に住まう一家5人も毎年そのようにして過ごしている。
アルファの『熊』とオメガの『彼』。そして彼らの3人の子供達『虎』に『ひょう』に『獅』。
昼前から様々な分野の職人達が集まっている工芸地域特有の大きな工房へと出向いて事前に新調の依頼をしておいた冬物の寝間着の受け取りや新たな香りの洗い粉選びなどをしてきた彼らも、夕方頃には自宅である食堂せと戻ってきて和気藹々と夕飯のための支度を始めていた。
「海老、洗えたよ お父さん」
「ありがとう ひょう。それじゃあ殻を剥いて背わたを取ろうか、やり方分かる?」
「うん!」
「お父さん、これはどれくらいの大きさで切ったら良い?あんまり大きくないほうが良いよね?」
「うん、そうだな。もう少し小さくてもいいかも…あぁそれくらいが良いんじゃないかな」
「ん、分かった」
普段は慌ただしく調理が行われている食堂内の調理台で麺料理に使うつゆや付け合わせにする海老のかき揚げなどの支度を虎やひょうと共にしている『熊』。
そのそばにあるいつも食卓として使っている机では『彼』が獅になにやら折り紙を教えている。
「そうそう、こうやってここを折って…尖らせて…」
「こう?」
「うん、上手だよ。それでこんな風にして広げたら…ほら、鳥さんができたでしょ。この尾羽のところに匙とかを置けるんだ」
「へぇ、かわいいねぇ」
「ね、可愛いよね?これを机に並べたら良いかなと思ったんだ。お兄ちゃんやお姉ちゃん達の分も作っておこうか、獅。とと と一緒に食卓の準備をしよう」
「…うん」
午前中 出かける前に焼き菓子の生地作りを手伝っていた末っ子の獅(5歳)は夕飯に関しては料理ではなくこのようにして食卓の準備をすることになっていて、『彼』から匙や箸を置くための飾りの作り方を教わっていた。
ちょこちょこと紙を折って出来上がったのは愛らしい座り姿の小鳥だ。
一枚の紙から作られるそれはなかなかにしっかりとした造りをしていて、飾りとしてはもちろんだが実用的でもある。きっとそれらが並んだ食卓は華やかさが増してより一層見栄えのいいものになるだろう。
獅にも喜ばれた小鳥の紙飾りを追加であと3羽作るべく新たな紙を手にして折り始めようとする彼。だが…浮かない顔をした獅はそんな父に「このせっかくかわいいの、使ったらすてちゃうの?」と悲しげに訊ねてきたのだった。
「よごれちゃったら、とっておけないでしょ…?ぼく、これとっときたいのに…」
「え…あ、そう?」
「うん…だってこれ、かわいいもん…せっかく とと といっしょに作った鳥さん、よごしちゃうのは…」
自分が作った小鳥と父が作った小鳥を手のひらに乗せながらしょんぼりとする獅。
そのあまりにも悲しげな様子は『飾りなんだし、これくらい いくらでも作れるんだからさ』などというような気軽な声掛けは許さないだろうというほどだ。さらにその上、ただでさえ子供達のそうした姿に弱い彼にはもうそれ以上その飾りを箸置きにしようと言うことなどできるはずもなく、紙を折ろうとしていた手も止まってしまう。
「それじゃあ これは獅にあげるよ」
彼は獅に微笑みかける。
「後でお部屋に飾ったら良いんじゃない?寝台のそばに置くとかしたらきっと可愛いよ、2羽並べてさ」
「い…いいの?」
「いいよ、そんなに気に入ったんなら飾って とっときな獅。匙を置くやつはまた別のにしよう、戸棚の方に色々あるはずだから一緒に選びに行こうか」
「うん…!」
「よし、おいで」
2羽の小鳥の紙飾りを大事そうに机の上に置いた獅は輝かんばかりの笑顔を見せながら彼と共に食器などが納められている戸棚まで向かい、その端にあった小箱の中から『あぁでもない こうでもない』と箸置きを選び始めた。
両親や兄や姉にはそれぞれどんな意匠のものがいいだろうかと真剣になって悩む獅の愛らしさにすっかり心をほぐされた彼は獅が選んだそれらを綺麗に洗って机の上に並べると、さらに獅と匙や箸などを用意して食卓の準備を整えていったのだった。
ほとんど休みなく開いているこの食堂も年末年始ばかりは休みになり、いつもそこで料理や給仕をしている女性達もそれぞれの自宅で家族のために料理をしたりするのだが、そうした休みになる前には必ず総出で味の濃い日持ちするものを作ることになっている。日持ちのするものを食卓に出すことによって休みの間だけでもいくらか家事の手間を減らそうというためである。そしてその際に蕎麦粉を使った麺類も一緒に作られるのだが、それがこの年末に食されるものなのだ。
温かなつゆと一緒に食べるそれは体を芯から温めてくれる上に蕎麦粉の香りがよくたっていて本当に美味しい。さらにそこにサクサクとした小海老入りのかき揚げがあることで満足感も倍になる。
子供達もそれぞれよくおかわりをするなどしていて、彼と『熊』はそれらを器によそい直してやりながら「皆 本当によく食べるよなぁ」とくすくす笑った。
ーーーーーー
用意していた麺やかき揚げなど、それらすべてをすっかり平らげてしまった後。
食事の後にはやはり甘いものを皆で分けて食べなくては、と窯から出されてきたのは子供達も大好きな焼き菓子だ。材料も作り方も非常に簡単なその菓子は特になにか華やかな飾りをしているというわけではないのだが、しかし素朴な風味で一家全員の好物に君臨している。
食卓の中央に置かれた菓子からのじつに美味しそうな香りにゴクリと喉を鳴らす子供達。
だが彼と『熊』は「焼き菓子を食べる前にさ、お父さん達から皆に渡したいものがあるんだ」と声をかけてそばの戸棚の中に隠していた荷物からなにやら大小3つのものを取り出してきた。
彼がそれを子供達それぞれに渡すよう促すと、『熊』は「じゃあ虎から…」と一番大きな包みを長男に手渡す。
虎が包みを開けると、中からはしっかりとした造りの鞄が出てきあ。
「虎にはこれ、新しい鞄だよ。手持ちもできるし背負うこともできるやつ」
「えっ…いいの?」
「いいのって、今使ってるやつはもう虎の体には少し小さいでしょ。それにほつれたところを何度も縫って補修したせいで全体にだいぶ弱くなっちゃってきてるってととも言ってたし。それだけ大切に使ってるんならそろそろ新しいのを持ってもいいだろうと思ってさ」
『熊』から虎へと贈られた鞄。それは木綿のしっかりとした生地で作られていながらも強度が特に必要なところは革でできているという、軽さと丈夫さを兼ね合わせた立派なものだった。
普段から物持ち良く同じ鞄を長年使い続けてきていた虎はほつれたりするたびに『彼』にそれを繕ってもらっていたのだが、『彼』はそうして繕ううちに虎が鞄を扱うときの癖を理解し、そしてどのあたりがどのようにしてほころんでくるのかを熟知していたため、鞄職人と相談して虎のための一品を用意していたのだ。
木綿の白地と丁寧に鞣された革の茶が美しい鞄はすぐに虎のお気に入りになったようで、中まで覗き込んだり肩にかけたりしてみながら「わぁ…」と感嘆している。
「あ…ありがとう、お父さん、とと。これ、すごく大切にするね」
「うん。沢山使いなね」
「うん…!」
虎へと鞄を渡したその次は長女の『ひょう』へのものだ。『熊』は「ひょうには…これ」と手のひらに収まるくらいの小箱を差し出す。
その箱の中身を見るやいなや、ひょうは「わっ!」と声を上げて瞳を輝かせた。
「これ!すごく綺麗、すごくかわいい…!」
「気に入った?」
「うん!すごく!!」
ひょうに手渡されたもの。それは絹糸で出来た美しい髪飾りである。
撚っていない色鮮やかな絹糸を丁寧に梳かし、細い針金ではさんで捩り、そして平らにするなどして本物と見紛うような花びらや鳥の羽を作り出すという工芸地域の中でも少し特殊な製法で作られた髪飾り。
ひょうが好んでいる小鳥の羽や花を模した意匠になっているそれをじっと細部まで見つめている娘に『彼』は言う。
「この前、一緒に工房へ行った時にこういう細工が気になってるみたいだったからさ。せっかくならひょうが好きな鳥とか花を髪飾りにしてもらおうと思って職人さんに頼んでおいたんだ。やっぱりすごく綺麗だな」
「うん…!すっっごく綺麗…!」
「ひょうの髪も絹みたいな艶があるし、きっと似合うよ」
繊細な髪飾りに感激するひょう。
そして最後に『熊』は「これは獅にだよ」と少し細長い形をした箱を手渡したのだった。
「開けてごらん、獅」
「うん……わぁっ!これ、とってもきれい!」
促された獅がそっと小箱を開けてみると、中からはこれまたなんとも美しい筆記具が姿を現した。
獅がまだ小さな手でその筆記具を慎重に箱から取り出してみると、軸などに獅子を表わす刺繍模様のような意匠が施されていることが分かる。
その筆記具はまだ5歳の子供である獅にはいささか大人っぽすぎる気もするが、しかし獅はそれをじっと眺めては嬉しそうに口角を上げている。
「獅には何がいいかなって考えたんだけど、最近獅は『霽君』からのお手紙にお返事を書くことが多いでしょ?その度に皆から筆記具を借りたりしてたからね、もうそろそろ自分の筆記具を持ってもいい頃じゃないかなってお父さん達で話して決めたんだ。もしかしたらまだ少し獅の手には大きくて書きにくいかもしれないけどね、でもその分長く使える筆記具だから」
「このもようも、かっこいいね!」
「そうだね、素敵な柄にしてもらったね。名前と同じ『獅子』の意匠にしてもらったんだよ。これならすぐに獅の筆記具だなって分かるでしょ?これを使って沢山字を書くといいよ」
「うん…!ありがとう、お父さん、とと…!」
「どういたしまして、獅」
それぞれ両親からの贈り物を見せ合っては「いいね、素敵だね、綺麗だね、かっこいいね」と笑い合う子供達。
そんな3人の楽しそうな姿に『喜んでもらえてよかったな』と視線を交わした彼と『熊』は切り分けた焼き菓子を皿にのせていった。
ーーーーー
すっかり夜も更けてきた頃。
ようやく番2人きりの時間を迎えることができた彼と『熊』は油灯の明かりによってぼんやりと温かく照らされている寝台の上、壁際に背を預けながらゆったりと足を伸ばし、今日一日のことについて話す。
寝支度もすべて整っている今、ただただ静かに言葉を交わす時間というのは大きな安らぎを感じるものだ。
「はぁそれにしても…あんなに喜んでもらえるとは。俺達も用意をした甲斐があったってもんだよなぁ」
「そうだね。皆喜ぶだろうとは思ってたけど想像以上にはしゃいでた。それもこれも全部君が子供達のことをよく分かってて選んだからだよ」
「ははっ、そうかなぁ?」
「そうだよもちろん」
「う~ん…でも熊も一緒に色々考えたわけだしさ、『俺が』っていうわけじゃないよ。『俺達2人が』子供達のことを想ってるってことだ」
彼が あははっと笑ってしなだれかかると、『熊』は彼の肩を抱き寄せてその髪に口づける。夫夫だけの寝台で周りをはばかることなく体を寄せ合っていれば冬の冷えた室温などは全く気にならない。
『熊』の胸から伝わってくる心地良い暖かさを感じながら、彼は「でも本当に…喜んでたよな」としみじみ口にした。
「さっき…熊が虎や獅と湯浴みをしてる時にさ、ひょうが俺に言ったんだ『とと、綺麗な髪飾りをありがとう』って。俺が髪を梳かしてる間中ずっとあの髪飾りを眺めたりして…でも『汚しちゃったりするのは絶対に嫌だから普段髪につけることはできない』とも言ってた。まぁその気持はよく分かるよ、俺もどっちかっていうとそう思う方だし…だから俺も『いつもは飾っておいて、ここぞっていうときにつけたら?』って言ったんだ」
「ははっ、なるべく実用的なのをって選んだけど、やっぱりそうなるよね。虎もさ、湯浴みしながら僕に『鞄 2つとも大切に使うね』って言ってたんだ」
「あっ、あのボロボロになってる鞄もまだ使うつもりなんだな」
「うん。しばらくは『もったいないから』って新しい方の鞄は部屋に置いておくことになるだろうね、あの子達は大切にしたいものほど仕舞っておきたくなる性格をしてるから」
「そうそう、獅も俺が食卓の飾りに使おうと思って折った小鳥を飾りたいって言ってさ」
「それってさっき寝台のそばに置いて嬉しそうにしてたやつでしょ?本当に子供達は君そっくりな性格をしてるなぁ」
『熊』に指摘された彼は自らのうなじあてに触れると「まぁね…」と笑う。
「せっかく くれたものを失くしたり汚しちゃったりしたらと思うと…仕舞っておきたくなるんだよ、この うなじあて も本当は仕舞って飾っておきたかったくらいだ。もう今はこの首飾りがないと落ち着かなくなってるから逆に仕舞っておけなくなったけど」
「それなら良かった、これはずっとつけておいてもらわないと僕が困るよ。でも湯浴みをするときと寝るときは…外さないとね」
「っ……」
そろりと伸びる『熊』の手は彼の首筋を這い、そして うなじあての一部である首飾りの留め具をそっと外す。
白銀の美しい細い鎖やうなじを覆っている布地が『熊』の手によって取り外されると、そこに はっきりくっきりと付いている番の証『咬み痕』が露わになった。
「ねぇ…覚えてる?今日は…」
静かな寝台に響き渡るような『熊』の囁き声。
うなじのくすぐったさにゾワゾワとしながら、彼は「もちろん…忘れるわけがないだろ」と『熊』の頬にちゅっと口づける。
「今日は俺達が番になった日だ…あの日は雪が降ってたよな」
「うん」
「すごく特別な日っていうか…特別な瞬間だったよ、うん…。あの日から一日一日が目まぐるしく過ぎていってさ、その次の冬にはもう虎がいたりして…」
「その次の冬にはひょうもね」
「そうそう、だから番になった2年後の冬にはもう俺達って2人の子供の親になってたんだよな。こんなに楽しくて温かくて穏やかな生活を送ることができてるなんて昔の俺にはきっと想像もできなかっただろうけど…でも色んな人の助けを借りつつ毎日こうやって子供達と過ごすことができて胸がいっぱいだ」
彼がもたれかかると『熊』は「僕達の周りには沢山の子育て経験者がいたから、本当に良かったよね」と彼の腕の辺りを擦って温めながら言う。
「子供達と出かける時のことなんかは特に何に気をつけたら良いのかっていうのを教えてもらったりして、それがすごく助かったと思う。『子供から目を離しちゃいけない』っていうのは分かるけど、実際どういう風にしたらいいのかっていうのは僕達だけだったらきっと悩んでばっかりになってたはず」
「そうだよな。『子供っていうのは色んなことに興味が湧くから、それを逆手に取って自分の用事に付き合うよう興味をもたせれば良い』…だっけ。ただ単に『ここで待ってて』『ちょっと用事があるから』って言うと俺達とは目線の高さとかが違う子供にとってはその待たされる時間をつまらなく感じて他の興味を惹かれるものの方に行きたくなっちゃうけど、『ほら見てごらん』って言って荷物の受け取りとかの場に一緒に巻き込んじゃえば職人とか周りの人達と話すきっかけができてあちこちには行かなくなるし、必然的にそばにいるようになる…って。そうやって色んなコツを教えてもらえたから随分と助かったよ、そうじゃなかったら気にしなきゃいけないことが多すぎて子供達3人の相手は大変だっただろうから」
「うん、そういうちょっとしたことがすごく大切なんだっていうのを教えてもらえたのは大きいよね。僕達と子供達の視点や考えっていうのはやっぱり違うから、そこの違いを理解ってあげないと…なんでもそうやって上手くいくかっていうとそういうわけでもないけど、なによりお互い気に病むことが無いように生活できるのが一番だからね」
やはり子を育てる番ということもあって、2人きりになると彼らの話題は子供や家庭に関するものになりがちだ。
しかしそんな中でも自然と一人称が子供達と接しているときのそれとは異なる『俺』や『僕』というものに戻っているので、親である以前に自分達の関係がどういうものであるかを再認識することができる。
そうした何気ない語らいの時間というのは番になる前から変わらず彼らにとっての大切な時間、習慣として根付いているのだった。
互いに見つめ合えばどちらからともなく ふふっ という笑みがこぼれて2人は口づけを交わす。
口づけながらうなじの咬み痕に触れられていると次第にゾワゾワとした感覚が全身に広がり、彼は『熊』とのさらなる触れ合いを求めようとして四肢を絡みつかせていく。
心の底から溢れ出してくる想いを伝えようと、彼はあらためて『熊』に真正面から向き合った。
「なぁ、熊…俺さ、本当に熊と番になれて良かったよ」
「…これからもよろしくな、熊」
ひそやかなその囁き声に『熊』も同じく囁くようにして応える。
「こちらこそ。これからもずっと…よろしくね」
オメガのうなじについた咬み痕は番がいるという証だが、つまりはそれはアルファによる『愛の証』でもある。
その咬み痕へと執拗に口づける『熊』。
彼はじっとそれを受け入れていたが、いつまで経っても『熊』がそこから離れないことにいよいよ痺れを切らして『熊』を寝台の上へと押し倒した。
「せっかくの今日をこれで終わらせるなんてそんなこと…あるわけないよな?」
濃厚な口づけの音と衣擦れの音がし始める寝台。
雪がちらつきそうな冷えた気温とはまったく異なる熱気が一組の番を包み込んでいた。
それは家族全員が集まって一家団欒を楽しむというものである。
全員で長寿や無病息災などの願いを込めた麺料理を食べ、好きに語り合ったりして思い思いに一年の締めくくりを楽しむ…それが一般的なのだ。
工芸地域の中央広場に面した とある食堂に住まう一家5人も毎年そのようにして過ごしている。
アルファの『熊』とオメガの『彼』。そして彼らの3人の子供達『虎』に『ひょう』に『獅』。
昼前から様々な分野の職人達が集まっている工芸地域特有の大きな工房へと出向いて事前に新調の依頼をしておいた冬物の寝間着の受け取りや新たな香りの洗い粉選びなどをしてきた彼らも、夕方頃には自宅である食堂せと戻ってきて和気藹々と夕飯のための支度を始めていた。
「海老、洗えたよ お父さん」
「ありがとう ひょう。それじゃあ殻を剥いて背わたを取ろうか、やり方分かる?」
「うん!」
「お父さん、これはどれくらいの大きさで切ったら良い?あんまり大きくないほうが良いよね?」
「うん、そうだな。もう少し小さくてもいいかも…あぁそれくらいが良いんじゃないかな」
「ん、分かった」
普段は慌ただしく調理が行われている食堂内の調理台で麺料理に使うつゆや付け合わせにする海老のかき揚げなどの支度を虎やひょうと共にしている『熊』。
そのそばにあるいつも食卓として使っている机では『彼』が獅になにやら折り紙を教えている。
「そうそう、こうやってここを折って…尖らせて…」
「こう?」
「うん、上手だよ。それでこんな風にして広げたら…ほら、鳥さんができたでしょ。この尾羽のところに匙とかを置けるんだ」
「へぇ、かわいいねぇ」
「ね、可愛いよね?これを机に並べたら良いかなと思ったんだ。お兄ちゃんやお姉ちゃん達の分も作っておこうか、獅。とと と一緒に食卓の準備をしよう」
「…うん」
午前中 出かける前に焼き菓子の生地作りを手伝っていた末っ子の獅(5歳)は夕飯に関しては料理ではなくこのようにして食卓の準備をすることになっていて、『彼』から匙や箸を置くための飾りの作り方を教わっていた。
ちょこちょこと紙を折って出来上がったのは愛らしい座り姿の小鳥だ。
一枚の紙から作られるそれはなかなかにしっかりとした造りをしていて、飾りとしてはもちろんだが実用的でもある。きっとそれらが並んだ食卓は華やかさが増してより一層見栄えのいいものになるだろう。
獅にも喜ばれた小鳥の紙飾りを追加であと3羽作るべく新たな紙を手にして折り始めようとする彼。だが…浮かない顔をした獅はそんな父に「このせっかくかわいいの、使ったらすてちゃうの?」と悲しげに訊ねてきたのだった。
「よごれちゃったら、とっておけないでしょ…?ぼく、これとっときたいのに…」
「え…あ、そう?」
「うん…だってこれ、かわいいもん…せっかく とと といっしょに作った鳥さん、よごしちゃうのは…」
自分が作った小鳥と父が作った小鳥を手のひらに乗せながらしょんぼりとする獅。
そのあまりにも悲しげな様子は『飾りなんだし、これくらい いくらでも作れるんだからさ』などというような気軽な声掛けは許さないだろうというほどだ。さらにその上、ただでさえ子供達のそうした姿に弱い彼にはもうそれ以上その飾りを箸置きにしようと言うことなどできるはずもなく、紙を折ろうとしていた手も止まってしまう。
「それじゃあ これは獅にあげるよ」
彼は獅に微笑みかける。
「後でお部屋に飾ったら良いんじゃない?寝台のそばに置くとかしたらきっと可愛いよ、2羽並べてさ」
「い…いいの?」
「いいよ、そんなに気に入ったんなら飾って とっときな獅。匙を置くやつはまた別のにしよう、戸棚の方に色々あるはずだから一緒に選びに行こうか」
「うん…!」
「よし、おいで」
2羽の小鳥の紙飾りを大事そうに机の上に置いた獅は輝かんばかりの笑顔を見せながら彼と共に食器などが納められている戸棚まで向かい、その端にあった小箱の中から『あぁでもない こうでもない』と箸置きを選び始めた。
両親や兄や姉にはそれぞれどんな意匠のものがいいだろうかと真剣になって悩む獅の愛らしさにすっかり心をほぐされた彼は獅が選んだそれらを綺麗に洗って机の上に並べると、さらに獅と匙や箸などを用意して食卓の準備を整えていったのだった。
ほとんど休みなく開いているこの食堂も年末年始ばかりは休みになり、いつもそこで料理や給仕をしている女性達もそれぞれの自宅で家族のために料理をしたりするのだが、そうした休みになる前には必ず総出で味の濃い日持ちするものを作ることになっている。日持ちのするものを食卓に出すことによって休みの間だけでもいくらか家事の手間を減らそうというためである。そしてその際に蕎麦粉を使った麺類も一緒に作られるのだが、それがこの年末に食されるものなのだ。
温かなつゆと一緒に食べるそれは体を芯から温めてくれる上に蕎麦粉の香りがよくたっていて本当に美味しい。さらにそこにサクサクとした小海老入りのかき揚げがあることで満足感も倍になる。
子供達もそれぞれよくおかわりをするなどしていて、彼と『熊』はそれらを器によそい直してやりながら「皆 本当によく食べるよなぁ」とくすくす笑った。
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用意していた麺やかき揚げなど、それらすべてをすっかり平らげてしまった後。
食事の後にはやはり甘いものを皆で分けて食べなくては、と窯から出されてきたのは子供達も大好きな焼き菓子だ。材料も作り方も非常に簡単なその菓子は特になにか華やかな飾りをしているというわけではないのだが、しかし素朴な風味で一家全員の好物に君臨している。
食卓の中央に置かれた菓子からのじつに美味しそうな香りにゴクリと喉を鳴らす子供達。
だが彼と『熊』は「焼き菓子を食べる前にさ、お父さん達から皆に渡したいものがあるんだ」と声をかけてそばの戸棚の中に隠していた荷物からなにやら大小3つのものを取り出してきた。
彼がそれを子供達それぞれに渡すよう促すと、『熊』は「じゃあ虎から…」と一番大きな包みを長男に手渡す。
虎が包みを開けると、中からはしっかりとした造りの鞄が出てきあ。
「虎にはこれ、新しい鞄だよ。手持ちもできるし背負うこともできるやつ」
「えっ…いいの?」
「いいのって、今使ってるやつはもう虎の体には少し小さいでしょ。それにほつれたところを何度も縫って補修したせいで全体にだいぶ弱くなっちゃってきてるってととも言ってたし。それだけ大切に使ってるんならそろそろ新しいのを持ってもいいだろうと思ってさ」
『熊』から虎へと贈られた鞄。それは木綿のしっかりとした生地で作られていながらも強度が特に必要なところは革でできているという、軽さと丈夫さを兼ね合わせた立派なものだった。
普段から物持ち良く同じ鞄を長年使い続けてきていた虎はほつれたりするたびに『彼』にそれを繕ってもらっていたのだが、『彼』はそうして繕ううちに虎が鞄を扱うときの癖を理解し、そしてどのあたりがどのようにしてほころんでくるのかを熟知していたため、鞄職人と相談して虎のための一品を用意していたのだ。
木綿の白地と丁寧に鞣された革の茶が美しい鞄はすぐに虎のお気に入りになったようで、中まで覗き込んだり肩にかけたりしてみながら「わぁ…」と感嘆している。
「あ…ありがとう、お父さん、とと。これ、すごく大切にするね」
「うん。沢山使いなね」
「うん…!」
虎へと鞄を渡したその次は長女の『ひょう』へのものだ。『熊』は「ひょうには…これ」と手のひらに収まるくらいの小箱を差し出す。
その箱の中身を見るやいなや、ひょうは「わっ!」と声を上げて瞳を輝かせた。
「これ!すごく綺麗、すごくかわいい…!」
「気に入った?」
「うん!すごく!!」
ひょうに手渡されたもの。それは絹糸で出来た美しい髪飾りである。
撚っていない色鮮やかな絹糸を丁寧に梳かし、細い針金ではさんで捩り、そして平らにするなどして本物と見紛うような花びらや鳥の羽を作り出すという工芸地域の中でも少し特殊な製法で作られた髪飾り。
ひょうが好んでいる小鳥の羽や花を模した意匠になっているそれをじっと細部まで見つめている娘に『彼』は言う。
「この前、一緒に工房へ行った時にこういう細工が気になってるみたいだったからさ。せっかくならひょうが好きな鳥とか花を髪飾りにしてもらおうと思って職人さんに頼んでおいたんだ。やっぱりすごく綺麗だな」
「うん…!すっっごく綺麗…!」
「ひょうの髪も絹みたいな艶があるし、きっと似合うよ」
繊細な髪飾りに感激するひょう。
そして最後に『熊』は「これは獅にだよ」と少し細長い形をした箱を手渡したのだった。
「開けてごらん、獅」
「うん……わぁっ!これ、とってもきれい!」
促された獅がそっと小箱を開けてみると、中からはこれまたなんとも美しい筆記具が姿を現した。
獅がまだ小さな手でその筆記具を慎重に箱から取り出してみると、軸などに獅子を表わす刺繍模様のような意匠が施されていることが分かる。
その筆記具はまだ5歳の子供である獅にはいささか大人っぽすぎる気もするが、しかし獅はそれをじっと眺めては嬉しそうに口角を上げている。
「獅には何がいいかなって考えたんだけど、最近獅は『霽君』からのお手紙にお返事を書くことが多いでしょ?その度に皆から筆記具を借りたりしてたからね、もうそろそろ自分の筆記具を持ってもいい頃じゃないかなってお父さん達で話して決めたんだ。もしかしたらまだ少し獅の手には大きくて書きにくいかもしれないけどね、でもその分長く使える筆記具だから」
「このもようも、かっこいいね!」
「そうだね、素敵な柄にしてもらったね。名前と同じ『獅子』の意匠にしてもらったんだよ。これならすぐに獅の筆記具だなって分かるでしょ?これを使って沢山字を書くといいよ」
「うん…!ありがとう、お父さん、とと…!」
「どういたしまして、獅」
それぞれ両親からの贈り物を見せ合っては「いいね、素敵だね、綺麗だね、かっこいいね」と笑い合う子供達。
そんな3人の楽しそうな姿に『喜んでもらえてよかったな』と視線を交わした彼と『熊』は切り分けた焼き菓子を皿にのせていった。
ーーーーー
すっかり夜も更けてきた頃。
ようやく番2人きりの時間を迎えることができた彼と『熊』は油灯の明かりによってぼんやりと温かく照らされている寝台の上、壁際に背を預けながらゆったりと足を伸ばし、今日一日のことについて話す。
寝支度もすべて整っている今、ただただ静かに言葉を交わす時間というのは大きな安らぎを感じるものだ。
「はぁそれにしても…あんなに喜んでもらえるとは。俺達も用意をした甲斐があったってもんだよなぁ」
「そうだね。皆喜ぶだろうとは思ってたけど想像以上にはしゃいでた。それもこれも全部君が子供達のことをよく分かってて選んだからだよ」
「ははっ、そうかなぁ?」
「そうだよもちろん」
「う~ん…でも熊も一緒に色々考えたわけだしさ、『俺が』っていうわけじゃないよ。『俺達2人が』子供達のことを想ってるってことだ」
彼が あははっと笑ってしなだれかかると、『熊』は彼の肩を抱き寄せてその髪に口づける。夫夫だけの寝台で周りをはばかることなく体を寄せ合っていれば冬の冷えた室温などは全く気にならない。
『熊』の胸から伝わってくる心地良い暖かさを感じながら、彼は「でも本当に…喜んでたよな」としみじみ口にした。
「さっき…熊が虎や獅と湯浴みをしてる時にさ、ひょうが俺に言ったんだ『とと、綺麗な髪飾りをありがとう』って。俺が髪を梳かしてる間中ずっとあの髪飾りを眺めたりして…でも『汚しちゃったりするのは絶対に嫌だから普段髪につけることはできない』とも言ってた。まぁその気持はよく分かるよ、俺もどっちかっていうとそう思う方だし…だから俺も『いつもは飾っておいて、ここぞっていうときにつけたら?』って言ったんだ」
「ははっ、なるべく実用的なのをって選んだけど、やっぱりそうなるよね。虎もさ、湯浴みしながら僕に『鞄 2つとも大切に使うね』って言ってたんだ」
「あっ、あのボロボロになってる鞄もまだ使うつもりなんだな」
「うん。しばらくは『もったいないから』って新しい方の鞄は部屋に置いておくことになるだろうね、あの子達は大切にしたいものほど仕舞っておきたくなる性格をしてるから」
「そうそう、獅も俺が食卓の飾りに使おうと思って折った小鳥を飾りたいって言ってさ」
「それってさっき寝台のそばに置いて嬉しそうにしてたやつでしょ?本当に子供達は君そっくりな性格をしてるなぁ」
『熊』に指摘された彼は自らのうなじあてに触れると「まぁね…」と笑う。
「せっかく くれたものを失くしたり汚しちゃったりしたらと思うと…仕舞っておきたくなるんだよ、この うなじあて も本当は仕舞って飾っておきたかったくらいだ。もう今はこの首飾りがないと落ち着かなくなってるから逆に仕舞っておけなくなったけど」
「それなら良かった、これはずっとつけておいてもらわないと僕が困るよ。でも湯浴みをするときと寝るときは…外さないとね」
「っ……」
そろりと伸びる『熊』の手は彼の首筋を這い、そして うなじあての一部である首飾りの留め具をそっと外す。
白銀の美しい細い鎖やうなじを覆っている布地が『熊』の手によって取り外されると、そこに はっきりくっきりと付いている番の証『咬み痕』が露わになった。
「ねぇ…覚えてる?今日は…」
静かな寝台に響き渡るような『熊』の囁き声。
うなじのくすぐったさにゾワゾワとしながら、彼は「もちろん…忘れるわけがないだろ」と『熊』の頬にちゅっと口づける。
「今日は俺達が番になった日だ…あの日は雪が降ってたよな」
「うん」
「すごく特別な日っていうか…特別な瞬間だったよ、うん…。あの日から一日一日が目まぐるしく過ぎていってさ、その次の冬にはもう虎がいたりして…」
「その次の冬にはひょうもね」
「そうそう、だから番になった2年後の冬にはもう俺達って2人の子供の親になってたんだよな。こんなに楽しくて温かくて穏やかな生活を送ることができてるなんて昔の俺にはきっと想像もできなかっただろうけど…でも色んな人の助けを借りつつ毎日こうやって子供達と過ごすことができて胸がいっぱいだ」
彼がもたれかかると『熊』は「僕達の周りには沢山の子育て経験者がいたから、本当に良かったよね」と彼の腕の辺りを擦って温めながら言う。
「子供達と出かける時のことなんかは特に何に気をつけたら良いのかっていうのを教えてもらったりして、それがすごく助かったと思う。『子供から目を離しちゃいけない』っていうのは分かるけど、実際どういう風にしたらいいのかっていうのは僕達だけだったらきっと悩んでばっかりになってたはず」
「そうだよな。『子供っていうのは色んなことに興味が湧くから、それを逆手に取って自分の用事に付き合うよう興味をもたせれば良い』…だっけ。ただ単に『ここで待ってて』『ちょっと用事があるから』って言うと俺達とは目線の高さとかが違う子供にとってはその待たされる時間をつまらなく感じて他の興味を惹かれるものの方に行きたくなっちゃうけど、『ほら見てごらん』って言って荷物の受け取りとかの場に一緒に巻き込んじゃえば職人とか周りの人達と話すきっかけができてあちこちには行かなくなるし、必然的にそばにいるようになる…って。そうやって色んなコツを教えてもらえたから随分と助かったよ、そうじゃなかったら気にしなきゃいけないことが多すぎて子供達3人の相手は大変だっただろうから」
「うん、そういうちょっとしたことがすごく大切なんだっていうのを教えてもらえたのは大きいよね。僕達と子供達の視点や考えっていうのはやっぱり違うから、そこの違いを理解ってあげないと…なんでもそうやって上手くいくかっていうとそういうわけでもないけど、なによりお互い気に病むことが無いように生活できるのが一番だからね」
やはり子を育てる番ということもあって、2人きりになると彼らの話題は子供や家庭に関するものになりがちだ。
しかしそんな中でも自然と一人称が子供達と接しているときのそれとは異なる『俺』や『僕』というものに戻っているので、親である以前に自分達の関係がどういうものであるかを再認識することができる。
そうした何気ない語らいの時間というのは番になる前から変わらず彼らにとっての大切な時間、習慣として根付いているのだった。
互いに見つめ合えばどちらからともなく ふふっ という笑みがこぼれて2人は口づけを交わす。
口づけながらうなじの咬み痕に触れられていると次第にゾワゾワとした感覚が全身に広がり、彼は『熊』とのさらなる触れ合いを求めようとして四肢を絡みつかせていく。
心の底から溢れ出してくる想いを伝えようと、彼はあらためて『熊』に真正面から向き合った。
「なぁ、熊…俺さ、本当に熊と番になれて良かったよ」
「…これからもよろしくな、熊」
ひそやかなその囁き声に『熊』も同じく囁くようにして応える。
「こちらこそ。これからもずっと…よろしくね」
オメガのうなじについた咬み痕は番がいるという証だが、つまりはそれはアルファによる『愛の証』でもある。
その咬み痕へと執拗に口づける『熊』。
彼はじっとそれを受け入れていたが、いつまで経っても『熊』がそこから離れないことにいよいよ痺れを切らして『熊』を寝台の上へと押し倒した。
「せっかくの今日をこれで終わらせるなんてそんなこと…あるわけないよな?」
濃厚な口づけの音と衣擦れの音がし始める寝台。
雪がちらつきそうな冷えた気温とはまったく異なる熱気が一組の番を包み込んでいた。
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